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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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1位…襲撃?

「本日はユウ君をお借りします。」


ユリヤが急に家にやってきた。

神社に居候しているはずだが、何の用かと思えば俺を借りる?

まるで決定事項のように言うな。


「あのな、ユリヤ。こっちにも予定ってのがあるんだ。急に来られても困るぜ。」


アカネが俺の代わりに異を唱える。


「あら?それはユウ君も関係ある予定なのですか?」


「もちろん。今日は2人でデート…」

「それは嘘ですね。」


ピシャリ。

一刀両断されるアカネ。

正直、ユリヤと2人きりにされるくらいならアカネに拘束されてたほうがマシかもと思うくらい厄介だ。

というか危険だ。


「ユウ君をお借りしたい…というのは、何かユウ君に用事があるのでしょうか?」


姉さんはとりあえず状況把握に。

確かに、内容いかんでは逆に付き合ったほうが良い可能性もなくはない。


「はい。非常に重要な案件です。」


重要な案件、か。

厄介事でなければいいが、真面目に聞いたほうが良さそうだな。

気を引き締める。


「今日は私とユウ君でデートをしたいと思いまして。」


真面目に聞こうとした俺がバカだった。

アカネと同レベルだった。

いや、立場がある分厄介さは段違いだ。


「あの、ユリヤ様…。まずはユウト君の意思を聞きませんと。」


杏が申し訳なさそうに言うが、ナイスな判断だ。

杏は俺が全く乗り気ではないことを理解しているだろう。


「その通りだ、ユリヤ。今日は家でダラダラすると決めている。悪いが帰ってくれ。」


「こ、こら!ユウ君!失礼よ…。」


「良いのです、神楽さん。ユウ君、私はあなたと今日という1日を最大限楽しむために、ありとあらゆる準備を行いました。」


「…準備?」


「ええ。私もこういうのは初めてでして。様々な会話パターンの想定から、人生で初めてのおしゃれ。日本漫画から『らっきーすけべ』なる物も履修し、完全な準備を完了させています。」


おしゃれか。

コイツ、服の感じがユキと似ているのはわざとだろうな。

なんか余計なものも混ざっていた気がするが、もう突っ込むのもめんどくさい。


「そうか。可愛いよ。じゃあまた。」


もう相手にしないことにした。

姉さんからは少しお咎めがあるだろうが、姉さん自身、ユリヤに着いていってほしくないと考えてくれてるだろうし、大したことにはならないだろう。

この件に関してはアカネも杏も味方だしな。

身を翻そうとするが、ユリヤはまだ話しかけてくる。


「私と来てはくれませんか?」


少し残念そうにする。

ぶっちゃけ面白い女だとは思うが、立場が最悪すぎる。

仮にコイツが何の力も持たない、立場もない普通の人間だったら1日くらい付き合ってやってもいいのだが。

いや、余計なことを考えるな。

コイツは近いうちに倒す敵なんだから。


「皆さん、とても仲が良くて羨ましいです。」


急に関係ないことを言い出すユリヤ。


「まるで家族のよう…()()()()()みたいですね。」


「あ、ありがとうございます?」

「家族じゃなくて彼女だぞアタシは。」

「はいはい。脳内設定を口に出すのはやめなさい。」


意味の分からない会話は続く。

もう無視して戻るか。


「私の国は寒いので、ユキばかり降っているんです。」


「ちょっと待て。」


今のユキのイントネーション、明らかにおかしかった気がする。


「どうしたんだ、ユウト?」


「いや…」


ファミリー、そしてユキ

コイツ…まさか!?


