混迷
お疲れ様です。
中々戦闘パート始められなくてすみません。
100話過ぎちゃった段階で急ぐ必要ねーかなと思い、細かく描写していきたくなっちゃいまして…
最近の気温も非常に高くなってきて、仕事で体力持っていかれるのでめちゃくちゃ辛いですが、頑張っていきたいですね!
「それで?一体全体どういうことなんだ?ユリヤ。」
ユリヤは自分の家にいた。
いや、待っていた。
アタシを。
ユリヤがその気になったらこっちの様子を伺うなんてお茶の子さいさいだからな。
私が来ることも最初から分かってたってことだ。
「それはこちらの台詞です。アカネさんの速度ならもう1時間は速く着けたはず。どこで油を売っていたのですか?」
「何を言ってるんだ。いくら私とはいえ、この距離を、しかも海の上を無理やり走ってきたんだ。これぐらいはどうしてもかかる。」
「……オホーツク海でホッキョククジラの観察をしていたようですね。」
「勝手に人の記憶を読むんじゃない。」
ちょっと珍しい物を見つけたから、ほんの少し…休憩がてら見ていただけだ。
「ユリヤは日本には来なくとも、ここからは動かなかった。つまり…私にだけは話すつもりだっていうことじゃないのか?さっさとユウトの記憶を奪った理由を話せ。分かりやすくな。」
どんな理由があれば、人の記憶を奪うなんてことが許されると言うのか。
ただでさえユウトは昔のことを覚えていないというのに。
今のユウトは安定はしているように見えるが、昔の会ったばかりの頃はひどかった。
記憶がないからなのか、ずっと何かに絶望しているような、
生きる気が無いように見えた。
死にたがってるようにすら見えた。
何かの拍子にそうなってしまうかも分からない。
一刻も早くこの状況を打開する必要がある。
「私はアカネさんを待ってはいましたが、これといって話すことはありませんよ。」
「なに…?」
空気が変わる。
「私はアカネさんにお願いするために待っていたのです。ユウ君を、私の元に連れてきてください。」
「…何が言いたいのか分からないが、とりあえずハッキリさせよう。」
「なんでしょうか?」
こちらの用件は知っているはずだ。
「ユウトの記憶を戻すつもりはない、ということか?」
返答次第によっては、どうなるかは分からない。
「ありません。」
「…………」
「そもそも、ユウ君の記憶を消す作業は邪魔が入って中途半端なんです。このままでは何が起こるか予測がつきません。早く完全に記憶を消し去らなければなりません。私の前に、ユウ君を連れて…」
最後まで聞く意味はないと判断した。
ユリヤの胸ぐらを掴み上げる。
「おまえ、何ふざけたことを言っている?バカなことを言ってないで、さっさとユウトの記憶を戻すんだ。」
神通力を全開にしてユリヤに叩きつける。
常人なら圧力に押し潰され死ぬかもしれないが、ユリヤにはこれくらいしないと威嚇にもならない。
「…ユウ君が幸せになるためには、天地優人の記憶ではダメなのです。1度全て消し去り、新たに良い思い出を積み重ねていく必要があります。」
少し苦しそうに言うが、言っている内容に関してはまるで意味が分からなかった。
「ユウトの記憶を奪うことが、ユウトの幸せになるとでも言うつもりか?」
「そうです。アカネさんはユウ君のことを何も分かってはいません。それは、神楽さんも同じです。私からすれば、2人の尻拭いをさせられているようなものです。」
「…喧嘩を売っているならそう言え。別にアタシとしては無理やりにでも言うことを聞かせたっていいんだ。」
「喧嘩を売るなど…。事実を言っただけです。」
こっちが殺気を剥き出しにしても一切怯む様子はない。
「広い場所に行きましょうか。この部屋では狭すぎますから。」
ユリヤは、
アタシをただ待っていたわけじゃない。
アタシと戦う覚悟を持っていた。
何がコイツをそこまで?
ユウトのことが好きだから?
会ったばかりなのに?
そうだとしても、記憶を消してしまっては…
それはもう、ユウトとは言えない。
ただのユウトの脱け殻だ。
そんな歪んだ愛…
それとも、なにか別の?
