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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第ニ章 退屈の終わり?

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安寧

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ふわふわと何もない空間に漂い、やがて公園のような場所に辿り着く。


そこで見るのはいつもの光景。


これは夢だ。


最近見ていなかったが、子供の頃は毎日のように同じ夢を見ていた。


そこにはカラスがいた。

カラスは白い何かを食べていた。


それは、猫だったものだ。

一心不乱に喰らう。



ー 暗転 ー



場面が、時が変わる。

しかし場所は同じだ。


そこには猫がいた。

白い猫は黒い何かを食べていた。

それは、カラスだったものだ。


死んでたから食べたのか。

食べるために殺したのか。

殺すために殺したのか。


どっちも死んだら仲良くできるかな?

僕とも仲良く遊んでくれるかな?


殺伐としているはずのその夢は、

とても心地よいものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目を開くと、見慣れた天井が見える。

それと同時に、意識が急激に覚醒していく。


…俺の、部屋か?


最後、意識は朦朧としていたが人里はなれた森のような場所にいたことはハッキリと覚えている。

正確な場所は把握できていたわけではないが、すぐに戻れる場所ではなかったのは確かだろう。

つまり、これはユキの仕業だろうな。

住所は俺の学生手帳でも見たのだろう。

しかし、なぜ何も言わないでここに戻したのか。

最後もまともに話せていなかったのに。


…また、会えるだろうか…。


そう思い耽っていたところに、ドアをノックする音が聞こえる。


「起きてる?ユウくん。」


それはとても待ち望んでいた存在。

2週間ぶりの姉さんの声だ。


「おはよう姉さん!入って大丈夫だよ!」


上半身を起こし、ドア越しに声をかける。

すると静かにドアノブが下がり、最愛の人がゆっくりと入ってきた。


「おはよう、ユウくん。昨日はゆっくり眠れた?二週間も家を空けてごめんね。」


制服に身を包み、きれいで長い黒髪を揺らしながら、聞いているだけで天にも昇れそうな美しい声でそう尋ねる姉さん。


「うん!姉さん!姉さんがいなくて寂しかったけど、俺がんばったよ!」


実際のところは昨日なんか頑張るどころか何回も死にかけたと思ったが、それは言わない。

姉さんに心配をかけるわけにはいかないのだ。


「でもユウくん。昨日はいつの間に家に帰ってきたのかしら?携帯はなぜかアカネが持っていて連絡もできないし、玄関では物音ひとつしていなかったのに、部屋を覗いてみたらユウ君、いつの間にかベッドで寝ているんだもの。すごく驚いちゃった。」


ベッドまで近づいてきて俺にスマホを渡す姉さん。

既に心配をかけてしまっていたようだ。

しかも俺が姉さんに一言も声をかけずに就寝することなど記憶上、1回もないはずだ。

違和感も与えてしまっただろうが、どう言い訳したものか…。


「実は昨日アカネのせいでいろいろあってね…。すごく疲れてしまって、帰ってすぐに寝てしまったんだ。寝る前のこともほとんど覚えてないくらいだよ。心配かけてごめんね、姉さん。」


