8月15日
(8・15 AM6:00)
チリリリ・・・
「う~ん・・・」
椿はベットから這い出すと、真っ先に窓を開けた。
そこには、緑涼がいつもと同じように農作業中。
「おはよう、椿!」
「おはようございます。」
そんないつものやり取りを終えると、服を着替えてリビングへと向う。
「おはよう、椿。」
キッチンで朝食を作る美佐子の姿がそこにはあった。
なれた手先で野菜を切り、サラダボールに乗せ、よこでコンソメスープの状態を確認する。
朝ごはん
この光景も、今日が最後なのである。
「親父。」
「何だ?」
「・・・何でもない。」
そんな会話も今日が最後になるだろう。
食事の後
椿と美佐子が後片付けをする中「椿。」と禮漸に声をかけられた。
「後で部屋に来てくれる?」
「わかりました。」
(8・15 AM8:47)
いつもの階段を上った所にあるもう一つの階段を上ると、そこには殺風景で、煙草の煙と香りが広がった空間が広がる。
そこが禮漸の部屋。
「いらっさい。」
屋根からさす光に当たりながら、キセルで一服している禮漸がそこにいた。
椿は、禮漸の向かいにちょこんと座る。すると、禮漸は、両手を椿の肩に置き、じっと目を見つめながらこういった。
「言いたいことは、今、言っておくべきじゃないのか?」
椿は、禮漸がいきなり口にした言葉に動揺してしまった。
「朝ごはんの時、正嗣と話してるの見てさ“何もない”って言ってたから・・・もしかしたら最後になるかもしれない。だから、言いたいことは飲み込むな!」
「叶いっこないから。」
「叶わなくても言っとくと、なんかあるかもしれないから、な。」
「・・・うん。」
「で、何が言いたかったの?」
「え・・・あ・・・あの・・・」
「うんうん。」
「・・・ずっといてほしい・・・。」
禮漸は、言葉を詰まらせる。
「あと・・・」
「あ・・・あと?」
「みんなでどっか出かけたい。小旅行ってやつ。」
「小旅行ね~・・・」
そんな会話を、正嗣と美佐子、緑涼は階段の下で聞いていた。
「ずっといてほしい・・・か。」
「私もそうしたいけど・・・」
声を押し殺して泣いている美佐子を正嗣は静かに抱きしめる。
「正嗣・・・。」
緑涼は、正嗣にある提案をした・・・。
(8・15 AM9:15)
禮漸との会話の後、椿は自分の部屋に閉じこもっていた。
そんな時・・・
「椿~入っていいかしら?」
美佐子はドア越しに椿に話しかける。
「いいよ・・・。」
美佐子は、静かにドアを開けた。そこには、床に座って窓をただじっと見つめる椿の姿があった。
美佐子は、椿の隣に座るとあるカタログを見せる。
「椿~お母さんどんな水着、似合うかな?」
それは水着のカタログだった。
美佐子の開けているページには、少しセクシー系の水着がたくさん掲載されている・・・。
「どうして今それ見てるの?」
「だって、今からみんなで海に行こうってお父さんが(笑)」
突然の言葉に、椿は言葉を失った。
言葉がまったくでないというより、口にしていい言葉が思いつかないといったところである。
「い・・・いきなり海って。それに、今から水着頼んでも遅いんじゃ・・・」
「すぐ持ってきてくれるように、緑涼さんが頼んでくれたの。あ、椿はどんな水着着るの?」
「私はね・・・。」
そんな時・・・
「美佐子!椿!決してセクシーな水着を着ないように!」
そういいながら、正嗣と緑涼が部屋に乱入。
「え~!!どうしてなの?」
「どうしても!・・・変な虫が付いたらどうするんだ・・・。」
「おらも心配だべ。」
「わかりました・・・せっかくこんな感じの水着で、正嗣さんを驚かそうと思ったのに・・・(笑)」
