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魔法魔術と暗器十字  作者: 珠扇 キリン
第1部 魔法魔術師と幽霊少女
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第二譚 暗器十字と死霊術

幽霊少女は言い放つ…──「貴方に復讐を手伝ってほしいんです!」

 俺の思考は数秒停止した…──目の前の美少女の口から出た『復讐』という言葉はあまりにも似つかわしくなくて…その笑顔から恩讐の念は感じられないのに、それは彼女の幽霊という存在相応の望みだった。


「私は誰かに殺されたんです、その復讐を手伝ってほしいんです!」


 いや、この幽霊…思いの他えげつない願いかましてきた!?…俺のが荷解きと嫁探しで、幽夢ゆむの頼みが自分を殺した奴への復讐って…等価交換になってない。


「…無理だよ!何だよ、復讐ってさ!」


「何でですか遥架く〜ん!さっき何でもしてくれるって言ったじゃないですかぁ〜!」


「な・ん・で・も、とは言ってない!…俺に出来る事ならとは言ったけど…!」


「何が不満なんですか!?…こんな美少女幽霊がお願いしてるっていうのに!」


「人殺しに加担しろ、って事だろ!?普通は嫌に決まってる!」


「でも、向こうも殺人鬼ですよ!殺されても仕方ないとは思いません!?」


 いや、言われてみれば…そうかも知れないが、俺が殺人の片棒を担ぐ事にもなる訳で…死んでる幽夢と違って俺は罪に問われるからな。


「考えてもみて下さいよ…私、まだ当時は14歳だったんですよ?…高校も楽しみだったのに殺されて…私の青春は奪われたんです!」


 そう言われると、何か断り辛いなぁ…これから俺も高校生活を始める訳で、何か当て付けみたいになるしなぁ…それに、こんな悲しそうな顔されたらなぁ。


「ん〜、ああー!…分かった、手伝うよ」


「…遥架くん、良いんですか?」


「だが!…俺は()()()()!…手伝うだけで、復讐の相手を殺すのは幽夢だからな!」


「分かってます、復讐は自分の手でやってこそ意味があるんです」


 そう、俺は復讐の相手探しにだけ協力するだけだ。それでも復讐を手伝った事になるだろう…あれ?これも殺人に加担した事になるのか?…


「いやぁ、遥架くんが協力してくれるって言ってくれて、安心したらお腹が減りましたね〜!」


「は?…幽霊なのにお腹空くの?」


「当たり前じゃないですか、幽霊も元々人間なんですよ!」


「でも、今なんも無いし…買いに行くにしても、幽夢って地縛霊とかじゃないの?」


「確かに私はこのマンションから離れられませんけど…遥架くんに取り憑いてるんで問題無いのです!」


「そうか、なら問題無い…──訳無い!何で俺に無許可で取り憑いちゃってんの!?日常生活に影響とか無いよね!?」


「多分、支障は殆んど無いかと思うんですけど…少し肩が重くなる、とか?…」


「嫌だ!何かヤダ!…えっ?何とかならない!?」


「それは不可能です、私も外に行きたい!私、死んでからずっ~と!マンションの外をグルグルするしか出来なかったんですよ!?」


「…まあ、こうなったら日用品を買うのにも付き合ってもらうからな?」


「はーい!遥架くん、幽霊の幽夢にお任せ下さい!」


 そして俺達は近くのデパートに日用品を買うためにやって来ていた。何か幽霊とは言え、女の子とお出かけなんてデートみたいだ…


「幽夢って本当に幽霊なんだな…」


「どうしたんですか?藪から幽霊に」


「藪から幽霊…それ怖いな。いや、足元とか透けて浮いてるし、本当に周りから見えてないみたいだしさ」


 …なんなら来る時に何回もぶつかった電信柱、貫通して通り抜けてたしな。少し試しにデパートの自動ドアが開くか、後ろで待っていたら普通に開いて店員さんが驚いていた。


