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「そろそろ帰ろうか。パパとママに、君たちを紹介しないとね。お利口さんにできるかな?」
大切な従魔を地面に降ろして話しかける。
伝わっているのか分からなくても、自分の考えや思いを共有することで、絆が深まっていくと本にも書いてあった。
茜色の空に黒紫が差し込んで、夜を知らせるグラデーションが作られていく。
"楽しい時間というのは、あっという間に終わってしまうのですね。もう少し戦いたかったというのが本音ですが"
スラマルは、へにゃりと溶けるように体を広げて、不満を漏らす。
まるで散歩から帰りたくないと駄々をこねる子犬みたいだ。
「ふふっ、強くなれたのが嬉しかったのか。でもね、夜の森は危険なんだ。続きはまた明日、分かってくれるよね?」
スラマルは僕に歯向かっているわけじゃない。
今日だけで信頼関係が密になり、心の繋がりが強くなったから素直な気持ちを伝えてくれているだけ。
この子は、ちょっとわがままを言ったくらいじゃ僕が怒らないと知っているんだ。
"はいっ、カイト様! もっともっと強くなって、大活躍してみせますから!"
スラマルったら飛び跳ねちゃって。明日をすごく楽しみにしているみたい。
"任せて下さい。このコロゾー、ご主人のご両親に完璧な挨拶をしてみせますぜ!"
コロゾーは、上役に敬礼する警備隊員みたいにビシッと体を伸ばす。
コロゾーから、僕に対する信頼の気持ちが伝わってくる。
「大丈夫だよコロゾー、僕の家族に気を遣う必要なんてないんだ。君たちだって、もう家族なんだから」
スラマルもコロゾーも素直な子たちだ。
僕の言う通りにしていれば間違いない。信じているから、ひたすらについていきますとアピールしてるようなもの。
「よーし、大急ぎだ!」
とっても可愛い二体の従魔を抱きかかえ、全速力で家へと向かう。
大地を蹴ると、いつも以上に体が宙に浮く。自分のものとは思えないくらいに軽い。
一歩がとても大きくて、ぐんぐん加速する。夜に溶け込んで、風になったみたいだ。
実際はそこまで速くないけれど、テイマーになる前の僕じゃ考えられないスピードで走れている。それに、全然疲れない。
あっという間に着いてしまった。
「ただいまー! 見て見て、テイムできたよ!」
家に入ると、もうご飯の匂いが漂っている。
早くパパとママに僕の友達を紹介したい。僕の相棒たちを。
「あら、すごいじゃない。カイトはテイマーの才能があるのね?」
「おいおい、褒めすぎだろ。まだスタートラインに立っただけだ。でもまあ……いい顔してるぜ?」
従魔たちから、緊張が伝わってくる。
森では元気一杯だったのに、今じゃ借りてきた猫みたいに大人しい。
床に降ろして、早速ご挨拶だ。
安心して、僕がついてるからね。
「こっちがスラマル。僕が初めてテイムしたスライムだよ!」
スラマルが体を伸ばしてくの字に曲げた。
一流レストランのボーイも顔負けの素晴らしいお辞儀だ。
「そして、こっちがコロゾー」
コロゾーもまた、同じように体を折った。……スラマルよりも少しだけ深く。
先輩よりもよく見られたいのかな?
パパもママも、ぽかんと口を開けて驚いている。そりゃそうさ、実は事前に練習してたんだから。
天才なのは、僕じゃなくてスラマルたちのほうかもね。
ドッキリ大成功だ。
「……なんだこりゃ? おかしいぞ、いったいどんな手品を使いやがった。テイムしたばかりのモンスターに、そんな動きができるはずねえよ」
「スラちゃんにコロちゃん、よろしくね。ママもこんなに頭がいいスライムは初めて見たわ。さっ、ご飯にしましょうか」
夕飯を食べながら、今日あったことを報告した。
普段はあまり僕を褒めないパパが、スラマルとコロゾーに興味津々で、あれこれ聞いてきてくれるのが嬉しい。
多分、僕に自信を持たせようとしてくれてるんだろう。
従魔と一緒にお風呂に入り、3人で勉強してから、ベッドに潜り込む。
僕たちは、家族になったんだ。




