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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第四章 特訓篇

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35/81

鬼憑きと狩人

お疲れさまです。

すんません。めちゃくちゃ筆に迷いが生じて全然進みませんでした!

設定に関するところなので、いつもより更に

矛盾はないか?これは書いたか?

と色々悩んでこんなに時間をかけてしまいました!

文章も長くなってしまいましたが、どちらかというといつものエピソードが短めかな?と思っていたので、それはいいかな?

いいよね?(笑)

ピピピッ、ピピピッ…


簡素なアラーム音がスマホから流れてくる。


「ふぅ…あんまり寝れんかったな。」


意識が覚醒していき、アラームを止めてそのまま時刻を確認する。


時刻は7時半。

各自8時に起床の予定だったので普通に問題ないのだが、俺がアラームをかけているのはあくまで念のためで、基本的にいつもは大体6時前後には起きていた。

昨夜はあまり寝つきが良くなかったためだろう。

ここ二日続けて見ていた不思議な夢も昨夜は見なかった。

夢というのは深い睡眠ほど見る傾向が多いらしい。


そんなどうでもいい事を考えつつ、スマホの画面を閉じようとしたが1件のメッセージ受信通知が来ていた。

送信主はハヤテのようだ、送信時刻は午前2時過ぎ。


おそらく普段もだろうが、連休ということも手伝って夜更かし放題と言ったところか。


『おう、せっかくの連休だし遊びに行くぞ。お前に騙されてイニシャルFもまだ遊べてないからなぁ。』


実に人聞きが悪いやつだ。

…まぁ間違ってはいないんだけども。


まぁそれは置いておいて、遊びの誘いか。

ただでさえ少ない交友関係だから大切にしようとは思うものの、今はタイミングが悪い。

普段ならとりあえず付き合うところだが、今回は()()()断ることにしよう。


『おう。誘ってくれるのはありがたいんだが、俺はこの連休期間、3人の可愛い可愛い美少女達と秘密の特訓をする予定だ。悪いがむさい男に付き合っている暇は全くないので他の男でも連れていくか、あるいは女でも誘って遊びに行くんだな。誘う相手がいればだけど。』


よし、こんなものだろう。

既読は付かないが、どうせ昼頃まで寝ているんだろうな。

ま、修行のほうが落ち着いたらハルカも誘って1日くらいは遊びに出掛けるのもいいかもな。


…いや、ハルカは馬鹿だが一応は真面目と言えるし、不要外出を控えるよう学校から指示されてる今は誘うのはやめた方がいいかもしれん。


そもそもハルカ自身、少し傷心していたようだしな。


とりあえず今考えることではないと思考を切り替える。

さっさと準備することにしよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれ?ここは昨日の部屋…なんだよね?」


姉さんに問いかける。

物の配置も昨日と違っているし、何よりおかしいのは部屋の大きさだ。

一つ隣の部屋の扉まで距離を考慮すれば、このサイズ感だと明らかに本来の間取りを大きく逸脱しているのは分かる。


「すごいね。昨日は少し広めの古い倉庫って感じだったけど、これじゃもう学校の体育館より広いや。これが婆さんの力なんだね。」


「へへん。どうだ、参ったか?」


「どうしてアカネが偉そうなのよ。」


「いや、別に参ることは無いが…。」


「ユウ君?どうかしたのかしら?」


「話しは聞いていたし、大体想像してた通りなんだけど…ここまで思い通りにできるなら、そもそも1日かけて掃除する必要があったかなって思ってさ。きっと昨日の掃除にも何か意味があってのことだとは思うけど、昨夜も考えても思い付かなかったんだよね。」