「ほら、行きますよ。」
手を差し出してくる。
罠か?
まともにやってアタシに勝てる算段などないはず。
ユリヤは確かに、アタシという存在がなければ間違いなく『最強』の座にいるべき怪物だ。
だが結局、アタシに勝つことなどできるはずがない。
何を考えている?
「ビビってるんですか?」
あまりに見え透いた挑発。
いや、挑発ですらない。
もはやただの悪ふざけだ。
ユリヤの手を黙って取ると、すぐに視界が歪んでいった。
あっという間にどこかも分からない広い空間に跳んだようだ。
「ここは?」
「いずれ来る『この状況』のために、私が少し前からから用意していた場所です。」
周囲を見渡す。
広いドーム状の建物…だろうか?
昔、神楽とユウトと3人で行った東京ドームを思い出すが、広さはそれを悠々と越えているだろう。
「草木の生えない小さい無人島を買い取りました。その島の地盤を固めて、地下に作ったのがこの空間です。ここならどれだけ暴れても誰にも迷惑をかけません。海洋生物には少なからず影響を与えてしまうかもしれませんが、地球上で最も被害を抑えられる場所がここなのです。」
「アタシと戦うことを想定したと言うのか?なぜ、そこまでする?ユリヤではアタシに勝つことは不可能だ。」
僅かな可能性しかない、のとは違う。
可能性が無いのだ。
アタシを倒せる可能性がある存在は、【神通力の無力化】を持つ者のみ。
だが、それも昔の話だ。
昔なら神楽耶さんに手も足も出なかったが、今戦うとすればアタシが必ず勝つ。
それはユウトでも同じ。
そもそも戦う理由なんかないし、戦うなら距離を取ればどうにでもなる。
ユウトに不意打ちをしかけられる、なんてこともないだろう。
つまり、アタシは絶対に負けないのだ。
「勝てないから『はい、そうですか』と終わらせるわけにはいきません。アカネさんには私の『本気』を見せたいのです。」
「本気だろうが、全力だろうが、死に物狂いだろうが、アタシが負けることはない。」
「そういう意味ではありません。」
ふぅ、と息を吐くと
ユリヤは真っ直ぐにアタシを見る。
「私がどれだけ、『ユウ君を大事に思っているか』という覚悟、その本気。それをアカネさんに認めさせます。」
目に一切の迷いがない。
いつも、のほほんとしている所しか見たことがないから、それだけでもユリヤの『本気度』が伝わってくる。
だがそれは当たり前だ。
ユリヤが敵だとするならば、アタシに対する戦闘行為は自殺願望と何も変わらない。
真剣だからこそ、アタシとユリヤは今ここにいる。
「ユウ君の記憶を消す理由。それは言えません。しかし、それはあくまでもユウ君のためであり、何よりも優先される理由があります。」
「だから、それを言えと言っている。」
「お断りします。それはアカネさんの為でもあるのです。理由を知っているのは私だけでいい。迷いが生まれてしまいますから…。それから、これは先に言っておきますが、」
「なんだ?」
「天地神楽耶さんは生きています。」
「………………は?」
唐突に何を言い出すんだ?コイツは?
「私がこの戦いで万が一死んでしまった時の保険として、言えないことは多いですがある程度の開示は今しておきます。」
淡々と話続ける。
「私の現在の目的としては、ユウ君の記憶を消し去り、ユウ君の身近な存在からも記憶を消し去ります。それは神楽さんも同様です。今の神楽さんにとって、ユウ君が最大の支えになっているのは理解しています。しかし、神楽耶さんが彼女の元に戻れば…」
「待て!!待て待て待て待て!!」
「どうかしましたか?」
「それはこっちの台詞だ!!神楽耶さんが生きているだと!?デタラメを言うな!!何を根拠に…」
「彼女の身体は今、闇女が所持しています。」
「はぁ!?」
「神楽耶さんだけではなく、あの日の事件の被害者はほぼ闇女の手によって…保存されています。」
「なんでそんなことが分かるんだ!?」
「言えません。」
ユリヤが無意味な嘘をつくとは思えない。
コイツにしか知り得ない根拠のようなモノがあるのかもしれない。
だとしても、それでなんでユウトの記憶を消すことになる?
