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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX


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第44話 2人のリーダー

魔法陣によって分断されたカイドとアクセル、それぞれの状況をお届けします。見知らぬ相手との即席パーティー、そして未知のダンジョンでの初戦闘——二つの視点を交互に描いています。


光に呑まれた瞬間、カイドが最後に見たのは、ジェクスの隣で同じように光に包まれていくアリシャの姿だった。


次に目を開けた時、そこは薄暗い石造りの部屋だった。壁際に燐光石が淡く光り、周囲には見覚えのない三つの人影――アリシャの部下たちが、警戒した様子でこちらを見ていた。


「――お前ら」


「――カイド殿か。副団長は?」


一番年嵩の男が、剣を構えたまま尋ねた。


「俺も知らねえ。気づいたらここにいた」


三人の部下は、顔を見合わせた。それぞれ、槍使いらしき壮年の男、弓を背負った若い女、そして重装備の大柄な男。統率された動きから察するに、腕は確かなようだった。冒険者で言えば、A級に匹敵する実力だろう。


「――状況を整理しよう」カイドが切り出した。「あの魔法陣で、俺たちは何組かに分けられた。ジェクスと副団長がどこに飛ばされたかは分からねえ。まずは、ここがどこかを確かめる」


「――同意する」槍使いの男が頷いた。「ジオ、リナ、ドムだ。よろしく頼む」


「カイドだ」


短い自己紹介を終え、四人は慎重に部屋を出た。壁一面に規則的な模様が刻まれた通路が、奥へと続いている。


「――これ、ダンジョンか」リナと呼ばれた弓使いの女が呟いた。


「らしいな。だが、普通のダンジョンとは何かが違う」


歩き出してすぐ、通路の奥から、重い足音が響いてきた。


「――何だ、あれは」


姿を現したのは、岩を組み上げたような、無骨な人型の巨躯だった。目にあたる場所に、赤黒い紋様が鈍く光っている。関節の継ぎ目からは、砂のような粒子がこぼれ落ちていた。


「――石の番兵、か」ジオが低く唸る。「聞いたことねえ種類だ」


「来るぞ!」


カイドが剣を抜き放つ。ジオが槍を構え、ドムが盾を前に出し、リナが矢をつがえる。


石の巨躯が、四体、通路を塞ぐように現れた。


「――統率、取れてるな」ドムが低く唸る。


「一体ずつ削るぞ。ドム、盾で受け止めろ。リナ、動きが鈍い分、狙撃で目を潰せ。ジオは俺と並んで俺と両翼を潰す」


咄嗟の指示に、三人は迷わず従った。初めて組む相手とは思えないほど、連携は滑らかだった。


リナが矢筒から一本抜き取り、鏃に風の魔力を纏わせる。圧縮された風が、鏃の周りで唸りを上げた。


「――抜けろ!」


放たれた矢が、風の刃を纏ったまま、石の巨躯の目に突き刺さる。ただの鏃なら弾かれていたはずが、圧縮された風の力が、岩の表面をこじ開けるように貫いた。


盾に受け止められた一体が怯んだ隙に、カイドとジオが左右から斬りかかった。だが、剣も槍も、石の表面に浅い傷しか刻めない。


「――こいつら、硬すぎる」カイドが舌打ちする。


(――一体だけなら、あれが使えるか)


カイドは剣を鞘に収め、静かに構えを落とした。呼吸を整え、力を抜く。日々の地道な鍛錬とは違う、剣聖から叩き込まれた、もう一つの奥義――鞘の内側に、じわりと魔力が満ちていく感覚があった。あの技は魔力の消費が激しく、今の自分ではせいぜい一日に三度が限度。ここで使うなら、慎重に選ばなければならない。


「――一番硬そうな奴を、俺が仕留める。残りは頼めるか」


「任せろ」ドムが盾を構え直す。


ジオが穂先に雷を纏わせ、リナが再び矢に風を纏わせる。二人がかりで一体を押さえ込み、ドムが盾で防御を固める間に、カイドは残る中でも一際頑丈そうな一体との間合いを静かに詰めた。