昨日から少し疑問に思っていたことを聞いてみるが、


「………」

「………」

「………」


回答はまさかの沈黙だった。

…能力を鍛える上で何かのプロセスが必要だとか、それには掃除が丁度いいとか。

そんな風にあやふやに考えていたが、どうやら特に意味がなかったようだ。


「い、いいか?婆ちゃんには婆ちゃんの考えがある。昨日の掃除にも崇高な意味が、」


「だからそれを聞いてんだよ。孫なんだから祖母の考えくらいお見通しだろ?」


「………」


また黙りやがった。

役に立たないやつだ。


「杏さんは何か心当たりはありますか?姉さんは?」


「いえ…言われるまで気にもしなかったわ。確かにユウト君の言う通りというか…掃除する意味はあったのかしら。」


「菊お婆様のことだから、何かしらの考えはあるのだろうけど…」


「「あっ………」」


2人は全く思い当たらないようだが、俺と、おそらくアカネもある結論に同時に思い至る。


これは、あのくそババアの嫌がらせなのだ。

俺と、反抗的な孫に対する何の意味もない、ただの嫌がらせ。


「ユウ君?それにアカネも、何か思いついたの?」


「そうね。アカネは孫だし、ユウト君はすごく頭が良いし。一体どういう意味だったのか、私たちにも教えてもらえるかしら?」


2人はあのくそババアを崇拝とまでは言わないが、とても尊敬しているような節は感じられる。

そのまま言っても信じてもらえない。

それに2人の前で極力ババアを悪く言うのは避けたほうが良いだろう。

下手をすれば俺の好感度が落ちかねん。

こういう時は…


「いや、俺は多分思い違いです。でもアカネは何か思いついたみたいだな?」


「は、はぁ!?」


こういうのはアカネにぶん投げるに限る。


「どうなのアカネ?教えなさいよ。」


「私にもぜひ教えてほしいわ。菊お婆様のお考えを。」


「そ、それはだな…」


タジタジになっているアカネ。

精々スケープゴートとして頑張ってほしい。

俺は3人から離れて部屋の壁まで歩いてみた。


「すごいな。あんな部屋をここまで広くできるのか。」


コンコン、と壁にノックをしてみる。

昨日の掃除の時にやっていたわけではないので音の違いなんかは当然判断できない。

普通に見た目通りの、木製の壁と言ったところだ。


「この壁をぶち抜いたらどうなるんだろうか?」


シンプルに考えれば、まず隣の部屋が見えるというパターン。

しかし、俺の歩いた距離を考えるとそもそもの位置との整合性が取れないはず。


「ひょっとしたら廊下とか、何なら外に出るかもしれんな。それとも全く別物の謎空間みたいな物も考えられるのか?」


ユキと一緒にワープした時のことを思い出す。

自分がどこにいるか、どういう状況かもよくわからない、フワフワして居心地が良いのか悪いのか良く分からなかった謎の空間。

現在の状況が既に物理的にあり得ないのだから、そういうのも十分考えられるだろう。


「ふんっ!」


全力ではないが7割ほどの力で蹴ってみる。

予想はしていたが、木製であるはずの壁なのにまるで木を蹴ったという感触はない。

ノックをした時は何も違和感が無かったが、今回はまるで土の壁でも蹴ったような感触であった。

壁をよく見ると微妙に凹んでいるのが分かる。

それはやがてボコボコと蠢きだし、やがて元の平面の壁に戻った。


「木の壁だったら凹んだり傷が付くくらいかと思うが、想定以上の力が加わると衝撃を殺すようになっているようだな。それも多少の傷や凹みもすぐに直っちまうのか。」


多分、アカネならこの壁…いや空間もぶち抜けるんだろうな。


逆にそれ以外の狩人、ユキは分からないが他の鬼憑きであろうともここから抜け出すことはできないのだろう。

よくよく考えたら、ここにアカネがいなければ俺も閉じ込められたようなものだ。

ゆめゆめ油断をしてはならない。

くそババアのことだ。

いつでも俺を閉じ込めるチャンスを狙っていると考えておくべきだろう。


「ユウ君。何をしているの?」


「いや、なんでもないよ姉さん。そっちの話は終わったかな?」


見ると3人ともこちらに来ていた。

アカネだけ焦燥した様子であるが、他2人の様子を見る限りうまく誤魔化せたようだな。


「ええ。早速修行…の前に、少しだけおさらいをしておきましょう。」


「昨日言っていた()()ってやつだね。」


「そう。今からユウ君の鍛える力なのだけど、それは【神通力】と呼ばれている力の行使であることは以前少し話したけれど、覚えているかしら。」


「うん、覚えているよ。確か鬼憑きもそうなんだよね?」


「私が話の流れで言っただけなのに、覚えているのねユウト君。流石だわ。」


「ユウ君は天才だもの。それでね、神通力を…つまり能力を使うということ以外にも、狩人と鬼憑きに共通して言えることがあるの。それは、最初は()()()()()だった…ということよ。」


