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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第五章 組織襲撃 編

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危険な2人?

メグがトリニティへの潜入調査を実施した日の夜。

俺とユキはいつもの作戦会議を行っていた。


『…じゃあユウトも危険な目にあっていたのね?よく無事でいてくれたわね。』


ユキの声は不安と安堵が入り交じっていた。

心配はかけると思ったが言わないわけにもいかないからな。


『正直、生きた心地はしなかったな。メグと初めて遭遇したときもかなりヒヤヒヤしたもんだが、アイツに関しては俺の読む力(リーディング)が一切発動しなかった。龍堂菊(ババア)は結界で防いでいたことはもう分かってるが、あの白いケモ耳女に関してはまるで種が分からない。そもそも読む力(リーディング)が発動しないのを置いとくとしても、いつの間に背後を取られたのか全く気がつかなかった。シンプルに相当な速度だ。非常に危険な相手だと考える。』


『私の方も同じよ。運び屋…黒い翼を持つあの女、私の存在を見抜いていたわ。こんなこと、ユウト以外では1度も無かったのに。自信を無くしちゃうわね…。』


『ユキを見抜く?それはすごいな。』


考えられることとすれば、俺のように読む力(リーディング)か…あるいはそれに近い能力を持っているのではないか?ということだ。

ユキは例の異空間に隠れ潜めばそもそも視覚的に100%バレることがない。

にも関わらず俺がユキの存在を看破したのはユキがこちらに視線を向け、俺の読む力(リーディング)がそれを敏感に感じ取ったためだ。

勘が良いとか、鋭いとかいうもので分かることではない。

だからその翼を持つ女がそういう感知の類の神通力を操るのかと思ったのだが、それを言うとユキ本人の反応は微妙だった。


『いえ、その可能性は限りなく低いわ。狩人にもいわゆる感知タイプというのは結構いるけれど、多分ユウトが考えるそれとは全く違う。神通力の無力化(ニュートラライズ)程ではないけれど、あなたの読む力(リーディング)も大概おかしいのよ。普通は私のことなんて感知できるわけないの。だって()()()()()()んだから。そんな異常な力を持った存在がチラホラいたらやってられないわ。』


ユキはやや呆れたように言う。


『そうは言っても実際にバレてるじゃないか。それとも他にも理由があるのか?』


何か根拠のようなものがあるのだろうか?


『あの翼よ。鬼憑きが異形になるのは基本的に能力の乱用によるものが多いのだけど、例外がある。それがあの運び屋、そしてあなたが見たという獣耳の女。動物や他の生物の特徴を持った存在。彼女たちはその動物の持つ習性や特徴、能力を色濃く受け継いでいるはずよ。そしてそれ自体が彼女たちの神通力。ユウトは例外として、神通力を2つ持つ存在なんているわけがない。つまり…』


『感知タイプではないってことか…。』


『そういうことよ。強いて言えばかなり目が良いとか、鼻が利くということはあると思うわ。私もああいう動物のタイプは久しく見ていないけれど、あの異常な速さ…。おそらく単純な力もかなりのものだと思うわ。敵に回したくはないわね。』


確かに俺が遭遇したケモ耳も『匂いが~』とか言っていたな。

俺の位置も気配とかではなく匂いでバレたのだろうか?


『だが、その黒い翼の…鳥女はなぜメグを見逃したんだろうか?ユキにも気づいた上で見逃したんだよな?こちらの潜入という目的は既に露見していそうなものだが…』


『それに関しても分からないわ。ただこれはあくまで私の予想、と言うよりはただの印象だけれど…向こうもこちらに対して利用価値を見出だそうとしているのかもしれないわ。』


『利用価値?』


『ええ。』


ユキは説明する。


『ユウトの方の獣耳のことはよく分からないけど、こっちの方では私に気づいた後、商いおじさんには伝えずに私たちを逃がしたわ。同じ組織に属する者なんだし、普通は秘密にする必要はないと思うの。当然、私たちを元に場所に戻した後に商いおじさんと共有した可能性は排除できないけれど、それならあの場であえて伝えなかったようにした意味が分からないわ。そして最後に言った台詞…。』


『何か言われたのか?』


『またいつか会いましょう、と。それって少なくても敵意を持ってる相手に言う台詞ではないわよね?』


『…そうだな。ユキがただ者ではないと気付き、敵として排除するのではなく何らかの目的のために利用しようとしている…ということか?そしてそれは組織内には秘密にしている…ひどく個人的な野望だったりするのだろうか。』


『まぁ全然分からないのだけれどね。ユウトの方はどうなのかしら?』


『俺の方はサッパリだ。あれが猫なのか犬なのかも分からん…あっ。』


ひとつだけ分かったことはある。


『どうしたの?』


『いや、全然役に立たない情報だと思うが、その白いケモ耳はクロって名前らしい。見た目と正反対で面白いよな。』


『いや、面白いよなと言われましても…』


『その黒い鳥のヤツはシロって名前だったりして。』


『それは分からないけど、確かに役に立つ情報でないのは間違いないわね。他には何か気づいたことはないの?』


速そう

鼻が利きそう

強そう


ダメだ。

そんな表面的な、しかも感想レベルの情報しかない。

何か他にあっただろうか?

