状況の整理
お疲れさまです。
夜勤が地獄過ぎて小説のほうに全く時間を割けません。
ねむねむ状態の行きの電車、
死にかけ状態の帰りの電車で少しずつ書き進めておりますが、忙しいわ暑いわでもう限界寸前ですわ…。
「うわっ!?すごっ!!どうなってんの、コレ!?」
目の前に広がる異常な光景に思わず大声をあげてしまう。
実物を見たことはない…はずだけど、明らかにそれは『龍』と呼ばれる存在であり、しかもその数もおかしい。
「2種類いるみたいだけど、20匹ずつくらいいるんじゃない?動画でも撮っておけば高く売れるかな?というか学会とかに発表とかしたら面白そう。どうやって誤魔化すんだろう?」
「ユウト。あなた、感性が少し変わっているわね。いえ、元々かしら?…にしても、龍堂茜が化物とか怪物とか言われる理由がよく分かるわ。あの怪物たちに囲まれても特に大きなケガもしていないみたい。」
「なんかユリヤも3人くらいいないか?」
「いるわね…。ユキちゃんの真似をしたのかしら?しようと思ってできることではないと思うけど。」
僕たちはみんな、ユキの異空間の中にいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユキと初めて…というわけではないか。
記憶を失ってからは初めて会話したとき、今の僕には異空間が危険だという話をしていたけど、僕は大丈夫だと思った。
知らないけど、問題ないという確信が何故かあったんだ。
様子がおかしいと思ったら僕を連れ出して。
そう言って試してもらった。
結果は当然のように問題なかった。
ユキ曰く、普通の人間には何かしらの悪影響が必ず出るらしいんだけど、僕はどうやら『普通の人』ではないみたい。
まぁこんな光景を産み出した存在に目をつけられているんだから普通なわけないよね。
その『異空間』に入ってみて初めて感じたことは、その異様さでも現実感の無さでもなく、
異常な懐かしさだった。
「やっぱりユウトは特別なんだわ。記憶を失ったところでユウトの本質は変わらない。」
「まぁ、ご主っ!?…ユウトは最高だからな。」
「…あんまりクロをいじめちゃダメだよ。シロ。」
「…気を付けるわ。」
何故かクロをいつも殴り付けるシロ。
実はあんまり仲良くないのかな?
でも、クロもやり返さないし…。
まぁ本人たちが気にしてないなら僕が言うことでもないのかな?
その後、問題はないと断定して改めて作戦を考えることになった。
まず作戦を考える前に、ユリヤという人の特徴を聞いた。
アカネを殺すということ以外、ほぼ全てを可能とする
…とのことだった。
良く分からなかった。
だから聞いた。
「ほぼ全てって?」
「言葉通りよ。例えばこの空間では無理でしょうけど、外に出たら私たちの会話どころか頭の中まで覗けるような無茶苦茶具合ね。他人の記憶を読むことを容易いのだとか。だから作戦なんてまともに立てられたものではないわ。空間転移でも、怪力でも、変身でも。後は龍堂茜でも簡単には破れない結界を張れるし、遠い離れたところからビルごと潰されそうになったこともある。ユウト曰く、ユリヤ自身がイメージをできることなら何でもできる…らしいわ。私たちはユウト程の確信は持っていないけれど、その考察は正しいと思う。」
「あははは。それは本当に滅茶苦茶だね。」
「笑い事ではないのよ。アナタ、記憶まで奪われちゃってるじゃない。」
たしかに。
「でも、僕には…にゅーとらいず?みたいな力があったんでしょ?なんで記憶を消されたんだろう?」
「【神通力の無力化】よ。それが私たちにもさっぱり分からないの。なんでも可能とする力を持っていたとしても、【神通力の無力化】の優先度には敵わないはず。でも、ユウトが無意味に無抵抗で受け入れるというのも考え辛いし、不意を突かれたとしか…。でも、ユウトがそこまで油断をするかと言われると納得もできないのよね。」
「『ユウト』ならただでやられるはずがない…ってことだね?じゃあ何か記憶を消すに足る理由があったのか、あるいは何らかの理由で【神通力の無力化】を使うことができなかった。そして、記憶を消す理由は今のところ不明…。」
「そういうことね。何か思惑があったとしても、現段階ではそれを確かめる術はないわ。」
「ふぅん。」
では1つずつ確かめてみようか。
「その【神通力の無力化】っていうのは具体的にはどういう力なの?」
3人に問いかける。
「具体的…そうね。シンプルに言って、神通力を打ち消すモノという解釈で良いと思うわ。ユウトはかなりの広範囲で使えたみたいだけど、相手の力量によっては色々工夫する必要があったみたい。だけど、ユウトはその難所を【読む力】によって補完していたみたいよ。」
【読む力】。
僕のことを話す上で良く出てくる言葉。
「そっちも良く分からないんだけど、人の感情や気配が読めるって言われてもピンと来ないんだよねぇ。」
「それは私たちも分からない。ほとんど感覚みたいな感じとも言っていたけど、勘という枠組みには収まらない、確かなモノだったとも聞いているわ。ユウトは頭も良かったから人の感情から物事を推察することを得意としていた。私もよく驚かされたわ。」
