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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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不思議ちゃん

お疲れ様です。

今回、また夜勤帯での仕事になりましたのでこれまで更新をいれてたタイミングがズレると思います!

おそらくは朝、あるいは深夜かな?


最近では日に100PVを超えることが珍しくなくなりました。

本当にありがとうございます。


期待を裏切らないよう、

しかし、予想を裏切れる面白い話を展開していきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。

家を出て駅に向かう。


クロードがいる龍堂神社に向かうため駅を越えようとするが、なにやら噴水広場が騒がしい。


「……♪~~」


何かの曲…合わせて女の声、『歌』が聞こえてくる。


路上ライブか。


最近では少し数は減ったが、昔から駅前でギター片手に歌っていたやつはソコソコいた。

イメージでは駅前のロータリーや、それこそここでいう噴水広場のような目立つものの前に立ち、足元に敷物をひいてスピーカーや機材を置いて、目の前を通っていく通行人相手に自分の歌唱を聞いて貰う。

俺はあまり音楽には興味はないが、そういう地道な活動からプロになった者も多いのだとか。


ただ、少し気になったのは路上ライブにしては観客の数がかなり多いように感じる。

こういうのは大半がスルー、せいぜいが歩いているときに横目で見るか、よほど気に入ったやつが歌っている者の目の前で聞き入っている程度だろう。


ひょっとして、有名な歌手なのか?


正直、こういうのは全く詳しくはない。

曲に耳を傾けてみてもやはり聞き覚えはなかった。

知識がないからの可能性もあるので、視覚的に判断しようとして背伸びをしてみるが、人混みが邪魔で視界に映らない。

端のほうに移動してみてようやく、上半身だけだが視界に移すことに成功した。


あんなやつはテレビでもスマホの画面でもみたことはないはずだ。


()()()()()()()見た目をしていれば、芸能に疎い俺でも流石に見覚えが…


見覚えはないはず。

そう判断したいが、微妙な既視感…。


あの緑の髪…、どこかで…


再び注視しようとするが、周りの人間が邪魔すぎる。

少しだけ気になるものの、さして興味はないのは変わらない。

諦めてその場を去ろうとするが、この場の盛り上がりや歓喜や好奇の感情に紛れる一筋の違和感。


これは【困惑】だ。


そちらの方向に目を向けると、すぐ近くにいかにも病弱そうな車椅子に乗った白髪の少女が困ったように立ち往生していた。

この人混みに満足に動けなくなってしまったのだろう。


人の迷惑も考えない屑どものせいで、いつも弱者は割りを食う。

まぁ、俺的には弱者であり続けるのも悪…という考えだが身体的特徴、デメリット、ハンデを与えられた者にとってはそう簡単な話ではない。


俺は屑どもを腕で押し退けながら、少女を目指して直進する。

途中で不快そうに睨み付けてくる屑を、さらに睨み返して一蹴する。


そうこうして少女の前に立つと、彼女は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。

周りがうるさすぎるので、顔を寄せて大きめの声で語りかける。


「どこに行きたいんだ?」


彼女はそれだけで察したようだった。


「ひとまず、駅の方へ…。」


それを聞いた俺は周りを目で威嚇しながら無理やり道をこじ開けていく。

彼女を前にしているために先程よりは無茶はできないが、向こうも曲を聞くため必死になっている。

ゴリ押しで人混みを何とか抜けて、ゆっくりと車椅子を押して駅の改札前広場まで彼女を連れていった。


俺の出番はここまでだ。

本来こういう『面倒』はしたくないが、どちらかと言うと世話焼きという面より、周りの屑によって困らされている彼女を少し憐れに思っただけ。


「ありがとうございます。」


少女はこちらに笑顔で礼を言ってくる。

よく見ると、少女という年齢でもなさそうだった。

若いのは間違いないだろう。

身体も痩せていて小さく見えるし、車椅子に腰かけているので背丈も分かりづらかったが、おそらくは俺より少し上辺りかもしれない。


「いや、礼はいらない。ただの気まぐれだから気にしないでくれ。」


実際、礼を言われるためにやったわけではない。

屑どもに対する当て付けのようなもので、ただの自己満足というのが一番近い。


「良い曲ですね。」


唐突に路上ライブの感想を言い出す。

どうやらこの女、かなりのマイペースというか…変わったやつのようだ。


「俺はあまり最近の曲の良し悪しは分からない。俺に同意を求められても困る。」


「では、どのような曲が好きなのですか?」


とっとと神社に向かいたいのだが、一体どこまで相手にすれば良いのだろう?