「…そっか…。」


心配だけ、というわけではなく少し疑われてしまっているようだ。

まぁそれはそうだろう。

俺自身、どれだけ疲れていようが首が繋がっているかぎりは姉さんに挨拶ぐらいはするはずという自覚がある。


困ったな…。


「アタシのせいたぁ、聞き捨てならないなぁ?ユウト。」


天の助けか、悪魔の囁きか。

姉さんと違いノックもなく入ってくる侵入者は、その無駄に整った身体に下着だけを付けた状態でズカズカと我物顔で入ってくる。


「服を着ろ!」

「服を着なさい!アカネ!」


姉さんとハモった。

今日は良い日になりそうだ。


「ったく、うちら家族みたいなもんだろ~神楽。固いこと言うなよぉ~。」


そう力が抜けるような声で姉さんに絡みつく。

ここで写真でも撮って男どもに売り捌けば結構な金を獲ることもできそうな絵面だが、姉さんも写ってしまうしやめておこう。


「家族みたいって…あなた、ユウ君を異性として見てるじゃない。そんなふしだらな女性にはユウ君は渡さないわよ。」


「渡さないわよって…別に決めるのはユウトだろー?」


「くっ…。」


「とりあえず、俺を落とそうってなら下品な女はアウトだ。体で誘惑しようとしても無駄だぜ。姉さんの清楚さをほんの少しでも見習うんだな。」


まるで興味を持っていない様子を見せつける。

少しでも下心を持っていると察知すれば、アカネは即座に気づき、ほぼ最低限の防御力しか発揮していないその下着すらも脱ぎ捨てて俺に襲い掛かってくる可能性があるためだ。

ぶっちゃけ俺も男なのでアカネレベルの女が裸やそれに近い状態で誘惑してくれば手は出さないまでも反応はしてしまうだろう。

こんなもんはもはや生理現象であって、気合もクソもない。


「アカネのハニートラップもユウ君の前には意味を成さないようね。流石、私のユウ君だわ。」


誇らしそうな姉さんに俺も嬉しくなる。

が、アカネは面白くなさそうだ。


「なぁユウト?本当に無駄なのか?お前になら…見られるどころか、好きに触られても良いんだぜ…」


そう言って近づいてくるアカネ。目の前まで来て俺の前で前かがみに立つ。

その豊満な胸を見せつけるのはもはや暴力だ。

だから俺はそれを見るという選択を選ばない。

つまりは目を閉じてしまえば良い。


「服を着ろと言っただろ。バカでも風邪は引くもんだ。」

「じゃあユウトが温めてくれよ。」


そう言って俺の手が掴まれる…ってマズい!こいつ何する気だ⁉


「おい!離せ!」


目を閉じていたし、何より姉さんも居たため油断した。

女ということは全く考慮せず、空いた手で全力で剥がしに行くが、まるでアカネの手を解くことができない。

真剣にやったことはないがテキトーにやっても俺の握力は六十はあるはずだぞ!このメスゴリラめ!