ユウトに近い者の記憶まで…?
「だから言っておきます。神楽さんの記憶を消した後、私が闇女を説得…あるいは打倒して神楽耶さんの身柄を返してもらいます。今は訳あって意識が無い状態ですが、私がユウ君を真の意味で『幸せ』にすることができれば…いずれ必ず意識を取り戻すことができるでしょう。神楽さんはそれで問題ないはずです。」
まるで、闇女にいつでも会えるような言い方だ。
「………。」
「そして、私が死んでしまった場合ですが…アカネさんには全てを背負ってもらいます。」
「…全て?」
何の話だ?
まるで話についていけない。
「闇女の討伐。そして、【災厄の鬼】の討伐です。」
「!?」
【災厄の鬼】
正体不明の存在。
あの日の大事件を引き起こしたとされる、未確認の鬼憑き。
実際は闇女の仕業だったのではないかというのが狩人協会としての見解だが、ユリヤはその存在を闇女とは違うと、何故か確信しているようだった。
「なんでそういう話になるんだ?いや、いるなら勿論倒すつもりだが、なぜユリヤにそれが分かる!?」
「言えません。…バラバラで来てくれれば良いのですが、おそらくはその2体を同時に相手することになるでしょう。その場合、たとえアカネさんでも厳しい戦いになると思います。戦闘面だけでなく、メンタル面でも…。ですが、敗北は許されません。アカネさんが敗北したとき、おそらくこの世界全てが不幸に包まれる。私はそう考えています。」
「…それとユウトの記憶がどう関係あるんだ。」
「言えませんよ。」
「お前の言っていることは全く意味が分からない。その災厄の鬼だって、お前とアタシ。そしてユウトの【神通力の無力化】があれば勝てない相手じゃないはずだ。」
そもそもアタシが負けることすら想像ができない。
「…ちなみに、私が死んだ。あるいは確実に死ぬと確信した時、私の身体を持ってこの場から立ち去ってください。すぐに。」
こちらの言うことは無視して、一方的な…それも意味の分からない要求だけを伝えてくる。
「災厄の鬼の能力。それは魂を操作することを可能とし、相手の魂を奪い去る。それだけに留まらず、その魂が神通力を持つ者であれば、その力すらも己の物とすることができる極めて強力かつ恐ろしい力です。分かりますか?もし私の魂を奪われるような事態になってしまえば…」
もう、誰も彼を止められなくなります。
「お前は、災厄の鬼と戦ったことがあるのか…?というか、お前が死んだらソイツが来るって言うのか?」
「ありませんし、分かりません。でも知っています。彼と戦うということの『危険度』を。」
「…で、その未来を回避するためにユウトの記憶を消す?」
「その解釈で大丈夫です。」
「いや、全然大丈夫じゃねーよ。そんなんじゃ納得できない。」
「納得する必要はありません。どれだけ論を述べても、どれだけヒントを与えても、ユウ君の記憶を消すことにアカネさんが賛同することはないのですから。」
「そうだな。」
「だから、結局コレしかないんです。」
そう呟くと、車椅子から立ち上がるユリヤ。
背中が光輝いたと思うと、背中から美しい白い翼が生えていた。
「…本気、なんだな。」
ユリヤから神通力の波動がヒシヒシと伝わってくる。
美しい翼をはためかせて宙に浮く。
「どうせ怪我もさせられるかも分からないんです。殺す気で行きます。私の本気を認め、ユウ君のことに納得してくれるならすぐに攻撃を止めるので言ってください。」
「私が納得することは絶対にない。」
「それなら、私が死ぬだけですね。これは私の使命。死んでも叶えたい想いなのですから。」
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アカネが家を出て数分後、
僕、神楽、杏先輩は3人でリビングに集まっていた。
「それで、ユウ君。この3日間、一体どこで何をしていたの?」
神楽が質問を投げてくる。
杏先輩に聞いたけど、どうやら姉と弟…家族として過ごしていたはずの僕たちは、お互いを異性として見て好意を寄せていたらしい。
それをハッキリさせたのもつい最近らしく、言ってしまえば今の僕たちの関係は『家族以上、恋人未満』という良く分からない状態らしい。
ちなみに恋人未満というのは、僕が態度をハッキリさせなかったからだ。
というのも、杏先輩から聞いて驚いた。
僕はユキという女性が好きで、神楽とどちらが1番かを決めかねていたとか。
ユキって、もしかしなくてもユキのことだよね…
スパイのことがバレたのかと思って焦ったけど、どうやらユリヤの仕業で見た目と名前だけがバレた状態らしく、ユキが『敵』であることには気付いてないみたい。
なんでユリヤは僕のことを秘密にしているんだろう?
