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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX


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第63話 報告

今回は視点を変えて、闇ギルド側の動きをお届けします。

夜空高く、姿を隠したまま、ゼインはその一部始終を見ていた。


眼下で繰り広げられる戦い――四天王の一体、ヴェナトルと、あの男との死闘。


(――また、強くなったな)


炎を纏った二本の剣、空を舞う身のこなし。以前見た時よりも、明らかに研ぎ澄まされている。


「――いいねえ、その目」


誰に聞かせるでもなく、ゼインは口の端を吊り上げた。にやつきながら、独り言のように呟く。


「もっと磨け。もっと輝け。……その分だけ、壊し甲斐がある」


やがて、ヴェナトルの体が、赤黒い光の粒子となって崩れ落ちていくのを、ゼインは最後まで見届けた。


「――ふうん。四天王が、あっさりねえ」


その死を確認すると、ゼインは興味を失ったように視線を外し、闇に紛れて飛び去っていった。


***


――遠く離れた廃墟の奥、闇ギルドの本拠地。


玉座めいた椅子に腰掛けた男の前に、片膝をついたゼインの姿があった。


「――報告します。メンブラ・レギスの一体、ヴェナトルが、討伐されました。この目で、しかと見届けてきました」


沈黙が落ちた。玉座の男――レトゥスは、しばらく何も言わなかった。


「――ちっ」


やがて、喉の奥から、低い舌打ちが漏れた。


「あの野郎、競売場の時は偉そうに命令してきやがったのによ。……蓋を開けりゃ、雑魚だったってわけか」


レトゥスは、鼻で笑いながら、玉座の肘掛けに頬杖をついた。


「――四天王とやら、ずいぶんと大層な看板だったが、案外あっさり死ぬもんだな」


「――いかがなさいますか」ゼインが、恐れる素振りも見せずに尋ねた。


「どうもこうもねえよ。……そろそろ、直接顔を出す頃合いだ」


レトゥスは、ゆっくりと立ち上がった。


「魔王の下に、行ってくる。四天王が減ったとなりゃ、向こうも次の一手を考えてるはずだ。……このまま俺たちだけで動いてても、埒が明かねえ」


「――お一人で、ですか」


「一人で十分だ。それに」


レトゥスは、口の端を歪めて笑った。


「――そろそろ、俺たちの動きも、次の段階に進める時期だろう。もたもたしてる暇はねえ」


レトゥスは、部屋を出ようとする直前、ふと足を止めた。


「――ゼイン。俺が戻るまでに、クインクェ・ウンブラエ(五人の影)を集めておけ」


「――畏まりました」


ゼインが頭を下げ、部屋を後にする。その表情には、まだ隠しきれない愉悦が滲んでいた。


「――あいつらを呼ぶか」


廊下を歩きながら、ゼインは一人、口の端を吊り上げた。


「クインクェ・ウンブラエ――五人の影、ねえ。癖強いんだよなあ、あいつら」


くつくつと笑いながら、脳裏に、五人の顔が浮かんでは消えていく。


――巨躯を誇る力自慢のモルド。台詞らしい台詞を口にしたことがなく、いつも拳を鳴らして返事の代わりにする男。


――毒を得意とするリーザ。笑った顔を見た者は、ギルド内でも数えるほどしかいないと噂される、感情の読めない女。


――戦利品集めが趣味のバゼル。討伐した相手の牙や骨を後生大事に飾り立て、誰彼構わずその由来を語りたがる、軽薄な饒舌家。


――気配を殺すことに長けたクロウ。声を発したところを見た者がいないほど、常に無表情で影のように動く男。


――芝居がかった物言いを崩さないダリア。派手な立ち回りを好み、戦いすらも観客に見せる舞台だと信じて疑わない女。


(――まったく、揃いも揃って、まともな奴が一人もいねえ)


だが、それでいい。まともな人間に、闇ギルドの幹部などという役目は務まらない。


ゼインは、笑みを浮かべたまま、五人を呼び集めるための足取りを速めた。


一人残った玉座の間で、レトゥスは、窓の外に広がる夜空を見上げた。


「――さて。魔王は、何を仰るかね」


その呟きは、誰にも届かないまま、静かに闇に溶けていった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

ゼインの執着、レトゥスの冷徹な反応、そして「クインクェ・ウンブラエ(五人の影)」という新たな脅威——物語の裏側で、着実に何かが動き始めています。

次話もお楽しみに。

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