七話 「謁見・家出・家督」
入学式。意外と人の多さに驚いている健一とオドオドとするエルザ。
保護者としてクレアが付き添う。父アルベルトは会いたくない奴と
出会うかもしれないと式の参加を拒否した。相変わらず我儘な奴だ
替わりにこれを持って行ってくれとクレアに一枚の写真を手渡した事を
健一は知らない。
「でわ、後でね」
来賓席に向うクレアと分かれた健一とエルザ。流れが読めない2人は
人混みに飲み込まれた。
「ドン」
「…貴様!私にブツかって置いて侘びも無しとはどうゆう了見だ」
「あっ…ん~、ゴメンね!」
「そ、それだけか!無礼な!私を誰だと思っている」
「知らない。それより急いでるんだ。悪いね!」
「ふ、ふざけるな!」
「そうだ!お前。見た所同じ新入生の様だが、知らん顔だな。貴様は何者だ。
この方はハース伯爵家のご嫡男ノルベルト様だぞ!」
取り巻きの一人が捲し立てるのでエルザがビビって健一の袖を掴んできた
「健一様…」
「何者って…俺は健一。ん~爵位は無いかな?ってか、ぶつかって悪かったよ。
それより君達も新入生なんだろ!?急がないと式に遅れるぞ」
「式に遅れるのは私も意に反する。だが貴様の非礼をこのままには出きん。
そうだな…跪け。そうすれば、今回の件不問に致そう」
「おいおい!肩がチラッて当たっただけで、そこまで言って来るか?
貴族ってのはチンピラや不良学生と同じなんだな。悪いがブツかったのは
お互い様だ。侘びはしたけど、それ以上求めるなら、俺も黙ってないぜぇ」
「ふっ!お前馬鹿か?そっちは女と2人!コッチは5人だぞ勝てると
思ってるのか?」
「あー…解んねぇ!だけど、勝負は時の運って言うしな。
それに戦うのは俺独りだ」
健一の言葉に呆れる貴族の坊ちゃん達。しかし彼の態度が坊ちゃん達を
気後れさせる。いつの間にか彼等の争いに巻き込まれたくないと
自然に隙間が広がりだす。
「君達何をしてるんだ。列が乱れるじゃないか!運営を任されているのは
僕等二年生達だぞ。我々の手を煩わせる新入生は誰だ?」
騒ぎを聞きつけ表れたのは二年生代表コンラッドである。
「公爵家ご嫡男コンラッド様!」
流石、公爵家の後取り息子。顔は十分に売れているコンラッドの登場で
貴族の坊ちゃま方と周辺の輩が恐縮している。
「君か健一。いい加減にしたまえ」
コンラッドの怒りを買ったと思う周囲の小僧達。特に絡んできた坊ちゃん達は
追い討ちを掛けて来る
「この不埒物が私共に因縁を吹っかけて来たのです。
どうか入学の取り止めを願います」
「そうなの?」
「う~ん…どうだろう?学校に行かないで良いんなら
ソッチが俺的には嬉しいんだけどな」
「祖父様の手前それは無理じゃない?」
「っじゃ~学校に行けないのは無し。俺借り有るし」
「えっと君は確か…」
「ハッ!ハース家嫡男ノルベルトと申します。是非お見知りおきを」
「ノルベルト君?。悪いんだけど僕の従兄弟なんだ。
矛を収めてくれるかな式も始まる頃だし」
「ハッ!コンラッド様のお言葉であれば…えっ?従兄弟?」
「うん。離縁してたけど最近父君と帰ってきたばかりなんだ。
近々陛下のお許しを持って正式に復縁するんだよ」
「「えぇ」コンラッド?そうなん?」
驚いている小僧達を余所に2人の会話が進む
「あれ?クレア姉様から聞いてない。今日の午後陛下とアルベルト叔父様が
会談する席で許されるって話だって、父君から聞いてるけど!?」
「えぇ~それって俺とオヤジが貴族になるの?面倒だな」
「陛下のお言葉なら従うしかないさ。問題は公爵か侯爵のどっちだろうね?」
「コラ!そこ。イツまで列を乱す。コンラッド卿が正しに向ったのでは
無いのか?」
「ヤバイ!上級生だ。良いね!君達式を終えるまで大人しくしてくれ。
