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最弱スライムテイマーは超特化の力で最強へと至る  作者: 伊藤ほほほ


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16

 僕は、わざと草を強く踏みつけながら走りだす。


「ギャッ!」


 ゴブリンが目を覚まし、飛び起きて棍棒を構えた。

 ゴブ美ちゃんと違うのは格好だけ。向こうはツナギ姿で、こっちは腰にぼろ布を巻き付けている。

 ぽっこりと腹が出ているのにやせ細った貧弱な体だけれど、力はレベル1の成人男性よりも強いらしい。

 鋭い眼光が、射抜くように僕に向けられている。

 狙い通り、敵だと認識してくれた。


「今だ! 驚かせてやれ!」


 一面に敷き詰められたカラス草からガサガサと音が鳴る。

 スラマルとコロゾーが、転がりながら勢いをつけているのだろう。

 そして、二人が草むらの中から飛び出した。

 体を固めて背後からゴブリンに激突する。


「よし、よくやった! 隠れるんだ!」


 ポヨンと跳ね返り、着地すると同時。スラマルとコロゾーは草原に溶け込むように消えてしまう。


「ゲギ……?」


 体当たりの衝撃で背中側に大きく全身をのけ反らせたゴブリンだったが、ダメージはそれほど受けていないようだ。キョロキョロとあたりを見回しながら、怪訝(けげん)そうな表情を浮かべている。

 僕のことなんて忘れてしまったみたい。

 こんなに近くまで来てるってのに。


「どこを見ているのかな? お前の相手は僕だ!」


 狙うは敵の急所――心臓だ。

 大きく一歩踏み込んで、低い姿勢から突きを放つ。

 肋骨を避けるように斜め下から真っ直ぐに伸びた僕の槍が、敵の胸を貫く。


「ゲギャアアアアアッ!」


 断末魔の悲鳴とともに、槍を引き抜こうと暴れるゴブリン。


「逃がすもんか!」


 僕は体ごと前に出て槍を押し込む。


「……ギッ、ギャッ」


 やがてゴブリンは力なく崩れ落ちた。

 必死に握りしめた槍から命の重さを感じる。

 傷口から溢れ出す紫色の血液が柄を伝い、黒い草の上に滴り落ちていく。


「やった……のか?」


 槍を引き抜くと、ゴブリンがどさりと地面に倒れ伏す。その体から薄紫色の魂が宙に浮かび、三分割されて飛んでいく。

 初めてスライム以外のモンスターを倒した。自分の命を奪いかねない、危険なモンスターだ。


「すごい! すごいよみんな!」


 思わず槍を落とし、両手を広げていた。

 そこに、スラマルとコロゾーが飛び込んでくる。


"あんなに強いゴブリンを倒せるなんてすごいです! やりましたね!"


 スラマルは、体をブルンブルンと震わせて大喜びだ。


"素晴らしい作戦でしたぜご主人!"


 コロゾーも、満更でもない様子。

 みんなに自身がついた有意義な戦いだった。


「あははっ! ねえ、一心同体って感じがしない? 三人でぴったり息が合っててさ、完璧だったよね!」


 二人をしっかりと受け止めて、嬉しさから顔をうずめて頬擦りしてしまう。


 その後も、ゴブリンにツノウサギ、ホウダンガエルにコボルトと、危なげなくモンスターを倒していく。

 次の日も、その次の日も、またその次の日も。

 僕のレベルは11まで上がり、スラマルとコロゾーはレベル10になった。


 ――そして、最後の日。

 視線の先に、森の一部が動いているのかと目を疑いたくなるほどに巨大なモンスターがいる。

 土を擦り付けたかのような茶色の毛皮。何を食べたらそうなるんだというくらいにでっぷり肥えた超重量の体。顔の先には平たい鼻をつけて、下顎からは極太の牙が突き出している。

 ……オークだ。


"カイト様、アレはまだ早いかもしれません"


"ご、ご主人、びびってるわけじゃねえんです。これは……そう、武者震いですぜ"


 スラマルもコロゾーもオークの迫力に圧倒されてしまったらしく、プルプルと震えている。

 こいつを倒せなければ、明日の決闘に僕らの勝利はない。

 

「怖いよね……あんな山みたいな化け物。分かる、僕もだよ。でも大丈夫、一緒に勉強したことを思い出して! 作戦通りにいこう! いつもみたいに信じてくれない?」


 僕が語りかけると、コロゾーの心に熱い炎が宿る。

 スラマルもやる気だ。


「二人とも自信を持って。よし、やるぞ!」


 僕が奴の注意を引きつけないと。責任重大だ。

 恐怖心を胸の奥深くに押し込んで、勇気の一歩を踏みだす。


 頼りになる二人は、レベルアップしたことで転がる速度が格段に上がっている。

 スラマルが右、コロゾーが左からオークの背後に回り込む。


「勝負だオーク!」


 僕は走り出し、オークとの距離を詰める。

 対峙すると、凄まじい迫力だ。目の前に巨大な壁が立ちはだかってるみたい。


「フギィイイイイイ!」


 オークの馬鹿でかい威嚇で大気が震え、僕の頬もピリピリと痺れる。

 一人なら逃げてしまいたくなるほどのプレッシャー。でも……。


「うおおおおおおおお!」


 気合いで思考を塗り替える。

 思い描いていた通りの動きで、スラマルとコロゾーがオークの動きを止めた。

 今だ!


「いいぞ、二人とも! てやあああっ!」


 ザンブに勝つ。前に進むために、大きく一歩踏み込む。

 体重を乗せて、全力を込めて……オークの体内に槍の穂先をぶち込む!


 最後に立っていたのは、僕ら三人だった。

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