恋の大騒動
俺が家に入ると、姉さんと杏が慌ただしく迎えてくれた。
「ユウ君!?……ユリヤ様は…?」
「アカネがいないということは、追跡は失敗したのね…。」
それぞれのリアクションはまぁ当然と言えるが、正直今日はもう疲れた。
姉さんの相手すらまともにできる気がしない。
というか、ユリヤに変なことを言われたせいで姉さんの顔を見づらい。
「ユリヤに空間の転移で送ってもらったんだ。本人は多分自国…自分の家にいると思うよ。アカネはまだどっかの海を走ってるんじゃないかな。」
「そ、そう…。ユリヤ様と何を話していたの?ユウ君。」
「私も、気になるわ。」
「…別に。少し思い出話をしただけだよ。今日は疲れたからもう寝るね。」
「えっ?ええ…。」
一応、例の契約もある。
俺に破った代償はないはずだが、ユリヤは信用できない。
別れる前の強引さも考えると、何か仕込まれていても不思議ではない。
今、この思考を読まれていないとも限らない。
今日はもう何も考えずに休み、明日からの行動に備える。
朝イチにメグに、
…いや、だから余計なことを考えるな。
今日はもう部屋から出ず、何もせず、何も考えずに、今日という日が終わるのを待つ。
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「…なんだか、ユウ君の様子がおかしかったような…。」
「私もそう思ったわ。疲れたと言っていたし、ユリヤ様と一体何を…?神楽相手にもなんだか素っ気なかったし………まさかっ!?」
急に大きな声を上げる杏。
何か心当たりがあるのかしら?
「言えない内容、ユウト君に好意を持ったユリヤ様と2人きり、疲れた様子、神楽にすら素っ気ない態度…。」
「……?」
何が言いたいのか良く分からないわね。
「行く前も、急にユウト君は態度を変えていたように見える。…そう、脅されていたみたいに。まさかユウト君、ユリヤ様に襲われたりなんか、してないわよね…?」
「!?」
そ、それは由々しき事態よ!
ユウ君の貞操がユリヤ様に奪われてしまった!?
事実関係を確認しなければならないわね…。
しかし、どうやって…?
…………いや、落ち着くのよ。
ユウ君に限ってそんなことはないはず。
ユリヤ様だって、そんな節操無しな人とは思えない。
思えない…。
思えない?
……………分からないわね。
そもそも今朝だってかなり強引だったように思う。
第一ユウ君だって、年齢的にもそういうものにも興味がないわけない。
ユリヤ様もとても美人だったし、
ユリヤ様の能力なら…ユキさん?とかいう、好みの女性の姿を真似て『あんなこと』や『こんなこと』を!?
ユウ君は私のユウ君なのに!!
「……ぐらっ!神楽っ!!」
頬をペチペチ叩かれて現実に戻る。
「痛いわ、杏。」
「あなたがトリップして戻ってこないからでしょ。それより、事の真相を確かめる必要があるわ。」
「同感よ。でもどうやって?」
「ユウト君って、多分かなりドライよね?」
「そうね。基本的にあまり何かに熱中したりってことも少ないわ。麻雀はかなり好きだったと思うけど……。でもそれがどうしたの?」
「ユウト君って、アカネの裸とかは見たことある?」
「何でそんなことを?…裸は流石にないと思うけど、下着姿は何度か見ていると思うわ。ほら、アカネはあの性格だし…。」
「その時の反応は?」
「ユウ君は基本的にはアカネの色香に惑わされたりはしないけれど、私がいなかったら絶対の保証はない…ってところかしら?」
前も無理やりアカネの胸を掴まされそうになった時はかなり動揺していたし、初めて杏と会った日の事件も、杏に腰に抱きつかれていたユウ君の『ユウ君』は立派に自分が男であることを主張していた。
つまり、我慢強く理性が強いだけの
普通の男の子なのだ。
「…そうよね。つまり、ユウト君はそもそも普通の色仕掛けじゃその精神の牙城を突き崩すことはできない。」
「……何が言いたいの?」
「もしユリヤ様とその…そういうことをしてしまったと言うのなら、なおのこと過激なことをしても全く反応を示さないのではないのかしら?」
「!?あなた、まさか…」
「アカネを含めた私たち3人の…色仕掛け大作戦!これしかないわ!!3人で大胆な色仕掛けを実行。その時のユウト君の反応を確認するわ。」
「杏…あなた……」
頭、大丈夫?