抜刀の瞬間、鞘に溜め込んだ魔力の全てが、刃先の一点へと注ぎ込まれる。


「――斬る」


一閃。振るった軌跡に、目に見える斬撃は残らなかった。だが、その石の巨躯は、まるで最初からそこに継ぎ目があったかのように、綺麗に両断されて崩れ落ちた。


残る三体は、ジオの雷とリナの風、そしてドムが作った隙を突いて、胸元の紋様の集中する一点――核を、次々と打ち砕いていった。最後の一体が崩れ落ちた時、四人は肩で息をしていた。


「――思ったより、消耗するな」カイドが剣を鞘に収めながら言った。


「同感。……にしても」ジオが辺りを見渡す。「この場所、妙に静かすぎる。まるで、俺たちを迎え撃つ準備をしていたみたいに」


その言葉に、カイドは背筋が冷えるのを感じた。


***


一方、別の階層――


光が収束した先で、アクセルが最初に確認したのは、自分の体に傷がないことだった。次に、周囲を囲む三人の人影。


「――お前ら、無事か」


「はい。……あなたは?」


若い剣士の一人が、警戒した声で尋ねた。


「アクセルだ。ルベリオスの冒険者。副団長と一緒にいたはずが、気づいたらここにいた」


三人の部下――剣士が二人、魔法使いが一人。全員、まだ若く、実戦経験は浅そうだった。冒険者で言えば、まだB級といったところだろう。


「――正直に言う。俺は、お前らほど連携に慣れてねえ。だが、腕には自信がある。指示は出すから、動きだけ合わせてくれ」


三人は、互いに顔を見合わせた後、頷いた。


「――お願いします」


歩き出してすぐ、通路の先に、白骨の剣士が姿を現した。錆びついた剣を手に、虚ろな眼窩だけがこちらを見据えている。数は、六体。


「――何だ、あれは」剣士の一人が声を上げた。


「骨の兵隊、ってところか。数は多いが、動き自体は単調そうだ」


「――多いな」アクセルが両手の柄に指をかけた。「魔法使い、お前は下がって援護に回れ。剣士二人は俺の左右につけ。俺が中央を切り崩す」


指示に従い、三人が動いた。だが、実戦慣れしていない動きは、随所に硬さが見えた。


「――力むな。獲物じゃなく、隙間を見ろ」


アクセルが叫びながら、二本の剣を同時に振るった。小柄な体に秘めた、常人離れした筋肉の密度が生み出す五倍の膂力が、白骨の剣士を次々と打ち砕いていく。だが、数の多さに、徐々に包囲されかけていた。


「――アクセルさん、後ろ!」


魔法使いの女の声に、アクセルは即座に振り返り、迫る一体を斬り伏せた。


「――助かった。腕は悪くねえな」


「まだまだです」


軽口を交わす余裕が生まれた頃には、六体すべてが霧散していた。


「――さて」アクセルは、剣を鞘に収めながら、通路の奥を見据えた。「厄介なのは、ここからだろうな」


三人の若い冒険者は、顔を見合わせながらも、確かな頷きを返した。


見知らぬダンジョンの中、それぞれの組が、まだ見ぬ奥へと足を進めていった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

カイド組は石の番兵、アクセル組は白骨の剣士——ジェクスたちが対峙した敵とはまた違う相手との戦いになりました。カイドが切り札の居合斬りを温存しながら仲間との連携で切り抜ける判断力、アクセルが経験の浅い部下たちをまとめ上げるリーダーシップ、それぞれの個性が出せていれば嬉しいです。

「妙に静かすぎる」「まるで迎え撃つ準備をしていたみたいに」——この違和感が、今後の展開にどう繋がっていくのか。次話以降、いよいよこのダンジョンの正体に迫っていきます。

感想・評価いただけると励みになります。次話もお楽しみに。

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