その後は眼を瞑ろう解ったね」
そう言ってコンラッドは慌てて乱れた列を整える。小僧達が言葉に詰まっている。
「じゃ~そう言う事で式が終わったらこの建物の裏に集まろうか」
健一は捨て台詞を残してエルザと共に並ぶべき列へ消えていく。残された坊ちゃま方は困っしまった。
「ノルベルト様どうなさいます?」
「う・うるさい!大体騒ぎを広げたのは貴様ではないか!わ・私は知らん」
ノルベルトは取り巻きの一人を指差し彼をスケープゴートに利用した。
『…であるからにして、今日この場に…今後の成長に期待する』
学校長の挨拶が終わり式は無事終了。途中来賓挨拶で公爵が壇上に立って
驚いた健一だが、コンラッドのお蔭で乱闘騒ぎに成らなくて良かったと
本気で安堵している。
『…の通りクラス分けが掲示している。それに従って教室に向うように!』
健一とエルザは揃ってAクラスだ。2人には現在爵位も家柄も特に無い。
入試試験も無かったからこのクラス分けに深い意味は無かった。ただ2人の他に
ノルベルトと取り巻きの一派全員と其れ等の数を上回る人員総勢40人が一つに
纏められていた。
ドヤ顔で教室に入ってくるノルベルトとその一派。周囲の生徒は、どうやら
彼の家より爵位が低いか民間人だ。厄介な奴が居たと怪訝な表情を浮かべる。
其処へ遅れて健一とエルザが滑り込む
「Aクラスここだ。エルザ遅れるな!」
駆け込む2人に周囲の生徒の眼が点になる。流石の健一もクラスの殆どが
自分に眼を向けられているのが解ると気まずそうな態度を取った。
「あ~…俺健一、コッチはエルザ。2人揃ってヨロシク~」
「さっきの!うん。解りやすくて良いな。じゃコレが終わったらって事で」
折角スケープゴートを用意したのに健一の方はしっかりとノルベルトに照準を
合わせていた。コレでは彼は逃げられない。
「さ・さっきの事だ…事ですが、私も式を前に心高ぶって居たようです。
仰っていた様に、アレは事故の様な物。学び舎が同じになったのも
何かのご縁。遺恨を残すもの私の本意では有りません」
「…意味がイマイチ解んないけど、それってサッキの無し?って事かな?」
「そ・そうです!ナシ!無しであります」
どうやら両者の間で和解が成立。周囲の目には明らかに誰が上位か理解できた。
健一が何者か不明ではあるが、取りあえずノルベルト達より害は無いだろうと、
判断した他の生徒達はやっと安堵して席に座ったのだ。
其処へ一人の男性が静まった教室に入ってくる。
「え~私が皆さんのクラスを受け持つロバート・カーです。初等部から
上がって来た者なら既に理解していると思うが、生徒の中には我々教師より
爵位の高い産まれの者が居るが此処では、それは通用しない。年功序列・
実力主義が最も重要視される。我が学校は『心・儀・体』の三つを柱を基本に
君達を教育していく。しっかり学んでくれ。それでは、君達の指導に当たる
上級生を紹介しよう!入ってくれ」
ロバート気先生の合図で教室に入ってきたのは2年A組の生徒達だ。教師の数が
少なく寮生活でも無いこの学校では、兄弟学級と称して上級生が下級生の世話と
指導を行なっていく。これは後々騎士団へ入団した際の縦社会を学ぶ事と
連携を強める為とされている。二年生代表が挨拶を始めた
「諸君入学おめでとう。私の名はコンラッドである。先程ロバート先生も
お話されたが、家柄はこの場では不要である。だから、
私は2年A組のコンラッドと呼んでくれ。
この学校は制度と名前が変わって8年になる。以前の王立学校から
数えれば百年以上続く歴史ある学び舎だ。多くの先人・先輩方の中に君らの
知る著名な騎士殿も多く居る是非長い歴史の中で君らもその中に刻まれる様
精進して欲しい。 以上」