正直無視して行ってもいいくらいだが、その無垢な瞳を見ていると無碍にする気も失せてくる。


少しぐらいならいいか…


「まぁ最近の…とは言ったが基本、音楽には全般興味がないんだ。すまんな。」


「そうですか。少し残念です。」


そう言う彼女からは、実際にそう言った感情が読み取れる。


「彼女の曲を聞いて、何か思うことはありますか?」


…あれ?良し悪しは分からんって言ったよな?


「いや、特にこれと言ったものはないが…」


ここまで会話に付き合ったのだ。

少し真面目に考えてみる。


「いや…、やっぱり何もないな。強いて言うなら今この人混みを見て、そんなに集客ができるほど良い曲か?という疑問は残る。まぁこれは俺の感性の問題だと思うけどな。」


「そうですか。」


せっかく真面目に答えてやったのにアッサリとした返事だな。



「あなたとはまた、どこかで会う気がします。」



一体、何をもってそう思ったのか分からない。


「新手のナンパか?悪いが俺には障がい者を支えるほどの器量はない。すまんが他を当たってくれ。」


少し牽制しておこう。

こういう頭でなに考えてるか分からないやつは苦手だ。

感情を読めたとしても、行動や言動がまるで読めない。

変な縁ができてしまう前に、こちらからおかしいヤツを装って距離を作らせる。

そう考えた。


「あなたの名前を教えてください。」


…なんか怖くなってきたな。

マジで何を考えているのか。

ただただ純粋に言っているのだろうか?


「俺は、山田太郎だ。」


「山田太郎さん。覚えました。」


コイツ、実はただのアホかもしれん。


「お前は何て名前なんだ?」


一応聞いてみる。


「私は…いえ、いずれ再会したときのお楽しみとしておきましょう。」


なんじゃそら。

自分だけ聞いておいて、相手には言わないのか。

まぁもうどうでもいい。


「じゃあ俺はもう行く。どこに行くかは知らないが、気を付けてな。」


「はい。ありがとうございました。太郎さん。」


馬鹿なのか純粋なのかは知らないが、

できればこの不思議ちゃんとは再会したくないものだな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お待たせしてすみません。クロードさん。」


おそらくは15分程度、駅で無駄にしてしまったから少し待たせてしまっただろう。

しかし、クロードは全く嫌な顔をせずに、むしろ満足そうな表情を見せる。


「いえいえ、神社や周囲を見て回っていたので大丈夫ですよ。しかし、日本の建築文化は本当に素晴らしいデスネ!美しく、荘厳で、風情があります!」


やはりこの男、日本が好きなようだな。

この街にはあまり名物のような物はないが、おそらくは日本食などを勧めれば好んで食べるだろう。


「それは良かったです。実はクロードさんに是非行って貰いたい所があるんですよ。立ち食い蕎麦って分かりますか?」


「おお!聞いたことがあります!スピーディーな商品の提供!圧倒的コストパフォーマンス!そして、音を立てて食べるのが礼儀だとか!?」


「まぁ、大体そんな感じです。」


最後のは礼儀でも何でもない…強いて言うなら『様式美』が近いが、細かい指摘はいらないだろう。


「味も美味しいし、クロードさんもきっと気に入りますよ。さっそく行きましょう。」


「イエス!実に楽しみです!」


その後、俺はいちいち日本の文化に感動しまくるうるさい外国人を連れて街を練り歩くことになった。


特にこれといった収穫はなし。


お喋りが好きなようで、本人の口から分かったことといえば、日本が好きなのは子供の頃にテレビで見ていた忍者映画の影響だとか…


他には歳の離れた妹がいるだとか、両親は既に他界しているとか、正直あまり役に立たない情報ばかりだ。


強いて言えば、唯一の肉親である妹を(さら)えば人質として有効だとは思う。

ユキの力があれば、場所さえ分かっていれば外国にもすぐに飛べるだろうし、狩人でもない人間を拐うなど造作もない。


だが結局、その場所がわからないんだけどな。


一応、クロードがスマホの画面で妹とやらを見せてきたから顔は覚えておいたが、居場所が分かるわけではないのであまり意味はないだろう。

能力や実力を測りたいなら実際に見せて貰わなければ話にならない。


…やはり()()が必要だな。


焦ることはない。

順序立てて、一つずつ。


俺たち(ファミリー)の、未来のために。

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