第68話 明かされた真実
前話の続きをお届けします。よろしければ最後までお付き合いください。
戦闘の熱がようやく引いた学院の敷地で、生存者たちの捜索と救護が始まっていた。
「――アクセルは、まだ見つからないのか」ガレスが、崩れた校舎の瓦礫を見渡しながら尋ねた。
「校舎の裏手まで捜索しましたが、まだ……」ケインが、険しい表情で答える。
その時、崩れた壁の陰から、聞き覚えのある声が響いた。
「――随分と、探すのが遅いな」
一同が振り返ると、そこには、土埃にまみれながらも、しっかりと自分の足で立つアクセルの姿があった。
「――アクセル!?」フィンが、目を見開く。「無事だったのか!」
「無事も何も、最初からこうなる予定だっただろ」
アクセルが、事もなげに言う。その一言に、フィンを除く数名――ガレス、ネリア、シグルドが、示し合わせたように視線を交わした。
「――どういうことだ」フィンが、困惑した様子で尋ねる。
ガレスが、静かに口を開いた。
「――出発前、俺とアクセル、それに一部で立てた作戦だ。相手が"良質な転移者"を狙ってるなら、いっそ死んだと思わせた方が、次の動きを引き出しやすいと踏んだ」
「――そんな、俺には一言も」
「悪かったな。知ってる人数が多いほど、演技に綻びが出る。……お前を騙すつもりはなかったが、結果的にそうなった」
アクセルが、フィンの肩に軽く手を置いた。
「――お前の反応が本物だったから、他の連中にも、ちゃんと"死んだ"って伝わったはずだ。むしろ、感謝してる」
「――それ、慰めになってねえからな」
フィンは、複雑な表情を浮かべながらも、それ以上は責めなかった。
「――だが、賭けだったな」ガレスが、腕を組んだ。「あの一撃、まともに喰らってたら、演技も何もなかった」
「まあな。……正直、ギリギリだった」
アクセルは、そう言って苦笑した。土埃の下、服のあちこちが焼け焦げ、右腕には応急処置の跡がある。決して無傷ではなかった。
「――それで、狙いは引き出せたのか」ジオが、報告書を片手に尋ねた。
「――どうだろうな」ガレスが、遠くを見つめながら呟いた。「イグニスとカテナ、あの二人の態度を見る限り、こっちの"死"を、そこまで重要視してる様子はなかった」
「――ということは」
「――狙いは、俺じゃなかった、ってことだろうな」アクセルが、静かに言った。
その場に、緊張が走った。
「――なら、狙いは、あの子か」
その言葉に、アクセルが、ふと真顔になった。
「――いや、まだ断定はできねえ。……実を言うと、俺自身も、狙われる理由に心当たりがある」
「――どういうことだ」ジオが尋ねる。
アクセルは、しばらく黙った後、静かに口を開いた。
「――俺も、転移者だ」
その一言に、フィン、ダグラス、アイラが、揃って目を見開いた。
「――なんだと!?」
「――言ってなかったな、悪い。ただ、団長には、王都を発つ前に、もう伝えてあった」
ガレスが、頷いて補足した。
「――出発前、アクセルから直接聞いた。今回の任務に関わる以上、隠しておくのは危険だと判断して、俺の中だけに留めておいた」
「――俺だけじゃなく、ジェクスも転移者だ。……この際だから言うが、狙われてる可能性がある人間は、思ったより多いかもしれねえ」アクセルが続けた。
その言葉に、その場の空気が、また一段と重くなった。
「――『狙いは、あの子か』も、まだ一つの可能性に過ぎない、ということか」ガレスが、腕を組みながら唸る。
一同の視線が、少し離れた場所で介抱を受けている、ノアへと向いた。
学院を包んでいた朝日が、瓦礫の山を静かに照らしていた。まだ終わっていない何かが、その光の中に、確かに滲んでいた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
アクセルの偽装死、そして彼自身の転移者としての告白——重い引きから一転、安堵と新たな緊張が入り混じる回になりました。「知ってる人数が多いほど、演技に綻びが出る」というガレスの判断、フィンへの配慮のなさへの複雑な感情、そして「狙われている可能性がある人間は思ったより多い」という不穏な広がり。まだ真の標的は見えていません。
次話もお楽しみに。




