記憶の果て
お疲れ様です。
ユリヤ回続きます!
多分、次回までかな?
クロードの背後に死が迫る。
しかし、突然空間が歪んだと思うと一瞬でシロの背後へ。
同時にユリヤもいつの間にかそこにいた。
「危うくクロードさんを失うところでした。」
「ナイスフォローだったな。」
「保険をかけてましたので。」
場面が飛ぶ。
駅前だ。
人が多く、とても賑わっている。
「ほら、見てくださいユウ君。優しいユウ君は人混みを必死に掻き分けて見事、大切な私を救い出すのです。」
「誇張表現はやめなさい。」
自己満足だと言っただろうが。
「ユウ君が認めないのは分かっていましたが、根本は優しさですよ。」
「他人が人の感情を決めつけるのは感心しないな。」
「まるで読む力のようですね。」
「…………」
「冗談です。怒らないでください。」
「ユリヤの冗談は面白くない。」
「ごめんなさい。言う相手がいないもので…。何かお手本を頂けますか?」
「…それはかなりの無茶ぶりだぞ。」
お笑い芸人だってそんな唐突に言われたらビビるわ。
無視してると場面が変わる。
おそらくユリヤがこの世界の速度を調整しているのだろう。
「あなたはここで、初めて鬼憑きを倒したのですね。」
「そうだな。」
いつかの元体育教師、藤…なんだっけ。
「初めて相手の命を奪ったとき、ユウ君はどう思いましたか?」
「別に何も。害虫を始末したって感じだな」
「怖いとは思いませんでしたか?」
「いいや。」
「では、楽しかった?」
「だから何ともないって。蚊を潰すのに楽しいも怖いもないだろう。」
ユリヤは何が聞きたいんだ?
「相手はほとんど人なのですよ?虫ではありません。」
「俺からすればコイツじゃなくても、嫌いな人間は全部虫みたいなもんだ。」
「それは良くありませんね。」
「ほっとけ。」
場面が変わる。
混ぜ鬼の事件、高橋との戦闘の記憶。
「ユウ君は読む力によって相手の心情も読み、行動を予測して対処を完璧にやってみせているようですが、それだけでは説明できませんよね。その身体能力はどこで?私が以前軽く見た時でも、身体を鍛えているような記憶も、戦闘訓練をしているような記憶もありませんでした。」
「俺は天才だからな。努力なんていらないんだよ。」
事実、俺は基本『練習』というものを必要としない。
昔こそ考えたことはあるが、めんどくさいので今は『天才だった』という認識でいる。
「それは違いますね。」
「何故そう思う?」
「まだ、分かりません。」
「なんじゃそら。」
場面が変わる。
公園で友人との一時。
「このハルカさんというクラスメイト、ユウ君のことが大好きみたいですね。」
「ノーコメント。」
「だって、付き合ってもいないのに公衆の面前で膝枕頭ナデナデなんて、私だったら恥ずかしくて無理かもしれません。」
「一生懸命なやつなんだよ。あんまり人の気持ちをからかうな。」
「からかうなんてとんでもない。美しい青春だなと思っただけです。まぁユウ君はあげませんけど。」
「俺はユリヤの物になった覚えはない。」
「それは残念です。」
場面が変わる。
そこは線路だ。
「可愛いですね。ユキさん。」
「まあな。」
「会ったばかりなのに、キスしてもいいかとは何事ですか!」
「お前もう口を開かないでくれ。」
疲れるを通り越してもうげんなりしてきた、
2人、俺とユキが互いに顔を寄せていく。
しかし、ここで突如としてユキが吹き飛ばされてしまう。
そう言えば、結局この現象は何だったのだろうか?