美佐子はそういいながら、開いていたカタログのページを正嗣と緑涼に見せ付ける。
すると、正嗣はその場で倒れてしまった・・・。
卒倒という文字が似合うようにふっと・・・。
「お・・・親父?」
「も~正嗣さんたらっ(笑)」
「美佐子さん、これは過激すぎるべ!お・・・おらもびっくりしたべや。」
「そう?じゃ、他のにしようっと。椿も早く選ぼう!」
「う・・・うん。」
緑涼が正嗣を担ぎながら部屋を退散すると、椿と美佐子は再び水着選びを始めた。
(8・15 AM9:18)
緑涼は、正嗣を担いだままリビングへ。
そこでは、男性陣が水着の選定中・・・。
「ど・・・どした?」
「正嗣、気を失ってるべ!なしたの?」
風燕と火燐が担がれた正嗣を突きながら緑涼に事情を聞く。
「椿の部屋に、水着のことで注意しに行ったら、返り討ちにあった・・・。」
「「「「は?」」」」
いまいち意味のわからなかった禮漸達は、思わず聞きなおす。
「ほら、水着のカタログに結構セクシーなのも載ってたから・・・その・・・そのタイプは駄目って言いにいったんだけど、美佐子さんは着るつもりだったみたいで・・・そのページをまざまざと見せつけられた。」
「で、こうなったと・・・。」
蓮流はそういいながら、正嗣を見つめる。
「んだ・・・」
「とりあえず・・・そこに寝かしときましょうよ(笑)」
「んだな(笑)」
そういうと、縁側に正嗣を寝かせると男性陣も水着選び再開。
トランクスにするのか、ビキニにするのか、色は、サイズはと次々に決まっていく・・・。
「「お待たせ!」」
カタログを持って、美佐子と椿がリビングにやってきた。
「じゃ、注文するべか。みんな水着の番号ここに書いてくれ~。」
こうして水着の注文が完了。
美佐子と椿は、男性人に見えないように後ろを向きくと、にやっと笑っていた。
(8・15 AM10:00)
「ご利用ありがとうございます!ウィッチサービスカンパニーで~す!」
「は~い!」
椿が玄関に向うと、そこには黒い帽子をかぶったいかにも魔女といった感じの女の子が立っていた。
「男性用水着6着と女性用水着2着、それぞれのアンダーウェアで、合計16点になります。」
「ほ~い!」
そういうと、後ろから来た緑涼がさっとサインをしお金を払う。
「ありがとうございました。またのご利用お待ちしております!」
その言葉と同時に、魔女の女の子は消えてしまった。
「じゃ、行くか椿!」
「うん(笑)」
「・・・その顔なんか隠して・・・まさか(驚)」
「そ・・・それはないです(焦)」
そういうと、緑涼はその場で箱を開けた・・・。
「つ・・・ば・・・き・・・(怒)」
「それ、お母さんの!」
「じゃ、こっちは!」
入っていた女性用水着の一つは、黒のビキニとレースのパレオ、もう一つはパンツ型の白ビキニとピンクパーカー。
もちろん、正嗣が卒倒していたあのページに掲載されていた水着である・・・。
「あ・・・ばれちゃいました(笑)」
「ここ・・・返品交換出来ないのを利用しましたね(呆)」
「うん♪」
「これ、ばれた時・・・どうしよう。」
「とにかく、これもらいますね。さ、出発出発!」
美佐子の罠にまんまとはまった緑涼。
どうしようと思いながら、男性用水着しか入っていないその箱を持って車に乗り込んだ・・・。
(車内)
「あれ?美佐子と椿の水着は?」
「そ・・・それは・・・」
「内緒!」
「つくまでのお楽しみです♪」
緑涼の反応を見て、女性陣が思いっきり話をぶった切る。
そして、ベットルームに入っていった。
「はは~ん(笑)」
正嗣は、緑涼の反応を見てどういうことか事情がつかめた。
「緑涼・・・お前、美佐子にはめられたな(怒)」
正嗣は笑いながらそう緑涼に言うが、明らかに眼は笑っていなかった。
