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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第三章 本気の人生を

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会議 ー 超越者 ー

「Z Z Z …Z Z Z …」


「いや、それはズズズと読むんであって、ゼットゼットゼットって言うのは水木〇郎か頭おかしいヤツかのどっちかだぞ」


「そもそも今更狸寝入りしようが何しようが、アナタの子供みたいに泣き喚く無様な様子はしっかりと映像でも画像でも保存したわ。無意味な抵抗はやめなさい。」


「アカネ。恥ずかしいかもしれないけれど、真面目にしなさい。」


「…とりあえず、ユウトはアタシに謝罪すべきだ。女の顔を殴るなんて…なんてやつだ。」


文句を言いながら起き上がり、席に着く。

4人が再び向かい合い、ようやく本当に話が進められる。


「で、その神通力の無力化(ニュートラライズ)ってのは、どういうモノなんですか?涼宮さん。」


「今更だけど、杏でいいわ。ユウト君。神通力の無力化『ニュートラライズ』というのは名前の通り。私たち狩人や鬼憑きも使う、普通の人間には扱えない特別な力、神通力。それを完全に無効化させてしまう、アカネの【超越】と並ぶ…いえ、それを超える最強の力なの!狩人の強力な力や、鬼憑きの恐ろしい能力も無に帰して消し去る物凄い力よ‼」


「…私もそう思う。アカネにダメージを負わせる術を、他に思いつくことはできないわ。」


「………」


「黙ってないでなんとか言えよ。泣き虫アカネちゃん。」


「ア、アカネちゃんはやめろっ!!泣き虫って言うな!!…アタシもそう思った。確信に近かった。だからユウトに攻撃したんだ。」


「確信に近い、というのは確信ではないわ。あれは軽率な行動をとったアンタが悪いわ。アカネちゃん。」


「私も、アレを許してはいないということを忘れてはいけないわ。アカネちゃん。」


小ばかにする3人と発狂するアカネちゃん。


少し空気は明るくなったか。

姉さんの様子だけ少し変な気がするが、若干の笑みも確認できたので大丈夫だろう。


「ま、アカネちゃんはともかく。その神通力の無力化(ニュートラライズ)ってやつで間違いない、そう思って大丈夫なんですかね?杏さん。」


姉さんに振りたいところだが、あまり本調子では無いようだし、説明が丁寧な杏にお任せしよう。


杏、と呼んだのが嬉しかったのか、微笑みながら答えてくれる。


「ユウト君がアカネにダメージを与えたということで確実になったわ。ただ耐えるだけなら狩人にも1人いるの。ただ結局アカネが全力を出しさえすれば何もいないのと一緒なんだけどね。ただアカネに有効な攻撃ができるとなったら話はまるで違うわ。アカネにダメージを与えるにはアカネの【超越】をなんとかしないと駄目だもの。」


超越…さっきも言っていたが、どういう力なのだろうか?


「杏さん。さっきから超越って言ってますが、具体的にはどういうモノなんですか。」


「【超越】はね、その名の通りで()()を超越する力よ。すごい強い鬼憑きが現れたとするわね。ソイツはとても速く、硬く、強かった。でもアカネの場合、ソイツを超越してより速く、より硬く、より強くなれる。簡単に言うとそういうことなの。とどのつまり、アカネがこの世界に存在している以上、この世界に存在する全てを超越した力を持つ。理不尽の権化。頂点。まさに神と呼ばれるのも納得の力なのよ。」


「ははっ。とんだバケモンですね。」


「バケモンって言うな!」


そんなもん笑ってまうわ。


「でも、そんな理不尽の権化。神に匹敵する力でさえ無効化してしまうのがユウト君の力なの。…だからこそ、とても困ったことになったわ。」


明るい表情から一変、言葉通りに困った顔をする。

言葉も詰まり、どう言おうか悩んでいるようだ。

それを見てアカネが繋ぐ。


「狩人や鬼憑きの存在は世界各国のトップ連中は把握しているんだ。そしてアタシは日本からは神格化というか、すごい優遇されたりしている。だが外国からは違う。恐れられてるんだよ、ユウト。アタシがその気になったらどの国でも滅ぼせるからな。ここまで言えば、ユウトなら分かるだろ?」


