シロとクロ
お疲れ様です。
よう実最新巻読みました!
神でした!!
以上
《神楽視点》
「質問に答えなさい!!」
浄化の炎を振るう。
が、黒い女はもうそこにはいなかった。
「神楽!!後ろだっ!!」
アカネが叫ぶ。
その直後に後ろから耳元で囁かれる。
「あらあら?聞いていたより粗っぽい娘なのかしら?」
「私の何を知っている!!」
背後に広範囲で炎を発生させるがまたも手応えはない。
この黒い女、速すぎて目で追うことも敵わない。
やはり、クロという鬼憑きと…アカネと同レベルの速さなのか。
「神楽!一旦落ち着け!」
「…私は冷静よ。」
隣のアカネの方を見ずに応える。
視線はいつの間にやら正面に戻っていた黒い女に固定されている。
「挨拶くらいさせてちょうだいな。」
余裕綽々に微笑みながら言うのが堪らなく憎々しい。
「私はシロ。気軽にシロと呼んでね。アカネ《あなた》と遊んでもらったクロと同じ立場と思ってもらって良いわ。とても楽しかったと言っていたわよ。ありがとうね。」
嫌味すら感じない、まるで本当に、純粋にお礼を言っているようだ。
どこまでこちらをバカにしているのか。
「そりゃお互い様だ。あんなに歯応えあるやつは久々だったからな。それより…シロ、お前んとこのボスから3人程送ると聞いていたが、来たのはお前1人なのか?」
アカネは挑発…かどうかは分からないが、相手のペースには乗らず情報を引き出そうとする。
「いえ、いるわよ。ただ、今は必要ないかなって思ったの。平和的に行きましょう。その子…ユウト君を貰えれば、私はあなたたちに危害を加えないわ。」
「どこまでも舐めくさってやがるな。」
「断る…ということかしら?」
黒い女、シロの口から笑みが消えて、彼女から発せられる重圧が増大する。
「神楽、予定通りだ。私が応戦するから、クロードの守りの中でヤツの動きを観察して気付いたことは何でも言ってくれ。もし別の鬼憑きが出たらそいつの対処を頼む。ただしクロ…白い猫耳のヤツが来たら相手をしたらダメだ。お前では勝てない。」
「…分かったわ。悔しいけど、私では太刀打ちできないのは理解できた。」
必死に自分の感情を抑える。
「では皆さん、此方に。」
クロードさんが呼び掛けてくる。
それに応じて菊お婆様と杏、私とユウ君が即座に密集陣形をとった。
「いきますよ…【偉大なる守護盾】!」
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クロードが発声すると同時に、周囲に半径5m程のドーム状の薄い膜のようなものが形成される。
薄いとは言うが、その神通力の濃さはかなりのものだ。
果たしてどれほど堅固なのか。
「無粋だと思って待っていたけれど、もう準備は良いのかしら?」
相変わらず余裕の態度を崩さず、自然に語りかけるクロ。
嫌味っぽく言わないことが、逆に気に障りやすいということをよく理解しているようだ。
あるいは、圧倒的強者であったことによる彼女の『素』なのかも。
「わざわざ待ってくれるとは余裕だな。悪いがお前はアタシを倒せないし、クロードの壁も破れない。」
「試してみる?」
「上等。」
互いに向かい合い、笑い合う。
どちらから仕掛けるのか。
前回のクロとの戦闘を見れなかったから非常に興味深い。
シロとユキの共闘。
そしてアカネの底知れない本気。
それが見られるかもしれない。
下手な映画よりよほど面白いものとなるだろう。
クロードの壁の内からは緊張だけが漂っている。
姉さん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。
今日死ぬのは1人だけだから。
そんな言葉をかけるわけにはいかないので、状況が動くまでは2人…3人の戦いをしかと楽しませて貰うとしよう。
フッと、
シロの姿が一瞬にして消える。
やはり目で追えない。
「ウラアァァ!!!」
突然アカネが振り返って後方に拳を突き出す。
いつの間にかアカネの背後を取っていたシロの胸を、アカネの腕が深く貫いていた。
「えっ?」
どういうことだ?
今のほんの一瞬で決着が…
ユキ、ユキは!?
「驚いた。よく分かったわね?」
かなり動揺してしまったが、シロの落ち着いた口調で冷静さを取り戻す。
「なによ…本当に、全く見えないじゃない。反則よ、あんな速さ…」
すぐ傍にいる杏から絶望的な感情が流れてくる。
だが、あれはおそらく速さではない。
「そりゃ分かるさ。同じことをクロのヤツにもやられたからな。お前達ほどの速さなら目で追われた経験なんてほとんどないだろ?だが、アタシには追える。逆に言えば、アタシが目で追えないというならそれはクロと同様に『瞬間移動』を使ったとしか考えられない。すると考えられるのは死角外、背後からの不意打ちだ。」
アカネは勉強に関しては大したことないが、ことやる気が出るものに関してはかなり頭が冴える。
クロと戦闘した時の経験に基づいた見事な分析だった。
「…なるほど、そういうこと。まぁどの道私にはどうしようもなさそうだけどね。」
戦闘を苦手とする杏では正直時間を稼ぐことすら不可能だろうな。
肯定するわけにもいかないから苦笑いで誤魔化しておく。
「これは少し舐めすぎていたかしら?じゃあおいで………クロ。」
ドゴォオォ!!!
