身長は、自分以外は存外気にしていないものだ。
「…それで、一体どういう状況だったのか説明してくれる?アカネ。」
姉さんは少し怒っていた。
ロリっ子が泣いていたからアカネが苛めたとでも思っているのかもしれん。
「いや、朝にユウトの素質を確かめたいって神楽が言ってたろ?だからコイツを呼んだんだよ。」
「それは言われないでも分かるわ。でもなんで杏は泣いていたのよ?」
「それはユウ…痛っ」
余計なことを喋るなゴリラ。
脛を思いっきり蹴とばす。
常人ならアザは出るくらいの力で蹴り上げたが、存在が理不尽なアカネには少しつねったくらいのダメージしか入らないだろう。
「それより姉さん。このク……女の子は?」
危ない危ない、姉さんの前では極力汚い発言はしないように気を付けてはいるが、慌てていたためクソガキと言いかけてしまった。
「その子は涼宮杏。朝の件でアカネが呼んでくれたみたい。彼女は他人の才能を見抜く力を持っているわ。私やアカネと同い年で、お友達で、仲間なの。」
「そうそう。こんなに小っこくてもお前よりも歳上なんだ。しっかり敬うように。」
「小っこいって言うな!このメスゴリラ‼」
「なんだとチビ‼脳天に拳骨食らわせてもっと縮めてやろうかコラ⁉」
「……」
こ、こいつ歳上かよ。
しかも姉さんの友達ときた。
ロリっ子だとかロリガキだとか言ってしまったが、姉さんが友達というならこいつにも…いやこの人にもキチンと敬意を払わなければ。
「涼宮さん。先ほどは姉さんの友人とは知らず、失礼な言動や態度をしてしまったことを謝罪致します。大変申し訳ありませんでした。」
その場に立ち、姿勢を整えてからしっかりと頭を下げる。
それを見ていた杏はとても驚いた様子でまじまじとこちらを見ていた。
「…神楽、この子って二重人格だったりする?」
「ユウ君が?そんなことは無いわよ。ユウ君はとっても素直で、賢くて運動もできて、とっても優しい自慢の弟よ。」
「ありがとう姉さん。俺も姉さんの弟になれてとても幸せだよ。」
「………」
「………」
言葉を発せられないアカネと杏。
俺たちの美しい姉弟愛を目の当たりにして感動に打ち震えているのだろう。
「神楽がとんでもないブラコンだったのは知っていたけど、弟もその…、すごいわね…。」
「それはそうだ。アカネとアタシが少し前に喧嘩したときも、アタシの後ろからこっそり近づいてきて金属バットで後頭部を迷わず殴ってくるくらいには神楽を大事にしている。」
「アンタじゃなかったら完全に殺人行為ね。」
二人がひそひそと俺たちの愛情の深さに関して議論を重ねているようだが、話を戻させてもらおう。
「涼宮さん。先ほどの無礼をどうか、お許しいただけませんでしょうか?自分にできる償いなら何でもさせて頂きます。」
「ユウ君?杏に何かひどい事でも言ったの?」
本人やアカネに余計なことを言われる前に全部終わらせなければ。
「うん、姉さん。アカネの仲間だと決めつけて、色々と雑に扱ってしまったんだ。年齢も知らなかったし、容姿で子供と決めつけて、歳上の女性を子供扱いしてしまった。本当に申し訳がないよ。」
「別に『アカネの仲間』ってのは間違いじゃないぞ、ユウトよ。」
メスゴリラは放置で良いだろう。
「…そう。確かに女性を容姿だけで判断するのは良くないことね。でも自分の過ちを認めて心から謝罪できるのは立派だわ。流石、私のユウ君ね。杏、どうかユウ君を許してもらえないかしら?」
「ま、まぁ?私も体型のことを言われて腹を立てたとはいえ、不可視の衝撃で一発痛いのくれてやろうなんて、馬鹿なことをしたわ。ご、ごめんなさい…。」
どうやら許してくれた上、頭を下げて謝罪までしてくれた。
「いいえ、原因を作ったのは俺の発言です。謝られては困ってしまいます。容姿のことを気にされていたのなら怒るのも当然でしょう。しかし…」
「…しかし?」
「涼宮さんは自分の容姿に自信を持っていいかと思います。確かに、世間一般的には姉さんやアカネのように所謂『スタイルの良い女性』がモテたりするかと思います。」
前置きの段階で『くっ…』と悔しそうにしている涼宮。