ユキは確か『人間の突然変異』のようなものと言っていたな。


「そうなの?俺が見た怪物は人間の面影なんてほとんど無かったよ。気持ちの悪い肉塊って感じだったけど、あれも元は人間だったんだ…恐ろしいね。」


驚き、ショックを受けているように振る舞う。

ユキから聞いていたことではあるが、怪物の容姿も3人には伝えていたし、驚かないのは不自然というかおかしいだろう。


「あれ?でも待って。元が同じ人間で、同じように能力を使うって言うのなら。狩人と鬼憑きってほとんど変わらないんじゃ?」


ユキは化物…鬼や成れ果てと言ったか?

駅で見たような奴になるのは『呑まれると』という表現を使っていた。

『吞まれなかったら』鬼憑きと狩人の差など無いのだろうか?


「良い質問ね。実際その通りなの。」


答えたのは杏だ。


「ユウト君みたいな例外の場合もあるけど、能力は普通、素養・素質のある人間が儀式を行って会得するものなの。狩人だろうが、鬼憑きだろうがね。つまり、違いが出るのはその後。能力を得た後、神通力を自らの欲のためだけに行使し、他人を省みず悪どい行為に手を染める者。そういう人間が悪意にまみれていって暴走し…やがて、鬼憑きへと身を落としていく。体にも変化が出てきて、異形の存在となる。そして、最終的には…」


「怪物になるんですね。俺が見たやつみたいに。」


「そうよ。だから簡単に言ってしまえば、鬼憑きというのは能力を持った悪い人間と置き換えてしまってもいいわ。」


「…単刀直入に聞きたいんですが、だったらここにいる4人全員、鬼憑きや怪物になる可能性があるということでしょうか?」


「いや、基本的に鬼憑きになるのは例外的場合だ。」


今度はアカネが続ける。


「神通力を使える素養を持っている人間というのはワリといるんだ。しかし、それら全てが狩人になるべく儀式を受けられるわけではない。各国の代表…日本なら婆ちゃんだな。代表者が人間性を見極めるんだ。みんなちゃんと人を見る目を持っている。だから儀式を経て鬼憑きになるようなやつなんてそんなにいるわけではないんだ。殆どが儀式をしないで例外的に能力を得たやつが、好き勝手に生きた結果として鬼憑きになる場合が多いな。」


「俺も例外的に能力を得たんだが?」


「…そうだな。だが、ユウトなら大丈夫だ。」


「根拠はあるのか?」


「一応な。ユウトの能力だ。」


俺の能力がなんだと言うのだろうか?


「ユウ君の能力、【神通力の無力化(ニュートラライズ)】の前任者は聖女とも呼ばれるような、とても立派な人だったの。優しく、強く、欠点なんて言えるものなんて殆どなくて、誰からも尊敬されるような人だったのよ。そんな彼女と同じ力を持ったユウ君が悪しき存在になるわけがないわ。何より私の弟だしね。」


「そうなんだ!それじゃあ安心だね。姉さん!」


実のところ性格には問題があるかもと自覚があるし、自分の未来のために能力を好き勝手に使う予定の俺としてはめちゃくちゃ心配だったが、能力の段階である程度は判別できるのか。

確かに神通力の無力化(ニュートラライズ)という力は能力の特性上、一般社会では無用の長物だ。

狩人や鬼憑きが存在しない世の中なら意味がないとすら言えるレベルだろう。

しかし、


…他人の感情を読む力に関してはどうだろうか?


これは誰にも具体的に話したことはないが、ユキには言っておいたほうが良い気がする。


また、姉さん達には言わないほうが良い気がする、念のため。


「少し脱線してしまったわね。話を戻すけど狩人と鬼憑き、最初はほとんど差は無いのだけど、ユウ君がこれから狩人として、鬼憑きと戦っていく上で何が必要か分かる?」


戦いに必要なものか…なんだろうか?

