短期決戦
お疲れ様です。
夏期休暇も終わりましたが、最近思うのは
去年より涼しい気がする
ということです。
暑いは暑いですが、去年が暑すぎたせいか
あまり苦に感じないように思います。
まぁ外仕事なので慣れただけかもしれませんかまね。
みなさんも熱中症には気を付けましょう!
今のアタシが出せる最高の攻撃。
それであのシロクロの前肢、その鋭い鉤爪を叩き折ってやる。
「今度こそ潰れろぉ!!」
「テメーがなぁ!!」
もう何度目になるか。
互いの攻撃が交差する。
しかし、結果はこれまでとまるで違った。
ぶつかり合うと同時に激しい衝撃が…
なんてことはない。
一切の抵抗なく、
アタシの右手が真っ二つに切断されてしまった。
「ぐっ…!?」
激しい痛みに堪らず大きく後退する。
なんだ今のは!?
押し負けた訳でもないのに!
シロクロの攻撃を重いと感じることもなく、
それどころか手応えすら無かった。
まるでアタシの攻撃だけが透かされて、
向こうの攻撃だけがこちらに届いたような感覚だった。
自分の右腕を見る。
手から肘まで綺麗に切断されて、見たくもない断面が覗けていたが、やがて蒸気ようなものが立ち込め、たちまち傷口が塞がっていった。
「ホントに、人間辞めちまったんだな…」
最近ではそもそも傷を負うこともなかったが、ガキの頃の『超越』を使いこなしてない時ですら、怪我の回復スピードは異常だった。
それこそ、治そうとすればユウトに殴られて口を切った時だって瞬時に治せたと思うが、菊に見せるためという理由で意識的に、無理やり力を抑えていたのだ。
しかし、この腕はもう傷の治りが速いとかいう次元の話ではない。
人として、治すことができない程の負傷であった。
今のアタシはおそらく、頭を一撃で潰されたりでもしない限りは死ぬこともないのだろう。
まぁ、コイツら以外にそれができるやつがそもそもいないと思うが。
「あっという間に治ってるわね。流石と言うか、呆れるべきか。やはり止めを刺す必要があるみたいね。」
「頭を潰さないとダメみたいだな。…やるしかないか。」
同じ口から2人の言葉が続いて出てくる。
「一体どういうネタだ?なんでアタシの攻撃だけがすり抜けた?」
「あら?教えてほしいのかしら?」
小馬鹿にするように笑いながら聞いてくるのはシロだろう。
「別に。どんな卑怯な手を使ったのか気になっただけだ。」
「卑怯とは解せないわね。卑怯なのはあなたの『超越』でしょう?あなたと戦った人間は必ず強い理不尽を味わったはずよ。そうでしょう?」
「……ふんっ」
何も言い返すことはできない。
それは、ただの事実だから。
今までアタシは『最強』という立場で、常に頂点にあり続けた。
巨悪の存在も、狩人の強者たちも。
元は『神』とまで呼ばれていたユリヤでさえ。
アタシは常に他人を下してきた。
努力も才能も関係ない。
アタシがアタシであるという理由で、
他人は常に敗者として下されてきた。
アタシが唯一勝てないなと思わされたのは先にも後にも神楽耶さんだけ。
だが、それも所詮は昔の話。
今のアタシはもう誰にも負けない。
アタシはもう、バケモノになったんだから。
だから、バケモノのコイツらでも倒せる。
いや、倒さなくてはならない。
それが、最強としての『責務』だから。
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「ホントに、シロとクロって何者なの?あのとんでもない力…それに、合体というか融合?なんて能力聞いたこともない。彼女たちの『ご主人様』とやらは相当な人物なのね。でも、これなら龍堂茜と言えども…」
「いや、このままじゃマズいね。」
即座に否定する。
このままでは2人は負ける。
いや、殺される。
「なぜそう思うの?さっきのを見ていたでしょう?」
アカネの腕がパックリ両断されたことを言っているのだろう。
しかし、そんな些事より気になることがあった。
「2人が合体した時、あの赤い核のような物が混ざっていたけど、おそらくアレが今の2人の弱点だ。今も体の中心にあるだろう?」
幻想的な獣の中心部に脈打っているあの赤い核。
それが2人の力の根源であり、新たに生まれた致命的な弱点でもある。
何故かは分からないけど、僕にはその確信があった。
「赤い核…?そんなもの、見えないけれど…。」
「そうだろうね。」
「?」
誰にでも…、
それこそアカネにも見えているのならかなりマズい。
アカネが2人の合体を見ているとき、明らかにあの核を認識していたと思う。
