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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

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83/120

第83話 5対50

前話の続きをお届けします。よろしければ最後までお付き合いください。


戦闘は、開始と同時に、想像を超える激しさで幕を開けた。


「――散開しろ! 各個撃破は避けろ!」ガレスの声が、夜の森に響き渡る。


五十名対、たった五人。数の上では、圧倒的にこちらが有利なはずだった。だが、実際に剣を交えた瞬間、その油断は、すぐに打ち砕かれた。


モルドの拳が、盾ごと騎士を一人、大きく吹き飛ばした。


「――ぐああっ!」


「――一人、脱落!」


「――まだ立てるだろ、そんくらいで音を上げんな!」モルドが、獣のような笑みを浮かべる。


一方、リーザの毒は、触れることなく、周囲の空気そのものを侵していく。


「――近づくだけで、まずいぞ! 毒の霧が広がってる!」


「――正解。よく気づいたわね」


リーザが、感情の読めない声で、瓶の蓋を開ける。新たな毒霧が、じわりと辺りに広がっていった。


バゼルは、剣を弾き返す度に、嬉々とした声を上げていた。


「――お、いい太刀筋じゃねえか! これも、コレクションに加えさせてもらうぜ!」


「――気持ち悪いこと言ってんじゃねえ!」ロルフが、大盾で受け止めながら怒鳴る。


クロウの姿は、闇の中に溶け込むようにして、次々と現れては消えていく。気配を読めないその動きに、数名が、既に手傷を負わされていた。


そして、ダリアの周囲だけは、まるで舞台の中心であるかのように、優雅で、それでいて残酷な剣舞が繰り広げられていた。


「――もっと、もっと魅せてちょうだい! この程度じゃ、幕引きには早すぎるわ!」


五人、それぞれが、単独で複数人を相手取りながら、なお余裕を崩さない。数の有利は、まるで意味を成していなかった。


「――くそ、話が違う!」カイドが、抜刀した剣で応戦しながら叫んだ。「五十対五のはずが、まるで逆に見えるぞ!」


ジェクスも、デュオ・プロヴィーサを構えながら、歯を食いしばっていた。炎の剣で反撃を試みるが、クロウの気配のない動きに、幾度となく躱される。


「――これが、四天王の下で動く連中の実力か」


想定録の棚を辿っても、この状況を打開する明確な糸口は、まだ見えてこなかった。


「――やられてばかりじゃ、いられねえ!」


アクセルが、炎と風の合わせ技で、ダリアへと斬りかかる。だが、優雅な身のこなしで、あっさりと躱されてしまう。


「――あら、いい踊り手ね、あなた」


「――踊りじゃねえ、殺し合いだ!」


戦況は、じりじりと押される一方だった。負傷者が、少しずつ増えていく。それでも、誰一人として、退くことはなかった。


「――俺が、まず仕留める!」


ガレスが、モルドへと真っ向から斬りかかった。剣と拳が、激しく打ち合う。


「――お、悪くねえ動きだ。だが――」


モルドの拳が、僅かにガレスの剣筋を見切り、体勢を崩させる。その隙を突かれ、ガレスの肩に、拳が食い込んだ。


「――ぐっ!」


「――ガレスさん!」


「――大丈夫だ! まだやれる!」


痛みに顔を歪めながらも、ガレスは剣を握り直した。


戦いは、なおも続いていく。一人また一人と傷を負いながら、それでも五十名は、少しずつ、五人の連携に綻びを見出そうとしていた。


「――このままじゃ、埒が明かねえ」


カイドが、鞘に手をかけた。まだ、今日一度も使っていない――抜刀の型。


「――やるしかねえか」


低く呟くと、カイドは、静かに、しかし確かな集中を、体の内に練り込んでいった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

クインクェ・ウンブラエ、それぞれの実力が容赦なく発揮される回でした。モルドの拳、リーザの毒霧、バゼルの余裕、クロウの気配のなさ、ダリアの優雅な剣舞——五人それぞれの個性が、そのまま脅威として襲いかかってきます。ガレスが傷を負いながらも「まだやれる」と踏みとどまり、カイドがついに抜刀を決意したところで幕を引きました。

この絶望的な戦況を、どう打開するのか。次話もお楽しみに。

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