本気
みなさん。
お疲れ様です。
1週間以上開けてしまい、申し訳ありません。
イベント事に、友人との約束、家族との時間など…まとまった時間が取れずにいたため、開き直って思いっきり休みを満喫させていただきました。
本日からまた心機一転、仕事しながらちょびちょび更新していきますのでよろしくお願いします!
「凄まじいわね。この姿の私たちにも並ぶ…いえ、」
「パワーだけならもう超えられてるかもな。」
…どうやったかは分からないけど、どうやらユリヤの止血をしたようね。
すぐに死なないようにあえて心臓を避けた作戦だったけど、下手をしたらユリヤ復活…なんて展開になればかなり面倒なことになりそう。
ご主人様の不意を打つという策も、ユリヤを相手に2度通じるかは分からない。
「まずは小手調べだっ!!」
クロがバカ正直にまっすぐ突っ込む。
なんの捻りもない、超高速からの前足による叩き付け。
対するアカネも待ち構えて拳を構えている。
「おりゃぁあああぁ!!!」
「ふんっ!!!」
互いの拳と前足がぶつかり合う。
そこまでの動きは先程と完全に同じだった。
しかし、違いはすぐに現れる。
「痛ったぁ!?」
悲鳴のような叫び声を上げてクロがすぐに下がった。
「うぅ…ワタシの肉球が…」
クロは自分の前足にフーフーと息を吹き掛けていた。
後ろから覗くと、その巨体に似つかわしくないかわいらしい肉球の中心に人の拳型の跡が見えた。
神通力が濃密すぎて熱でも持ったのだろうか?
そんなこと聞いたこともないけど…、今の龍堂茜なら何が起きてもおかしくないわね。
どうせ放っておけばケガは治るし、クロは置いておきましょう。
でも、龍堂茜を調子に乗らせるのも癪…1度出鼻を挫いておきましょう。
最高速で龍堂茜の背後に回った。
今度は全力で…!!
先程のように不意を打って叩き落とすのとは違う。
仕留めるつもりで全力で翼の先に全神通力を込める。
それは防げる者などいない、相手を死に追いやる究極の刃となりえる。
「死になさいっ!!」
翼でアカネを貫こうとしたところで、突如アカネがシロへと振り返る。
!?
この速度でも対応できるの!?
しかし、反応されたとはいえ攻撃を止める理由にはならない。
翼を貫手のように突き出すが、対するアカネも真似をするように貫手を繰り出してきた。
力比べでもするつもり?馬鹿ね。
単純なパワーではクロには勿論、強化される前のアカネにも劣るだろう。
しかし、シロの強さというのは単に力任せのものではない。
シロの武器は主人から与えられた特別な魂の力、加えてその速度から生み出される『鋭さ』。
その手、肩まで引き裂いてあげるわ!!
互いの貫手がぶつかり合う。
ガキィン!!
と激しく音が鳴り、神通力の暴威が吹き荒れる。
周囲の地面がひび割れていくが、肝心のアカネに傷がつくことは無く、やがてこちらの勢いも完全に殺されてしまった。
「嘘でしょ!?私の一撃を相殺するなんて…」
完全に想定外。
そもそもシロの全力の攻撃であれば、一般的に『強者』と呼ばれる者であろうとも塵も残さず消え失せるはず。
こと『最強』相手だとしても向かってくる手をバターのように切断することなど容易であったはずなのだ。
先程までのアカネであれば、必ず通用したはずの必殺の技。
それが、全く通用しない。
「お前らのせいで人間卒業することになったからな。驚いてないで大人しくぶっとばされろ!!」
拳を構えるアカネ。
その拳に異常なまでのエネルギーが収束していくのを感じて慌てて翼に神通力を寄せ集めてガードを固める。
「ぐっ…!?」
その直後、訪れた衝撃にその場に留まることは不可能だった。
果ての壁まで吹き飛ばされて意識も朦朧とする。
これは異常事態だ。
「なんで、この姿の私にダメージが…?」
この姿には実体はあっても、生物としての仕組みとは大きく異なる。
ユウキの魂の秘技による新たな概念とも言えるべきもので、不死…というより不滅の存在なのだ。
強化されたシロ自身の魂と、ユウキによる分け与えられた力によって生み出された怪物。
ケガもしないし、歳もとらない。
なのに、このダメージ。
「ワタシの手も治らない。やっぱりコイツも、ご主人様と同じで、特別なんだ。」
クロが傍に近づいてきて言う。
どうやらこれは小手調べなどと言っている場合ではないようだ。
