第52話 集められた面々
モレスタス討伐から一月ほど経ち、選抜メンバーによる合宿編がスタートします。見知った顔、初めて見る顔、それぞれの思いが交差する回です。
王都の郊外、森に囲まれた古い訓練施設に、選抜されたメンバーが集められたのは、モレスタス討伐から一月ほど経った頃だった。
「――随分と、豪華な顔ぶれだな」
到着したジェクスの目に、まず飛び込んできたのは、見覚えのある顔と、そうでない顔が入り混じった一団だった。
ガレスが、施設の入口で腕を組んで待っていた。
「――来たか。今回の合宿、俺が指揮を任された」
「――ガレスさんは、どうしてそこまで強いんですか」カイドが、率直に尋ねた。
ガレスは、少し気まずそうに頭を掻いた。
「――買いかぶるな。俺自身が一から得たものなんて、大して多くねえ。今の力は、大半が親から受け継いだものだ」
「――親、ですか」
「ああ。俺の両親は二人とも転移者でな。父親からはこの図太い体と、観察眼、多少の精神力。母親からは、氷を操る力と、素早い剣捌きを継いだ。……つまり、俺は自分の力っていうより、二人の積み重ねの上に乗っかってるだけだ」
その言い方には、謙遜というより、事実をそのまま述べているような響きがあった。
「――それでも、その力を磨いてきたのは、ガレスさん自身でしょう」ジェクスが言った。
「まあ、それなりにはな。だが、土台があったのとなかったのとじゃ、全然違う。……お前らも、似たようなもんだろう」
その一言に、ジェクスとカイドは、思わず顔を見合わせた。積み重ねの土台が、誰かから受け継いだものか、自分自身で積み上げたものか――その違いはあれど、根っこにある「積み重ね」という言葉は、確かに共通していた。
「言葉通りだ。魔王直属の四天王が、この大陸で暗躍してる以上、悠長にはしてられねえ。選ばれた奴らで、短期集中で強くなる。それと同時に、別動隊が情報収集に当たる」
ガレスの背後には、アリシャ、カイド、アクセル、そして王国騎士団の面々――ジオ、ドムの姿もあった。
「――リナは?」ジェクスが尋ねる。
「あいつは今回、別動隊に回ってる。弓の腕より、隠密の勘の方が買われたらしい」
見渡すと、他にも、フィーレやライアスの姿はなかった。合宿に呼ばれなかった面々は、恐らく情報収集の方に回されているのだろう。
「――今回集められたのは、純粋に"戦う力"を伸ばせる見込みのある奴らだ」ガレスが続けた。「情報収集は、それに向いてる奴らに任せる。適材適所ってやつだ」
施設の中庭に、参加者が集められた。ざっと見て、二十人ほどだろうか。見覚えのない顔ぶれの中には、他の五大国から派遣されてきたと思しき者たちも交じっていた。
「――全員、揃ったな」
ガレスが、一同を見渡した。
「今日から一月、みっちり詰め込む。逃げ出したい奴は、今のうちに言え。……いないな? なら、始めるぞ」
その一言で、施設の空気が一変した。
「――一月で、どこまで伸びるんでしょうか」隣に立つカイドが、緊張した面持ちで呟く。
「伸びしろがあるかどうかより、伸ばす覚悟があるかどうかだろ」
「――言うようになったな、お前も」
ジェクスは、小さく笑い返した。三十三年分の積み重ねの先に、また新しい一歩が始まろうとしていた。
「――まずは、それぞれの適性を見極める」ガレスが声を張った。「模擬戦形式で、全員の実力を洗い出す。相手は俺が務める」
その言葉に、集められた面々の間に、緊張と期待の入り混じったどよめきが広がった。
一月後、この場にいる誰もが、確実に何かを変えて出て行くことになる。ジェクスは、想定録の棚に浮かぶ新しい空白を見つめながら、静かに拳を握った。
(――さて。ここからだ)
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ガレスの「今の力は、大半が親から受け継いだものだ」という一言、そこから見える積み重ねの形も、ジェクスたちとはまた違う角度から描けたかと思います。一月間の合宿、ここからどんな成長が待っているのか——次話もお楽しみに。