読む力は関係ないだろうから、神通力の無力化を持っていたことが原因なんだろうが…。
「あれはニュートラライズの…『核』のようなものです。」
「核?」
「ええ。」
「………」
「………」
先ほどまで饒舌だったのに急に喋らなくなったな。
「この先を話すのは、あなたが許可を貰えた後です。」
「許可ぁ?」
誰の許可だよ。
俺の記憶の中だろうが。
「良い先生ですね。ユウ君のことをしっかり考えてくれているのがよく分かります。とても美人ですし、なんなら女子にも人気があるようですね。」
「そうだな。」
「…淡白ですね。もっと気の効いた返しはできないのですか?」
「君のほうが綺麗だよ………やめろ!来るな!俺が悪かった!」
「残念です。キスを求められたのかと思いました。」
「多分、俺から求めることはないと思う。」
場面は、変わっていく。
俺にとって何の価値のない、ゴミみたいな退屈の経験。
まるで、全く興味のない題材の映画を永遠と見させられ続けているようだ。
「退屈そうですね。」
「ああ。この時の俺は、姉さんといる時以外は何も満たされることのないつまらない日常を必死で生きていたんだ。生きていたくないのを、姉さんが悲しむから我慢していた。」
勉強やスポーツも、何故周りの人間が完璧にできなかったのか意味が分からないし、自分は普通にやっているだけなのに、無駄に褒められたり、嫉妬されたり。
よく考えたら、人間が嫌いだと感じるようになったのは学校という場所に行ってからかもしれないな。
学校というよりは社会、というべきか。
くだらない集団。
こんなやつらと一緒にいたくなかった。
生きていたくなかった。
死にたかったと言っても良い。
くだらない生。
俺が生きる、生きた理由は姉さんの存在だけだ。
「では、ユウ君はユキさんに会えなかったとしたら、今でも退屈でしたか?死にたいと思っていたと思いますか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。一応、高校では友人と言えるようなやつもできて、少しは退屈しのぎができていたからな。」
「友人は大切にしましょう。」
「そんなこと、ユリヤに言われなくても分かってる。」
「そうですか。」
そんな笑顔で俺を見るな。
場面が変わる。
もう姉さんと会った歳くらいだろう。
場所は神社のようだ。
「…何故、ユウ君は菊様に睨まれているのですか?」
「僕もこの時は無意識だったけど、読む力がババアの結界に引っ掛かって警戒でもされたんだろうね。」
……んん?
「どうやら記憶に引っ張られているようですね。これが『ボクッコ』ですね!良いと思います!!」
「それは少し違うと思う。」
随分昔まで戻ってきたな。
もうそろそろ姉さんとの初対面だ。
つまり、俺の記憶の終着点。
最果て。
そこに、ソレはあった。
「これは何だ?」
「ユウ君の記憶を封じている物です。」
「封じている?どういうことだ?」
「そのままの意味です。」
ソレを見る。
ソレは、暖かい。
ソレは、見ていて気分が良い。
懐かしい。
なのに、悲しい。
寂しい。
「ダメだ。全然分からん。」
「この先が本番。私が知りたい、ユウ君の真実です。」
「そうか。なんか少し怖いが俺も…」
「多分、難しいと思います。」
「…なんで?」
「あくまでも私がそう思うだけです。試して見てください。」
そう言ってソレに近づくように促される。
近づくと分かる。
俺は、これを求めている。
手を伸ばす。
ソレは動いた。
再び手を伸ばす。
避けられる。
追いかける。
離れていく。
走る。
もっと速くなる。
追い付けない。
「やはり、ユウ君はダメみたいですね。」
「ハァ…ハァ…。ど、どういうことだ…?」
「まず言っておきたいのは、ユウ君の記憶を封じているのは間違いなく、『ユウ君を想ってのこと』です。その『ユウ君を想う意思』は、過去の…封じた記憶をユウ君に見せるべきではない、という判断をしたということでしょう。あなたのことを心配しているのですよ。」
「なんでそんなことが…」
言い切れる?
そう言おうとしたが、ユリヤの左手に収まるソレを見て、もう考えるのを止めた。
「後で教えてくれよ。」
「それは内容によりますね。期待はしないでください。私もユウ君を心配しているのです。」
「好きなだけキスしても良い。」
「…………………………内容に、よりますね。」
迷ってはいたようだが、意見は変えられなかった。
ユリヤが目をつむると、ソレはユリヤのからだの周りをグルグルと周り始め、やがて光となってユリヤの中に入っていった。
こんなところでお預けか…。
俺にはユリヤを待つことしかできなかった。




