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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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決別

説明抜けてましたが、

現在の記憶の世界においては現実世界とは異なるため、ユリヤも車椅子ではありません。 

ユリヤの支配する空間のようなものであり、

イメージ的には2人ともフワフワ空中を漂っているような感じの想像で大丈夫です(念のため)

ほんの数十秒だ。

大して待つことはなく、ユリヤは目を開けた。


「もう終わったのか?」


「……………」


返事はない。

ただの屍のようだ。


「……………」


「ん?」


本当にどうしたというのか?

先ほどまでのふざけた調子は一切なく、顔も俯かせているため表情すら分からない。


「おい。返事くら……い?」


覗き込むと、ユリヤは目から涙を流していた。


「お、おい。ユリヤ。なんで泣いているんだ?何を見たんだよ。」


そんなリアクションをされると、

なんだか怖くなってくるではないか。


「…すみません。もう、大丈夫です。」


「大丈夫?」


「ええ。大丈夫です。私がユウ君を守りますので。」


「いや、意味分からん。」


勝手にそんな決意を固められても困る。


「それで?内容は教えてくれるのか?」


「その選択肢は私の中で存在しませんね。」


「はぁ…。じゃあとりあえず、目的は達成したということで良いのか?」


「はい、それは間違いなく。」


「じゃあ戻るのか。」


「ええ。」


ユリヤは最後に、いつの間にかまた近くに浮いていたソレを眺めると静かに呟いた。



「私が必ず、あなたの愛を引き継ぎます。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ユリヤの呟きの後、世界が歪み暗転する。

急激に光が入り込んで来たと思うと、気付けばもうユリヤの部屋だ。


「ふぅ、散々な旅だったぜ。ぶっちゃけ時間の無駄だったな。」


正直、気分は良くない。

肝心な部分が見れなかったため、不完全燃焼にも程がある。 

しかも、本人でもないユリヤには見られ、教えないと来たもんだ。


「ごめんなさい。ですが、あなたの為でもあるのですよ。」


「別に俺の過去がどんなものでも気にしないけどな。聞いたところで思い出せなければ他人の思い出と変わらないし。」


「ダメです。何と言われましても。」


「正式にお付き合いしようと言っても?」


「ダメです。」


見る前と違い、迷う様子を見せずに即答される。

だが、それではかえって気になるというもの。


「どうしたら話してくれる?」


「話しませんよ。強いて言えばですが、私が死ぬ時…いえ、むしろ言わないで退場した方が良いかもしれません。やはり言うことはないですね。」


もはや意地とも言える態度に少しむかっ腹が立つ。


「ったく…まぁいい。今日の目的が達成したと言うのならもう帰らしてくれ。用済みだろ。」


「いいえ、帰る前にハッキリさせておきたいことがあります。」


「何なんだよ。早く言え。」


いい加減イライラしてきた。


「ユウ君には【家族(ファミリー)】を抜けて貰いもらいます。狩人として……いいえ、それもいけません。全てを忘れて、普通の男の子として生きてもらわなければなりません。」


「は?」


「本当はユウ君以外の【家族(ファミリー)】を壊滅、無理矢理にでも更正させて、狩人の道で一緒に…と思っていましたが、事情が大きく変わってしまいました。【家族(ファミリー)】を抜けた後、私の力で記憶を鬼憑きと狩人、神通力に関連するところだけ消させていただきます。それで、ユキさん達も見逃すことを約束します。」


コイツ、俺に喧嘩を売っているのか?


「黙って聞いていたらさっきから何を言っている?俺の人生にお前が口を出す権利なんてない。そういうのは俺が一番嫌うことだ。俺に嫌われたくないというのなら2度と言わないことだな。」


「いいえ、言います。もうすでにその次元でお話をすることができません。」


「お前が何を言っているのか。俺にはサッパリ分からない。」


「私は、『無限』なんて称されることがありますが、この強大過ぎる能力が私にふさわしいと思ったことなど1度もありません……でした。しかし、今ならハッキリ言えます。ユウ君を運命の呪縛から解き放つために、私は生まれ、今ここにいるのです。」