「ですが、涼宮さんもとても可愛らしい顔立ちをされています。肌もとても綺麗でシミ一つない。髪もとても綺麗で普段からしっかりとケアされているのが分かります。それに体型を気にされているようですが、背が低いことを子供っぽい、とだけ捉えていませんか?女性目線は知りませんが、男目線からすると背の低い女性というのは庇護欲、つまりは守りたいと思わせる傾向が強く、一定以上の人気があると言えます。何より涼宮さんからは最初、話し方を聞いていてとても聡明な方という印象を受けました。周りのしょうもない意見などには耳を貸さず、怒りを抑えて堂々としていれば。いずれ涼宮さんの魅力にみんな惹かれていくと思いますよ。僕自身、涼宮さんはとても魅力的な女性であると感じています。」
ここまで褒めちぎれば最初の超マイナスの印象も多少は改善されるだろう。
姉さんの友達である以上、なんとか矛を収めてもらい、うまくやっていく必要がある。
「ユウトユウト。」
アカネがトントンと俺の肩を指で突いて小声で呼んでくる。
「ユウトは一回でいい。」
目線で『なんだ?』と問いかけると、顎をクイッと前方に向ける。
前を見ろということか?前方に座る涼宮を見やる。
そこには耳まで真っ赤にした少女がこちらを見つめていて、目が合うとすぐさま顔を俯かせてしまった。
ふむ、これは…
「やりすぎたなユウト。流石と言うか…、このロリ殺しめ。」
アカネの言う通りだ。
初対面の印象が最悪過ぎたからと思ってやりすぎた。
これじゃ新手のナンパだ。
恐る恐る姉さんの方を見るが、
「ああ!私のユウ君が女たらしに!?これも全部アカネのせいだわ!!」
「いや、なんでやねん。」
「ち、違うんだ姉さん!俺はただ姉さんの友人に自信を持ってもらいたくて…!」
ちらりと涼宮を見るが、やはり目が合うと同時に顔を逸らされる。
その真っ赤な横顔は俺が如何に『やらかしたか』を如実に表していた。
「す、涼宮さん!涼宮さんからも姉さんに説明を!」
「あ、あう…。だ、だめ…。アナタの顔を見れない…。」
バカヤロウ!
俺の顔なんざ関係ないだろうが⁉
両肩を掴み必死に説得を試みるが、効果が無い…いや、もはや逆効果だ。
再びカオスが部屋を支配する。
「アカネ…!許すまじ!!」
「だからなんでやねん。」
「あぁ…。男の人にこんなに情熱的に詰め寄られる日が来るなんて…」
姉さんまで暴走してしまった今、もはやアカネがまともに見えてしまう。
もうめんどくさいのでアカネに丸投げして落ち着くまで放置しよう。
俺は自分の部屋に戻って漫画の新巻でも読むことにした。
部屋から出る際アカネがめちゃくちゃ睨んでいたが、そんなもん知ったことではないのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうしてテキトーに時間を潰し、学生服から私服に着替えて再びリビングに戻る。
先ほどまでの姦しい様子はなく、いたって真面目な雰囲気で話をしているようだった。
「お待たせ。話は落ち着いた?」
「お待たせ、じゃねーんだよ。さっきはよくも逃げてくれたなぁ、ユウト?」
声をかけるなりすぐに不満を言ってくるが、コイツも最初に説明しなかったのも悪いのだ。
否、こいつが全部悪いんだ。
そういうことにしておこう。
「なんだか騒ぎを大きくしちゃって…ごめんね、ユウ君。もう大丈夫だから。」
「ええ、私もかなり取り乱したわ。もう真面目に話をできるようになったわ。安心して。」
涼宮もかなり落ち着いたようだ。
俺の顔を見るなりまた少し顔を赤く染めているが、先ほどのように会話もままならない、というわけではないようで安心した。
「ぞれじゃ、主役も来たし話を再開するわよ。」
「ええ、そうね。ここに座って。ユウ君。」
「よし、じゃあ今度こそハッキリさせようか。ユウトもしっかり聞いておけよ。」
それぞれが真面目に取り組んでくれているようだ。
俺の今後の事を相談してくれているのだろう。
たとえ普段ふざけ切っているゴリラ、いやアカネでもありがたいことだ。
心して聞こう。
俺としても如何なる難題を出されても全力で答えてみせる。
そして、姉さんを手伝っても良いと、納得してもらうんだ。
真面目…いや、もはや厳かな空気になりつつ彼女たちは高らかに宣言した
「ユウト君を私に頂戴!」
「ユウトはアタシんだ‼」
「ユウ君は絶対に渡さないわ!」
…なるほど、今日は建設的な議論はできそうにないらしい。
「そうしてユウトは、再び自室に戻ることを決めたのだった…。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いや、ナレーションっぽく言ったところで逃がさんぞ、ユウト。」
ガシっと背中から抱き着かれてホールドされる。
察知できたのに速すぎて躱せなかった。
こんなくだらないことで本気を出すんじゃない!