アカネは俺の必死の抵抗を物ともせず、少しずつその豊満な胸に俺の手を寄せていく。


「こっ、このメス豚が…!どこからこんな力出してるんだ…!?」


「ははっ。メス豚か。ユウト以外に言われたらぶち殺すところだ。」


暴言もまるで意に介さず、そのたわわに実った胸に俺の手が飲み込まれようとする刹那。


「いい加減にしなさい…アカネ。」


言い方こそ静かなものだが、内心ぶち切れの状態だ。

とんでもない圧を放っている。

その影響か、全く止められなかったアカネの腕がピタリと止まった。


「お、おいおい。神楽。落ち着けよ…。いつもの冗談だろ、冗談。」


そう言って、パッと俺の手を解放するアカネ。

姉さんがこの状態になるとアカネが折れるのが毎度お馴染みのパターンだ。

姉さんもアカネと同様、体育の成績などもとても優れてはいるが、アカネほど馬鹿げた身体能力ではない。

しかしアカネもキレた姉さんは怖いようで、これは幼少期からの関係が根幹にあるからだろう。

アカネがゴリラに転生する前の普通のナマイキな少女だった頃は、よく俺と喧嘩していてその度に二人で姉さんにお説教されたもんだ。


「早く服を着てきなさい。遅刻するわよ。ご飯も食べる時間が無くなるわ。」


フッと圧が消えて退室を促す姉さん。

しかしアカネはすぐに部屋を出ようとせず、なんだかバツの悪そうな顔をしていた。


「…ユウトって今起きたばっかりなんだよな?その、朝ごはん作ったのは…」


「もちろん私よ。…なにか文句でも?」


先ほどまでの圧に勝るとも劣らないほどのオーラが見える気がする。


「すぐに着替えて参ります!はい!」


色んな意味で焦ったアカネはバタバタと小走りで自分の部屋に戻っていった。


「じゃあ俺も着替えるか…。」


昨日外れた肩がまだ結構痛むが、折れたわけでも無さそうだし、回復力にも自信がある。

痛みを顔に出さないようにだけ注意をしておけばいい。


「ユウ君?やっぱり疲れてるのかな?」


とは言うものの、ポーカーフェイスに自信があったところで、姉さんを誤魔化すのは至難の業だ。


「えっ?あっ、大丈夫だよ姉さん!アカネがバカすぎて呆気に取られただけだよ!」


とりあえず姉さんを心配させてはいけない。

無事な方の腕を持ち上げて力こぶを作り、ニカッと笑みを向けた。


「ふふっおかしなユウくん。疲れているのなら無理をしてはダメだからね?」


「おれはいつでも元気だよ!心配しないで!姉さん!」


姉さんは微笑むと、そのまま俺の部屋を後にした。

姉さんが笑ってくれる。

それだけで俺は満たされていた。


…満たされてはいたが、頭の中でユキの顔が思い浮かぶ。

この俺が姉さんと話していながら他の女のことを考えているなんてな。


俺の中のユキの存在の大きさに再認識しつつ、いそいそと制服に着替えた。

着替えて1階のリビングに向かうと、食卓テーブルの上に姉さんが用意したであろう朝食が並べられていた。


「ごめんね姉さん。出張終わりで疲れてるのに、ご飯の準備をさせちゃって…」


ちなみに仕事の有無に関わらず、料理をするのは基本俺だ。

これは俺が望んだことでもある。

学生である姉さんの本分は当然学業であるが、俺と姉さんが二人だけで生きていくには生活していく上で金が必要となる。

だからこそ姉さんはアカネの家の仕事をして給料をもらっているわけだ。

であるならば、俺が料理はもちろん家事全般を受け持つのは支えあう家族としては当然の判断であり、また姉さんの役に立てるという事実が俺の幸せでもあるのでそれが最適の選択なのは明白であった。

当初、姉さん自身は『お姉ちゃんだから』という理由で全て自分でするつもりだったようだが、俺が必死に頼み込み、それでも首を縦に振らない姉さんに泣いて土下座してようやく得た役職なのだ。


「いいのよ。優くんもよく寝ていだし、私も久しぶりに料理をしたかったの!たまにはお姉ちゃんらしいこともしなくちゃね!」


そう言ってはにかむ姉さんの愛らしさは尊さが天元突破している。

もはやそれをおかずに米を食えるレベルだ。


「そんな変態はお前だけだぞ。」


「勝手に心を読む変態が何を言う?」


ツッコミを入れつつ、定位置の席に着く。

右前が姉さんの席だ。そして正面に座る変態を見据える。

キッチリと制服を着こなす姉さんとは違い、ところどころ服がはだけて無駄に素肌を覗かせるアカネ。

先ほど俺の部屋に乗り込んできた時にも身に着けていた赤い下着が胸元の所から若干こんにちはしている。

コイツ、ホントにこっそり写真売りさばいて商売してやろうか…?需要は無駄に高いから1枚千、いや二千円で売りさばいて…


「…ユウ君?何か良からぬことを考えてない?」


「いや、そんなことは無いよ、姉さん。じゃ朝ごはん、いただこうか。」


アカネを懲らしめ、金を得る。

これはもはや良い考えだ、良からぬことではない。

まぁそんなことは置いといて、久しぶりの姉さんの手料理だ。


「「「いただきます。」」」


普段は傍若無人なアカネも、俺や姉さんを差し置いて勝手に食べたりはしない。

これも子供の頃からの習慣の一つだ。


ま、それだけが理由でもないのだが…。


普段は俺が作るが故に、今の状況はかなりレアで、俺にとってはご褒美イベントってやつだ。

ただしアカネはいい顔はしていない。

というのも姉さんは()()()()料理が苦手だったりする。


「とっても美味しそうだね!姉さん!」


「ありがとうユウ君。でも料理と言っても目玉焼きと玉子焼きを作っただけ。ウインナーは焼くだけ。ごはんはよそっただけ。レタスはちぎって洗っただけなんだけどね‥漏れなく玉子は焦がしちゃってるし‥。ユウくんと比べたら私なんてダメダメね‥」


しまった!姉さんを落ち込ませてしまった!