「…なるほど、抑止力か。」


アカネは世界最強の存在で誰も逆らうことができない、したくない。

それは、アカネに勝てないと分かり切っているためだ。

アカネの気分を害さないよう各国もやきもきしているといったところか、きっと政治的な面や貿易面でもアカネの存在が大きく影響していると考えられる。

そんなところにアカネを倒せるかもしれない、みたいな話が出てきたら当然飛びつくだろう。

アカネに対する抑止的効果は勿論、倒せでもしたら他国にかなり大きく出れるのは間違いないな。

つまりは…、


「世界で俺の奪い合いでも始まるってところか?」


アカネはにやけてパチパチと拍手を送ってくる、正解か。


「頭が良い、賢い…って神楽から耳タコだったけれど、どうやらブラコン補正ってわけじゃないみたいね。頭も良くてカッコ良くって…。素敵よユウト君!」


「ありがとうございます。杏さん。」


「…んー。杏さんだとなんか距離感があるわね…。ユウト君なら呼び捨てでも良いわよ!」


「いえ、こちらが歳下ですし、姉さんの友達というのなら呼び捨てというのも…。では『杏先輩』というのはいかがでしょうか。」


「せ、先輩…。杏先輩…。なんて甘美な響きなのかしら…。」


よく分からんが杏は気に入ってる様子だ。

多分きちんと歳上として扱ってもらえることが少ないんだろうな。

実に哀れなロリっ子である。


「ユウトユウト。」


「ユウトは1回でいい。」


アカネがコンコンとテーブルをノックする。

多分、くだらないことを言い出す気がする。


「アタシ、歳上。神楽の親友。」


自分をピッと指差して言う。

顔はなんだか不服そうに見える。


「なんで杏が『杏さん』、『杏先輩』でアタシが呼び捨てなんだ?いや呼び捨てはともかく、ゴリラとか怪物とかバケモノってひどくないか?普通に。」


「日頃の行いのせいじゃね?普通に。平然と人を殺せるパンチしてくる野蛮人はゴリラでいいんじゃね?普通に。」


「だからそれは悪かったって言ってるだろ。アタシのこともアカネさん、と敬うように!」


「いや初めての謝罪だぞ、普通に。何度も謝罪したみたいに言わないでくれるか?普通に。大体『アカネと呼べ』って言ったの、昔のお前だったろ。それともホントにさん付けしてやろうか?」