「こ、こら!私のユウト君から離れなさいよ‼」
追いかけてきて横から腰の辺りにしがみつく涼宮。
アカネに負けじとくっついて来るが、見た目通りの貧弱パワーで勝負にならなそうだ。
端から見れば兄を彼女に取られてヤキモチを焼く妹と言ったところだろう。
「離せチビ!アタシのユウトにくっつくな!」
「アンタが離しなさいよ!メスゴリラ!!このっ!!このっ!!」
「あっ!こら!脇はやめろっ!!この腐れロリィ!!」
「あなたたち!いい加減にしなさい!!ユウ君を困らせないで!!」
もはや収拾が付かなくなってきた。
アカネもくすぐられて余裕がないのか、離すどころかより強くホールドしてきて背中にダイレクトに暴力的な胸の感触が伝わってくる。
しかも密着状態で俺が暴れたせいか、互いに服もところどころ捲れてしまって、肌同士が触れ合ってしまっている部分も多い。
そして、それより段違いでマズいのが涼宮だ。
俺にしがみつく涼宮を引きはがそうと、俺ごと涼宮を持ち上げて振り回すというゴリラ顔負けの力技により、右の腰辺りにしがみついていた涼宮は現在俺の腰辺り正面、言ってしまうと股間の辺りで必死にしがみついていた。
本人は必死なため全く気づいていないが、掴みやすい俺の太ももに両腕をかけて耐えているため、その可愛らしい顔は俺の股間に強く押し付けられている。
普段は全く意識をしないようにしているが、アカネの暴力的なまでのエロボディをこの密着爆撃されると俺の鋼の精神壁でも防御しきれない。
それに加えて身体こそメリハリは少ないものの、確実にかわいいと称されるべき女子が俺の『ユウト』に顔を必死に押し付けている。
時折叫ぶたびに迸る振動や熱はユウトのユウトをエクスカリバーさせるのは十分でありこれこそが彼女がトクイとするインビジブルインパクトなのだとフカくりかいさせられ…
俺も理性の回路がショートしかけた時だった。
「「「「あ。」」」」
アカネによる振り回し攻撃をなんとか耐えていた涼宮であったが、悲しいかな。
俺のズボンはその力に耐えられなかった。
ヘソのボタンが弾け飛び、必死にズボンを掴んでいた掴んでいた涼宮と一緒にズルズルとズレ落ちた。
ズボンと、その下の最終防衛ラインも一緒に。
「「「「……………………」」」」
三人が食い入るように俺のモノを観察する。エクスカリバーは雄々しく天を突いていた。
余談であるが、中学のプールの授業でも何故かクラスメイトたちは俺のモノをチラチラと盗み見ていたが、そこで初めて俺の聖剣は誰のモノよりも雄大であるということを理解した。
…なんて過去回想している場合ではない。
誰も一言も発せず、瞬きも、微動だにもせずにただそれを見ていた。
アカネにホールドされていた腕の拘束が弱くなったので抜け出してすぐに下着を上げる。
しばらくの無言が続き、
「ユウ君…立派になって…」
「やっぱり色仕掛けは有効だったんだな、ユウト♪」
「わ、わ、わ、わん、わん。わんだっふぉおおおおおおお…⁉」
姉さんは何故か感極まり、アカネは楽しそうに笑い、涼宮は謎の感想を言い残して気絶した。
5/5テコ入れしました




