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六話  「古巣・思い出・解放」

健一は急いで待たしてある馬車に乗り込んだ。目頭を少し湿らせた健一を乗せ

馬車は進む。クレアはそっと微笑んでアルベルトは窓の外を眺めている。

馬車は来た道を戻っていく


クレアの邸。元父アルベルトと母秋穂が暮らした家は城を中心に見ると公爵家

とは反対の位置にある。王都は城を中心に螺旋階段の様な形で緩やかな段差を

用いて成り立っている。中心に王の城が在り、螺旋の上層部から下へ階級ごとの

家が立ち並ぶ。西と東に内門を構え同格の貴族が屋敷を構えていた

内門は階級ごとに仕切りとなっている第一門は王宮。第二門は大貴族。

第三門は貴族。第四門は豪族。第五門は平民。

そして民の為の市場が一番外の外壁に沿った外輪に立ち並ぶ。それから南北に

外へ繋がる外路門が備わっていた。公爵家が西側の第二門最深の位置で

クレア邸は東側第二門中心に建てられていた。つまり父アルベルトは東の大貴族

の地位だったのかと健一は思った。


「いえそれは違うわ。兄様と姉様が此処に居た頃は公爵家の跡取りよ。

 つまり今朝貴方が居た所が自宅だったの。その後家を飛び出したんだけど、

陛下が王都から出る事を許さなかった。

その代わりに自分の家を持つように厳命して東のこの位置に陛下の命で

建てられたの。本来なら爵位の無い兄様は第五門に…

いえ許されたのなら王都に家は建って無かったでしょうね。

ふふっ。今は私が住んでいるから、あの時の陛下の厳命に助かってるわ」


判ったような判らない健一である。何故王様はオヤジにそこまで

拘ったのだろう?と健一は思う。

そう考えながら馬車は半時もしないで到着した。今度は本当に間借りする家

と判っているので、健一は気楽に馬車から降りる。

何より母親が住んでいたと聞けば少しは落ち着いていられるからだ。

クレアに続いて屋敷の扉に向う。


「「おかえりなさいませ」」


そうですよね。クレア姉様も立派な公爵家のご息女だもん。

メイドやら執事さんも居ますよね。


「旦那様」

一人掛け声が違う。思わず視線を向ける健一と、その声の主を見て驚く

アルベルトであった。


「ジョセフ?」

「御懐かしゅう御座います」

「クレアこれは?」

「私が住むと決まってから皆に声を掛けましたのよ。

 この10年で寂しくはなりましたけど」


父アルベルトが声を掛けた老人はジョセフ。当時オヤジ達が住んでいた頃は

白髪は少なかっただろう役職は中堅執事だったか?今では筆頭執事として

家の中の全てを仕切る立場らしい。

他には現主がクレアな為執事の数よりメイドの数が圧倒的だ。

歳もクレアに近い者から健一達に近い者まで居る。

…正直このメンツなら健一は公爵家の方が暮らし易かったかもしれない。

別れ際、コンラッドが代われる者なら代わりたいな!と言った言葉の意味を

此処で知ることになった。


クレアの家には複数の給仕が揃っている。筆頭執事のジョセフさんを始め、

他に執事にヨハン。メイド長にビアンカ。メイドにカミラとシエラそして

ミランダ。料理人にセドリック護衛としてアヒムとクラウスそれに

御者にフランク氏の合計10人だ。立場上アルベルトと健一とエルザは

賓客として最低三年の滞在となる。エルザは奴隷の身ですからと賓客待遇を

辞退させてくれと申し出るが、健一の従者となれば、そう言う訳にはいかない

とクレアが言い、ジョセフ氏が代案として部屋は彼等と同じ給仕の館とし、

待遇は健一達と同じに行なうで一応の形に落ち着かせた。

クレア邸はこの世界と同じく電気・ガス・水道は通って居ない。

それでも母秋穂が設計の段階から携っていたので、何かと便利らしく

給仕人がこの数で収まっているのだとクレアが話してくれた。


因みにアルベルトは俺達が住んでた頃は、この半分だったぞと豪語するが、

そこは庶民派の秋穂と貴族育ちのクレアの違いと云う事だろう。


「秋穂姉様のお部屋は私の主寝室に使ってるの

 兄様・健一さんそう言う事ですみません」

「いえいえに気にしないで下さい」

「そうだ。此処はお前の家なのだ」

「「寝れるスペースさえあれば」」

父と息子の声がハモる。「ハァ~まったく」

この親子は、と肩を落とすクレアである。


「お2人はそれぞれ客間を使って貰いますね」

「そうそう健一さんとエルザさん制服が届いている筈です。

 袖を通して見て下さい」


ブレザーに長ズボンと膝丈のスカートだ。胸元には校章をあしらった

ワッペンが付いている。日本の何処かの制服っぽい。


「素敵ですね!可愛いです」

「うへぇ~まるで、私立の制服じゃん」

真っ向に分かれた意見である。2人の姿を確認したクレア