「でも、人の感情が読めちゃうなんて気持ち悪いね。なんか卑怯っぽいし。」
人の感情…気持ちが分かってしまうなら、他人を誘導したりすることなんかも容易な気がする。
地味だけど、悪用しようと思えば色んなことに使えそうだ。
「あなたの力なのよ?悪く言うモノではないわ。」
「そういえばそうだったね。とりあえず【神通力の無力化】から試してみよう。」
「試す?」
ユキが不思議そうに頭を傾げる。
「うん。僕はユウトであることは間違いないんだよね?だったら力も使えるはずだよね?」
「ちょっと待って。」
シロだ。
「【神通力の無力化】が使えたとして、今使ったらユキちゃんの異空間から出ることになるんじゃないかしら?そしたらユリヤにもこちらの思惑がバレることになるかもしれないわ。」
異空間から出てしまったら再びユリヤに補足されてしまう、という心配。
「大丈夫じゃない?異空間から出れたんだとしたら能力が使えるってことでしょ?だったらそのままずっと能力を維持しておけばユリヤも干渉のしようが無いんじゃないかな?」
「そのままずっと?そんなに長時間の維持が可能なの?」
「さぁ?」
「さぁ?って…」
僕たちはユキを見る。
ユキは呆れた様子を見せつつも答えてくれた。
「本人曰く、能力を使っていて疲れを感じたことはないと言っていたわ。限界を確かめたことはないとも言っていたけど、少なくても異空間から出た後…数秒もあれば再び異空間に戻ってやり過ごすという手はあるわね。」
「それだ♪」
ピチッ…
指をパチンと格好よく鳴らしたかったけど、失敗しちゃった。
3人に笑われてしまう。
「ユウト。指パッチンは親指と中指で力を溜めてから、中指を親指の付け根に勢いよくぶつけるのがコツだ。良いか?付け根だ。付け根じゃないと音が響かないで…」
「そんなことはどうでもいいのよ。」
クロが予想外の熱弁を見せるが、シロからストップがかかってしまった。
結構気になるのに…
付け根に当てるのが大切なんだね。
「よし!じゃあ早速やってみよう!……で、神通力ってどういう風に使えば良いの??」
「……」
「……」
「……」
あっ。
今度はみんなが呆れている。
流石に後先考えてなさすぎな発言だったね。
「神通力っていうのは魂に宿っているの。魂の深くから力を引っ張ってきて現実に力を顕現させる。それは正直感覚任せになってしまうけれど、間違いないのは『明確な意思』がかなり重要ということね。それ無くして神通力の発現は不可能よ。」
ユキが細かく説明してくれる。
『明確な意思』か…。
今の場合だと、この異空間から脱出する?
いや、この異空間を消す…かな。
「じゃあ気を取り直して…やってみるよ。」
この異空間を消す…
強く想像してみるけど、全く何も感じない。
捉え方が違うのかな?
異空間とかではなく、『神通力』自体の力を…
そこまで考えて自分の中に違和感が生まれる。
ついさっきまでは何も感じていなかったが、自分の身体の周りに渦巻いている重苦しい空気…。
肌に纏わり付く異質な空気。
これが…神通力?
空気に感触があるとでも言うのだろうか?
明らかに普通ではないことから、それが『神通力』であろうことは容易に想像できる。
考え方を、意識を変えただけでこんなにハッキリ分かるものなのだろうか?
アッサリというか、簡単だったな。
後はコレを消すってイメージを…
「………」
景色は変わらないし、僕の中にも何も変化はない。
ただ、異物を見つけた。
「やっぱり難しいかしら?」
ユキが心配そうに覗き込んでくる。
「うまく力が使えないみたいだね。神通力を認識することはできたんだけど。」
「そうよね………えっ!?認識できたの!?」
「うん。それで、『神通力を消す』ってイメージも問題なかったと思うんだ。ただ、僕の邪魔してる何かがある。」
「何よそれ?」
「うーん…分かんない。多分、力の使い方も合ってると思うんだけど、『ソレ』が邪魔して力を出すことができないんだ。」
「ひょっとしたら、ユウトも『ソレ』に邪魔をされたのかもしれないね。3人はユウトから何か聞いてる?」
「いえ、そんな話しは1度も聞いた覚えはないわ。特訓を初めてすぐに【神通力の無力化】を使いこなし、その後も何も問題なく使っていたようだけど。」
「クロは?」
「うーん。分からない。難しい話はちょっと…」
指パッチンのくだり以外では静かにしていたクロにも聞いてみるけど、彼女にはあまり長時間の会話には向いてないようだね。
「じゃあシロ…は?」
本命はシロだ。
様子が少しおかしい。
どう言うべきかを迷っているのか。
あるいは、言うかどうかを迷っているのか。
何かを知っているのかもしれない。
「…私も『ソレ』の正体が分かるわけではない。けど、ユウトから少し存在は聞いていた。ユウトの中にいて…ユウトと共にある存在。今の話を聞いて思ったのは、ユウトが今回記憶を失った元凶、原因は多分その想像通りだと思う…としか。」
嘘だ。
僕は確信した。
様子はおかしかったけど、発言に不自然な所はなかったと思う。
でも嘘だ。
彼女はその正体を知っている。
しかし、それをこの場では言えない理由があるのかもしれない。
2人きりの時に聞いてみたら教えてもらえるかな?
