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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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別れ道

お疲れ様です。

次の話で『第一部』的な物は終わりとなります。

これをいったんの完結として、

少し時間を頂いて『第二部』を書いていくか、

あるいは休止期間を設け、普通に続けて書いていくか。

非常に悩みどころ。

考えて告知しますので、少々お待ちください。

ユリヤもいなくなってしまい、アタシは呆然としていた神楽、そしてシロとクロの入れ物となっていた少女2人を抱えて再び海を走って渡り、家に戻ってきた。

ユリヤの家より更に遠くに来ていたようで、かなりの時間を要して家に着いたときは既に日付を回っていた。

帰ると同時にひどく慌てた杏に詰め寄られるも、ボロボロの服で血塗れのアタシを見て逆に冷静になったようで、


「まずはシャワーを浴びてきなさい」


と言ってリビングの方に下がっていった。

ひとまず着いていって神楽をリビングの椅子に座らせる。

続いて2人の少女を床へ横にする。


「あれ…?なんだかその2人、どこかで…?」


「シロとクロの、入れ物だ。」


「シロとクロ………っ!?」


まぁ言われないと気付かないよな。


獣耳も翼もない。

クロに関しては髪の色なども大きく変わっているから顔だけで判断しないとほとんど別人のように感じるだろう。

まぁ実際、別人のようなものなのだが。

ギョっとした様子を見せるが、害はないと伝える。

半信半疑だったが、前回遭遇した時の威圧感もまるでないことから少しして警戒を解いたようだ。

浴室に向かう際、杏が神楽に声をかけていたようだが、神楽は無言で俯いていただけだった。



「ユリヤ様の体が乗っ取られた!?それに、ユウト君が()()()()闇女に連れていかれたですって!?」



「…声がでかいぞ。耳元で叫ぶな。」


耳元でキャンキャン叫ぶその小さな身体はまさしく小型犬だ。


「あんたがいるのに、なんでそうなるのよ!!」


「知るか!こっちだって大変だったんだ!!お前、両手両足千切れたことあるのか!?身体を蜂の巣にされる痛みが分かるのかっ!?」


「でもあんたは『最強』でしょ!?なんとかしなさいよ!!」


「むちゃくちゃ言うな!!」


コイツ、人の苦労も知らないで…


「だいたい、ユリヤ様が乗っ取られたっていうのはどういうことなのよ?意味が全く分からないわ!」


「そのまんまの意味だ。必死で弱らせたシロクロが、意識を失っていたユリヤの身体に入り込んで乗っ取ったんだ。そのまま闇女に着いていった。」


「…なんなのよ、身体を乗っ取るなんて聞いたこともないわ。まさか、ユウト君も?」


神楽の身体がピクッと揺れる。

ユウトに関しては本当に分からない。

神楽が乱入するまでは、普通に裏切られたと思っていたし、おそらくそうなんだと思う。

記憶を失くしていたのも本当。

裏切っていたのも、おそらく間違いない。

しかし、最後の行動…。

そして、ユウトが名乗った『ユウキ』という名前。


『神楽を頼む』


あれは、間違いなく『ユウト』であった。

ユウキというのは、記憶を失った今のユウトの別人格を指すのだろうか?


記憶を奪ったのはユリヤ。

記憶を失う前から闇女と繋がっていたユウト。

記憶を失っていた生まれた人格…ユウキ。


考えても分からないことが多すぎる。

おそらく、ユリヤに聞けばかなり理解が進むはずだが、肝心のユリヤがいない。


だから『裏切っていた』とは言わない。

神楽には、時間を置いて少しずつだ。


「おそらく、闇女の力によるものだと思う。ユウトを操ってアタシを苦しめたが、神楽が来て正気を一瞬取り戻したんだ。それがなければアタシも死んでいた。」


「そう。流石、神楽大好きなユウト君ね。これも愛の成せるわざかしら?」


アタシの意図を読み取ったのか、杏もフォローを入れるような物言いだが、神楽の表情は暗いままだ。


「それで?」


「それで、とは?」


「これからどうすんの?ってことよ。」


「…どうするかなぁ。」


分かりやすい驚異であるシロクロに関しては、倒すことはできなかったが大きく弱体化させることに成功した。

普通の鬼憑きとも大きく異なっているし、どういうメカニズムの存在なのかは分からないが、今回の戦闘レベルの力を取り戻すにはかなり時間が掛かるのではないだろうか?

ユリヤの身体を奪われたが、ユリヤ自身の力を使いこなせるかどうかは怪しいものだしな。

問題は闇女。

結局、あの鬼憑きが逃げに徹したら追いかけることすらできない。

こちらから見つけることも不可能。

姿を見せた時に最速で攻撃をしかける、という極めてシンプルな行動が最適になるが、そもそもそれが絶対にできないタイミングでしか姿を現さない。

今回、やつらを撃退したことでもうしばらくは表に出てくることは無くなるだろう。

次に現れる時は力を蓄えて、アタシを倒せると確信した時か。


…そもそもアイツらの目的ってなんなんだ?