ユリヤを見る。

目が合うとすぐに、コクッと首を縦に振った。


これは、脅迫。

選択肢は最初からなかった。

本当にめちゃくちゃ重要な案件だった。

俺が破滅するかどうかの瀬戸際。


「気が変わった。今日はユリヤが望むだけ付き合うとしよう。」


「えっ?」

「はっ?」

「え!なんで!?ユウト君!?」


「ユウ君も私の魅力に気付いてくれたのでしょう。それでは2人で『ラブラブデート』に繰り出しましょう。今日は寝かせませんよ。」


無茶苦茶なことを言っているが、俺が否定をいれるとユリヤの機嫌を損なう可能性があるのでなにも言えない。


「ユリヤお前!まさか惚れ薬的な力を!?」


第三者目線だと確かにそう思うかもしれない。


「ユウ君には効きませんよ。分かるでしょう?そして、それこそが私がユウ君に選ばれたという証拠にもなります。彼の前では、私はただの病弱の女なのですから。」


しかし、至極真っ当に言い返されて撃沈。

というか、俺としてもこの女に着いていかないわけには行かなくなったし、むしろ3人が着いてこないように仕向けなければならない。


「ユリヤに少し興味が湧いた。3人には悪いけど、今日だけは2人きりにしてくれないかな?」


俺がそう言った時の3人の顔に浮かぶ驚愕。

今は読む力(リーディング)は使えないが、さぞ驚いていることだろう。


「ふふっ。嬉しいです、ユウ君。さぁ!楽しいデートの始まりです!」


そう言うと車椅子を器用にターンさせて、顔だけ振り替えってこちらに笑顔を向けてくる。

押せ、ということか。


「じゃそういうことで…、行ってきます。」


「…………」


姉さん含め、誰も返事をくれなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「一体、目的はなんだ?俺に何をさせたい?」


最初の角を曲がったところで俺はすぐに本題を切り出そうとした。


「まだアカネさんが見ていますよ。」


「……」


神通力の無力化(ニュートラライズ)をフル活用しているため、読む力(リーディング)を併用できない。

コイツが【家族(ファミリー)】のことを他の人間に話していないのは、俺にさせたいことがあるからだ。

つまり、『アカネが見ている』という嘘はコイツにとって何のアドバンテージにもならない。

本当のことなんだろう。

しかし、厄介だ。

最悪、人目さえ無ければこの細い首を締め上げて…

という考えもなくはなかった。

アカネはこのまま着いてくるだろう。


「どうするんだ?」


問いかける。

主導権は完全にユリヤに握られているから。


「海へ行きましょう!」


「は?」


思わずアホみたいな声を出してしまう。


「いつか気になる男性が現れたとき、初めてのデートは海と決めていたのです!」


目を輝かせて恋愛漫画に憧れる少女のようなことを言い出すユリヤ。


「なのでユウ君。神通力の無力化(ニュートラライズ)を解いてください。」


「…は?」


コイツはどうやら頭のネジが外れているらしい。

俺の神通力の無力化(ニュートラライズ)は最後の防衛手段。

家族(ファミリー)】のことまで既に露見してしまったとはいえ、はいそうですかと解くわけにはいかない。

『万能』なんだ。

もし解いた瞬間に洗脳でもされて、ユキたちを破滅させるようなことにでもなれば…


「私が、信用できませんか?」


そんなに悲しそうな目をしても無理なものは無理だ。


「俺を好きだというのなら、俺の立場になって物を言ってくれ。」


「困りましたね…。」


頑なに能力を解かない俺に困った様子を見せるユリヤ。

何を言われようがされようが、俺は解くことはない。


「分かりました。ではこうしましょう。」


「どうしてもこうしても解かないぞ。」


「契約をしましょう。私とユウ君で。」


「契約?」


契約とは…言葉通りの契約のことか?


「ええ。私はユウ君に対し、『今後一切攻撃行動を取らない』そして、『家族(ファミリー)のことを他人に話さない』…この他人というのは、家族(ファミリー)以外の人間という定義をします。この2つを、ユウ君が本日だけ神通力の無力化(ニュートラライズ)を解くための条件としての契約を提案します。」


「待て待て。長いし、意味が分からん。それだと口約束止まりだろう。それ、ユリヤが破ったところでデメリットないじゃないか?」


「今の段階ではそうですね。ですから、ユウ君が決めてください。」


「俺が?何を?」


「デメリット…契約を破った時の代償をです。」


代償を俺が決める…?

では『死ね』、と言ったところで死ぬわけでもないだろう。

…それともできるのか?コイツには。

いや、それ以前に確認することがある。


「ユリヤの場合、能力でその『契約』ってのを形にできるとして、お前はそれを破れてしまうんじゃないのか?」


そう。

結局は口約束と変わらない。

コイツなら無茶苦茶な契約を結ぶことをできるし、それを破ることだってできるんだろう。

それなら意味がない。


「正直に言うとできます。ただ、契約を破るという工程が必要になりますね。だからあなたは私が契約を破ったと思ったら即座に神通力の無力化(ニュートラライズ)を展開してください。そうすれば私に何かされることもないでしょう?もっとも、私は代償を反故にするつもりも、そもそも契約を破るつもりもありませんが。」


「…分かった。代償は…」


死ね

で良いのだろうか?


