表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/85

第60話 正義の盾

第60話です!


先導隊が発って三日目の夜、残留組に予期せぬ襲撃が訪れます。


先導隊が発って三日目の夜、フィーレの指導のもと、ジェクスたちは変わらぬ稽古を続けていた。


「――今日はここまでにしましょうか」


フィーレがそう言いかけた、その時だった。


施設の外れ、警備に立っていた騎士の一人が、悲鳴じみた声を上げた。


「――何者だ!」


全員が、反射的に武器を構えた。


夜闇の向こう、施設を囲むように、複数の人影が姿を現していた。人間離れした気配――ジェクスの中で、想定録が一斉に警鐘を鳴らす。


「――魔族!」カイドが叫ぶ。


魔族の一団が、一斉に襲いかかってきた。人型の輪郭を持つ、黒く濁った存在。


「――数が多い!」ドムが盾を構えながら叫ぶ。


フィーレが風の刃を放ち、ジオが槍で応戦する。ジェクスとカイドも、それぞれの得物で目の前の敵を迎え撃った。想定録の棚を辿っても、正体不明の相手ではあったが、数さえ捌ければ、決して届かない相手ではなかった。


一体、また一体と、魔族の影が崩れ落ちていく。


だが、そこに紛れていた一体――ひときわ大きな影が、明らかに他とは違う気配を放ちながら、前に進み出た。


その影が、こちらを見据えた。人型の輪郭の奥、赤黒い両目だけが、はっきりと浮かび上がっている。


「――アリシャ・レイフィールド。探したぞ」


名指しされたアリシャの体が、一瞬、強張った。


「――なぜ、私の名前を」


「魔王様の下には、貴様のような"良質な器"を探す手段がある。……この程度の警備で、隠しきれると思ったか」


その言葉に、ジェクスの中で、これまでの断片が一気に繋がった。北の森、行商人の失踪、王宮周辺の不審な出入り――全てが、この瞬間のための布石だったのかもしれない。


「――アリシャさんを、狙ってたのか」


「そうだ。……それも、この場にいる全員を片付けた後の、話だがな」


影が、一斉に踏み込んできた。狙いは、明確にアリシャだった。統率の取れた、揃った速度での斬りかかり――受けきれない、と誰もが悟った瞬間だった。


無数の刃が、闇を切り裂いて飛来した。


「――なっ!?」


宙を舞う剣、槍、斧――魔力で瞬時に鋳造されたとおぼしき武器の群れが、迫る影を次々と打ち払っていく。


その出所は、施設の屋根の上だった。


「――やはりな」


低く呟きながら、一人の男が屋根から飛び降りてきた。


「――オルグレン様!?」


アリシャが、目を見開く。先導隊と共に発ったはずの団長が、そこにいた。


「――説明は後だ。今は、目の前の敵に集中しろ」


オルグレンが剣を抜く。その太刀筋には、かつて見た豪快さとは別種の、研ぎ澄まされた鋭さがあった。


「――なんで、ここに」ジェクスが尋ねる。


「――俺の勘が、当たっちまった、ってだけの話だ」


「――させるか!」


ジェクスが割って入るが、影の速度は、これまでの魔族とは比較にならなかった。爪の一撃が、肩を掠める。


「――くっ!」


「――ジェクス!」


アリシャが、咄嗟に前に出た。振り下ろされる爪の軌道に、避ける間はない。


(――ここしかない)


アリシャは、奥歯を噛みしめながら、意識を強く集中させた。胸元が、淡い光を放ち始める。


光は、瞬く間に彼女の周囲を包み込み、透明な盾のような形を成していく。振り下ろされた影の爪が、その盾に激突した。


「――ぐっ……!」


盾は、割れそうなほどの軋みを上げながら、それでも爪を押しとどめた。ぎりぎりのところで、致命の一撃を防ぎきる。腕に走る痺れるような負荷に、アリシャは思わず膝をつきかけた。


「――間に合った……」


肩で息をしながら、アリシャは自分の手のひらを見つめた。制御しきれるかどうかの瀬戸際で、間一髪、力を引き出せた実感があった。


その光景を、ジェクスは呆然と見つめていた。


(――ギフト、だと?)


アリシャがギフト持ちだと、これまで一度も聞いたことはなかった。だとすれば、彼女もまた――


(――転移者か、転生者か)


想定録の棚に、これまでとは違う種類の空白が、大きく口を開けた。


「詳しい話は後だ!」オルグレンが叫びながら、影の背後へ回り込む。「今は、目の前の敵をどうにかするのが先だ!」


盾に阻まれ、体勢を崩した影へ、オルグレンの剣が鋭く突き込まれた。


夜の闇の中、まだ見ぬ脅威との戦いが、本格的に幕を開けようとしていた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

隠れていたオルグレンの登場、そしてアリシャの秘めた力——大きな動きのある回になりました。「彼女もまた、転移者か転生者か」というジェクスの気づきが、この後どう二人の関係に影響していくのか、見届けていただけたら嬉しいです。

次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