負けは死を意味する。

つまり負けは許されない、何の捻りも無いがやはり『力』とかだろうか。

あるいはその力を得るための『努力』であったり『覚悟』であったり…。

いや、ありきたり過ぎるよな………分からん。


「ユウト君が答えに詰まるのも珍しいわね。まぁそれが普通なんだけど。」


「お恥ずかしい限りです。強いて言うなら『覚悟』でしょうか?」


「「おー」」


「どうしてそう思ったの?ユウ君。」


感心したように声を出したアカネと杏子とは違い、真剣な表情のまま尋ねてくる姉さん。

覚悟という答えは悪くないが、中身が重要ということだな。


姉さんの思考で考えろ。


姉さんはどういう人か。


姉さんが鬼憑きと戦う時、何を考えているのか。


姉さんの気持ちになって考えろ。


姉さんは…


「ユウ君?」


「…元は人、人だった存在と戦う、いや…()()覚悟かな。」


「「「……………」」」


3人とも黙り込んでしまう。

間違いだっただろうか。


姉さんは優しい人だ。

俺のように、屑は死んだほうが良い、いないほうがマシと考える人間とは根本から違う。


昼間っから酒に呑まれて潰れてるような屑相手でも、介抱してやらないと気が済まないように。

きっと鬼憑きに対しても、元が人間ということで思うところがあるのではないか。

しかし、大勢の一般市民の安全を守るために日々『殺す覚悟』を持って狩人をしている。


悪を、敵を殺す。

その覚悟を持つ。

俺はそう考えたのだが、果たして正解は…


「…やっぱり私なんかがユウ君に教えることなんて何もなかったわね。」


「ユウト君、あなたやっぱり普通じゃないわね。今までどういう生活をしてきたらその思考に至るの?」


「まぁユウトは天才だからな。」


どうやら姉さんの、姉さんたちの考えていた答えを出せたようだ。


「ユウト君にこれ以上座学は必要ないわね。」


「…ということは、いよいよ本格的な訓練ですか?」


「そうね。神楽、あなたの力を見せてあげれば?ユウト君も知りたがっていたし。」


「ええ、ここまで来て隠すことなんてないわ。ユウ君にも覚悟も見せてもらったしね。」


姉さんはそう言って無造作に左手を俺のほうに差出し、手のひらを上へ向ける。

姉さんは確か『炎』を扱う…みたいな感じで言っていたはずだ。

姉さんも他の2人も何も言わない。

俺も黙って姉さんの手を見つめる。

やがて手のひらの中心から白黒の、よく分からないモヤモヤしたものが発生した。

少しずつ大きくなっていき、やがて人の上半身は覆えるくらいのサイズになった。


「すごいね。こんなに大きい炎が出せるなんて。でもこの色は…?」


色に関しては、最初に見た通りで白と黒が混ざり合ったような、強いて言えば『銀色』が近いが、うまく言葉で言い表せられない見た目をしている。


一般的な炎、つまり火を想像したときに真っ先に思い浮かぶ色は『赤』、時点で『青』だろうか。


「私の力は『浄火』と呼ばれていて、普通の炎とは大きく違うの。熱くもないのよ。」


ほら、という風に俺に炎を近づけてくる姉さん。

姉さんが俺に対して危険な行為をするわけがない。

俺は迷わずに手を突っ込んでみた。


「本当だ。全然熱くもなんともない…むしろなんか気持ち良いくらいかも?」


熱くはないが、ほんのり温かみのようなものを感じる。少し肌寒い秋に日向ぼっこでもしているかのような、不思議な感覚だが嫌なものではない。

だがここで疑問が生じる。


「でもこれで鬼憑きをどうやって倒すの?」


「当然の疑問ね。でも大丈夫。私の炎は【悪】を燃やすの。」


「悪?」


また曖昧な表現だ。

【悪】の定義が分からない。


「よく分からんって顔をしているな、ユウト。」


「…ああ、正直どうやって戦うのか分からない。悪っていうのは…なんだ?」


「私が、自分の力が好きではないと言ったことを覚えてる?」


「うん。不思議な色だけど、暖かくて気持ち良い。いい力だと思うけどね。…戦い方は全然分からないけど。」


「私の炎はね。悪を、【私が悪と定めたもの】を燃やし尽くすまで消えない。私の裁量で【悪】を定めて、一方的に断罪する。とても傲慢で、恐ろしい力よ。」

5/7テコ入れしました

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