 幽夢はこんなに可愛いくてお喋りでも、やっぱり幽霊で…復讐という未練で存在してるんだよな…幽夢は、自分が幽霊になってしまったのを、どう感じているのだろう。


「ですね…でも、やっぱり誰からも気付いてもらえないのは寂しいですよ。空とか飛べたりするのは憧れてたので嬉しいですけど…アハハ」


 そんな風に笑って何かを誤魔化す彼女は弱々しくて…幽夢が復讐という血塗られた道を歩まないで済む様に、自分に何か出来る事が無いかと考えてしまいそうになる。


「…そういや幽夢は、復讐する相手の顔って覚えてるのか?」


「いいえ、残念ながら…幽霊になったせいなのか、死んだショックでなのか、私にはその時の記憶が無くて…」


「でも、それじゃあ探せないんじゃ…」


「だから、遥架くんにも手伝ってもらいたいんです!」


 …とは言われても、顔も名前も分からない復讐相手をどうやって探せば良いんだ?捜査系の魔術どころか、基本的な魔術も使えない俺みたいな落ちこぼれに…


 取り敢えず、それは後で考えるとして…何か周りの人がめっちゃこっちに視線を向けている。そうか…周りからは幽夢は見えないから、はたから見たら独り言を言いながら店内を彷徨く不審者じゃねぇか…!


「…幽夢、めちゃくちゃ見られてるから暫く話せない」


「えっ?何でですか!?…あれ!?無視ですか!?」


 …俺が元々住んでいた町には魔法も魔術も無かった。退屈な日常で…俺みたいな才能の無い奴も五万と居た。毎日の様に家と学校を往復する日々…灰色だった。


 でも友達もいたし、授業にだって厳しいなりには着いていけていたと思う…運動もからっきしって訳じゃなかった。そんな灰色で安心安全な国にも、キラキラと輝く奴らは居て、俺に出来ない事を平然とやってのけた。


 俺も何かが欲しい…才能とか()()()()とかじゃなく、自分にしか出来ない目的が…そう思って今、ここに居る。


「さて、必要な物も全部買えたし…そろそろ飯にするか」


「待ってましたぁ!ごはん、ごはん!…」


「何かリクエストは…──えっ?」


 その異変に気付いたのは、幽夢と二人でデパートから出たところだった。それは見て分かる異常事態…賑やかだった背後の喧騒すら全てがパタリと無音になった。


「人が…消えた?…」


 普通の人間なら、この不可解な現象に検討も付かない筈だろう。しかし、俺は魔術が使えなくとも魔術師の家系で育ての親も似た様な仕事をしていた。ああ、だから分かる…一度だけ似た様な術を見た事がある。


「遥架くん、何か壁に煙の出る鉄筒みたいな物が…」


「人払いだ…いや、人避けの魔術とも言って…そして、俺達が此処に居るって事は…──」


 そう、これを仕掛けた奴の標的は…紛れもなく俺達だ。そう頭で理解すると同時に視界内に紫色の魔法陣が複数出現して…そこから四足歩行の白骨化した獣が現れる。


「召喚獣?…いや、これは死霊術か…」


 正直、冷静に分析はしているものの…めちゃくちゃ焦っている。何故、俺達…いや、俺が狙われたのか?…は後で考えれば良い。問題はまさか、こんなに早く実戦なんて…でも、やるしかないか。


「あわわ!あの…遥架くん、私はどうすれば…」


「一昔のラブコメのヒロインかよ…幽夢は良いから下がってて…」


 俺は懐に仕舞っていた暗器十字を右手に握り締める。落ち着け、一応だが戦闘訓練くらいは学んだろう。俺ならやれる…魔術を使えない、落ちこぼれでも…俺は魔術師なんだ。


「暗器の十字架…──その真価を限定解放、認識した術式を打ち砕け!」


第2話 暗器十字と死霊術.END。

突如、出現した骸の怪物…いったいこの町で、何が起こっているんだ?…──しかし、その時、彼の持つ十字架が光り輝く!

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