「やっぱり、アレをやるしかないわね。あまり気が進まないけれど。」
「ああ。全部出さないと、コイツは倒せない。」
2体の怪物は顔を合わせて頷き合う。
「今さら何をしても無駄だ。お前らはぶっ潰すし、闇女にも消えてもらう。ユウトは返してもらって記憶を戻す…お前らのことだけは忘れさせるけどな。」
「「そんなこと…させない!!」」
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巨大な鴉と巨大な獣は言葉と同時に輝きを纏い、急激にその姿を変質させた。
鴉…シロの方は、その体を黒い渦のような物に変える。
獣…クロの方も同じく、白い渦を思わせる物へ。
とても意思のある存在とは思えない。
その非常に神秘的な姿からは、まるで銀河を思わせるような美しさ…そして、何者をも寄せ付けない威圧感を放っている。
そして、気になる点がもう1つ。
「あの赤いのはなんだ…?」
白と黒の美しい渦の中に、一際怪しい輝きを放っている赤い点がどちらにもある。
それは明らかに異質だった。
綺麗な絵画の中心に泥でも付いているような圧倒的違和感。
異物。
なにか、良くないもの。
しばらく様子を見ていると、それぞれの赤い点が渦の間へと寄っていく。
白と黒の境界。
そこへ赤い点が集まると、2つの点は混ざり合って、1つの点となった。
そしてその点を中心に、白と黒の渦が混ざり始める。
「おいおい、まさかこれって…」
1つの大きい渦となったその存在は、先程までの2体の怪物よりも更に膨大な神通力を放っていた。
白と黒が混ざり合い、灰色になった渦状に蠢いていた何か、
やがてそれらは赤い点を中心に収束していき、1つとなって強い光を放つ。
「…合体かよ。マジで何なんだ、おまえら。」
強く眩い光に目を薄めていたが、光が落ち着いてから目を開くと、そこには鴉でも猫のような獣でもなく、見たこともない幻想的な生物がいた。
巨大な猛禽類と獣を融合させたような見た目。
それぞれの特徴を併せ持った、未知の生命体。
4足歩行で前脚は鳥類の猛禽を思わせる巨大な鉤爪、後脚は獣らしい形状。
体毛は白と黒でところどころ色が違い、背中から生えた大きい翼は、ただでさえ巨大な姿を更に大きく思わせる。
「まぁ的が1つになったと思えばやりやすいか。」
確かに2体で分かれていた時より遥かに強い神通力を感じるが、混ざったというのだからそれはある意味当然だ。
どれだけ強くなろうが、アタシにだってもはや際限などない。
「私たちがただ混ざったと、そう思っているのなら勘違いも甚だしいわね。」
「勘違い?」
「この姿はあくまで、この世界の存在としての整合性をとるために作られた仮の姿。本質はそこではなない。」
「ワタシ達が1つにしたのは、ワタシ達の中にあった…ご主人様から分け与えられた力その物。」
…あの赤い点のことか?
「わざわざ私達の為に分けて頂いていた力。それを1つにした時、それはもう単純な強さでは表すことのできない力を得る。ご主人様の…御力の一端に触れることができる。」
力の一端…?
ハッタリ、には聞こえない。
だが関係ない。
「御託はいいからさっさとかかってこい。」
「上等だコラァ!!」
挑発すると、応えたのはクロの方だった。
この幻想生物の人格に優先度などはあるのだろうか?
クロは挑発すればかなり乗ってくるから、そっちの方が戦いやすい。
少なくても、頭を使ってくるイメージのシロよりはマシだろう。
馬鹿正直に正面から突っ込んでくる。
大きく、強くなったところでやることは変わらないようだ。
「バカが!また肉球腫らしてやるよ!!」
正確には前足は猛禽類のソレになっている。
肉球とは違うが、やることは変わらない。
何も捻りのない上からの叩きつけに対し、一点集中の拳をカウンターでお見舞いしてやる。
「今度こそ潰れろぉ!!」
「テメーがなぁ!!」
予想通り上から来た鉤爪を迎え撃つ。
来る場所もタイミングも分かっているなら合わせるのは簡単だ。
前回までと違うのは攻撃が『面』から『点』になったこと。
そして、2体が合体したことによる考えられる力の増幅。
つまり、鋭さも重さも上がっているということだが、今の私なら受けられる…いや、打ち勝てるはずだ!!
互いの一撃がぶつかり合う。
しかし、今度の勝負は一瞬だった。




