第41話 追跡
商人失踪の一件を皮切りに、大陸各地の類似失踪を洗い出した結果、思った以上の規模の異常が浮かび上がってきます。ジェクス・カイド・アクセルの三人が、いよいよ拠点と思しき場所へ向かいます。
# 第41話「追跡」
ルベリオスからの帰り道、ガルドナーはずっと押し黙ったままだった。
「――オヤジ、何か考えてるだろ」カイドが横から声をかける。
「……行商人が消えた地点の焦げ跡、あれと似た反応が、他にもないか調べる必要がある」
「他にも?」ジェクスが聞き返す。
「もし本当に転移者を狙って人攫いをしてるなら、街道の一件だけとは限らん。似たような"消え方"をした人間が、他にもいるかもしれん」
街に戻ってすぐ、ガルドナーはギルド間の連絡網を使い、近隣国も含めた失踪情報の洗い出しを依頼した。数日後、届いた報告に、全員が息を呑んだ。
「――ここ半年で、似た状況の失踪が四十件近い」ライアスが地図に印をつけながら言う。「どれも、争った形跡がなく、忽然と消えている」
四十近い印は、大陸の広い範囲に散らばっていた。だが、よく見ると、ある一点を中心に、緩やかな円を描くように分布している。
「――ここが、中心か」
ガルドナーが指し示したのは、地図上の、人の住まない山岳地帯だった。
「――魔族の拠点が、この辺りにある可能性が高い、ってことですね」ジェクスが言う。
「かもな。だが、確証はねえ。それに、もし本当に拠点があるなら、生半可な人数で突っ込むのは自殺行為だ」
「――それで、どうするんですか」カイドが尋ねた。
「まずは、周辺の偵察だ。戦うためじゃない、確かめるためだけの偵察」
ガルドナーは、地図上の山岳地帯を、じっと見つめた。
「――ジェクス、カイド。お前らに任せる。だが、絶対に無理はするな。何か見つけたら、即座に引け」
「――俺も行く」
その一言に、全員が振り返った。応接室の入口に、アクセルが立っていた。
「――お前は」ガルドナーが眉をひそめる。
「ルベリオスのマスターには話をつけてきた。俺も転移者だ。狙われる側の一人として、無関係じゃいられねえ」
ジェクスとカイドは、顔を見合わせた。
「――歓迎する」ジェクスが言った。「戦力は多いに越したことはない」
「決まりだな」アクセルが、口の端を上げた。「――言っとくが、足は引っ張らねえぞ」
三人は、翌朝早く、山岳地帯へ向けて出発した。ジェクスとカイドは飛行で、アクセルは魔力を纏わせた脚力で、山肌を駆け上がっていく。
「――お前、地上をあの速度で走れるのか」
「二刀流と一緒に鍛えた技だ。空は飛べねえが、これなら十分張り合える」
軽口を交わしながらも、三人の目には、油断のない緊張が宿っていた。
山岳地帯の入口に近づくにつれ、空気が変わっていくのを、ジェクスは肌で感じた。北の森で覚えた、あの禍々しい気配――それが、より濃く、より広範囲に漂っている。
「――間違いない。この先だ」
想定録の棚を辿っても、この先に何が待っているのか、確かなことは何一つ分からなかった。だが、それでも足を止める理由にはならなかった。
「――行くぞ」
三人は、山の奥へと足を踏み入れていった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
半年で40件近い失踪が、一点を中心に円を描いていた——この事実だけで、事態の深刻さが伝わっていれば嬉しいです。アクセルの「狙われる側の一人として無関係じゃいられねえ」という参戦の仕方も、彼らしい真っ直ぐさだったと思います。
三人が踏み入る山岳地帯で何が待っているのか——次話で、いよいよその答えに近づいていきます。
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