表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
116/120

第116話 隠れ家

厳戒態勢のノルドへ、二人だけの潜入が始まります。


ノルド神聖王国の上空――近づくにつれ、ジェクスは、明らかな異変を感じ取っていた。


「――なんだ、この空気」


普段なら、荘厳でありながらも、どこか穏やかな気配を纏っているはずの国。だが、今は、上空にまで、明らかに厳重な警戒網が張り巡らされていた。巡回する飛行部隊の数が、普段の比ではない。


「――このまま、普通に降りるのは、まずいな」ジェクスが、低く呟いた。


「――どうするの」


「――魔力で飛べば、感知されかねない」ジェクスは、静かに、続けた。「だが、俺のギフトによる飛行は、魔力そのものを使うわけじゃない。……感知網に、引っかかる心配は、少ないはずだ」


「――つまり?」


「――抱えて、飛ぶ。目にも止まらない速度でな」


その提案に、アリシャは、一瞬、頬を赤らめた。


「――……仕方ないわね」


ジェクスは、アリシャの体を、そっと横抱きに抱え上げると、静かに、意識を集中させた。


「――行くぞ」


その一言とともに、ジェクスの姿が、残像だけを残して、かき消えた。警戒網の隙間を縫うようにして、まさに瞬きする間もない速度で、二人は、街の裏路地へと、音もなく、降り立っていた。


「――今の、誰にも気づかれてない、わよね」アリシャが、辺りを見回しながら、小さく息を整えた。


「――大丈夫だと、思いたいな」


フードを目深に被り、人目を避けながら、慎重に、街の奥へと歩を進めていく。


「――このまま、当てもなく歩き回るのは、危険かもしれない」ジェクスが、低く呟いた。


その時だった。


「――こちらです」


囁くような声が、路地の陰から、静かに、かけられた。


振り返ると、そこには、神殿騎士団の装束を纏った、若い青年の姿があった。緊張を隠しきれない様子で、周囲を、絶えず、窺っている。


「――あなたは」


「――何も、言わずに、ついてきてください」


その一言に、ジェクスとアリシャは、一瞬、顔を見合わせた。


「――信用しても、いいのか」アリシャが、静かに、しかし鋭く、尋ねる。


「――時間が、ありません」青年は、焦った様子で、続けた。「シグルド様の、知り合いの方々ですよね。……お願いです、早く」


その言葉に、ジェクスは、静かに頷いた。


「――分かった。案内してくれ」


青年は、安堵したように息を吐くと、静かに、先導を始めた。


***


案内された先は、街外れにある、古びた倉庫だった。一見、何の変哲もない建物だが、その内部には、巧妙に隠された、地下への入口があった。


「――こちらです」


青年に続いて、地下へと降りていくと、そこには、簡素だが、確かに人の手が入った、隠れ家らしき空間が広がっていた。


「――お前、名前は」ジェクスが、静かに尋ねる。


「――ルカと、申します」青年は、そう名乗ると、静かに、頭を下げた。「神殿騎士団の中でも、限られた者しか知らない場所です。……シグルド様も、時々、ここを使っていました」


「――シグルドは、無事なのか」アリシャが、思わず、身を乗り出した。


その問いに、ルカの表情が、僅かに、曇った。


「――正直、分かりません」ルカは、静かに、しかし、確かな不安を滲ませながら、答えた。「シグルド様が、書庫に潜入されたという噂は、私の耳にも入っています。……ですが、それ以降、消息が、掴めていません」


その言葉に、ジェクスとアリシャは、静かに、顔を見合わせた。


「――何が、起きてるんだ」ジェクスが、低く呟いた。


「――ここなら、話しても、大丈夫です」ルカは、周囲を見渡しながら、続けた。「神殿の上層部――一部の高位神官たちが、何かを、隠している。……それは、間違いありません」


その言葉に、静かな緊張が、隠れ家の空気を、重く満たしていった。


「――教えてくれ」ジェクスが、静かに、しかし確かな決意を込めて、口を開いた。「お前の知っていること、全部」


ルカは、しばらくの間、逡巡するように、視線を彷徨わせていた。だが、やがて、覚悟を決めたように、静かに頷いた。


「――分かりました」


その一言とともに、隠された真実への扉が、静かに、開かれようとしていた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

魔力を使わず、ギフトそのものの力で警戒網を突破する場面——アリシャを抱えて目にも止まらぬ速さで駆け抜けるジェクス、そして頬を赤らめるアリシャ、少し楽しんで書けました。ルカという新たな人物との出会い、そして「神殿の上層部が、何かを、隠している」という核心に迫る一言——シグルドの安否も気になるところです。

隠された真実に、二人はどこまで迫れるのか——次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