…そうか、
これが【読む力】なんだね。
しかし、そこでまた疑問が生まれる。
なんで【読む力】は邪魔されずに使えるのに、【神通力の無力化】は使えないんだろう?
というか、そもそも神通力って1人で何種類も使えるものなのかな?
「神通力って1人で何種類も使えるの?僕は2つ?使えるみたいだけど。」
考えても分からないことは聞いてみよう。
「それは明確に『No』よ。ユウトが例外中の例外なだけ。神通力というのは、魂に宿った力。つまり、今のユウトの中にはアナタ自身のモノも含めて3つ、魂を保有していることになるわ。【読む力】に【神通力の無力化】の2つ。それらを取り込んでも一切自我を失うわけでも暴走するわけでもないユウトが特別なのよ。」
「ふーん。」
「なによ。つまらない反応ね。」
「いや、全然ピンとこないし。でも、今の話を聞いて思ったのは【神通力の無力化】を…所有?している魂が僕の邪魔をしている可能性が高いよね?」
「いや、ユウトが正気でいる段階で【魂】という存在が『邪魔をする』なんてマネができるとは………アレ?」
そこまで言って口を閉ざすユキ。
「どうかしたの?」
「【神通力の無力化】なのだけど、アナタに宿っている魂は誰のものなのかと思って…。」
「それはもちろん前任者のモノではないの?誰かは知らないけど。」
「前任者だって誰かの魂を得てその力を使ったはずよ。【神通力の無力化】だって前任者は天地神楽耶…天地神楽のお姉さんだけど、彼女だって能力を生まれ持っていたわけではないはず。前任者が死んだところでその人の魂に神通力が宿っていたわけではないから、所有していた魂だけが次の人に渡る。」
「神楽のお姉さんなんだ。つまり、僕の中には以前天地神楽耶に宿っていた【神通力の無力化】を所有する魂が入ってるってこと?」
「普通に考えたらそうなるのだけど、一つだけ明らかにおかしいというか…」
「なに?」
「天地神楽耶は死んでいないの。死んでいるようなものなのだけど、意識だけが無い状態で私の異空間に保存されているわ。ここは時間が経過しないから、生きているものは死なないし、歳も取らない。…そうよ、よく考えたらおかしいわ。天地神楽耶は死んでいないのに、どうしてユウトは【神通力の無力化】を使えるのかしら?あんな稀有な能力を持つ魂がいくつも存在するとは思えないし、それならそれでもっと知られているはずよ。」
ユキが考え込む。
今の話を整理すると、神通力を扱う者は死ぬと同時にその神通力の根源である魂がまた分離して次の人へと巡っていく。そうして力は受け継がれてきたけど、僕の場合は前任者が死んでいない。
つまり、【神通力の無力化】が僕に渡るはずがないということだ。
となると、似たような能力を持った別の魂という可能性が出てくるけど、そんな稀なことがあり得るのか、という疑問。
ユキが考え込んでいると、表情の固いシロが口を開いた。
「…この話はここまでにしておきましょう。考えても分かることではないようだし。」
「シロ。あなた、何を知っているの?私たち【家族】にも話せないこと?」
シロが何かを隠していることは明白だ。
僕の【読む力】でなくたって分かる人には分かる。
「…ごめんなさい。でも今は時期でないの。私は確かに一つの事実を知っているけれど、それが私たちに不利に働くことはないと思う。もちろん時期が来れば必ず言うし、その前に隠しておくことが不利になると判断すればすぐ言うと誓う。それで納得してくれないかしら?」
シロは誠心誠意述べている。
僕にはそれが分かった。
態度だけではなく、僕の持つ力によって。
そしておそらく、それは僕のためだ。
なんとなく、彼女の心内がイメージとしてぼんやりと沸いてくる。
【読む力】って感情や気配が読めるって言ってたけど、考えてることまで分かったりするのかな?
シロは僕について何かを隠したいみたいだけど、それを言うことは僕にとって良くないと考えているみたいだ。
僕の中にいる何かの正体も合わせて、2人きりになったら聞いてみよう。
特になし。
更新遅くてごめんなさい...




