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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

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第73話 成長

合宿最終日、締めくくりとして全員参加の総力戦形式の模擬戦をお届けします。


合宿最終日、施設の広い訓練場に、参加者全員が集められていた。


「――今日は、締めくくりとして、全員参加の模擬戦をやる」オルグレンが、一同を見渡しながら言った。「二チームに分かれて、総力戦形式だ」


「――分け方は、どうするんですか」ジェクスが尋ねる。


「アニマの数値で、なるべく均等に振り分ける」ケインが、資料を掲げながら答えた。「戦力が偏ると、模擬戦としての意味が薄れますから」


測定装置を使い、参加者一人ひとりの数値が改めて確認されていく。その結果を基に、ケインが手早くチームを組み上げた。


「――Aチーム、ジェクス、ロルフ、ネリア、シグルド、ドム、アイラたち。Bチーム、カイド、アクセル、アリシャ、ダグラス、フィン、ジオたち」


「――俺は、審判に回る」ガレスが、腕を組みながら言った。「オルグレン様とフィーレ、それとケインも、今回は見る側だ」


「――ノアは、まだ本調子じゃねえからな。無理はさせられねえ」


その言葉に、療養中のノアが、少し悔しそうに窓の外を見つめていた。


発表された組分けに、それぞれが得物を手に、二手に分かれていった。


「――お前と別チームか」カイドが、ジェクスに向けて不敵に笑う。


「――望むところだ」


開始の合図とともに、訓練場に、両チームが一斉に踏み込んだ。


正面から激突したのは、ジェクスとカイドだった。二刀――デュオ・プロヴィーサを構えたジェクスに対し、カイドは鞘に手をかけたまま、間合いを詰める。


「――一月前とは、違うぜ」


カイドの抜刀が、どんな体勢からでも放てる形へと完成していた。低い姿勢から、横に跳びながら、あるいは体勢を崩されたその瞬間からでも、一切の淀みなく刃が放たれる。ジェクスは、それを紙一重で躱しながら、右手の剣に炎を纏わせた。


「――そっちこそ」


炎を纏った一撃と、次元を断つ居合――幾度となく交差する二人の攻防に、周囲の視線が集まった。


一合、二合、三合。剣がぶつかる度に、火花にも似た魔力の残滓が散る。カイドの抜刀は、以前のような一撃必殺の型に頼らず、地上戦の中で自在に繰り出せるまでに練り上げられていた。対するジェクスも、右手で炎、左手で反射・毒の波長を切り替えながら、絶えず攻めと守りを入れ替えていく。


「――追いつくって、言ったろ」


カイドの一撃が、ジェクスの左肩を掠めた。浅い傷だったが、確かな手応えがあった。


「――言ったな。……だが、まだだ」


ジェクスは、左手の剣を、瞬時に切り替えた。毒針由来の波長が、剣先に淡く滲む。カイドが踏み込んだ瞬間、その切っ先を狙って、鋭く突き出した。


「――くっ!」


カイドが、辛うじて体を捻ってそれを躱す。だが、体勢は明らかに崩れていた。


その傍らでは、アクセルとロルフが激しく打ち合っていた。炎と風を交差させる合わせ技に、ロルフが大盾ごと押し返す。盾の表面に纏わせた魔力が衝撃波となって弾け、アクセルの二刀が弾かれる。


「――お前、相変わらず力業だな!」


「――お前ほど器用じゃねえんでな!」


アクセルは怯まず、体勢を立て直しながら、今度は低い姿勢から盾の隙間を突く一撃を放った。ロルフが咄嗟に短刀へ持ち替え、それを弾く。大盾と短刀、二つの得物を自在に使い分ける動きに、アクセルが舌打ちを漏らした。


一方、アリシャとネリアの魔法戦は、より繊細な駆け引きが続いていた。多属性の変則的な魔法を、聖なる盾で受け流しながら、アリシャが反撃の隙を窺う。ネリアの魔法は、一撃ごとに属性を変え、盾の耐性を読み切ろうとする。だが、アリシャの反応は、その変化を上回るほどに研ぎ澄まされていた。


「――流石、副団長ね」


「――褒めてる余裕、あるのかしら」


盾を弾いた反動を利用し、アリシャが一気に間合いを詰める。ネリアは咄嗟に後退しながら、複数の魔法陣を同時に展開して迎え撃った。


その他の面々も、それぞれの得意技を駆使して戦っていた。ダグラスの軽やかな身のこなしがドムの守りをかいくぐろうとするが、大柄な体躯にそぐわぬドムの反応速度に、幾度となく阻まれる。フィンの若い魔法がシグルドの回復と相殺し合い、二人の間で一進一退の攻防が続いた。ジオの槍が、幾人かの相手と入れ替わりながら、堅実に得点を重ねていく。


戦況は、めまぐるしく入れ替わりながら、なかなか決着を見せなかった。


「――そろそろ、決めに行くか」


ジェクスは、左手の剣に、蠍の毒針由来の波長を通した。カイドの抜刀を誘い込むように、あえて隙を晒す。


「――そこだ!」


カイドの抜刀が、迷わず放たれた。だが、ジェクスはその軌道を、寸前で読み切っていた。左手の剣で受け流し、右手の炎を纏った刃を、カイドの喉元寸前で止める。


「――そこまで、ってことでいいか」


「――くそ、また負けたか」


カイドが、悔しそうに剣を下げた。他の場所でも、次々と決着がつき始めていた。


最終的に、僅差でAチームの勝利という形で、模擬戦は幕を閉じた。


「――全員、よくやった」オルグレンが、満足げに一同を見渡す。「一月前とは、見違えるほどだ」


汗だくになりながらも、清々しい表情を浮かべる参加者たちの姿に、これまでの積み重ねが、確かな形になって表れていた。


合宿の締めくくりに相応しい、熱のこもった一日だった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

ジェクス対カイドを中心に、それぞれの積み重ねがぶつかり合う一戦でした。デュオ・プロヴィーサと抜刀術、どちらも一月前とは比べ物にならないほど仕上がっていたと思います。他のメンバーたちの成長も、あちこちで垣間見えたのではないでしょうか。

一月にわたる合宿も、ここで一区切りです。次話もお楽しみに。

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