「何を言ってるのさ姉さん!料理は愛情!姉さんが作ってくれたのならそれは一流シェフの料理なんかよりよっぽど嬉しいよ!」


「その【姉さんバフ】をあたしにもかけてほしいもんだな」


焦げた卵焼きを箸で持ち上げて不満そうに呟くアカネ。


余計な口を開くな無駄肉め。


「というか神楽よ。なんでアタシの玉子焼きが一番焦げてるんだ?ボロボロだし。ユウトのやつが一番出来が良いのはもはや置いといて、だ。普通は一番ダメなやつは自分のにしないか?明らかに神楽のやつより酷い見た目なんだが。」


自分は何もしない居候の分際で文句だけは一流なやつだ。


「ごめんなさい、アカネ。でもこっちのはやめておいた方がいいわ。…どうしてもと言うなら交換しても良いのだけれど。」


「少なくてもこの悲しい物体Xよりはマシだろ。」


そう言うと茜は箸に持った焦げた玉子焼きを姉さんの皿に置き、そのまま焦げてない玉子焼きをひょいとかっさらう。


「いただき~。」


そのままの勢いで大きく開けた口に一口で吸い込まれていった。

相変わらず品の無い女だ。


「うんうん。…うん?…ん~…。」


アカネの表情が段々と暗くなっていく。


「一番ダメだったものを自分のにするのが普通。あなたの言う通りよ、アカネ。」


見た目だけではどう失敗したのかを判断することはできないが、アカネの辛そうな表情と姉さんの憮然とした表情を見ていれば、コイツが自滅したということだけは分かった。


「しょっぱいし、ベチャベチャしてると思ったら中はザラザラしてるし…、何か変な、なんだコレ…。」


「塩と砂糖の分量を逆にしてしまったの。ユウ君は玉子焼きは甘党だったから…。砂糖を多めに入れたつもりが…。それに気づいてなんとかしようとして、『味の素は万能』っていうユウ君の言葉を思い出して思いっきり入れてみたの。でも入れ過ぎてしまったのかうまく混ざらなくって…。ひとまず焼いてみたのだけど、これはダメだと思ってまた新しく生地から作り直したの。それがあなたとユウ君の分だったのよ。」


…何か白い物が見えると思ってはいたが、混ざり切らないほど大量に入れるとは。

姉さんは小瓶でもひっくり返してしまったのだろうか。


「じゃあこの舌の上に不快に残るザラザラは…」


「混ざらなかった味の素ね、塩交じりの。」


「…食欲無くなった。歯ぁ磨いて先に行くわ…」


苦虫を嚙み潰したような顔とはまさにこのことだろう。

吐き出したら流石に姉さんに悪いとでも思ったのか、苦しみながら洗面台へと向かった。


「姉さんはちゃんと気を使ってくれていたのに。欲をかいたな、バカめ。」


「私の料理が下手だから…。ごめんね、ユウ君。」


洗面所のほうから


「謝る相手、違くね?」


と声が聞こえたような気がしたが、ここは無視でいいだろう。


今はすっかり落ち込んでしまった姉さんを励まさなければ!


「姉さん。失敗は成功のもと。昔作ってくれた玉子焼きなんて殻も向かずにボウルに入れて、ガリガリ割りながら混ぜてたよね。それを後から頑張ってザルで濾していたけど、焼いてみても細かい破片がたくさん入ってて、すごかったよね。それを考えるととんでもない成長だよ!」


「多分、身長が1ミリ伸びたかどうかって位の成長率な気がするけどね…。」


「そんなこと無いさ。殻は置いといても、『出汁巻玉子の出汁もお味噌汁に入ってるよね?』って、卵にインスタントみそ汁混ぜ始めるようなことも無くなって、ちゃんとパック出汁を活用できるようになったじゃない。歩幅は狭くてもキチンと前進できてるんだよ!」


「う~ん、そうなのかなぁ~?」


よし、少し持ち直したか?後は実際に食べて褒めちぎれば機嫌を直してくれるだろう。

アカネと同様、一つ丸々口に突っ込む。


「そうだよ!今はこんなに美味しく、…美味しく……美味しく………………美味しく作れるようになったじゃない!」


「…かなり逡巡してなかった?」


クソ!しくった!アカネと姉さんの所に失敗作が行ってるからと、油断した。



犯人は二人じゃない!三人いたんだ!