「すいませんでした!俺がしっかり確認していれば・・・」
「あいつは・・・昔からそういうことは得意だったからな~・・・。」
そういうと、正嗣は男性陣を集めると密談を始めた。
(8・15 AM10:37)
車は海に到着。
男性陣は水着に着替え、外で荷物を持って女性陣を待っていた。
「「お待たせ!!」」
そこに水着姿の女性陣到着。
「美佐子!!椿!!」
正嗣は、その姿を見るやいなや怒り始めた。
駐車場のど真ん中でお説教を食らってしまった。
「だって・・・正嗣さんに驚いてほしかったしに・・・若く見られたいんだもん(泣)」
「だからってこんな・・・(焦)」
まさか美佐子が泣き出すと思わなかった正嗣は、どうしていいのか焦りだす。
「とにかく!俺から離れるなよ(怒)それと・・・これ。」
そういうと、自分の着ていたパーカーを美佐子に渡す。
「それ着とくように!それと、椿はそのパーカー脱がないように!」
「へ~い(笑)」
「そ・・・そろそろ行きませんか?」
蓮流のその言葉で正嗣達は海へと向った・・・。
海といっても、ふだん人が利用する海ではなくて、妖怪や幽霊などが利用出来る海。椿は、ここでも特別許可証を使って中に入る。
砂浜に着くと、自分達のスペース確保に乗り出すが、すでに砂浜はいっぱいである・・・
「あっ!あそこ開いたぞ!」
そう言うと、風燕はすぐに荷物を持って素早く走り出し、バンと荷物を置いた・・・
「風燕でかした!!」
「やったべ!!」
「とにかく荷物広げましょ!!」
数分後
椿達のスペースが完成。
「椿ちゃん!遊ぶべ!!」
そういうと、火燐は椿の手を握って海のほうへと走っていく。
「火燐!待てよ!俺も行く!」
「俺も水浴びする!!」
そういいながら、風燕と蓮流も椿達の後ろを追いかけていく。
「ったく、あいつらは・・・(笑)」
「そうっすね(笑)」
そういいながら軽く会話をする緑涼と正嗣。笑いながら、持ってきたビール片手に話を弾ませる・・・。
「俺、ちょっと行ってきます。」
そういうと、禮漸は何か焦るように椿達のところへ向おうとしていた。
「禮漸、どしたべ?」
「いや、あそこ・・・なんか椿達を狙ってるように感じて・・・。」
すると、海で遊んでいる椿達をじっと見つめている男たちがいる。禮漸によるとさっきからずっとあの状態らしい。
「おらも行くわ。」
「俺も行く。」
「正嗣はここにいたほうがいいべや。」
「娘の危機を見逃す親はいないだろ、緑涼(怒)」
「そうだべな。」
「美佐子。」
「何?」
「変な奴が来てもついていかないように。あと、やばいと思ったら思いっきり大声で叫ぶこと。わかった。」
「うん。」
そういうと緑涼たちは海のほうへと向かっていった・・・。
その頃、椿達は海岸でビーチバレーを楽しんでいた。
しかし、ボールがころころとどこかへ行ってしまう・・・
椿がそれを取りに行こうとした時、じっと椿たちを見ていた男達も動こうとしていたが・・・
「おらの娘に何か用かな(笑)」
男達が後ろを向くと、そこには緑涼と禮漸が彼らの肩をガシッと掴んだ状態で立っている。
「い・・・いや・・・何も(焦)」
「本当に?」
「「は・・・はい(泣)」」
「もし手を出したら、どうなるか分かってんだろうな(怒)」
禮漸が男達にだけ聞こえるようにそうつぶやくと睨みをきかせる。
「「す・・・すいませんでした!!」」
男達はその場をそそくさと退散していった・・・。
「椿、はいこれ。」
「親父・・・母さん置いてきて大丈夫か?」
「大丈夫だと思う。」
「だと思うって・・・(笑)」
「とにかく、一旦戻れ。」
「なんで?」
「後で話するから。お前達も一回戻っておいで!!」