ユリヤなら、それも知っているのだろうか?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ユウト、大丈夫?」


「ご主人様、どこか調子が悪いのでしょうか?」

「ご主人様、どこかケガしたのか!?」


ふたり(さんにん)とも僕を心配して声をかけてくる。


「…もう、大丈夫だよ。足を引っ張ってごめんね。みんな。」


作戦が失敗したのは僕の、『ユウト』のせいだ。


「馬鹿ね。変なことを気にしないの。」


ユキが苦笑する。

今回の作戦が失敗したことで、もうしばらくはアカネから逃げ回る動きになるのは必至だ。

それに、心配なのはアカネだけではない。


天地神楽。


取るに足らない小物。

しかし、また彼女が目の前に現れた時、

僕はまともに動けるのだろうか?


「アカネより何より、先になんとかしないといけないのは『ユウト』かもしれない。」


「ユウト?」

「「ご主人様?」」


3人とも不思議そうに声をあげる。


「このままだと、また大事な時に神楽が現れたら今回と同じようになってしまうかもしれない。ユウトの神楽に対する『想い』を消し去らないと…」


しかし、どうやって?

そんな都合の良い力は使えないし、強いて言えばユリヤなら記憶ごと消してしまうという荒業も使えるだろうが…シロとクロには()()()無理だ。

2人はその術を持たないし、なにより…


ユリヤの魂はその身体には存在していないから。


「…それは少し、寂しいかもしれないわね。」


声をかけられる。


「ユキ?」


「私は、どっち付かずで困っているユウトを見ているのも好きだったから。」


「…そっか。」


「ご主人様。私たちも、ご主人様が無理して神楽を忘れる必要はないと思います。傷つけたくないなら遠ざけるのがよろしいかと。」


「…ちょっと考えてみるよ。時間はたっぷりあるんだからね。」


もう、あの家に戻ることもないのだから。


…しかし、ユリヤの魂は一体どこに?

奪ったユリヤの身体に魂が存在していれば、2人を離れさせた後に僕が命を奪って魂を奪うこともできる。

ユウトは殺した体育教師の神通力を扱えていたし、僕にはそういう力があるんだ。

ユリヤの魂さえ見つけられれば、全て解決する。

なのに…死んでいるなら分かるが、生きているのに魂がないのだ。

ユリヤ独特の神通力を全く感じないことから確信ができる。

あの事件の被害者たちと同じような現象。

体の中で潜み、隠れるということは不可能だ。

僕には絶対に通じないし、何よりいるなら必ず起こるはずの事象も起きていない。


主導権の奪い合い。


シロとクロがあの形態になった序盤…圧倒的優位だったのにアカネを殺すことに躊躇した理由もそれだろう。

身体という『膜』を失った、魂の塊となったあの形態の2人。

あの状態で他人の命を奪うと、相手の魂を奪い取って取り込むことができる。

そういうメカニズム。

僕には理解できた。

思い出してはいないけど、やったのもご主人様(ぼく)なのだろう。

強力だし、2人の強さの根本でもある力。

しかし、2人はアカネに対してその力を使うのを躊躇った。


そしてその躊躇は正解。


アカネが核に混ざった場合、最終的にはすべての制御を奪われてシロとクロは喰われてしまう。

それほどの規格外の怪物なのだ、アカネは。


…ユリヤは自身の魂を操作する術を身につけた?


非常に考え辛い。

そんなこと、僕以外に可能だとは到底思えない。

しかし、ユリヤなら…と思わなくもないのも事実。

仮にそれが可能として推察する。

魂だけその場に留まるというのは不可能なはずだ。

身体(いれもの)がなければやがて霧散してしまうためである。

つまり、近くにいた誰かの体に…


あの2人のうちの、どちらかか。


アカネが重要な存在を現場に放置しているとは思わない。

おそらくは連れていかれているだろう。

アカネの近くに身体があるなら実質手出しは不可能だ。


「これからどうする?ユウト。」


ユキが聞いてくる。


「どうしようかな。」


シロとクロが再び力を取り戻すまで、あまり派手な動きはできないだろう。


「ご主人様?」


うーんと考えていると、シロクロからの声も掛かる。

あまり心配をさせてはいけないね。


「時間はたっぷりあるんだ。アカネや強力な狩人に悟られない程度に、ユキの家族探しを本格的に進めようか。2人もそれでいいね?」


「もちろんです!ご主人様!」

「了解だ!ご主人様!」


シロとクロの探し人は僕。

僕にはもう帰る場所はここだけだし、ユキの望みを最優先にしよう。

というか、アカネを倒すのだって後から驚異になるという理由だけだし、邪魔にならないならアカネなんて放っておけばいいんだ。

最初からユキのための【家族(ファミリー)】なんだ。

ユキの願いを叶えるために力を奮いたい。


「ユウトはそれでいいの?」


だというのに、当人は少し不安そうな顔だ。


「どういうこと?他になにかあったっけ?」


考えても分からない。

少なくても、今の僕にとってはユキたちより大切なものなんてない。

他に優先するべきことなど何もないはずだ。


「お姉さんのことはいいの?」


お姉さん。

偽物の女。


「どうでもいいよ。僕とってはユキが一番なんだから。」


「…そう。」


僕はどっち付かずの『ユウト』ではない。

ハッキリと、ユキの方が大切だと伝える。


しかし、なぜだろう。


その横顔は、少し寂しそうにも見えた。



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