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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX


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第17話 オタクと美女

魔石ハンターから、この世界の"敵"についての基礎知識を学ぶ話。そして、新しい出会いの話です。


「――で、結局あんたは何しにここに?」


執務室の椅子に深く座り直しながら、ジェクスは魔石ハンターに尋ねた。フードを外したその顔は、思ったよりずっと若かった。


「暴走しかけた魔石の後処理を任されてたんだが……もう片付いてるとはな。話には聞いてたが、大したもんだ。――ああ、名乗ってなかったな。ライアスだ」


「魔石について、詳しいんですか」


その一言に、魔石ハンターの目つきが変わった。


「詳しいなんてもんじゃねえ。俺はこの世界で、魔石を一番理解してる自信がある」


前のめりになったその様子に、ガルドナーが小さく苦笑した。


「――始まったぞ。付き合ってやれ」


「そもそも魔石ってのは、鉱物じゃねえ。あれは"生き物"だ」


「生き物?」


「正確には、魔物や魔族――自分の体内の器官で、魔力そのものを生成する生き物のことを言う。魔石ってのは、その器官の副産物、あるいは器官そのものだ。奴らが死ぬと、体外に出て結晶化する」


魔石ハンターは指を一本立てた。


「んで、そのうち動物の姿をしてるのが"魔物"。もう一本」


指を二本立てる。


「人型をしてるのが"魔族"。さらに、魔族の中でも規格外に魔力量が多い、選ばれたごく一部の個体――それが"魔神"だ」


「ヴォルカニスは」


「動物型だから魔物だな。あの大蛇クラスになると、魔石も相応にデカくて質がいい」


ジェクスは想定録を開き、今聞いた話を一つずつ項目として刻んでいった。魔物・魔族・魔神という区分。魔石は生成器官の副産物であること。この街の周辺で魔物が増えれば、魔石の残骸も比例して増えること。


「――なあ、聞いてるか?」


「聞いてます。続けてください」


「お、いい反応するじゃねえか。実はな、魔石の質ってのは……」


魔石ハンターはそれから小一時間、誰にも止められないまま魔石談義を続けた。ガルドナーは途中で呆れたように席を外し、戻ってきた頃にはまだ話が終わっていなかった。


***


数日後、年に一度だけ張り出される特別依頼――辺境の霊峰にある祠へ、王家からの奉納品を届ける任務を、ジェクスは一人でこなして戻ってきた。飛行があれば往復数日の道のりも半日で済む。


ギルドの扉を開けると、受付の奥、いつもとは違う空気を纏った人物が目に入った。


金色の髪が、窓から差し込む光を受けて輝いている。エメラルドを思わせる、澄んだ緑の瞳がこちらを見た。すらりとした立ち姿は、この世界の人間とは明らかに違う気配を纏っている。


「――エルフ?」


思わず呟くと、ガルドナーが咳払いをした。


「ちょうどいいところに帰ってきた。紹介する。魔法を専門に扱う冒険者で、これからお前に魔法を教えてくれる人だ」


「初めまして。魔石ハンターから話は聞いてるわ。魔力は感じられるのに、操作は素人同然だそうね」


涼やかな声だった。値踏みするような視線が、ジェクスの全身をゆっくりと辿る。


「――失礼、初対面でじろじろ見るのは悪い癖なの。ただ、これだけの身体を作れる人間が、魔力操作だけできないっていうのは、少し面白いなと思って」


「よろしくお願いします」


「ええ。せいぜい、退屈させないでちょうだいね」


そう言って浮かべた微笑みには、どこか試すような色があった。ジェクスは想定録に、新しい項目を刻んだ。


――エルフの魔導士。師匠。名前は、まだ聞いていない。


魔石という存在の正体、そして新しい師匠との出会いでした。次回、いよいよ本格的な魔法の稽古が始まります。

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