ロバート先生がコンラッドの一語一句に頷いている。そして何かを
忘れていた事に気付くが、後の祭りだ。バツの悪そうな表情を浮かべながら
畏まっている新入生の顔を見比べて健一と視線を合わせた。
「すまん。段取りを間違えた。本来なら顔合わせの前にクラス代表を
決めるのだが、悪い。…取りあえず、君!え~っとケンイチ君。
代表してお礼の返事を上級生に返してくれ」
指を指され指名されたのは健一だ。コンラッドの登場に臆する事のない態度が
ロバートの目に留まったようだ。視線が重なった時から嫌な予感はしていた。
だが、正直この世界をイマイチ把握して居ない
健一が上手く返礼できるだろうか?心配するエルザ。面白がるコンラッド。
当惑した健一である。
「えぇ~御指名を受けましたので、恐縮ですが私からお礼の言葉として返礼を
申し上げます。若輩者である私達ですが、古い歴史に奢らず
持って産まれた家系を飾らず己を力で心・儀・体を鍛え上げ立派な成人を
迎える努力に励みます。ご指導・ご鞭撻何卒ヨロシクお願い致します」
コンラッドが内心ホォ~っと感心した。何の事は無い。
万一にと昨晩クレアが健一に用意していた挨拶文に即興で健一流に
アレンジしたものだ。だが、そんな事は他者には判らない。言葉の端々に
上級生はカチンと来る言葉が含まれていたが、大凡受け入れられた返礼である。
気を良くしたロバートの暴走で、なし崩しでそのまま健一がクラス代表へと
認証されたのだ。
一方クレアの家に一人の使いが訪れた
「アルベルト様。城から使いのものが御出でに成りました。
至急登城せよと勅命です」
人払いをして謁見の間に居るのは壇上の席に座る王フェルナンドと
方膝を付くアルベルトの二人だ。
「御懐かしゅう御座います陛下」
「この場には2人か居らぬ。その言葉使いは辞めて頂けますかアルベルトさん」
「ですが…解りました」
「公爵殿より聞きました。秋穂殿の事お悔やみ申し上げます」
「ありがとう。アイツもあの世で頭を下げている事だと思うよ」
「何を言います。二人には感謝すれども頭を下げて貰う事など有りませんよ」
「だけど…うん。解った」
「お子さんを伴って来たそうですね」
「あぁ今日騎士学校で入学式だ。卒業したら雇ってくれ」
「アルベルトさんは、どうなさるのですか?」
「アイツはクレアに預けて落ち着けば、何処かに旅へ出ようと思っている」
「なっ!」
「いやいや。そうさせてくれ。家を出て家督を弟に譲った俺がノウノウと
此処に居ても仕方の無い事。それに秋穂のやり残した事もある。
だから俺は冒険者に戻って旅をする。心残りは息子の健一だが
入学が決まった今肩の荷が一つ降りた所だ。旅立つには機会が良い」
「でわ、公爵殿と和解は出来ないのですか?」
「母が死んだ時に俺との縁は切れた。それでも健一の事で借りは在るが、
それは本人に払わせる。秋穂生きてれば、間を取り持ったかもしれんが
…元々俺はこんな性格だ。日本で自由を知った今更、貴族には戻れんよ」
「困りましたね。私は先輩に戻って欲しいと願っているんですが」
「…だったら、クレアも、いずれ何処かに嫁入りするだろう。
そうなれば今居る家が空き家になる。一度は手放した家だが、
存在すると解った以上名残惜しい。秋穂が気に入っていた家だからな
出来るなら、公爵家とは違う爵位を息子健一に与えてくれ。
そうなればアイツが家を継げるだろう」
「それは構いませんが…直ぐに旅立つのですか?」
「早ければ早い方が良いと思っている」
「いつか、また戻ってきますよね?」
「解らん。アイツの想いは壮大だからな。夢半ばに何処かで行き倒れ
になるかもしれんさ。
そうそう。秋穂から手紙を預かっている。コッチでも流用できそうな
事柄を纏めてあるらしい。10年住んだが、確かにあそこは便利な国だ。
