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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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最強 VS 元最強

「まずはこの子達から。行きなさい。」


ユリヤは両手をそれぞれ上に向けると、手のひらから何かにょろにょろとしたものが1匹ずつ出てきた。


「なんだそりゃ?ウナギ?」


ちょっと可愛いと思ったのも束の間、すぐにユリヤの滅茶苦茶具合を思い出すことになる。

そのウナギのような見た目の存在は現れたと同時にどんどん姿を大きくしていき、やがてどういう存在なのかをハッキリ認識した。


「…お前、『龍』はないだろ。しかも2匹も。こんなもん、どうやって用意したんだ。」


昔話で出てくるような細長いタイプの龍だ。

とはいえ、もちろん空想上の存在のはず。

それぞれ10mは余裕で超えているだろう。


「アカネさんを『人』として考えているようでは勝負にならないと思って、用意させていただきました。たくさん日本の昔の書物を読み漁って、認識を固めました。」


「ああ、そう…」


どうやらアタシは人間と思われていないらしい。

普通の人たちからそう思われてもしょうがないとは思っているが、ユリヤにそう思われているのは素直にショックだ。

ユリヤだって、大概人と呼べる領域にいないはずだろう。


にしても、その雄大さ。

方や、白銀に輝く美しい鱗に覆われて、壮麗…というのだろうか?

方や、黄金に輝く鱗に所々に生えている赤黒い体毛が威圧的な気を放っているように思える。

非常に荒々しく、雄々しいイメージだ。

オスとメスを想定して作ったのだろうか?

滅茶苦茶かっこいい。


センス良いな、ユリヤのやつ。


「行きなさい。」


ユリヤの呼び掛けで2体の龍がすごい速度でこちらに向かってくる。


スピードは銀の方、おそらく力は金の方が強いのか。


銀の龍の噛みつき…丸呑みしようとしたのかもしれないが、それを避けて頭に拳骨をくれてやる。

激しい速度で吹き飛んでいき、ドーム状になっている壁にのめり込んでいる。

結構力を込めたから、今ので倒せているだろう。

カッコいいからちょっと勿体ない。


「速いだけで耐久力は無いな。」


遅れてきた金の方は顔から突進をかましてきたが、正面から受け止める。

見た目通りの体重なのか、飛んできていた勢いも合わせて数mは後ろに下げられたが、止めてやった。


「お前は中々のパワーだな。でも失格。」


銀の方より頑丈そうなので全力で殴る。

頭部が弾けとんだから確実に絶命しただろう。


「ユリヤ。見ていて面白いが、これじゃ時間稼ぎにもならないぞ?」


まぁそれはあくまでもアタシ相手だからだけど。

多分、この2匹だけでもあらゆる国家に大ダメージを与えることができるだろう。

そこらの狩人たちでも話にならない。

戦闘機をいくつも引っ張ってこないとどうしようもない気がする。

そもそも飛んでるし。


「元々アカネさんを相手に『個』の力で勝てるなんて自惚れていませんよ。ここからが本領発揮です。」


「ん?」


龍は倒したのにここからだと?

今のは練習で、今からがメインのヤツを出してくる?

なんだ?魔王でも出してくるか?


ユリヤの方を見ても何も動作を起こさない。

こちらを空中から見下ろしているだけだ。


ガラッ…


瓦礫が崩れるような音。

そちらに目を向けると倒したと思っていた銀の方が身体を起こしていた。


「あれ?まだ生きてたか。全力じゃなくても結構力込めたんだけどな。」


起き上がってすぐにこちらに突撃してくる。


…あれ?さっきより速度が上がったか?


しかし、避けられないという程ではない。


先程と同じように避けてから反撃を…


「ぐっ!?」


避けてから殴ろうと横を向いた瞬間、脇腹にとんでもない衝撃が走って吹き飛ばされる。

真っ暗だ。

先程の龍のように、私も壁に埋まってしまっていた。


「ぬがぁああ~!!!」


壁を破壊して脱出する。


「一体何が起きた!?金の方は確実に倒してたはずだ!」


周囲を確認するまでもなく、正面に答えはあった。


「2匹!?なぜ増えてる!?」


銀の方が2匹に増えていた。

形や大きさは変わらないように見えるが、速度は上がっていた。

おそらくは力も。


「言ったでしょう?『個』の力で勝てるなど思っていません。この2匹の龍は死ぬ(たび)に力を増し、数を増やします。これならアカネさんでも手を焼くはずです。」


「死ぬ度って…」


金の方を見る。

先程、頭を潰してしまったから確実に死んでいるはずだ。

弾けた頭の肉片がピクピク動いている。

と思うと首の方も肉が動きだし、首の断面からもう一匹()()()()()

