第104話 支えられる事
覚醒したジェクスと、仲間たちの連携をお届けします。
圧倒的な魔力を纏ったジェクスの姿に、討伐隊の面々が、目を見張った。
「――ジェクス……!?」ガレスが、思わず声を上げる。
「――生きてる……! 生きてるぞ、あいつ!」カイドが、拳を握りしめながら叫んだ。
だが、その声に構う間もなく、ジェクスは、既に地を蹴っていた。一人、魔王へと、真っ直ぐに突き進んでいく。
「――ぐ、っ!」
行く手を阻むように、無数の触手が、槍のように突き出された。一本、二本と斬り払っても、その隙間から、さらに次の一本が迫ってくる。あまりの数に、間合いを詰めることすら、ままならなかった。
「――近づけねえ……!」
その様子を、ガレスが、じっと見つめていた。
「――何を、突っ立ってやがる」オルグレンが、鋼の武器を構え直しながら、低く言った。「あいつ一人に、道を切り開かせる気か」
「――だな」ガレスが、剣を握り直す。「俺が、二本引き受ける!」
その一言を合図に、討伐隊の面々が、一斉に動き出した。
「――こっちも、二本だ!」ロルフが、大盾を構え、渾身の盾撃を叩き込む。
シグルドが、残る魔力を振り絞り、味方を癒しながら、自らも触手へと立ち向かう。ネリア、アイラ、ダグラス、それぞれが、必殺の一撃を、惜しみなく解き放っていった。
触手の壁に、次々と綻びが生まれていく。その隙間を、ジェクスは、はっきりと感じ取った。
(――一人じゃ、なかったのか)
想定録の棚を辿るまでもなく、その事実が、はっきりと胸に染み渡っていく。
(――転移する前は、一人で頑張るのが、当たり前だった)
誰にも頼らず、誰も頼ってこず、ただ、自分の力だけで、積み重ねてきた日々。それが、当然のことだと、ずっと思っていた。
(――共に頑張ることが、こんなにも、力になるなんてな)
その温かさが、じんわりと、胸の奥に広がっていった。
「――今のうちだ、ジェクス!」
その叫びに、ジェクスは、力強く頷いた。
「――ありがとうございます」
炎を纏った両の拳を握りしめ、ジェクスは、魔王――巨大な黒い獣へと、一直線に駆け出した。
「――ほう」
魔王が、僅かに、興味深そうな声を漏らす。
「――死に戻りとは、面白い余興だ」
その言葉と同時に、魔王の口元に、禍々しい魔力が、収束していく。
「――喰らえ」
放たれたのは、漆黒の魔弾だった。ジェクスは、即座に、その軌道を読み取った。
(――反射する)
だが、その瞬間だった。
「――ぬるいぞ」
魔弾に込められていた属性が、一瞬にして、雷へと切り替わった。
「――なっ!?」
読み違えた軌道に、体が反応しきれない。雷を纏った一撃が、ジェクスの体を、真正面から捉えた。
「――ぐああっ!」
爆音とともに、爆煙が、辺りを覆い尽くした。
「――ジェクス!」アリシャの叫びが、遠くから響く。
だが――。
煙の中、ジェクスの全身を、いつもの温かな炎が、優しく包み込んでいた。まるで、不死鳥がその身を纏うかのように。焦げついた部分から、炎が静かに立ち上り、その熱と共に、傷が、内側から塞がっていく。鋭い痛みが、確かに、体を貫いていた。
「――いってーなあ、くそ……」
ジェクスは、痛みに顔を歪めながらも、ゆっくりと、煙の中から立ち上がった。
「――ギフトで、魔力で、治癒力を底上げしてるからって」ジェクスは、荒い息を整えながら、静かに続けた。「痛みまで、消えるわけじゃ、ないんだよ」
その声に、魔王が、僅かに眉を寄せた。
煙が晴れると、そこには、焦げた衣服こそあれ、傷一つない、ジェクスの姿があった。
ジェクスは、剣を魔王へと真っ直ぐに突き向けながら、静かに言った。
「――簡単に、ギフトを奪えると思うなよ」
「――ほう」
「――今の一撃くらいじゃ、止まらない」
その言葉とともに、ジェクスは、再び、魔王へと向けて、地を蹴った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
一人で突っ込もうとしたジェクスを見て、仲間たちが自発的に動く場面——「転移する前は、一人で頑張るのが当たり前だった」という彼の内省も、これまでの積み重ねを踏まえると、より深く響くのではないでしょうか。魔王の奇襲を受けても、痛みを感じながらも立ち上がる姿——覚醒後の力の一端が見えてきました。
次話もお楽しみに。