…そう言えば、


『鳥の方も、ケモ耳の方も、どこかで見たことあるような気が…するような、しないような?』


『…今日のユウトは珍しくパッとしないのね。』


『いやぁ、すんまへん。』


『ふふっ。場所は分かったし、しばらくは私が単独で組織の調査をするわ。もしかしたら向こうから何かアクションを起こすかもしれないし、もし敵対してしまいそうなら迷わず撤退するわ。気付かれたのは驚いたけど、だからと言って私に干渉できるわけではないしね。』


『気を付けろよ。その鳥の方はともかく、ケモ耳の方は普通に下手を売ってたら戦闘になってたと思うし。まぁ()()()()()()()かどうかは分からないけどな。』


『ええ、気を付けるわ。また何かあったらすぐに言うから待っててね、ユウト。』


『了解だ。』


ユキとの回線が切れる。


小手調べくらいの気持ちで始めた調査であったが、

ひとまず危険な存在が2人いることは確認できた。

それから場所もユキが調べてくれたから把握できている。

これから具体的な内部の調査を進めるんだろうが、俺は組織の名前が少し気になった。


トリニティ…

三重とか三人組って意味だよな?

あの2人はかなりの実力者だと思うし、トップに近い立場であるはずだ。

勧誘役の商いおじさんも鳥のヤツには素直に従っていると聞くし。

まさかとは思うが、もう一人同程度の危険なヤツがいて、


最強の三人でトリニティです


みたいな展開は正直遠慮してもらいたい。

ユキが言うには会長と呼ばれる存在がいるみたいだから、そいつが組織のボスなんだろうが…。


これ以上はもう俺個人で分かることはない。

姉さんや杏にそれとなく動物に関する鬼憑きについて聞いてみるとするか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



彼女たちは今日見つけた『面白い人材』に関して情報を共有しようとしていた。


「今日は面白い子を見つけたわ。」 

「今日は面白いヤツ見つけたぞ。」


「「…えっ?」」


2人は確かに一心同体で切っても切り離せない関係であるが、流石に面食らってしまう。

2人とも少しの間固まってしまったが、獣の耳を持つ彼女の方が先にアクションを起こす。

彼女の方が堪え性が無く、これは当然の流れである。


「変な男だ。変な匂いがして…とにかく面白そうなヤツだ。」


何も具体性の無い発言に呆れつつ、それも彼女らしいと納得してしまう。


「いつもと言えばいつもだけど、クロ。あなたの言ってることはサッパリ分からないわ。」


つい口元に笑みを浮かべて言うと、獣の耳のクロと呼ばれた女は少し不機嫌になりつつ言葉を続ける。


「ホントに変なんだ!()()!鬼憑きか狩人か…いや、人間かどうかも分からない匂いなんだ!それに()()()にも、なんか雰囲気が似てたんだ。だから…」


聞き捨てならない台詞が聞こえ、シロと呼ばれた少女は少し眉をひそめた。


「あの人に似てたって…。クロ、あなたまだ…」


まだ、諦めていないのか。

もうあの人はいないのだ。


「それに、普通じゃなかった!多分使えるヤツだ!私の『威圧』も全然効いてなかった!ひょっとしたら()()()と同じ、神通力の無力化(ニュートラライズ)かもしれない!」


「はいはい。」


あのような力がそう簡単に再び世に出ることはないだろう。

きっと『あの人に似ている』というところで無意識にその人物に価値を見出だそうとでもしているのだろう。


「……で?そっちはどうなんだ?面白い子ってのは。」


シロは信じてない様子だが、それも珍しいことではない。

クロは自分が言葉足らずであることも理解しているし、伝わらないなら伝わらないで諦めてしまうことも少なくなかった。


「ええ。その子は…その子たちはおそらく、この組織に潜入調査に来てたのよ。」


「その子たち?えっ?調査って…どうやって?」


そもそもの理解力が少ないクロには言葉が足らない様子である。


「私も分からないのよ。ただその子…メグについてる何者かが、周囲から魂の残滓を寄せ集めて纏わせるというとんでもない離れ業をやってのける存在よ。私たちの願いを叶える重要なピースになるはずだわ。」


「そんなことができるヤツがいるのか。でも、私たちを手伝ってくれるかな?」


そんなすごい神通力を扱う者が果たして自分達に力を貸してくれるのか。


「手伝ってくれるよう説得、あるいは…」

「従わせる、だな。」


2人は笑いあう。

自分達は最強だ。


2人は望みを叶えるために、

ただ強くあり続けるのだ。

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