しかも、首の方は時間が巻き戻っていくかのように肉片が集まっていき、やがて完全に頭が修復される。


「ご理解いただけましたか?」


「…嫌ってほどな。」


つまりアレだ。

殺しちゃダメなやつだ。

やればやるほど手に追えなくなってくる。

2匹ならまだ余裕もあるが、4匹にもなればもう既にかなりめんどくさいだろう。

しかも1匹殺す度に1匹増えて、更に強化されてしまうというオマケつき。


「この場所の広さも考えて、30体ずつまでは増えるようにしています…さて、そろそろ私も動きますよ。」


そう言うと、ユリヤの姿が急にブレ始める。

2対の翼を高速で羽ばたかせ、翼が4対にも6対にも見える。


何をする気だ?

竜巻でも起こそうとしているのか?

その気になればできるからな…。


しかし、大きな衝撃が来るわけでも風が襲いかかってくるわけでもない。

ただ、翼の速度が落ち着いて来たのにまだ6対に見える。


…翼を増やしただけ?速度の上昇狙いか?


拍子抜けしていると再びユリヤの姿がブレる。

幻覚系の技なのか?

しかし、ワタシの目や脳に影響を与えることはできないはず。

どういうタネだ?


自分の目を擦る。

ユリヤを見る。


擦ったばかりなのにまた自分の目を疑った。

しかし、思い出す。

相手はユリヤだ。


「おまえ、マジでなんでもアリだな。」


先程までと同様に、宙に浮きながらこちらを見下ろすユリヤ。

違うのは、ユリヤが()()になっているということだ。


「神社での戦いを参考に致しました。アレのネタは分かりませんが、私はそれを無理やり能力によって再現しています。」


神社での戦い…

確か途中でクロのヤツが何人かに増えていたな。

あの時はそれぞれ実体を持っていたが、『本体』と思われる個体への攻撃は有効だったと思う、確証はないけど。

ユリヤの場合は?


「左の私は速度と力。現在のアカネさんより少しスペックを落とした程度の力になっています。並んでしまうと【超越】によって強化されてしまいますからね。右の私は瞬間移動と回復を担当。倒されずに、左の私をサポートしてもらいます。」


「もうお前のほうが人間辞めてないか?」


これは心からの言葉だ。

バカにしているわけではない。

どちらかというとユリヤの力を認める形だ。


「ここまでやってもアカネさんには勝てないでしょう?分かっていると思いますが、私もかなり無理をしています。速く私の覚悟を認めてもらえればお互いに疲れずに済みますよ?」


「覚悟は認めているが、ユウトのことに関しては別だ。」


「それでは意味がないのです。」


その言葉を皮切りに4匹の龍が同時にこちらに向かってくる。

速度の速い銀の2匹が先にこちらに到達する。

2匹の速度は全く一緒で右と左両方から挟み込もうとしてくる。

後ろは壁。

前には迫ってくる金の2匹。


…上しかない!!


後ろに壁がある状態だとまともに応戦もできない。


天井までジャンプして、天井をそのまま蹴り返して中央の方に…


そう考えて足に力を貯める。

100mは有りそうな天井へ目掛けて思い切り跳躍した。


広い場所さえ行ければ!

龍を殺さないように手加減しながらユリヤの限界を待…


ドゴォッ!!


突然頭にとてつもない衝撃を受けて真っ直ぐに地面に叩き落とされる。


「…ホントにスピードも力も私以下なのか?見えなかったし、結構痛いんだが…」


「勿論です。理由もさっき言ったでしょう?アカネさんを100として、その私は99としています。」


「…さいですか。」


これは面倒なことになりそうだ…。


避けるのも無理。

移動すらまともにさせてもらえないとなると…


「カウンターしかないか。」


しかし、殺してはダメ。

…そういえば、ユリヤのコピー?は思い切り攻撃しても大丈夫なものだろうか?


「大丈夫ですよ。あくまでも本体は私。ただ先に言っておきますが、私を気絶させてもこの場にいる者たちはアカネさんがギブアップをするまで止まりませんよ。…殺した場合は止まりますが。」


「そうか。」


ユリヤはこの先々の戦いでも必ず必要な場面はある。

殺すなんて選択肢はない。

つまり、これは我慢比べの戦いだ。


ユリヤが限界を向かえるのが先か。

アタシがユウトを諦め、ユリヤを認める。

…あるいはアタシ自身知らない、アタシの限界がくるか。


何にしても、ここから先はとんでもない泥沼になるだろう。


なぜコイツはここまでしてユウトの記憶を消そうとするのだろうか?


認める気はないが、それだけはとてもひっかかった。

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