今は見えていないようだけど、見えるようになった時は2人にとってかなり危険なことになるはずだ。
今のアカネには何が起こってもおかしくない。
おそらく秒刻みに強化…いや、『進化』している。
僕が考えるに、今のシロとクロは核を除けば完全に無敵な状態だと推察できる。
2人にとっての攻撃とは一方的に蹂躙することを意味していて、それは最強であるアカネにも通用した。
それが先程の結果。
しかし、核の存在に気付かれたら話しはまるで変わってくる。
今は合体直後で力を増しているから、能力面で見てもアカネと真っ当に戦えるだろう。
その無敵とも思える権能も加わって負けることもない。
しかし、アカネが『核』を認識して、それに対する攻撃を可能としたら…。
それに、時間をかけるほどアカネは勝手に強くなっていく。
2人にとってもこの融合は不本意。
短期決戦でケリを付けるための、苦肉の策なんだ。
「手を打たないといけない。」
「ユウト?」
2人は仲間なんだ。
記憶はまだ完全に戻ってはいないけど、2人を大事にしていたという気持ちが僕の中に確かにある。
助けたい。
助けなければいけない。
これ以上、何も失いたくないから。
「なんで、2人はアカネの急所…頭や心臓を狙わなかったのかな?」
ユキに問う。
可能性には思い至っていたが、他の人の意見も聞いておきたい。
「えっ?それは…、何故かしら?確かに変ね。あんなに一方的にダメージを与えられていたのなら、急所を狙えば倒せていたはずよね。」
「そうだよね。それにさっきの、クロの言葉だと思うけど…『やるしかない』という表現を使っていた。あくまでも予想だけど、あの状態でアカネを倒すことに何らかのデメリットがあるんじゃないかな?」
「つまり、腕を攻撃したのは無力化を狙ったということ?殺したくはない…あるいは殺せないから、腕でも切り落として戦闘できなくさせようとした…みたいなことかしら?」
「僕はそう考える。細部は違うかもしれないけどね。」
少なくても、アカネを殺すことによって今の2人に何か不都合なことが起きるのは間違いないと見ている。
そして、それが正しいことだと僕は感じていた。
気持ちが悪い。
僕の中で、別の誰かが必死に訴えてきているような感覚。
このままではマズいと。
「なんとかしないと。」
なんとかしないといけない。
でもどうする?
僕が行ったところで、2人の邪魔をするだけだ。
ユキの異空間の力を使っても、今のアカネ相手に不意打ちなんて不可能だろう。
なんとか近づくことさえできれば…神通力の無力化によってアカネを無力化することが可能かもしれない。
でも、アカネがそれを警戒していないはずがない。
考えろ。
シロとクロに頼らずにアカネを倒すには、
僕が近づくことが絶対の条件。
生半可な距離ではない。
掴めるくらいの超至近距離でなくてはならない。
「……!?ユウト!!」
ユキの声で我に帰る。
ユキの視線を追うと、声をかけてきた理由を察することができた。
ユリヤが身を起こしている。
マズい。
マズい。
早く考えろ。
ひとまずユリヤに止めを刺すべきか?
いや、それをアカネに気付かれたらすぐにやられてしまう。
アカネの速度には僕とユキでは全く対応できないだろう。
完全な隙がなければ…
良案が思い浮かばないまま、時間は過ぎていく。
そして、異変が起こる。
「いま、ユリヤが何かした。」
「…私には分からなかったわ。」
読む力による感知。
ただし、ユキの異空間越しになるから精度は落ちている上、ユリヤ本来の力量を考えればあり得ないほど弱々しい力。
しかし、確かに神通力の流れをユリヤから感じた。
「体を完全に治した?…いえ、むしろまた気を失ったようだわ。ひょっとして、不発?」
「いや、絶対に何かした。間違いないよ。」
「ユウトが言うならそうなのでしょうね。でも、何も変化はないようだけど…」
ユキの言う通り、変化を見つけることはできない。
なにかをしたのは間違いないが、それが何かを確かめることができない。
もう、時間がない。
「ちょっと賭けの要素が大きいけど…、手伝ってくれる?ユキ。」
「何か思いついたのね?なんでも付き合うわよ、ユウト。」
アカネにはここで退場してもらわねばならない。
これはもう決定事項だ。
そのためには、どんな卑怯で姑息な手を使おうとも構わない。
次の一手で、アカネには消えてもらおう。
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