↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スライムテイマーは超特化の力で最強へと至る  作者: 伊藤ほほほ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/44

17

「ママー! 見て見て、お土産だよー!」


 今日の目標は、オークを倒すこと。本当は、何回も挑戦するはずだったんだよね。

 逃げることも視野に入れながら、明日のために模擬戦もかねて戦ったのだが、作戦がばっちりハマって一体目で結果を出せてしまった。

 そこでみんなのレベルも上がったので、決闘に備えて早めに帰宅したというわけだ。


 たまには休もう……とかじゃない。

 僕らにオークを倒せるだけの実力がついたって分かったから、あとは知識を入れて、あらゆる状況に対応できるように色々と作戦を考えようと思ったんだ。


「あら、おかえり。今日は早いのね? ……そのお肉はどうしたの?」


「オークを倒したから、切り分けて持ってきたんだ! パッセさんの工房と、ラビちゃん家(ち)にも届けてきたよ! 今日の夕飯はトンカツでお願いね!」


 持ち帰ったのはオーク肉。背中側のリブロースと呼ばれる部位を槍の穂先で切り取った。

 学校から借りてきたモンスター図鑑によると、旨みの強い肉の中にほどよく脂身(サシ)が入って一番美味しい部位だという。


 運搬は、スラマルとコロゾーに手伝ってもらった。

 レベルが上がったおかげで、二人とも地面を這うと子供が歩くくらいには速い。

 頭の上にお肉を乗せてみたら、落とさないように触手(手?)を伸ばして、上下左右を掴んで器用に固定していた。……が、肉が大きすぎて体が隠れてしまい、二つの生肉が僕の後ろから追いかけてくるという恐怖映像を、村のみんなにお届けしてしまった。

 まさか、のどかな街中に悲鳴が響き渡るなんて。ごめんなさい、街のみなさん。


「……カイト、あなたオークと戦ったの? 危険なことはしないって、ママと約束したわよね? この子ったら信じられない。自分が何をしたのか分かってるのかしら。まったく……怪我はないの? スラちゃんもコロちゃんも、カイトが無茶しそうになったら止めなきゃダメじゃない!」


「そんなに心配しないでよ。何も考えずに挑んだわけじゃないんだからさ。オークについてはちゃんと勉強したし、いざというときは走って逃げれるような作戦だったんだ。僕はもうレベル12だし、武器はこの長い槍ね? だから、約束は破ってない」


 ママが眉間にしわを寄せながら、僕の弁明を噛み砕こうとしている。

 褒めてもらえると思ったら、危うく大目玉をくらうところだったよ。


 スラマルとコロゾーが、不安そうに僕を見ている。

 なぜかオークよりもママの方が怖いみたい。

 やっぱり説教だ……なんてことにならないうちに避難しよう。

 時間を無駄にしたくないからね。

 逃げるが勝ちだ。


「ちょっと待ちなさい! まだ話は終わってないんだから!」


「捕まったら酷い目に会うぞ! みんな今すぐ逃げろ!」


 怯える従魔を抱え上げ、ママの横をすり抜ける。


"え? え? 大丈夫なのですか? お母さまを怒らせては……"


 慌てふためくスラマル。

 たしかに僕のママは怒ると怖いけど、スラマルが気にする必要ないのに。


"さ、さすがご主人! 逃げるが勝ちとはこのことですぜ!"


