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「異世界?それも想定内だ。33年間、あらゆる可能性を生きてきた男」  作者: JX
第一章 勝利は準備を愛する

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108/121

第108話 猶予宣告

静寂を破ったのは、突如として響いた怒声でした。


崩れかけた広間に、重い沈黙が満ちていた。


その静寂を破ったのは、突如として響いた、怒声だった。


「――おいおいおい!」


瓦礫の陰から、ゼインが、姿を現した。その目だけが、異様な光を放っている。


「――なに、戦いが終わったみたいな感じになってんの?」ゼインは、魔王を睨みつけた。「おい! 神だ、なんだ、俺には関係ねーんだよ!」


「――ゼイン……」レトゥスが、静かに、その名を呼ぶ。


だが、ゼインは、止まらなかった。


「――俺は、世界を壊したいんだーー!!」


その絶叫とともに、ゼインの体から、黒い雷が、無秩序に迸った。狙いは、ただ一点――ジェクスだった。


「――死ねぇ、ジェクスーー!」


その刃が届く、寸前だった。


「――悪いな」


背後から放たれた一撃が、ゼインの首筋を、正確に捉えた。ゼインの体が、糸の切れた人形のように、崩れ落ちる。


「――レトゥス……」ジェクスが、警戒を解かないまま、その名を呟いた。


レトゥスは、気絶したゼインを、静かに見下ろした。


「――こいつの言ってることも、まあ、もっともだよ」レトゥスは、静かに言った。「……俺も、神の戦争になんぞ、興味はねえ」


その言葉に、魔王が、僅かに目を細めた。


「――俺は、俺なりに、さらに上を目指す」レトゥスは、ゆっくりと、魔王へと向き直った。「育ててくれたことには、感謝してる。……だが、ここで、お別れだ」


「――そうか」魔王は、短く、そう答えた。


「――俺が、ギフト持ちじゃなくて、悪かったな」


その一言を最後に、レトゥスは、気絶したゼインを担ぎ上げ、闇の中へと、静かに姿を消していった。


その光景を見つめながら、討伐隊の面々の間に、動揺が広がった。


「――育ててくれた、って……」オルグレンが、低く、呟く。


「――ああ」魔王は、静かに答えた。「あいつは、俺の養子だ。……ずっと昔、拾ったんだよ」


その告白に、その場にいた誰もが、言葉を失った。四天王とすら対等に渡り合っていた、闇ギルドの創設者――その正体が、今、初めて明かされていた。


***


重い沈黙の中、静寂を破ったのは、ガレスの声だった。


「――一度、話を王都に持ち帰らせてもらう」


「――何?」


「あんたの言ったことが、全部本当だとしても……正直、話が大きすぎる」ガレスは、静かに、しかし真っ直ぐに、魔王を見据えた。「このまま、俺たちだけで判断していい話じゃない」


魔王は、しばらくの間、無言のまま、ガレスを見つめていた。


「――つまり、こういうことか」魔王が、静かに口を開いた。「ジェクス、あるいは他の誰かに、もっと強くなる可能性があれば――共に、神々を倒す道もある、と」


「――その可能性は、否定しない」ガレスは、頷いた。「だが、今この場で、答えを出せるほど、軽い話じゃない」


「――で、お前らは、何を望む」


「――一つ、取り決めをさせてほしい」ガレスは、静かに続けた。「バスティアへの侵攻――魔族や魔物が暴れないよう、統率を頼みたい。その間に、俺たちは、国へ持ち帰って、皆で話し合う」


その提案に、魔王は、しばらく沈黙した。


「――……いいだろう」


その一言に、討伐隊の面々の間に、静かな安堵が広がった。


「――ただし、条件がある」魔王は、静かに、続けた。「詳しい話をしよう」


その一言に、ジェクスは、静かに、拳を握りしめた。


(――これで、終わりじゃない。……まだ、決めなきゃいけないことが、山ほどある)


崩れかけた根城の中、緊張感を保ったまま、次の言葉が、静かに待たれていた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

ゼインの怒りに満ちた乱入、そしてレトゥスの意外な離脱宣言——「俺が、ギフト持ちじゃなくて、悪かったな」という一言に、これまで謎に包まれていた彼の正体が明かされました。ガレスの提案から、魔王との対話は、次なる局面へと進んでいきます。

次話もお楽しみに。

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