「うん。お2人とも似合ってるわ。長さも手直しは必要なさそうね」

「オヤジなんで、コレ日本の制服に似てるんだ?」

「俺は知らん。俺の時には征服等無かったんだからな」

「秋穂姉様の意見ですよ。姉様が書いていた絵を私が提案したんですのよ」

アルベルトも健一も(余計な事を。と思うが)無言になった。

「他にも秋穂姉様のお蔭で色々と生活が楽になりましたのよ。

手押し式のポンプとかお風呂もそうよ。後、馬車の乗り心地もですわ。

アチラの知識を色々と残して下さったお蔭で変わりましたわ」

「あぁ~ついでにTVやゲームも残してくれれば、良かったのにな…」

電気が無いのに無理な話である。言いそびれているが、

他に新聞や牛乳配達も秋穂の知恵であった。


「明後日から学校ですが、健一さん。武道だけで無く魔法の方は宜しくて?」

「あぁ~そっちはからっきしダメです」

健一の言葉に驚きを示すクレア


「兄様!どう言う事です?秋穂姉様のお子だのに健一さん魔力が無いのですか」

「あぁ~忘れてた。いや在るよ!ただアッチで魔法が暴走しない様に

 封印してたんだ」

「心配させないで下さい。学校は直ぐなんです。封印を直ぐに解いて下さい」


この世界魔法は普通に存在するが、全く魔力を持たない者を多く居る。

特に問題と成る訳では無い。ただ、健一は秋穂とアルベルトの子供だ。

その彼が魔法を使えないとは思って居ないのだ。

それだけ健一の母秋穂は、この世界でも有数の魔力持ちだったと言える。


庭先で健一の魔力解放を始めるアルベルト。この国で魔力持ちを態々封印する

様な事はしない。だから、その封印を解く等、見た事も聞いた事も無く、

屋敷に携る者達は直ぐに様子を見物しようと集まってきた。


「そんじゃ行くぞぉ」

「あいよ」

まったく緊張感の欠ける親子である。皆が見守る中、儀式が始まる。呪文を

唱えるアルベルト屋敷の真上に雲が沸き風が健一を中止に渦枠。


『ピカッ!・ドドン』


小さな雷が落ち地響きが起こる

何事かと近所の人が飛び出してきた。慌てるクレア。周囲から集まってきた

人垣に詫びを入れる


「もう!兄様。こうなるなら始めっから教えて下さい。

 耳から火が出る程恥を掻きますわ」

「いや~スマン。俺も封印を解くのは初めてでこうなるとは思わなかった」


一応クレアが侘び、公爵家の者の仕業と知ると周囲の人垣は消える。

流石階級社会。上位者の出来事は観て見ぬフリをする習慣が備わっている。

但し事情の知らない者は違うらしい。


「どうした!一体何事があった?事件か事故かクレア殿は無事か~!」


「いやいや、雷の音よりお前の声の方がデカイぞ。セザール少しは静まれ」

「そうです!セザール様やっとご近所の方が帰って下さったのに、

 また騒ぎで集まってしまいますわ」


貧乏くじを引かされたセザール伯爵だった。

「す・スマン…それで何事が在ったのだ?」

「健一の封印を解いただけだ」


「そうよ!健一さん・健一さんは無事なの?」

騒ぎを収める事に夢中で忘れていた。慌てて彼を探す大人達。


「大丈夫。俺は傷一つ無いよ!それよりも凄ぇ~。力が漲る感じだぜぇ」


健一の声が、まだ収まらぬ土煙の中から聞こえる。蒼白い光が土煙の中から

出てくる。健一が不思議な光に包まれていた。


「フン!」

掛け声と共に右手を空に架がける健一。突然健一の掌から炎が舞い飛ぶ。

「凄い!無詠唱でアレだけの炎が出るなんて」屋敷の使いに者の誰かが

凝らした声であった。

「うむ。訓練中に健一が魔法を使えないと知り不思議に思って居たのだが…」

「私より魔力が多いかも…」

「うん。流石!俺の息子」


見た者其々の思いが交差する中、当の健一は纏った光が次第に弱まり

ゆっくりと消えた。


「アレ??何だか急に疲れが…なんで?」


そう言って彼は庭先で倒れこんでしまったのだ。ソレを見詰る周囲の人々は

同じ事を思っていた。「魔力の枯渇による意識の途切れ」

魔法初心者が通る初歩的なミスであった。魔法とは体内に在る魔力を消費する。

使わなければ、自然と回復するものだが、枯渇すれば意識が無くなるのだ。

だから、最初に学ぶ事は魔力総量を知る事とセーブと消費量を計る事である。


「もう兄様!学校は明後日ですのよ。これでは、間に合いませんわ」


やっぱり妹に怒られる兄アルベルトであった。


「それにしても最初に身に着けた魔法が攻撃属性の強い火系とは。

 流石、秋穂殿の息子と云う事か」


おいおい俺の息子とは思わないのか?親友の声に反論する父であった。


六話  「古巣・思い出・解放」  完

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