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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

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第91話 強くなるために

洞窟組が旅立った後の本隊、そして洞窟入口での最後の確認をお届けします。


ジェクスたち五人を乗せた小型船が飛び立った後、バスティアの格納庫には、静かな余韻が残っていた。


「――行っちまったな」ガレスが、空を見上げながら呟いた。


「――心配ですか」オルグレンが、隣に並びながら尋ねる。


「――当然だ。だが」ガレスは、小さく笑った。「あいつらなら、大丈夫だろうという確信の方が、正直、大きい」


その言葉に、オルグレンも、静かに頷いた。


「――俺たちは俺たちで、やるべきことをやろう」オルグレンが、集まった本隊の面々を見渡した。「根城までの道のりは、決して楽じゃない。グレン、レイナ、案内を頼む」


「――お任せください」グレンが、力強く応じた。


「――最短ルートで向かいます」レイナも、静かに続ける。


本隊は、残る道案内二人を加え、改めて隊列を整え始めた。ロルフ、ネリア、シグルド、アイラ、リヒト、バルド、ノクス――それぞれが、それぞれの得物を手に取り、出立の準備を進めていく。


「――五人がどんな成果を持ち帰るにせよ」ガレスが、静かに言った。「俺たちも、遅れを取るわけにはいかねえ」


その言葉に、本隊の士気が、静かに高まっていった。


***


一方、ジェクスたちを乗せた小型船は、荒涼とした魔王領の上空を、一直線に飛び続けていた。


「――そろそろだ」


ギルの声に、全員が、窓の外へと視線を向けた。眼下に広がるのは、これまで見てきたどの土地とも違う、異様な光景だった。空気そのものが歪んで見えるほどの、常軌を逸した重力の乱れ。荒野の中央に、ぽっかりと口を開けた、暗い洞窟が見えてきた。


「――着陸するぞ。振り落とされるなよ」


船体が、大きく揺れながら、荒野の一角に着地した。


「――ここまでだな」ギルが、ハッチを開けながら言った。「この船じゃ、これ以上先には進めねえ」


五人は、船を降り、洞窟の入口へと歩を進めた。近づくにつれ、体にかかる重力が、不規則に変化していくのが分かる。


「――掟は、覚えてるな」ギルが、最後に念を押した。「服や靴みてえな、当たり前のもの以外は禁止だ。武器も魔法も、持ち込むな。使えるのは、魔力による身体強化だけだ」


「――ええ」ジェクスが、静かに頷いた。「それを破れば、泉の効果が出ない、でしたね」


そう言いながら、ジェクスは、デュオ・プロヴィーサを鞘ごと外し、船の座席に置いた。


「――踏破日数が短いほど、水が新鮮で効果が強いって話も、忘れんなよ」カイドも、同じように剣を鞘から外しながら付け加える。「――これがねえと、正直、落ち着かねえな」


アリシャも、腰の剣を静かに置いていく。


アリシャが、洞窟の入口を見つめながら、小さく息を吐いた。


「――正直、怖くないと言えば嘘になるわね」


「――俺も、同じだ」ジェクスが、静かに答える。「それでも」


「――やるしかない、だろ」アクセルは、そう言うと、腰の二刀を鞘ごと外し、船の中へと置いてきた。「――寂しいが、掟は掟だ」


五人全員が、それぞれの得物を船に残したのを確認すると、ギルが小さく頷いた。


「――よし、これで全員、丸腰だな」


五人は、互いに顔を見合わせ、小さく頷き合った。


「――行こう、強くなるために」


ジェクスの一言を合図に、五人は、暗闇の口を開けた洞窟へと、静かに足を踏み入れていった。


***


同じ頃、闇ギルドの本拠地では、地下深くの広間に、レトゥスとゼインが向かい合っていた。


「――討伐隊が、動き出したそうだな」レトゥスが、玉座に腰掛けたまま言った。


「――ええ。バスティアを経由して、根城へ向かってるようです」ゼインが、静かに報告する。


「――お前の方は、どうだった」


「――ご覧の通りです」


ゼインが、静かに掌を掲げると、その指先に、これまでとは比較にならない密度の魔力が、渦を巻いた。


「――ほう」レトゥスが、僅かに口の端を上げた。「やるじゃねえか」


「――試練の洞窟、俺も踏破しました」


その報告に、レトゥスは、しばらく黙り込んだ後、低く笑った。


「――お前も、あそこに行ったのか。……その執念、嫌いじゃねえよ」


「――当然です」ゼインの目に、隠しきれない執着が滲んだ。「ジェクスに、追いつくためですから」


「――Tempus venit」


レトゥスが、静かにその言葉を口にした。


「――時が来た、ですか」


「――ああ。……そろそろ、俺たちも、本腰を入れる頃合いだ」


その一言に、地下深くの広間に、不穏な緊張が満ちていった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


ガレスとオルグレンの静かなやり取り、グレン・レイナを加えた本隊の出立準備、そして洞窟入口での掟の再確認——武器を船に置いていく場面も、緊張感の中にリアリティが出せていたら嬉しいです。魔王側の動きも見えてきて、両陣営とも、着実に決戦へ近づいています。


次話、いよいよ五人が洞窟の奥へと足を踏み入れます。次話もお楽しみに。

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