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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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家族(ファミリー)の敗北

「いやー、流石に死ぬかと思ったぜ。」


龍堂神社からユキの力で転移を行い、トリニティの廃ビルのアジトまで跳んできた。

異空間を抜けて、クロはヘラヘラと笑いながら言うが、実際はかなりギリギリだった。

クロの異空間への回収が間に合わず、龍堂茜の必殺の拳がクロのすぐ後ろに差し迫っていたから、こっちも()()()を使わざるを得なかった。


「ユキちゃん。最後のアレ、どうやったの?」


シロが質問をしてくる。

家族に隠すことはない。

これまでも必要がなかったからやってこなかっただけだ。


「空間と空間を繋げたのよ。クロの後ろの空間を、あのユリヤとかいう女に繋げてやったの。この力は回避でも使えるけど、主には必殺の攻撃手段。視覚で捉えておく必要はあるけど、リーチと時間差を完全に無視する、初見では絶対に防がれることがない攻撃…なんだけど、」


「あの女、ピンピンしてたな。」


「ええ。切り札を見られた上に、無傷となると流石にショックだわ。」


いかにも病弱そうで体の線も細い女。

吹けば飛びそうな見た目をしている癖に、

シロでも手を振りほどけないほどの怪力と、

アカネの攻撃をまともに食らっても耐えられる頑強さ。


「ユウトも私も、ユリヤを『龍堂茜以下』としか見ていなかった。今回ので大きく認識を改めさせられたわ。彼女はとても危険な存在。早いうちに…」


処理しなければ、と続けようとした。

しかし、それどころではなくなってしまう。



突然、とんでもない轟音と衝撃が降りかかる。

何が起こっているのか理解できない。

地響きに加え轟音でまともに周囲の音が聞こえなくなる。


「…上ッ!?2人とも!近くに!!」


聞こえてるか分からないから全力で叫ぶ。

何が起きてるかは全く分からない。

1つだけ分かるとすれば、

上から何か良くないものが来る

ということだけだ。


2人が近くにいることを感じると即座に異空間に回収して逃れる。

その直後、視界が瓦礫にのまれて何も見えなくなる。

しばらくして轟音は収まるが、粉塵が舞っていて視認することも難しい。

そのまま異空間で様子を見ているとだんだん視界が回復してきた。


「…どっちの仕業だと思う?」


同じ景色を見ている2人に問いかける。


「車椅子の方だろうね。」

「私もそう思う。」


「龍堂茜以下ですって?余程たちが悪いじゃない…」


先ほどまで立っていたビルは見るも無惨に瓦礫の山と化した。

辺りを探ってもあのユリヤという女も、もちろん龍堂茜の姿もない。

その場にいなくとも、こんな真似を仕出かす存在。

いくらなんでも危険すぎる。


「しばらくはココで様子を見ましょう………あっ!?」


「?どうしたのユキちゃん。大声を出して。」

「忘れ物でもしたのか?」


「あの部屋よ!私が見たいって言ってたところ!」


「ああ、それか。うーん…」

「もう瓦礫しかないわね…」


あの部屋の異質さ。

後で確認できると思ってそのまま放置していたが、まさかこんなことになってしまうなんて予想できるはずがない。


「念のため…。」


「ユキちゃん?」


探査(サーチ)


ユキは異空間をここ一帯に展開する。

異空間と重なった範囲の生命を浮かび上がらせる、探査能力だ。

瓦礫の山を完全に包み込んだところで能力を発動させる。

虫、小動物。

それらの多くの反応があるが、それ以外の反応は特にない。

ただし、死体にも反応がないのでひょっとしたら『何か』はいたのかもしれないが、今のビル崩壊に巻き込まれて死んでしまったか。

あるいは何か大切な物でも隠されていたか。

追撃の可能性もあるから今はまだ動けない。


「悪いけど、どうしても気になるの。しばらく様子見したら楽しい化石堀りの始まりよ。」


「えー!?この山を掘り返す気かー!?」

「…骨が折れそうねぇ…」


乗り気でない2人だが、なんとしても手伝ってもらう。

あの違和感を確かめておかないと、後に後悔する気がする。

何もないなら何もないでいい。

それを、確認したい。


3人はしばらく、その場で瓦礫の山を眺めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『メグ。今大丈夫か?』


話し合いの後、家に帰り部屋に戻った俺はすぐさまメグに連絡を取るため携帯を触っていた。

シロとクロのサポートによって、ユキのテレパシーはかなり利便性の高いものになっていたが、今こそメグの存在が生きる時だ。

ユリヤという存在に目をつけられた以上、もう俺にプライベートというのは無いと思っていた方がいい。

部屋にいるからと安心してユキ達と繋がれば、どこかで覗き見しているかもしれないユリヤに全てが筒抜けになってしまう。

一応、俺に関することなら一瞬の違和感を感じとることはできたが、感じたところで防げなければなにも意味がない。

現在も部屋全体を神通力の無力化(ニュートラライズ)で覆っていて、能力によるもので俺を監視することはできないはずだ。


『ユウト。今日は作戦の日。うまくいったの?』


その様子だとまだユキからは連絡が来ていないようだな。


『いや、失敗も失敗。大失敗だ。それでユキに伝えておいてほしいことがある。』


『…?いつもみたいに、ユキと繋げればいいんじゃないの?』


『いや、ダメだ。あくまでもメッセージ機能だけだ。理由もこれから言う。』


『了解。伝える内容は?』



メグに伝える内容は大きく分けて3つ。


・ユリヤの能力はアカネを脅かすこと以外、ほぼ全てを可能とする。内容に関する制限はほとんどない。対策の想定は不可能だと思われる。例えば、次の瞬間に目の前に突如として現れていきなり必殺級の攻撃を放ってくることも考えられる。


・ただし、その内容の難易度や条件によって、ユリヤ自身の限界値に達すると能力が弱体化、あるいは失敗するようである。つまりはそれが唯一の弱点であり、ユリヤを倒すには全部を出しきらせて消耗させるか、あるいは気付かない内の速攻作戦しかないが、何でもできるというならとんでもない保険を普段からかけている可能性が高い。おそらく不意打ちでは倒せないと思われる。


・俺がユリヤに気に入られてしまったため、常に監視されていると思って動く。よって常時神通力の無力化(ニュートラライズ)を使うことになるため、いつものテレパシーはできなくなる。先の戦闘の後でも、頭に思い浮かべたユキの姿を読み取られ、ユキの名前までバレてしまった。正体までバレる前に神通力の無力化(ニュートラライズ)を使ったが、もうユリヤを消し去るまでは安易に能力を解くことができない。


『なんというか、もうめちゃくちゃだね。』


『全くだ。俺にとってはアカネなんかよりよっぽど怖い存在だ。』


ユリヤという女の危険性。

対策不可能な選択肢の多さ。

存在そのものが俺に対するとてつもない枷。


『すぐにだ。』


ユキ達が回復し、準備ができたらすぐにでも。


『できるだけ早く、あの女を排除しなければならない。たとえどんな非道なことをしても。』


俺はメグに考えた『作戦』を伝える。

それから、確認しておきたいことも。


『分かった。…けど、そんなことできるのかな?』


『やるしかないんだ。【家族(ファミリー)】の皆にも伝えておいてくれ。』


『了解。何かあったらすぐに言ってね。』



今度の失敗は許されない。

家族(ファミリー)】の力を全て出しきって、

全てを使い、利用し、

あの女(ユリヤ)を…


確実に殺す。

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