「ユウ君の顔に【犯罪級に不味い】と書いてある気がするわ…。」


ただでさえアカネにも表情を読まれるのに、油断してた上に姉さん相手では誤魔化すのは不可能だ。

ここは根本の解決を図ろう。


「姉さん、この玉子焼きは塩と砂糖は間違えてないんだよね?」


全く甘くなく、滅茶苦茶しょっぱい。

塩と間違えたとしか思えないが…


「えっ?ええ、アレは砂糖のはずよ。少なくても『糖』って文字は見えた…はず…。」


なんだかあまり自信は無さそうだった。

俺は椅子から立ち上がり、キッチンへと向かう。

そして調味料をしまっている上から2番目の引き出しを開ける。

そこには封の開けられていない砂糖の袋が1番上に堂々と置かれていた。

そして台所の上には、一昨日買ったばかりの容量多めのパックタイプの塩が。

手に持ってみるとなんという事でしょう。

ほとんど重さは感じられませんでした、神隠しかな?


「あっ…」


いつの間にか俺の後を付けてきていた姉さんが買ったままの状態の砂糖を見て何か気づいたような声を上げる。


「そう言えば、砂糖を見つけた時に目覚ましのアラームが鳴って…、アラームを止めて戻ってきた時にそのまま塩を…」


姉さんは勉強もできるし、身体能力も高い。

性格も優しく学校の生徒や教師たち含め、多くの人から慕われる人格者であるが、唯一にして最大の弱点が料理だ。


本当に何故だかは分からないが料理をしようとなった時はIQがとんでもなく低下し、思考力と注意力が激減するというとてつもないデバフがかかる。

普段は頭の回転も速いし、細かいところまで気が回る人だが、こと料理に関してはスペックが幼稚園児並みに低下してしまう。

もはや呪いと言っても差し支えないレベルだ。

本人も食べるフェーズでは自分のミスを自覚し、次回に生かそうと心がけてはいるが、いざ料理をしようとなるとその意識がさっぱり抜け落ちてしまうのだ。


「大丈夫だよ姉さん!今回の失敗はアラームの解除をし忘れたっていう、料理に関係ないところからのミスだから!料理の腕が伸びてないわけではないよ!また次回頑張ろう!」


「姉として情けない…うぅ…。」


励ますも、うなだれてしまった。

姉さんが元気を取り戻すために千の言葉をかけてでも…と言いたいところだが、このままのペースでは流石に遅刻してしまう。

まぁぶっちゃけ俺は遅刻なんてどうでもいいという考えだが、姉さんはそうはいかない。


生徒会長として遅刻など絶対にしないと普段から強い意識を持っているため、俺も姉さんの決意を汚さないために遅刻は基本しないようにしている。


「姉さん。今はもう時間がないから食べられるものだけ食べて登校しよう。レタスを出した時に見えたかもしれないけど、一昨日チーズケーキを焼いたんだ。帰ったら一緒に食べようね!」


「うぅ…弟は家事完璧なのに…姉である私は砂糖と塩すら区別がつかない低能、無能…」


まだ落ち込んでいたが、席に着くと玉子焼きを一口かじり、30秒ほど静止していたが、玉子焼き以外をゆっくりと食べ始めた。

ちなみに俺は全部食った。

姉さんが作ってくれたものならば、たとえ焦げようが、見た目が悪かろうが、砂糖と塩を間違えようが、ソースと醤油を間違えようとも、おれは絶対に食ってみせる。


「ごちそうさまでした。姉さん。」


自分の皿の上のものを全て平らげ、姉さんにお礼を言う。


「おそまつさまでした。…ありがとうユウくん。」


俺の前に置かれた空っぽの皿を見て一瞬複雑な表情になるが、その後、少し笑顔を覗かせてくれた。

食後に交代で歯磨きをして、二人揃って玄関のドアをくぐると俺は姉さんとお揃いのキーホルダーを付けた鍵を取り出し、閉める。

登校するときのいつもの流れ。

茜がいるかいないかの差はあるが、二人、あるいは三人が出た後に俺が最後に鍵を閉める。


「「行ってきます。」」


そんな感じで二週間日ぶりに平穏な日常が戻ってきたのだった。


5/4テコ入れしました

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