問題も多々有ったが、お前ならキッと良い所取りの結果を
生んでくれると思ってるよ」
「解りました。学者達に検討させましょう。大事に使わせてもらいます」
「…もう帰って良いか?」
「フッ!相変わらずですね。でも変ってないんでホッとします」
「…お前は板に付いたな…正直こんな話し方でチビリそうだぜぇ」
短くも秘密の会談が幕を閉じる。この2人の会話は歴史の記録にも残らない。
ただ。晩年になってフェルナンド王が齎した数々の開発や改革に
2人の異邦人が齎した知恵だと言う説が挙がるが、ソレを示す手立ては無く、
仮説として長く歴史の謎の一つとされていく。
入学式早々色々と在ったが、どうにか家に帰り着いた健一とエルザである。
既にクレアは戻っていたが、少し暗い顔をしている。
飲んだくれの親父の姿は無い。
「お疲れ様健一さん。初日は如何でしたか?」
「ただいまです。正直疲れましたね。担任のロバート先生が
結構いい加減でクラス代表を押し付けられました」
「まぁ~それは大役ですね精進為さって下さい」
「オヤジは?」
「その前にお疲れの所悪いんだけど、このまま私と城に向います」
なし崩しで有無を言わさずクレアに従っていく健一とエルザである。
訳も判らず城に入る健一とクレア気が付けば、重々しい只住まいの部屋に
通された。既に公爵が壇上の若い男性と話をしている所だ。係りの者が
クレアの登城を告げると2人は何事も無かった様に離れる。
若い男性は壇上の席に公爵はその横で立っている。
クレアが床に方膝を付いて頭を垂れた
慌てて健一とエルザがクレアに習って同じ姿勢を取った。
「クレア・ベルロット命に従い
健一ベルロット・エルザの両名を連れて参りました」
「ご苦労クレア」
「健一・ベルロット」「余フェルナンドの名を持って
そちの父アルベルト・ベルロットに侯爵の地位を授ける」
オヤジの件で何故俺が頭を下げるんだと不思議に思う健一である。
「また、余の命によりアルベルト侯爵は諸侯漫遊の任を与えた。
よって父アルベルト侯爵の地位を
息子である卿に授けるものである。但し卿は今だ成人の儀を済ませては居らぬ
よって、ブルクハルト侯爵をそちの後見人に定める 以上である」
「えっ?」
言葉の意味を理解できないで居た?諸侯漫遊って?後見人?
固まっていた健一が思わず顔を上げた
「陛下の御前である頭が高い」
公爵のカミナリみたいな怒鳴り声が響き首を引っ込め頭を垂れる健一
「よい!健一面を上げよ」
迷う健一はどうしたら良いか戸惑っている。するとクレアが小さな声で頭を
上げるよう言ってきた。
恐る恐る顔を上げる健一。気が付けば王は壇上を降り健一の目の前に立っている。
腰を下ろし健一と視線を交わす王フェルナンド
「うん。君は秋穂殿の面影が強いな…先輩を…父君は君を捨てたのでは無いぞ。
秋穂殿の約束を叶える為、独りで旅立たれたのだ。何れ帰ってくる。
ソレまでに立派な成長を成し遂げろ。俺との約束だ。良いな」
「ハ・ハイ…」
「両親に恥じぬ様精進します」
「うむ。良い返事だ」
そう言って王は元の席に戻って行った。
「これにて相続の儀を終える。尚父アルベルト侯爵より新たな家名として
ミュラーの名が挙がっておる。新たに名を挙げるか、後で後見人へ書面で
通達せよ 以上解散」
文官や立会人が散開する中、公爵が深々と王に頭を下げて彼の方に
手を差し伸べる王の姿を見詰る
あの話し方は母秋穂を知っていて父アルベルトの仲が深い事を告げていた。
今更ながら両親の事を知らないで居たと思う健一である。父が姿を消した事を
寂しくは思って居なかった
あの日、此処へ帰ると言った時、俺が残ると言えば一人で帰っただろうと
思っていた。
