俺とサイクロプス
「すみません! 宿屋さん!? 開けてくれぇ!」
俺は、宿屋の前で大声を上げていた。
空き地で魔法の練習をしてたは良いけど、熱中し過ぎて夜中になってしまっていた。
俺の馬鹿!
「ちくしょう……」
気候が暖かいから良かったものの、冬なら死んでたかも。
俺はぶらぶら、異世界の町を散歩する事に決めた。
辺鄙な村らしいが実際、どうだろう?
双眼鏡みたいに遠くまで見える (夜でも昼のように明るく見える) 眼鏡をつけて町の探索を始めた (魔法屋で千ジュールした) 。
――――――――
「はぁ~~」
訳の分からない事を言う十五、十六くらいの男が風呂場に現れて胸を鷲掴みにしてくるわ、ギルドの試験に落ちるわ、試験に夜中まで掛かるわ良い事が全く無い一日だった。
と、フィナは暗い気分で船着き場に向かう。
ここはムド――海に面した村で漁業が盛んな町だ。
アイツ大丈夫かなぁ。
記憶喪失とかかもしれない。
だから、訳の分からない事を言ってたのかも。
三万ジュールはあると思うし……。
「ああ~! こんなに気になるんだったら真面目に話聞いとけば良かったぁ!」
既に後の祭り、仕方ない。
と、更に沈んだ気持ちで夜道を歩いていくと、
「けっ! 俺のどこがダメだっつうんだよ! あぁ!?」
先程、フィナと試験を受けて落ちた二十代の男が怒鳴り散らした。
フィナは何気なく声がした後ろの方を見る。
三十メートルは後ろ男は居る。
目は狂気的に輝き、かなり危ない。
「ちくしょう! あ~! 糞!」
直後フィナの顔は驚愕で彩られた。
フィナの真後ろに男は現れたのだ。
「また、可愛い女の子を売り飛ばさなきゃなんねぇじゃねえか」
ニヤリと平べったい笑いを顔に貼り付けて男はフィナの手首を力強く掴んだ。
と、同時。
フィナの口に男の手の影が、押し付けられた。
「んむい(ゲイン)!」
フィナは咄嗟に片方の手から紫色の本を出す。
「お前……召喚士か!」
「むーと(ゲート)!」
呪文と共に本が風も吹いていないのに勝手に捲れていく。
そして、何かが飛び出したと同時に二人は影を纏って忽然と消えた。
本から出て来た生物は、先程フィナが居た場所に向かって言う。
「1ヶ月ぶりじゃないですか! フィナさん?」
一つ目の筋肉質な生物――サイクロプスが異変に気付いて辺りを見回した。
――――――――
「あり得ねえ」
俺は走りながら呆然と呟いた。
俺に金をくれた女の子が男と一緒に消えた。
更に一つ目の化け物が女の子の本から出て来た。
どうなってんだ? チキショウ!
あの化け物は何か知ってる筈だ、と決めつけて走る。
化け物の傍まで来ると化け物は、俺に訊く。
「おい! フィナさん知らないか?」
頭を横に振った。
ああ、フィナの仲間か。
安堵しながら、訊く。
「それよりお前は誰なんだ?」
「俺はサイクロプス。サイって呼ばれている」
誇らし気に言うサイクロプスに向かって言う。
「うわぁ、安直」
「何だとテメェ! フィナさんから頂いた名前にケチつけんのか!」
胸倉を掴まれる。
す、すげえ力だ。
ギリギリと万力のように首が締め上げられていく。
息が出来ねえ……。
「ズドッブ、ズドッブ……」
タップタップ。
瞬間。
俺とサイクロプスも消えた。