シロが呼ぶのと同時に、激しい爆音と衝撃とともに、大量の土煙が舞う。
「っ!?一体何が起きたの!?アカネ!無事!?」
「ゴホッ、ゴホッ…なに、急に…」
「…警戒を続けるのじゃ!」
「……くっ」
このクロードの壁、土煙は普通に入ってくる。
視界不良で状況が全く確認できない。
というのも、おそらくクロードの壁の内側では読む力が発動できない。
神通力を通さないとのことだが、使用も不可能なのだろうか?
しかし、近くにいる人間の感情は分かる。
…内側か外側か、ということだな。
少なくてもこの偉大なる守護盾に関しては、内側でも神通力の行使が可能。
しかし、壁を越えた位置での神通力の発現は不可能。
というより、神通力が壁を越えられないということだ。
神通力を通さない…なるほど。
その表現は実に正確だったわけだ。
予想通りだな。
少しずつ土煙が収まってきて、視界が回復していく。
人影が2つ…シロとクロだ。
クロの足元には大きい穴のようなものが開いている。
クロが上空からアカネを?
状況的にはアカネが地中に埋まってしまっているのだと推測できる。
しかし、ここらの地盤はしっかりしているし、どれだけ力を加えればこんな穴ができるのか?
数tとか、そんなレベルではないのは間違いない。
そして、もっとおかしいのはアカネがこの地盤よりも強固だということだ。
普通の人間なら地面でペシャンコに潰れて終わりのはずだ。
穴が開くということは、アカネの方が硬いということを示唆している。
「痛ってええぇ!?このバケモノ!なんで殴った方が痛いんだよ!!」
クロが理不尽を嘆く。
やはりこの怪物は正攻法で倒すことは不可能だということだ。
俺というイレギュラーでなければ。
「あれが、クロ…」
「そのようじゃな、ヤツからも凄まじい力を感じる。」
「本当に、こんなバケモノが二体も…」
3人ともアカネの悪い方の予想があたり、実際の驚異を目の前で見て少し萎縮してしまっている。
「クロ。私が龍堂アカネを相手するわ。あなたはアッチをお願い。」
シロがこちらに指を指す。
「アレが壁ってやつか…オーケー。」
クロがゆっくりとこちらに向かって歩いてきて、クロード前に立つ。
「お前がクロードってやつか。」
「これはお初目にかかります。クロードと申します。あなたはクロ、ですね?」
「そうだ。悪いけど、死んで貰うぜ。」
そう言って拳を引くクロ。
「フンッ!!」
そのまま拳を突き出してくる。
しかし、衝撃は来ない。
「…なるほどな。」
神妙な顔で呟き、自分の殴った拳を見つめるクロ。
破れはしなかったが、今の1度だけで何か偉大なる守護盾の弱点でも掴んだのだろうか?
と思ったが、よく見たらクロの目にうっすら涙のようなものが見えた気がする。
…めっちゃ痛かったんだな。
つまりはただのやせ我慢だ。
痛がる姿を見せたくないから冷静に振る舞ってただけ。
当然、至近距離のクロードはそれを見逃していなかった。
「どうです?私の壁は絶対に破れません。感知をどうやって掻い潜ったかは分かりませんが、この偉大なる守護盾は神通力を通さない。あなたがどれだけ強力であろうとも、鬼憑き…神通力を持つ存在である以上、絶対に破れない。アカネ様を除いてね。」
硬いからというよりは、絶対の優位性と言ったところだろうか?
「ぬぅわあぁあ!!!」
地響きがしていたかと思うと、先程の穴の中からアカネが上半身を出した。
流石というか、どうやら怪我の1つも負っていないようだ。
「このやろー。急に出てきたと思ったら人をもぐら叩きみたいにしてくれやがって…覚悟はできてんだろうなぁ?」
「おまえ…もう人間じゃないな。」
クロの発言は、おそらく称賛の意味合い半分、呆れ半分と言った感じだ。
アカネは少し傷ついたみたいだが。
「しょうがないだろ。アタシだってこんなバケモになりたくなかったけど、お前らみたいなバケモノばかりでこっちまで【怪物】だ。」
アカネは自嘲気味にそう話す。
「クロ。あなたでもその壁は壊せないのかしら?」
「壊せなくなんかない!!………でも無理。」
変な意地を張っているが、どうやら本人も厳しいという判断らしい。
「ハッ。クロードの壁はアタシでも本気を出さないと壊せない。お前らには無理だぜ。」
素早さではクロに劣ると自分で認めていたアカネも、力では勝っていると確信しているらしい。
「なるほど、余程自信があるようね。」
素直…と言えるかどうかはかなり微妙だが、クロが無理だと認めたという事実に若干の驚きが含まれている。
「じゃあ……」
シロの雰囲気が変わる。
身に纏う黒いオーラが一層暗い輝きを放つ。
「こういうのはどうかしら?」
シロから確実に相手を、クロードを絶命させる一撃が放たれる。
クロードの真後ろ
壁の内側の
俺たちの目の前で。




