会議② ーneutralizeー
しばらくして、
やっと落ち着いた三人に話を戻すように促す。
「ふふふ…アカネの弱みを入手したわ‼これでアカネが調子こいてもやり返せるわ‼」
「うわーん‼痛いよぉ‼」
「ひょっとしたらユウ君は…、でもそんなはずは…」
…どうやら俺に世界を変革させるほどの力は無かったようだ。
なぜかできるという気がしたが、できないのならしょうがない。
とりあえずこの場を収拾しなくては。
そう思い、比較的会話できそうな姉さんに話しかける。
「姉さん。なにか心当たりがあるの?」
「…あると言えばあるわ。でもあり得ない、はず。でも、アカネが殴り飛ばされるなんて、あり得ないことが実際に起こった…。」
また自分の世界に行ってしまいそうなので、再度話しかける。
「あり得ないって…。強敵とかもいたんじゃないの?殴り飛ばされることぐらいはあるんじゃないの?姉さん。」
「絶対に無いわ。」
即答で断言されてしまった。
「それに…、見て。」
そう言ってまだ泣き喚くアカネに指を指す姉さん。
しかし、さっき見た光景と特に変わりはない。
「泣いたこともないってこと?」
「いいえ。まぁそれも七歳の時に喧嘩したとき以降は一度も見ていないけれど、そうじゃない。口元を見て、ユウ君。」
「口…?」
言われてみると、口元右側から少し血が出ているのが分かった。
まぁ顔を殴ったんだし、口ぐらい切れるだろう。
一体姉さんは何を言いたいのだろう?
「私は誕生してこの十七年間、アカネが血を流しているところを一度として見たことが無いわ。」
とんでもないことを言い出す。
「ハハハ。流石にそれは言い過ぎだよ姉さん。………冗談だよね?」
笑ってみるが、姉さんの表情は真剣そのものだ。
「さっきも言ったけど、アカネはすごいという言葉では表せられないほどの力を持っている。殴る程度では勿論、たとえ核攻撃でもアカネが本気ならダメージを負うことは無いわ。」
どんな怪物だそれは。
B級映画がファンタジー小説でしか聞いたこと無い設定だ。
「それじゃあもしアカネがヤケクソになって暴れたりしたら世界滅亡だね。」
「その通りよ。」
冗談で和ませたかったのにまたも即答で肯定されてしまう。
「いやいや姉さん。流石にそんなこと無いでしょう。アカネが暴走しても狩人全員で畳みかければいいんじゃないの?」
「その行動に意味はないわ。全狩人どころか全人類で全兵器を駆使したところでアカネは倒せないわ。数も、力も。アカネの前には意味を為さないの。」
そんな怪物、どうしようもないじゃないか。
ユキのためにアカネの存在は必ずネックになるが、そんなバケモノどうやって制すればいい?
ユキはこんなチートゴリラと戦えるのか?危険すぎる…………んん?
「…あれ?でも普通に痛がって泣いてるけど…?血も出てるし…」
俺の疑問は至極当然の筈だ。
言ってることが矛盾している。
姉さんが俺に意味の無い嘘をつくはずはないが…。
「だから問題なの。大問題よ…。」
「そうね。これは超重大な案件よ。とてもこの三人で内々に処理していいレベルじゃないわ。」
アカネの失態を十分に保存できたのか、落ち着いたであろう涼宮も会話に入ってくる。
終始暗い表情をしていた姉さんと対照的に、若干興奮しているような感じがする。
「ユウト君。あなたは神に選ばれたのよ。以前も一人、その力を発揮して狩人を導いていた存在がいたわ。アカネも唯一、最後まで勝てなかったあの人の…その力…。」
心当たりがありつつも、なかなか結論を出そうとしない姉さんとは違い、確信した様子で何故か嬉しそうに語る涼宮。
そして宣言する。
「あなたの力は、『ニュートラライズneutralize』。神通力の無力化よ‼」