そんな事を考えている内にいつの間にかクレア邸に帰っている。
するといつもの様にドタドタと足音が聞こえてくる。
「ゴメン!勝手に失礼する」
『セザール様!幾ら貴方様でも非礼ですぞ!少し落ち着かれなさいませ。』
『すまん、だが!確かめずには…』
「クレア様申し訳「クレア殿誠か!アヤツはまた居なくなったか!」」
執事のヨハンがセザールを押え切れず雪崩込む様に2人がリビングに
やって来る。頭を抱えるクレア手で解ったと合図を送りヨハンは奥へ引き下がる。
肩で息を切らし眼が釣りあがっている放蕩者の父の古い友人は
怒りを顕わにしていた。
「先程、私も知りまして今健一さんと共に城から戻ったばかりです」
「して、アヤツが居なくなったのは誠なのですか?」
「ええ、既に港から船に乗ったと聞き及んでおります」
「まったく奴は何を考えて居るのだ!」
「何を考えておるかは御主もだ!」
その声に一同が驚く。雅かブルクハルト公爵がこの場に付いて来てると
誰も思って居なかったのだ
(いやいや視界に入らないオヤジではないでしょ)
「陛下と謁見後直ぐに発ったと聞いておる全く10年経っても
何も変っては居らん。お前もだセザール伯。家を継いで3年も経つ
と言うのに少しは落ち着きを持て!」
「…面目御座いません」
「さて、健一よ御主は成人の儀を迎えるまでワシの管轄化にある。
本来であればワシの屋敷で過すのが常じゃが如何致す?」
「クレア姉様がお許しになるのでしたら、このままご厄介に成りたいと
思うのですが」
「うむ。してクレアは如何に?」
「私は元よりそのツモリで迎え入れております」
「うむ。でわ、そのまま住むが良い。いずれクレアがどこぞの伯爵家に
嫁げば此処は空き家となる。そうなれば、この家の相続を健一に
譲らせて欲しいとアヤツが陛下に嘆願したらしいからの。
そのまま住むのも良かろう」
公爵の言葉にクレアとセザールが顔を赤らめ固まってしまう。
ソレを横目で健一とエルザが見詰ている
(あぁ~何気に親公認なんだ。後はビビってるセザールさん次第って事か)
と内心で驚きと涙を流す若者2人。正に大人の恋とは不思議なものだと
考えさせられた。
「ときに娘よ」
公爵から名指しされて驚くエルザ。思わず背筋をピンッと伸ばして『ハイっ!』
と返事をした
「お前の処遇はまだ決まって居なかったな」
「セザールお前は2人の訓練を見ていたと聞く。この娘の剣の腕はどうだ?」
「はっ!十分に通用します。特にカンと言いましょうか、殺気を読み解く力が
高いと思えます」
「そうか。…でわ!下知を申す。健一と共に騎士学校を無事卒業し
健一が成人の儀を迎えた暁には、奴隷の身を解き、正式に従者とせよ!
尚その際に陛下から準騎士の爵位を与えられるであろう
それまで、しっかりと精進せよ。良いな」
「ハ・ハイ!在り難き幸せでございます」
「礼は陛下と放蕩者に申せ。ワシは陛下のお言葉を伝えたまでじゃ」
そう言うと公爵は健一の方に視線を向け語りだす。
「…許せ。ワシとアヤツは、アヤツの母を死なせてから深い溝を作った。
それはお前の母秋穂でも埋められる事は叶わなんだ。
どちらも意地っ張りゆえ…仕方が無い。だが、お前は秋穂の血が
混じっておる。放蕩者の真似をするで無く立派に家名を立てろ。良いな」
そう言い残し彼はクレア邸を去ろうとした。
「あの~オヤジが残した『ミュラー』にはどんな意味があるのですか?」
「その名は秋穂。お前の母が使ってた名じゃ!
但しアヤツには爵位が無かったから、只の飾りだが御主が、
その名を告げば…歴史のその名が残る事も在ろう」
そう言って祖父ブルクハルト公爵は自分の馬車で帰っていった。
「へぇ~母さんが使ってた家名か…」
七話 「謁見・家出・家督」 完
楽しんでもらえましたか?




