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僕に残されたのはあと五日。やるべき行動を絞らないといけない気がしてきた。
目標に向かって進んでいると、一日が早すぎる。
あれもこれもじゃ、時間が足りない。
正直なところ、ザンブに勝つためには学校に行ってる場合じゃないんだけど、条件は向こうも同じだからね。サボろうもんなら、オーガに雷を落とされちゃうし。
レベル上げは必須だろう。肉体の強さは勝ちに直結するからだ。
僕のステータスがオークを超えていれば、スライムたちを守りながらだって戦える。
自分自身を戦略に組み込めるのが、テイマーのメリットなんだから。
そして、情報収集も大事なこと。
オークは体が大きく力が強い。厚い脂肪が厄介で、ちょっとやそっと斬りつけたって、大したダメージにはならない。
ゴーレムとまではいかないけれど、巨大な武器と盾を持たせてやれば、肉壁として非常に優秀なんだよね。オークって、なかなか評価が高いんだ。
でも、勝てないわけじゃない。サモナーにだって穴はある。
ザンブはサモナーになったばかり。わずか一週間では魔力が少ないから、そう何体も召喚できないだろう。必死にレベルを上げたとして、3体……多くても5体くらいか。
子供のお小遣いじゃお金だってかけてられないし、装備も用意できないはず。準備は僕の方が万全だと思う。
あとは、作戦か。
スラマルもコロゾーも頑張ってくれているけど、モンスターとしての格が違いすぎる。
こっちの方がレベルが高かろうとも、簡単に踏み潰されてしまうだろう。
超特化で、二倍のステータスを貰っている僕が前に出るしかない。二人はサポートに回らせるつもりだ。足止めや撹乱、視界を封じたりとかね。
このへんはおいおい詰めていこうか。
「カイトくん、何度私を無視したら気が済むのですか? 教科書の問題を解いてみろとさっきからずーっと言ってますよ? これは体罰ではありません。私の愛ですからね? じっくり味わいなさい」
……なんて授業中に考えてたら、また怒られてしまった。
先生の右手が僕の視界を封じ、親指と中指がこめかみにめり込む。
「痛たたたっ! ごめんなさい、授業に集中しますからああああぁ!」
じわじわと締め付けられる痛みに悲鳴を上げると、クラス中から笑い声が漏れる。
そういえば、決闘の立ち会いは先生がやってくれるらしい。
行き過ぎた試合にならないよう、勝敗が決したと判断したところで止めてくれると言っていた。
すぐ怒るし、ゲンコツは痛い。顔は怖いし、体はムキムキ。……でも、生徒のことを考えてくれるいい先生なんだよね。
僕は結構好きかも。今は授業を聞く余裕がなくて申し訳ないけれど。
学校にいる間、スライムたちは家でお留守番させている。
ママが置いていけって……ね?
可愛い可愛いって、離してくれなかったんだ。
二人にどうしたいか聞いてみたんだけど、僕に任せるって言うんだもん。
ご主人のいない間、ママ上はこのコロゾーが守ります……だとか、コロゾーも調子いいこと言うからなおさらだよ。
まあ、それを伝えたのは僕だし、従魔の感情は主人にしか分からないんだから僕が悪いのか。
ママが気に入ってくれてるなら、べつに不満はないんだけどさ。
……はぁ、僕の従魔なのになぁ。
学校の終わりを告げるチャイムとともに、猛ダッシュで家に帰る。
スラマルとコロゾーを連れて、いざ森へ。
今日は、スライム以外のモンスターとも戦ってみたい。少し奥まで行くことにした。
森の切れ間で空気が変わる。普段なら、ここまで来れば大冒険だ。
怖いくらいに濃密で、煙でも吸い込んでいるかのような。
「あれは……見つけたっ!」
幻想的な光景から一転、悪魔が姿を見せてもおかしくない邪悪な世界。
黒い鳥の羽根を思わせるカラス草の絨毯の上で、無防備に寝転がる一体のゴブリンが、スヤスヤと寝息を立てている。
いくらレベルが上がったとはいえ、スラマルとコロゾーだけでは負けてしまうかもしれない。
でも、僕ならやれるはず。
「スラマル、コロゾー、草むらに体を隠しながら、左右から挟み込める場所で待機だ。僕がゴブリンを起こすから、体当たりで急襲して」
"この一瞬で作戦を思いつくとは。カイト様は軍師になれるかもしれません"
"ご主人、やったりましょうぜ!"
二人から、了解の意思が伝わる。姿勢を低く、体を蛇のように細長くして、カラス草を掻き分けながら進んで行く。
音を立てずに移動できるスライムは、地形にはよるけれど、敵に気付かれずに近づくことができる。
準備ができたところで、戦闘開始だ。




