第69話 これからのこと
戦いの後、先導隊はこれからのことを話し合います。
学院の一室、応急的に設けられた本部に、先導隊の面々が集まっていた。
「――ノアの容態は?」ガレスが尋ねる。
「命に別状はありません」シグルドが、気だるげに答えた。「ただ、魔力の消耗が激しい。……見たところ、カテナの野郎に魔力を吸われた痕がある。抵抗できねえよう弱らせてから、生きたまま連れ去るつもりだったんだろうな」
「――魔力の強い相手を、生きたまま確保するための手口ってことか」ガレスが、低く唸る。
「多分な。殺す気なら、こんな中途半端な手間はかけねえ。弱らせて、大人しく連れて行くための下準備だったんだろうよ」シグルドが続けた。「――逆に言えば、価値がねえと判断された奴は、その場でイグニスの炎に焼かれてる、ってことだ」
その言葉に、ノアの顔が、さらに青ざめた。
「――私、その"選別"を、間近で見せられてたのかもしれません」
ベッドに横たわるノアは、青白い顔をしながらも、意識ははっきりしているようだった。
「――ありがとう、ございました」
か細い声で、ノアが頭を下げる。
「――礼はいい。それより、聞かせてくれ」ガレスが、椅子を引き寄せて座った。「なぜ、狙われた? 心当たりは」
ノアは、しばらく躊躇うように視線を彷徨わせた後、小さく息を吐いた。
「――私、転生者なんです。この世界で、赤ん坊の頃からギフトを授かって育ちました」
その告白に、フィンとダグラスが顔を見合わせた。
「――やっぱりか」ネリアが、静かに呟く。
「魔王が、強い転移者・転生者を狙ってるって話は聞いていたか」ガレスが尋ねる。
「――噂程度には。まさか、自分がその対象になるとは、思ってもみませんでした」
ノアの声が、わずかに震えていた。
「――もう大丈夫だ。俺たちがいる限り、簡単には手を出させねえ」ガレスが、力強く言った。
その言葉に、ノアの表情が、少しだけ和らいだ。
その後、ケインが、回収した資料と情報を整理しながら、一同に報告した。
「――カテナとイグニスを退けたことで、興味深いものを回収できました」
そう言って、ケインが取り出したのは、小さな水晶のような装置だった。
「――何だ、これは」
「魔力を数値として測定できる道具のようです。恐らく、魔族側が"良質な器"を探すために使っていたものかと」
ガレスが、その装置を手に取り、しげしげと眺めた。
「――こいつがあれば、こっちも同じように、相手の強さを測れる、ってことか」
「可能性はあります。詳しい解析は、王都に戻ってからになりますが」
その報告に、一同の間に、わずかな希望の色が滲んだ。
「――さて」ガレスが、立ち上がった。「これからのことだが」
「――ノアは、王都まで連れて行く」ガレスが続けた。「彼女一人をこの学院に残しておくのは、危険すぎる」
「――でも、学院は……」ノアが、心配そうに呟く。
「学院の警備は、王国騎士団に増員を要請する。お前は、まず自分の身の安全を優先しろ」
その言葉に、ノアは、しばらく黙った後、小さく頷いた。
「――分かり、ました」
「――それと、もう一つ」ガレスが、皆を見渡した。「合宿に残ってる連中にも、今回の一件を報告する必要がある。特に――」
「――アリシャさんの件、ですね」ケインが、静かに補足した。
「ああ。狙われてるのが、彼女一人とは限らねえ、ってことが、はっきりした以上、な」
戦場の後片付けを終え、朝日が完全に昇る頃、先導隊は、王都への帰還の準備を始めていた。
まだ見ぬ脅威の全貌が、少しずつ、その輪郭を現し始めていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ノアの告白、そして彼女が受けていた恐ろしい仕打ちの正体——魔力を吸って弱らせ、生きたまま連れ去るための手口、そして選別に漏れた者の末路。重い真実が明らかになりました。回収した魔力測定アイテムも、今後の展開の鍵になりそうです。
先導隊は王都への帰還を決めましたが、まだ脅威が去ったわけではありません。次話もお楽しみに。