「「「は~い!!」」」
ということで、一旦パラソルのところに引き上げ。
(8・15 AM11:38)
パラソルの下でお昼ご飯。
持ってきたお菓子やお酒にお弁当。
みんなでパクパク・・・
そんな時、正嗣が足元の違和感に気づく・・・
「火燐、お前尻尾びしょ濡れじゃんか!!(怒)」
「あ・・・本当だべ(笑)」
「とにかく・・・こうしてやる!」
正嗣はそういうと火燐の尻尾にタオルを巻きつける。かなり強めに・・・
「痛いべ!!痛い!痛い!」
「このほうが早く水気無くなるだろ!」
「だけど、これじゃ尻尾がちぎれるべや(泣)」
そんな光景をみんなで笑いながら見つめていた。
そんな中、椿は正嗣にさっきのことを聞く。
「親父、何でさっきここに戻るように言ったの?」
すると正嗣は、火燐の尻尾を持ちながらこう話した。
「禮漸が、椿達に目をつけてる男達がいるって教えてくれたから、な。」
「うん。俺と緑涼さんで釘は打っといたから、もうこっちには来ないと思う。」
「んだ。はじめは何もないとか言ってたのに、禮漸が睨みをきかせた途端にすいませんでしたって逃げて行ったし大丈夫だろ。」
「とにかく。お前たちは注意力が足りなさ過ぎる。よく周りを見るように!!」
「「「「は~い・・・。」」」」
またまた軽いお説教が出ました・・・
ビーチのど真ん中で・・・。
(8・15 PM14:45)
「お前達~~~~~!!!戻ってこ~~~い!!買ってきたぞ~~~~~~~~~~~!!!!!!!」
緑涼のかなり大きな声が、ビーチ中に響き渡る・・・。
「緑涼・・・声でかっ(笑)」
「すぐわかるね・・・(笑)」
「いつもあぁだから慣れてきた(笑)」
「そうだべや・・・(笑)」
そんな会話をしながら、椿達はパラソルのほうへ。
パラソルに戻ると、平たいダンボールに入ったカキ氷やアイス、それに焼きそばなどのフードメニューまで・・・。
「焼きそばとかは車でも食べれるから、アイスとかかき氷とか食べてけ。」
「は~い。」
「じゃ、俺これ食べるべ!」
「じゃ、俺これ!!」
「私もそれがいい!」
「何でだよ(怒)」
争奪戦の開始・・・。
「はい、じゃんけん!」
正嗣のその言葉でかぶったら“じゃんけん”になった。
で、結果・・・
カキ氷→正嗣、火燐
スティックのアイス→緑涼、風燕
シャーベット→美佐子、禮漸
カップアイス→蓮流、椿
となった。
「カキ氷をかきこむなって言おうとしたそばからお前は(怒)」
「・・・頭痛いべ(泣)」
「ハハハ!!!やっぱりやりやがった(笑)」
「お前はいつもそうだべ!」
「おまけにまた尻尾乾かしてない!」
火燐への集中砲火。
この家族には定番の出来事。
でもそれが、正嗣と美佐子にとっては新鮮でとても嬉しかったことだった。
(8・15 PM16:25)
「じゃ、そろそろ帰るぞ!」
正嗣のその言葉でみんなは片づけを始める。そのころから、椿の顔が少しずつ暗くなっていくように緑涼と蓮流は感じていた。
駐車場に向うまでの道
椿は、パラソルを抱えながらみんなの後ろをとぼとぼと歩く。
「椿・・・。」
禮漸は椿の背中をぽんと叩いて呼びかける。
「禮漸さん。」
「また変な奴がついてきたらどうすんの?」
そういいながら、椿の手を握り正嗣達のところへ駆けていく。
「最後まで諦めんな。」
そういいながら・・・
(車内)
椿は、正嗣と美佐子がいるベットルームに入っていく。
「どした、椿?」
「・・・」
椿は何も言わず正嗣と美佐子にくっついた。
「椿・・・」
「どうしたのいきなり・・・」
「ずっといてほしいよ・・・」
泣きながらくっついて離そうとしない。
「椿・・・お母さんだって一緒にいたい。いたいよ・・・。」