 強がりながらも背後を気にするコロゾー。

 なぜコロゾーまでママに怯えているのだろうか。


 パパが言うには、ママは瞬間湯沸かし器なんだって。

 すぐ怒るけど、ある一定のラインを超える前に逃げちゃえばいい。

 つまり、僕らの勝利ってわけ。

 廊下を駆け抜けて台所へ。オーク肉の塊を置き、そのまま部屋に戻って勉強を始める。


 不安で不安でたまらない。

 静かな部屋でじっとしていると、焦りから体を動かしたくなってしまう。

 でも、レベルを上げたくても時間が足りないし、槍の練習をしたところで筋肉痛になるだけ。明日の決闘を前に、もはや意味がないのは分かってる。

 まあ、槍は学校に持っていかなきゃだから、家の倉庫に隠してあるんだけどね。

 決闘するなんてバレたら大変だし、それこそ雷が落ちる。

 ママは絶対にやめさせようとするだろう。学校にまで来ちゃうかもしれない。

 親になんて言えるはずないんだ。決闘を受けた時点で、僕もザンブと同じ恥ずかしい人間なんだから。

 ……だって、僕のちっぽけなプライドが原因なんだもん。


 僕がもう少し大人だったら、決闘になんてならなかった。

 いつもみたいに、ザンブなんて無視しておけばよかったんだ。

 でも、僕にはあいつが許せない。無神経に僕の全てを否定しようとしたザンブが。

 今回の適性診断は、ただのきっかけにすぎない。

 ザンブは、何かにつけて僕に言いがかりをつけてくる。

 遅かれ早かれ、決着をつける必要があったんだ。


「僕ら、勝てるよね? オークなんてへっちゃらだよね? 君たちのこと、信じてる。心から信じてるのに……何でこんなに怖いんだろう……」


 頭の中で、ザンブとの戦いを思い描く。

 召喚されたオークは4体。すべて、今日倒したオークと同じ強さだ。

 まずはこちらから奇襲して、対応できないうちに1体目が倒れる。

 ザンブの性格からして、まさか僕らにやられるなんて想像できないはずだ。

 慌てている間に、2体目、3体目と削っていく。

 立て直そうとしたところで残りは一体。僕の槍がオークの体を貫き、高らかに勝利を宣言する。


 ……こんなに簡単なわけない。

 何か僕が思いつかないような状況になったとき、正解にたどり着けるのだろうか。

 もし僕がつまずいて転んでしまったら、もしスラマルが敵に捕まってしまったら、もしコロゾーが恐怖で動けなくなってしまったら。

 僕らのうち誰か一人でも欠ければ、負けてしまう。

 もしかしてが、どうしようもなく怖いんだ。


「はは……ごめんね。僕がこんなんじゃダメだよね」


 机の上に広げた本。その左右で、僕が読み聞かせる内容を必死に理解しようとするスラマルとコロゾー。

 二人をギュッと抱き寄せる。こうでもしないと、耐えられない。


"どうしたのですかカイト様。大丈夫です、いつもみたいに主君の指示に従えば、絶対に間違いはありません!"


"そうですとも! このコロゾーは、オークとも戦えるスライムの中のスライムになりました。これもすべて、ご主人のおかげですぜ? 勝っても負けても、悔いはありません!"


 僕の心が弱っているのを察したのか、スラマルが励ましてくれる。

 悔いはない……か。コロゾーの言う通りだな。


「カイトー? そろそろご飯よー!」


 もうそんな時間か。

 悩んだり落ち込んだりしてたら、長いこと経ってたみたい。


「いただきまーす!」


 今日の夕飯は、オーク肉のトンカツだった。

 噛み締めると、口の中一杯に甘い脂と濃厚な肉汁が広がるんだ。炊き立てのご飯が進む進む。

 いい肉には塩だぞ……だなんてパパが言ってたけど、試してみたら大正解。ソースで食べるよりもお肉の味がはっきりするんだ。

 鼻がツーンとして涙が出ちゃうから、カラシはまだ試せないけどね。

 すっごく美味しくてびっくりしたんだけど、ご飯を食べ終えるともっと驚くことがあったんだ。


「スラちゃん、コロちゃん、お願いね?」


 ママが空になった食器を渡すと、僕の従魔が皿やらナイフやらを体の中に放り込んで、ピッカピカに洗っちゃったんだよね。

 助かるわぁ……とか言ってたけど、ママったらいつの間に覚えさせたんだろう。スラマルとコロゾーが自分からやり始めるわけないんだから。

 手の届かない棚の上とか、ベッドの隙間とか、お風呂掃除までやらせてるみたい。

 家事には欠かせない存在になっちゃってるんだってさ。

 たくましいというかなんというか……ママって、どこの家でもこんな感じなのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。