とは言えない。
ものすごく真剣な顔をしているから。
「…本気で言っているの?」
正気なの?
とは聞いても許されるだろうか。
「本気も本気よ。もし、ユリヤ様が本当にユウ君を…性的に襲ったと言うのなら、ただでさえ冷静なユウ君はほとんど動揺せずに私達の相手をまともにしてくれないんじゃないかしら?」
「こちらの異常を心配して慌てふためく可能性のほうが高そうだけど。ある意味ものすごく動揺すると思うのだけど。というか、もし万が一ユウ君が暴走してしまったらどうするの?」
「それは願ったり叶ったりよ。」
「ええ…?」
やっぱり、この子病院に連れていったほうが…
「もしユウ君の貞操がユリヤ様に奪われてしまったのなら、神楽。あなた、このままでいいの?」
「…どういうこと?」
「好きなんでしょ?ユウト君のこと。弟じゃなく、男の子として…異性として。」
「………」
「私もアカネから軽く聞いてただけだから下手なことは言えなかったけど、昨日神楽の話を聞いて確信したわ。あなたのユウト君への態度、とても姉弟愛で済ますのは不可能よ。無理があるわ。」
「でも、私達は姉弟で、家族だから…」
私とユウ君は、姉と弟。
血は繋がってなくても、家族なんだ。
…だけど、
「分かったわ。じゃあこの作戦は私とアカネだけでやる。私は恩人だからと言って、ユリヤ様にユウト君をむざむざと渡すつもりなんてないわ。貞操が奪われてしまったのなら、少なくても私達もそのステージに行く必要がある。」
「…えっ?」
「家族である神楽は大人しく部屋で待ってるといいわ。私とアカネは1つ上のステージに行かせてもらう。このまま黙って指を咥えて見てるなんて、私にはできないもの。」
そう言って杏は電話をかけ始める。
おそらくはアカネだろう。
私はどうする?
私はどうすればいい?
私がユウ君に色仕掛け?
気持ち悪いと、思われるのではないか?
私のこと、姉としか見てくれていないのではないか?
私はユウ君が…好き、だけど。
ユウ君は私を大切にしてくれるけど…
それは女としてではなく、姉として。
家族として、だろう。
変なことをして嫌われたくない…。
…でも、
ユリヤ様やアカネや杏、
他の女の人に取られたくない。
ユウ君は、私だけのユウ君なんだから。
「私も…私もやるわ。」
電話を終えた杏がこちらを真っ直ぐ見てくる。
「神楽、良い顔をするようになったわね。」
何故だろう。
何かが激しく間違っている気がする。
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「気のせいではないですよ。神楽さん。」
ユウ君と別れた後、念のため彼の家の様子を覗いてみますが、なにやらとんでもない展開に進んでいるようです。
しかも私のせいにされているのが非常に心外ですね。
けど、面白そうなので特に手を出すのはやめておきましょう。
ひょっとしたら素晴らしいシーンを拝めるかもしれませんので、楽しみにしておきます。
彼はどうやら律儀に契約を守ってくれているようです。
代償もなにも無いというのに。
まぁ私に対する信用が地に落ちてしまっただけのようですが。
構いません。
彼を守るためなら、私はなんでも…。
おそらく彼は明日から本格的に動き出すでしょう。
私を殺すために。
彼は非常に頭も良いようですし、能力も神通力に対する絶対優位性を持っている。
それに加えて仲間の鬼憑きは【闇女】にアカネさんが倒しきれないほど強力な鬼憑きが2体。
いや、配下もいるとのことです。
2体とは限りませんね。
目標に対する壁は高いほうが達成感があるとは言いますが、いささか高すぎるように思います。
しかし、やらねばなりません。
そうしないとユウ君は不幸に、
世界が不幸になってしまいます。
ユウ君を鬼憑きから引き剥がし、
そして狩人からも引き剥がす。
記憶を失って貰い、普通の人として幸せに。
私と2人で暮らしていくのも良いかもしれません。
私ならユウ君をありとあらゆる鬼憑きからも守ることができ、アカネさんからも逃げるだけなら可能です。
神通力を知らない、普通の男の子の望みくらいなら私に叶えられないことはない。
一生幸せに過ごさせてあげることができる。
やり遂げて見せます。
私が、ユウ君を救うのです。
昨日は体調不良で死んでました…
急ぎめで書いてるので、誤字脱字あるかも?
気付いたら教えてください!