「俺も、椿と一緒にいたい・・・」
そういいながら、美佐子と正嗣も椿を抱きしめる。
「でもな・・・俺たちはもう行かないといけないんだ。」
「お母さんも辛いの。居れるならずっと一緒に居たいもん。」
そういいながら椿を引き離すと、正嗣達は椿の顔にぽんと手を置く。
「椿は、まだ生きなきゃいけない。みんな悲しむだろう。」
正嗣は、微笑みながらそういった。
「うん・・・。」
「緑涼達も俺達の子供であって、椿の家族なんだよ。だから、生きなさい。」
「・・・わかった・・・。」
このとき、ドアのノ向こう側で緑涼達もこの話を聞いていた。
ばれない様に声を殺しながら泣いていた・・・。
(8・15 PM17:52)
「やっとついた~・・・」
「さ!晩御飯だ!」
正嗣がドアを開け、美佐子が家に入っていく。
椿も続いて入って行こうとした時、緑涼に止められた。
「椿・・・」
そういうと緑涼は椿を抱きしめた。
「ちょ・・・緑涼さん?」
「俺は、正嗣にも美佐子さんにも勝てないけど・・・おら、がんばるから。」
そういって泣いていた。
「うん。」
「お~い!早く入って来い!」
「みんなで晩御飯食べましょう!」
「「は~い!」」
(8・15 PM18:15)
今日は椿達が晩御飯を作る。
大人数で作るのでキッチンは・・・わちゃわちゃしている。
「よし!から揚げ揚がった!」
「ゴーヤチャンプルーできました!」
「お皿置いとくね。」
「稲荷寿司完成!」
「食べていいべか?」
「駄目に決まってんだろ!」
「枝豆茹で上がり!サラダも出来てるよ。」
「は~い!!」
リビングでは、正嗣と美佐子がくすくす笑いながら、キッチンの子供達の声をあてに酒を飲んでいた。
「よかった、ここに戻ってこれて。」
「俺も。椿も緑涼達も元気でさ・・・俺、正直心配なことがいろいろあったから。」
「なに、それ。」
「内緒。」
「え~っ。聞きたいです。」
「内緒!」
「は~い!お待たせ!」
椿がそういうと、みんなで次々とご飯を運んでくる。
すべてを運びきった時、机の上は満漢全席のように様々は食材が並んでいた。
「うおぉ~!!これはすごいね!」
「がんばって作ったんだから!みんなで!」
「さ、食べて食べて!!」
という緑涼の合図で、晩御飯スタート。
数分後
ドーーーーーーーーンッ!!
遠くで花火が上がり始めた。
縁側から見えるその花火は、とても綺麗でとても鮮やかで・・・
「この花火を見ると、もうお盆は終わりなんだね・・・。」
椿がそうつぶやくと、正嗣は椿のほうを向き頭の上に手をぽんと置くと
「でも、みんなのこと向こうから見てるから。」
といった。
(8・15 PM23:15)
みんなで暗い山道を歩く。
あの祠に向ってゆっくりゆっくり歩いていく・・・。
祠についたとき、椿も、緑涼達も必死で涙をこらえ正嗣と美佐子見つめる。
「ぉ・・・お父さん、お母さん・・・」
椿はそういうと、正嗣と美佐子に紙袋を渡す。
「これ、電車の中で食べて。みんなで作ったから。」
中身はお弁当だった。
正嗣も美佐子も笑いながら泣いている。
「ありがとう。お父さんてやっと・・・。」
「そこ?弁当のことは?」
「嬉しいに決まってるだろう!な?」
「うん。ありがとう、ちゃんと食べるからね。」
「お前達!また戻ってくるからな!」
「少しのお別れね。元気で仲良くたくさん過ごすのよ。」
「「「「「「はい!」」」」」」
そういうと、正嗣と美佐子の姿はふわっと消えてしまった。
蛍の光の中に・・・
「じゃ・・・行くか、お前達。」
緑涼は、涙をさっと手で拭って、笑いながらそういった。
椿達も泣くのをやめ、笑いながら着た道を帰って行く。
我が家に向って・・・。




