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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

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第88話 軍事国家バスティア

いよいよバスティアに到着。国のトップ、ギルとの対面をお届けします。


「――案内する。ついてこい」


ギルは、そう言うと、足早に歩き出した。討伐隊の面々は、その後を追うようにして、バスティアの中枢へと進んでいく。


「――随分と、機能的な国ですね」ジェクスが、周囲を見渡しながら呟いた。


見渡す限り、整然と並ぶ工房や兵舎。あちこちから、金属を打つ音や、何かを試験しているらしい爆発音が響いてくる。


その途中、ギルが、ふと足を止めて振り返った。視線は、ケインだけでなく、ジェクスたち合宿の参加者たち全員へと向けられていた。


「――お前たちに、一つ詫びておきたいことがある」


「――何でしょう」ケインが、代表するように応じる。


「――合宿の際は、お前一人に行かせてしまいすまなかったな。こちらも、前線から離れるわけにはいかなかったのだよ」


ギルは、そう言うと、僅かに頭を下げた。飾らない、それでいて確かな気遣いの滲む一言だった。


「――四天王の件も、耳に入っている。俺が同行していれば、少しは楽をさせてやれたかもしれん」


「――お気になさらず。それぞれが、それぞれの持ち場を守っていたまでのことです」ケインが、静かに答える。


「――そう言ってくれると、助かる。……詫びの代わりと言っては何だが、今日は好きなだけ食っていくといい」


その短いやり取りに、討伐隊の面々は、ギルという男の意外な一面を垣間見た気がした。


「――五大国から支援を受けてな。この国は、戦争に役立つ技術の開発に特化している」ギルが、再び歩き出しながら説明した。「住民の大半は、技術者か軍人だ。それ以外の人間は、ほとんどいない」


「――景観は、正直あまり……」カイドが、口ごもりながら言う。


「――ああ、綺麗な国ではないな」ギルは、あっさりと認めた。「見栄えより、実用を優先してきた結果だ。だが」


ギルが、路地の先を指差した。湯気の立つ屋台や、賑やかな食堂の看板が、ずらりと並んでいる。


「――肉体労働者が多い分、飯屋だけは、やたらと充実している。……はっきり言って、王都のどんな高級店より、こちらの方が美味い店も多いぞ」


その言葉に、フィンが目を輝かせた。


「――本当ですか!」


「――嘘は言わん」ギルは、片目を眼帯で覆ったまま、不敵に笑った。「――食は、命の源だ。戦争が激しい時こそ、美味いものを食べておきなさい。腹の減った兵士は、まともに戦えないものだからな」


その言葉には、荒々しい見た目とは裏腹の、確かな信念が滲んでいた。


「――俺自身、この国の連中に、口を酸っぱくして言っていることだ。……いい飯を食わせてやれない国に、いい兵士は育たん」


一行が案内された食堂は、外観こそ質素だったが、漂ってくる匂いだけで、その実力が窺えた。


「――好きに座って、好きなものを頼め。今日くらいは、羽を伸ばしておくといい」


ギルの言葉に、討伐隊の緊張していた空気が、少しだけ緩んだ。


「――明日には、また改めて話す。……お前たちが今後、どこへ向かうことになるのか、な」


その一言に、ジェクスは、静かに気を引き締めた。ここから先が、いよいよ本番になる――その予感が、確かなものとして、胸の奥に根付いていた。


食堂の中、湯気の立つ料理を前に、討伐隊の面々の顔に、久しぶりの安堵の色が浮かんでいた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

荒々しくも実直なギルの人柄、そしてバスティアという国の在り方——景観よりも実用、それでいて「食は命の源だ」という信念を持つ姿に、彼らしい魅力が出せていたら嬉しいです。合宿に同行できなかったことへの詫びも、飾らない気遣いとして描けたと思います。

明日、いよいよ本題の話し合いが始まります。次話もお楽しみに。

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