「あっそう。じゃ、おつかれ。」


外国とはいっても、俺なら言葉を聴きながら見ながらで理解が追い付く。

この女に送ってもらう必要なんてない。

テキトーなところでユキかアカネと連絡が取れれば…


「行かせません。」


ガチャリ


「何をっ!?」


車椅子だからと油断した。

アカネかと思うくらい馬鹿げたスピードで俺を通りすぎたと思うと手に錠のようなものが…

というか『ようなもの』ではなく、まんま手錠だった。


「ごめんなさい、ユウ君。ですが、私の話 を最後まで聞いてほしいのです。」


また正面に戻ってきて俺を説得しようとするユリヤ。

手段がかなり強引になってきたな。


「手短に話せ。簡潔に。というか、手錠外せ。」


「…このままだと必ず不幸が訪れます。」


「そりゃ簡潔過ぎだ。なぜそう思う。」


「それを答えることはできません。ただ不幸の内容を言うことはできます。それはあなたを留まらせるに十分足る理由だと確信しています。」


「感想はどうでも良いからさっさと()…」



「神楽さんが亡くなる可能性が高いです。」



「はぁ…?」


言うに事欠いて何を言っているんだ?


「そんな可能性はない。」


「仮にそうならない場合、ユキさんとユウ君の2人とも死んでしまうかもしれません。」


「それはつまり、俺達と姉さんが戦うことになる…ということか?」


「そうです。神楽さんとユキさん。2人に優劣をつけることができないユウ君は()()()になっても動くことができず、どちらかを必ず失うことになるでしょう。」


「ふざけたことを言うのも大概にしろよ。」


手錠されたまま胸ぐらを掴みあげる。


「くっ、苦しいです…。ユウ君…。」


別に神通力の無力化(ニュートラライズ)は使っていない。

抜け出そうとすればいつでも抜けられるはずだ。

逃げないというなら別に良い。


このまま絞め殺すか?


「…ユウ君……」


「…ちっ、俺をどうしようっていうんだ。」


ユリヤを前に突き放す。

自分の足で立てないユリヤはそのままソファに力無く倒れた。


「…その優しいユウ君のままでいてほしいのです。このままユキさんたちと共にいれば、最終的にはユウ君はユウ君でなくなってしまう。」


「誰が何と言おうが、何が起きようが、俺は俺だ。」


「違うんです、ユウ君。考え方とか、性格とか、そんな話ではないのです。()()()()()()()()()んです。」


「……やっぱり、お前の言ってることはサッパリ分からない。俺が二重人格とでも言いたいのか?」


「少し、近いかもしれませんね。とにかく、このままでは神楽さんやユキさんは勿論、ユウ君自身が大きな不幸へと陥ることになります。私はそれを阻止したいのです。」


「余計なお世話だ。もう帰らしてくれ。」


「…どうしても私の話を受け入れては貰えませんか?」


「当たり前だろ。」


「それではユキさんが必ず死ぬことになりますね。」


「そもそも、最悪姉さんとユキが戦うことになってもユキなら姉さんを殺さずに退けるくらい簡単に…」



「私が全力で殺しますので。」



「…なんだと?」


「ユウ君が言うことを聞いてくれないなら、私の全身全霊をもって、あなたの周りの鬼憑きには消えてもらわねばなりません。」


「だったらお前を今すぐ殺すだけだ。」


「もうできませんよ。さっきのが最後のチャンスでした。優しさが仇になりましたね。」


「この距離なら神通力の無力化(ニュートラライズ)で…」


どうにでもなる。

…はずであったが、一瞬のうちに視界が大きく歪んで平衡感覚を失う。


マズい!先に仕掛けられた!?


何がなんだか分からずに、次の出方を伺うが

なんてことはない。

それはユリヤの転移の力だった。

既視感はあると思ったが、一瞬過ぎて判断が追い付かなかった。

俺はユリヤに一矢報いることもできずに家の前に突っ立っていた。

近くにもユリヤの姿は見えない。


『次にユキさん達と敵として出会った時、私は一切の容赦を致しません。そうならないことを真剣に願っています。ユウ君の気持ちが変わり、私の願いを聞き入れてくれるならユキさんを経由して私に連絡してください。何時如何なる時でも必ず私は応えます。』


頭の中への一方的な通告。

どこまで俺をコケにすれば気が済むんだ。


『それから最後にもう一つだけ。』


これ以上何も聞くことはない。

勝手に言ってろ。


『気配の無い者を追ってはいけません。それはユウ君にとって、不幸の始まりです。』


最後まで意味の分からない女だった。


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