表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/123

第77話 討伐隊

合宿の報告を終えたその場に、大きな動きが訪れます。


王城の一室、玉座の間に、オルグレン、ガルドナー、ガレス、そしてジェクスたちが集められていた。


「――合宿の報告、聞かせてもらおう」


国王の言葉に、オルグレンが一歩前に出た。


「四天王のうち二体、モレスタスとヴェナトルの討伐。合宿における参加者全員の戦力強化。そして、王立魔術学院での襲撃事件と、そこで保護した転生者の少女――ノアについて」


報告は、合宿での戦闘の詳細、参加者それぞれのギフトの内容、そして転移者・転生者に関する情報にまで及んだ。国王は、時折鋭い質問を挟みながら、その全てに耳を傾けていた。


「――ノアという娘については、この国で身柄を保護する。学院に戻すのは、危険が大きすぎる」国王は、そこで一度言葉を切った。「――それと、これを機に、国内にいる全ての転移者・転生者にも、保護を希望する者があれば受け入れる用意をする。強制はしない。あくまで、望む者にだけだ」


「――お心遣い、感謝します」ガレスが、頭を下げた。


その時、扉が慌ただしく開き、一人の伝令が駆け込んできた。


「――失礼します! バスティアより、緊急の連絡が!」


その場の空気が、一気に張り詰めた。


「――申せ」


「――魔王の根城の場所が、判明したとのことです」


沈黙が、玉座の間を支配した。


「――確かな情報なのか」オルグレンが、低く尋ねる。


「バスティアの偵察部隊が、長年かけて掴んだ情報とのことです。信憑性は、極めて高いと」


国王は、しばらく目を閉じ、深く息を吐いた。


「――ならば、動くしかあるまい」


その一言で、王城内の空気が一変した。


「――五大国、そしてバスティア。国家間を繋ぐ通信魔法陣を起動しろ。魔王討伐に向けた、合同討伐隊を編成する」


その言葉に、王城の奥から、地鳴りにも似た低い唸りが響いてきた。各国の王城同士を繋ぐ、大掛かりな儀式魔法――滅多に使われることのないその魔法陣が、今、静かに起動しようとしていた。


「――目的地は、過酷な環境と聞いております。相応の人選が必要かと」オルグレンが進言する。


「――その通りだ」国王は、静かに頷いた。「一国だけの戦力で挑める相手じゃない。……アルディア、グランヴェル、アストリア、ノルド、セレスティア。五大国、そしてバスティア。全ての国から、選りすぐりの精鋭を招集する」


「――各国の反応は」ガルドナーが尋ねる。


「否やを言う国はあるまい。魔王の脅威は、もはやどの国にとっても他人事じゃない」国王は、力強く言い切った。「――各国、選りすぐりの精鋭を送るよう伝えろ」


数日後、各国から選抜された名簿が出揃った。集計を終えたオルグレンが、その総数を報告する。


「――総勢、五十名になりました」


その数字に、その場の全員が息を呑んだ。


「――今回は、各国が抱える最強の戦力を、惜しみなく出す。この機を逃せば、次はいつになるか分からない」


国王の言葉に、ガレスが静かに頷いた。


「――俺も、行かせていただきます」


「――当然だ。お前たちも、選抜の対象に入っている」


その場にいたジェクス、カイド、アリシャ、アクセルにも、鋭い視線が向けられた。


「――光栄です」ジェクスが、静かに頭を下げた。


その言葉の後、ジェクスは、ふと湧き上がった疑問を口にした。


「――一つ、伺ってもよろしいでしょうか」


「――申せ」


「魔族が、良質な転移者・転生者を狙っている理由は、今回の一件で見えてきました。……ですが、魔族による人間への襲撃自体は、もっと昔からあったはずです。ギフト抽出という目的が全てなら、なぜ、転移者でも転生者でもない、普通の人間まで昔から襲われてきたんでしょうか」


その問いに、玉座の間が、一瞬静まり返った。


「――……それは」国王が、言葉を選ぶように答えた。「はっきりとした答えは、我々にも分かっていない。ただの縄張り争い、食料としての捕食、諸説はあるが、確証は得られていない」


「――そうですか」


想定録の棚が、静かに、しかし猛烈な速さで回転を始めていた。


(――なぜだ。目的がギフト抽出だけなら、無関係な人間まで襲う理由が薄い。……何か、別の理由があるはずだ)


三十三年分の想定が、次々と仮説を組み上げては、また崩れていく。餌としての捕食。実験の副産物。あるいは――もっと根本的な、何か別の目的。


(――まだ、足りない情報がある)


その空白を埋める答えは、今はまだ、どこにも見当たらなかった。


「――バスティアからも、然るべき人物が合流する。……ただし、あちらは道中で落ち合う手筈だ」オルグレンが補足した。「先に出立するこの五十名には、バスティアの人員は含まれていない。魔法船でバスティア領内を通過する道中、あちらのトップ自らが加わると聞いている」


その言葉に、ジェクスの中で、想定録が新たな空白を刻んだ。


(――バスティアのトップ、か)


まだ見ぬ人物への想像が、静かに膨らんでいく。合宿を経て積み重ねてきたものが、今、また一段大きな戦いへと繋がろうとしていた。


「――出立の日取りは、追って知らせる。それまでに、各自、万全の準備を整えておくように」


国王の言葉を最後に、玉座の間は、静かな、しかし確かな緊張感に包まれていった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

魔王の根城発見という緊急の報せから、五大国合同の討伐隊編成まで、一気に物語が動き出しました。総勢五十名という規模、そしてバスティアが道中で合流するというルートも見えてきました。

ジェクスの問い(「なぜ、昔から普通の人間まで襲われてきたのか」)にも、まだ答えは出ていません。この先、どんな真実に辿り着くのか——次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