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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX


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第49話 メンブルム・レギス

大扉の奥で待ち受けていた存在が、ついに名乗りを上げます。この物語で初めて明かされる、大きな真実にもご注目ください。

# 第49話「メンブルム・レギス」


赤黒い両目が、愉悦を含んだ光を灯した。


「――ほう。十人も揃って、随分と賑やかだな」


低く、地の底から響くような声だった。空気そのものが震えるような重みが、声にはあった。


「――何者だ」カイドが、声を絞り出すように尋ねた。


「名乗るほどの相手か、貴様らが」男は、ゆっくりと立ち上がった。三メートル近い巨躯が、玉座から離れる。「まあいい。せっかくだ、教えてやろう。俺の名は、モレスタス」


その名を、ジェクスの想定録が、初めて何かに反応した。だが、拾えたのは断片だけだった。


「――魔王様からは、こう呼ばれている。メンブルム・レギス――魔王の四肢、とな」


「――四天王」ジェクスが呟く。「あんたが、そうなのか」


「四天王、ね。人間どもが勝手につけた呼び名だが、まあ、悪くない響きだ」


モレスタスは、傍らの棍棒を無造作に手に取った。ずしりとした重みが、握った瞬間から伝わってくるようだった。


「――ところで貴様ら、ここがどういう場所か、分かっているのか」


「――ダンジョン、だろう」アクセルが剣を構えながら言った。


「そうだ。だが、貴様らが思っているようなダンジョンではない」モレスタスは、口の端を吊り上げた。「これは、魔王様が作り出した実験場だ。この大陸に、いくつあると思う」


誰も答えなかった。


「――教えてやる。全部だ。貴様らが宝を求めて挑む、あのダンジョンとやらは、一つ残らず、魔王様の手による代物よ」


その言葉に、アリシャが息を呑んだ。


「――嘘、でしょう」


「嘘だと思うなら、それでいい。だが、真実は変わらん」


「――待て」アクセルが、低い声で割り込んだ。「街道で消えた行商人たちは、どうなった」


モレスタスは、心底愉快そうに口を歪めた。


「――ああ、あれか。残念だったな、あいつらは"当たり"じゃなかった」


「――どういう意味だ」


「言葉のままだ。転生者じゃなかったから、大人しくこのダンジョンの贄にしてやった、というだけの話だ」


その一言に、その場の空気が凍りついた。


「――お前」


「あ」モレスタスは、思い出したように片眉を上げた。「――転生者の話は、まだ人間どもには早かったか」


だが、すぐにその表情は、興味を失ったように緩んだ。


「――まあいい。どうせ貴様らも、ここで全員殺す。今更、口を滑らせたところで問題あるまい」


モレスタスは、棍棒の先で、床の紋様をなぞるように示した。


「この場所も同じだ。貴様らのような、欲に目の眩んだ愚か者どもを誘い込み、死体と魔力を吸い上げて育つ。何百、何千という冒険者が、ここで――いや、他のダンジョンでも同じように、無為に朽ちていった」


「――お前」カイドの声に、明確な怒りが滲んだ。


「何を怒っている? 貴様らも、宝と栄光を求めて、勝手に潜っていったのだろう。それが誰の掌の上だったかも知らずにな」


モレスタスは、喉の奥で低く笑った。


「――哀れなものだ。生きるためだと、家族を守るためだと、それぞれ立派な理由を掲げて潜り、そして死んでいった。全部、魔王様の実験の糧になっただけだというのに」


「――黙れ」ジェクスが、静かに、だが明確な声で言った。


「なんだ、怒ったか」モレスタスは、心底愉快そうに笑った。「――そうとも知らずに、バカな生き物だ。貴様らも、その他大勢と、何も変わらん」


棍棒が、軽々と持ち上がる。ただそれだけの動作で、周囲の空気が重く歪んだ気がした。


「――さて。貴様らも、その糧の一つに加わるか。それとも」


赤黒い両目が、細められた。


「少しは、楽しませてくれるか」


十人は、それぞれの得物を構え直した。ジェクスは、想定録の棚に浮かぶ空白を見つめながら、静かに息を整える。


(――バカな生き物、か)


その言葉が、腹の底で静かに燃えていた。


「――教えてやるよ」ジェクスは、剣を構えながら、モレスタスを見据えた。「積み重ねてきたのは、俺たちも同じだ」


最後まで読んでいただきありがとうございました。

モレスタスの口から語られた、ダンジョンの正体と行商人たちの結末——これまで積み上げてきた伏線が、ここで一気に繋がりました。「そうとも知らずに、バカな生き物だ」という嘲笑に、ジェクスたちがどう応えるのか、次話からいよいよ本格的な戦闘です。

感想・評価いただけると励みになります。次話もお楽しみに。

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