「……いや、やっぱりアカネと呼ぶように。ゴリラ、怪物、バケモノ抜き。愛情マシマシで。」


「お前に食わせる愛情は…()ぇ!!」


くだらない言い合いでアカネと杏は楽しそうにしているが、姉さんは先ほどからずっと暗い。

意識ここにあらずと言った様子でずっと何か考えごとをしているようだ。

こいつ等を楽しませるために道化を演じているわけでは無いんだが…。


「おい、姉さんの様子がおかしいのはどういうことだ。(小声)」


同性の幼馴染としてコイツには何か心当たりがあるかもしれない。

一緒に暮らしてきた俺が知らないということは、おそらく性別的に言いにくいことである可能性がある。

一応このゴリラも分類上はメスだし、羞恥心も全然無いやつだからよっぽどの事じゃない限り喋るだろう。


「う~ん。多分近いうちに神楽自身が話すと思うから、それまでは我慢したほうがいいな。」


「私もそう思うよ、ユウト君。」


耳が良いのか、聞いていた杏にもそう諭される。

当てが外れたが、あまりいい話ではなさそうということだけは分かった。

アカネがいずれ話してくれるというならそうなんだろう、コイツも付き合いが長いからな。


「では話を戻そう。俺のその無力化の力の希少性、価値は理解した。だが黙ってれば分からないんじゃないか?ここの4人が何も言わなければ問題ない気もするが…。」


「確かにバレなければ問題はないわ。でもユウト君。それはつまりアナタが力を使わないことが前提条件となる。アナタの本来の目的が達成できなくなるわよ?」


「ふむ、確かにそうですね…。」


「それにアカネから聞いたけど。ユウト君は昨日、鬼憑きの標的となった。一般人が鬼憑き相手に生き残ったなんて聞いたことが無いけれど、普通に考えたら今後積極的に狙われそうな気がするわ。奴らは鼻も利くからね。」


昨日のブヨデカ野郎は鼻が良さそうなイメージは無かったが例外なのだろうか?


「だからユウト君が自衛するには能力を使わざるを得ない。」


「でも俺は昨日のバケモノ…鬼憑きから逃げるときはこんな便利な力は使ってなかったですよ?」


「それはユウト君がすごいだけよ。それに加えて奇跡的な運…いえ、今考えれば無意識にその力を使ったと言われたほうがしっくりくるわね。」


「結界から抜け出したことも一応それで説明できるな。」


「…確かに。流石のユウ君でも鬼憑き相手に逃げられるわけがないわ。多分命の危機を感じて無意識レベルで力を行使した…と考えるのが自然でしょうね。」


姉さんも復活したようだ。

3人の予想は外れているが、それを指摘することはしない。

せっかく自然なストーリーを作ってもらったのでありがたく利用させて貰おう。


「3人がそう言うならそうなんだろうね。でも別に襲われた時に近くに狩人がいなければ良いだけじゃないの?いなかったら自分で戦って、誰かいたらその人に倒してもらうって感じで。」


「ユウ君。結界は狩人や鬼憑き、神通力を使える者なら誰でも認識できるの。つまり最初にその場に居なくても、後からやってくる可能性もある。だからユウ君が力を使おうとする限り、バレるリスクは必ず存在するの。それも…低くない確率でね。」


そうなのか、じゃあ戦ってる最中に後から来た奴に見られたりする可能性もあると。


「ん?でもアカネはあんなに近かったのに来てくれなかったじゃないか?」


そうだ、そもそもこいつが来ていれば。

俺があんなに必死こいて逃げなくても済んだはずだ。

おそらくあのブヨムシ野郎でもアカネなら瞬殺できるんだろう。


…まぁその場合はユキに会えなかったかもしれないがな。


責めるという程ではないが、なんで気づかなかったんだ?

そう確かめるぐらいの気持ちで聞いた。

アカネは…変な顔をしていた。


変な奴を見る顔をしていた。


「いや、ユウトがどこで捕まったなんてアタシは知らないぞ。どこだったんだ?」


そこからかよ⁉さっき姉さんは狩人なら誰でも認識できると言っていたはずだが…。


「お前が駅前で絡んできた時だよ。急にいなくなって変だと思わなかったのか?」


「アカネ…ユウ君の命が危なかったのよ?気を緩め過ぎだわ。」


「そうよそうよ。ユウト君になにかあったら私が許さないんだからね!」


二人からの叱責も加わるが、アカネは先ほどよりも変、険しい顔をしていた。


「…駅前だと?正確にいつなんだ?どのタイミングだ?」


「たしか…お前がビル上の掲示板見ながら『アタシのほうが~』みたいなくだらない事を言っていた時だな。その直後くらいだ。」


「なんだと!?」


「うおっ!?なんだ急に!?ビビらせるな!」


他二人も突然の大声に驚いていた。

俺の発言のどこに驚くことがあると言うのか。


「…ユウト。お前が結界に捕らわれた時、バケモノ…鬼憑きを見たんだよな?他に何か見ていないか?例えば…」


嫌な予感がしたが、手遅れだった。


「黒づくめの女とか」

5/5テコ入れしました

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