良いに決まっている。

コイツは確実に邪魔になる。

厄介さで言えばアカネに並ぶ…いや超える。


「代償は…」


「代償は?」


死ね

それでいい。


「『俺への完全服従』、にしておくか。」


考え方を変えた。

コイツは本当に万能だ。

コイツがいれば俺たちの野望も大きく前進することになる。

殺してしまうのは勿体無い気がする。

これはチャンスだ。


「…そうですか。お優しいんですね。てっきり『命をかけろ』と言われると思っていました。完全服従だなんて…、私の貧相な身体で満足してもらえるでしょうか?不安です。」


自分の胸に手を当てているが、

特に好きでもない女の身体に興味などない。


「別にエロは全く求めていないから安心しろ。あと条件の追加を1つ。俺に対して『今後一切攻撃行動を取らない』というやつだが、それに『俺の意思をねじ曲げるような操作や誘導』を含めるようにしてくれ。」


「分かりましたけど…私の身体には興味はないのですか?」


どうでもいいことを気にしているが、

そちらは無視しておこう。


「…とりあえず、条件の設定は完了しました。これで契約を交わしてもらえますか?」


「俺の方の代償をまだ決めてないだろう?」


「そんなものはいりません。私のお願いみたいなものですから。あくまでもユウ君に信用してもらうための『契約』ですよ。」


「分かった。良いだろう。」


少なくても『今は』敵意はないようだ。

つまりは俺にやらせたいことがあると。

その内容によっては、逆に利用してやることもできるかもしれない。

油断だけしないようにすれば、何かチャンスを得るキッカケになるかもしれない。

そう考え、俺は能力を解いた。


『ありがとうございます。ユウ君。』


途端に脳内に聞こえてくる声。

慣れた感覚であるような、

しかしいつもと少し違うような。

使っている人間の差、ということだな。


『…そういうことか。神社で既にバレていたんだな。』


『ええ。私の前では考えることは口に出すことと同じです。とはいえ、戦闘中でもなければ本来は使わないのですが。フェアでないので。』


ユキたちとのやり取りも傍受されていたのか。

それなら俺がどう取り繕おうとしても、隠すのは不可能だったんだな。

相変わらずめちゃくちゃな女だ。


『あら?変わった人に興味を持つユウ君の評価としては、喜んで良いところでしょうか?』


『そんなこと、誰から聞いたんだ?』


『過去のユウ君にです。』


『あっ、そう…』


というか、頭で呼び掛けなくても考えを読まれてしまうんだな。


『ええ。私に隠し事はダメですよ。』


「…で?これからどうするんだ。」


頭の中では余計なことまで考えてしまう。

だったら口に出していた方がマシだ。


「手を握ってください。」


そう言って右手を上にあげる。

もう確認するのも疲れた。

その細くてしなやかな手を取る。

全力で握れば折れてしまいそうな細い手。


「物騒なことを考えないでください。さぁ、行きますよ。」


「行くってどこへ?」


「海へ、です。」


世界が歪む。

視界が歪む。

平衡感覚を失い、倒れる…

と思ったところで、全面白い壁で覆われた綺麗な一室に俺たちはいた。


「ここは…誰かの家か?少なくても海ではないな。」


白を基調とした落ち着いた部屋、数は少ないがぬいぐるみや女物と思われる服などが掛けられているのを見ると、おそらくこの部屋は…


「私の家です。」


だろうな。

つまり、ここは日本ですらないということだ。

本当に一瞬だったが、またとんでもない距離を跳んだもんだな。

ユキとは空間転移の手順ややり方がまるで違うんだろうが…


「どうですか?私の部屋は?」


どうですかと言われてもな。


「まぁ落ち着いてて良いと思う。ユリアにも合ってそうな感じはするな。」


「興奮しますか?」


「いや、興奮はしないけど…」


「そうですか。」


相変わらず思考回路が読めない。


「というか、海に行くんじゃなかったのか?」


「あぁ、あれは嘘です。」


あっけらかんと言いやがる。


「何のための嘘だよ。」


言葉遊びでもしたかったのだろうか?


「今、アカネさんが関東に面した海辺をとんでもない速度で走り回っています。いえ、これは浜辺ではなく、海の上を走っているようですね。念のための保険でしたが、うまく機能したようです。」


あの怪物(バカ)を撒くためか…。

海の上を走るとか、とことん漫画の世界みたいなやつだな。


「それは分かった。じゃあここに来た目的はなんだ?」


誰も確実にいない今なら、ようやく本題に入れるだろう。


「実は、ユウ君にお願いがあるのです。」


こちらの目をまっすぐ見てくるユリヤ。

今は読む力(リーディング)があるから分かるが、敵意など欠片もない。

あるのは好奇心と……好意だけだ。


「何かさせようっていうのは最初から分かってる。【家族(ファミリー)】に悪影響があることでなければ従う。」


「大切にしているのですね。羨ましいです。お願いかあると言いましたが、私にユウ君の記憶を見せてほしいのです。」


「俺の記憶?」


「ええ。」



「ユウ君も知らない、記憶喪失以前の記憶を。」


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