「聞いているの?ユウ君。」
おっと。
返事をするのを忘れていた。
「ごめんね、神楽。急用でユリヤのところに顔を出していたんだよ。」
「ユリヤ様のところへ?」
「うん。急用というか、ほとんど脅しみたいなものだったから行くしかなかったんだよ。」
杏先輩曰く、ちょっと前にもユリヤがデートと称して僕を強引に連れ出したことがあったらしい。
それの延長みたいな感じの設定にした。
「そう。ユリヤ様、本気でユウ君のことが好きなのかな…。」
「どうだろうね?まぁでも僕…コホン。俺は神楽のほうが大好きだよ。」
「ユ、ユウ君…。杏もいるのよ…」
神楽は恥ずかしそうに顔を俯かせる。
杏先輩を見ると何故か僕を呆れた目で見ていた。
『あなた、本当に記憶無いの?本当ならもう天然ジゴロみたいになっちゃってるわよ。』
小声で避難してくる。
失礼な人だな。
『だって僕はこの人のことが好きなんでしょ?だったらちゃんとそれを伝えてあげないと。』
『はぁ…。良いのか悪いのか…』
ヤレヤレと言った様子で頭を振る杏先輩。
悪いことなんて無い気がするけどなぁ。
「ところでアカネはどうしたの?ユウ君、アカネに話があるって…」
アカネの不在が気になるようだ。
アカネも僕のことをずっと探していたみたいだし、それを知っている神楽も当然気になるよね。
「うん。実はユリヤのところに大切な物を忘れてきてしまって。でも連絡もとれないからアカネに取りに行ってくれるように頼んだんだ。」
「アカネにわざわざ?そんなに大切な物だったのね。まぁアカネなら問題ないかしら。」
「うん。アカネなら大丈夫だよ。」
ちゃんと、ユリヤを殺してくれればいいな。
取ってきてもらうのは『ユリヤの命』。
なんてね。
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「もうそろそろかなー。」
もう夕方近くになる。
アカネが家を出ていってから結構時間が経った。
「何がそろそろなの?ユウト君。」
隣にいる杏先輩が声をかけてくる。
今僕は自分の部屋にいるんだけど、念のためと言って僕のそばにいることにしたらしい。
正直邪魔なんだけどね。
「結構時間が経ったし、ユリヤとの話がついたかなーって。」
ユリヤとアカネが話し合いで終わるはずがない。
今頃、愉快に殺し合ってくれている頃だと思う。
だからそろそろ…
「そうね。平和的に解決してくれれば…。それに、ユウト君の記憶を奪った理由も分かれば良いのだけどね。」
「うん。」
記憶なんてどうでもいい。
ユリヤも、アカネも。
杏先輩も、神楽も。
全部どうでもいい。
僕には、ユキとシロとクロがいるんだから。
「杏先輩。少し出かけてきます。」
「えっ?急にどうしたの?出かけるって、今のあなたはこの街の地理を知らないでしょう?出歩くのは危ないわ。」
うんうん。
実にその通りだ。
とてもめんどくさい。
「もういいや。行こう。」
「行こうって?…ああ、一緒にって…」
言葉はそれ以降続くことはなかった。
「なんだか少し強引な気がするわね。」
「しょうがないよ。杏先輩は心配性みたいだし、このままくっつかれてても困るからね。」
杏先輩を気絶させたシロにそう言ってから、杏先輩を僕の部屋のベッドに寝かせた。
何もない所の空間が歪んで、クロとユキも姿を現す。
「じゃあ、ユリヤとアカネのとこに行くのか?ご主…ユウト。」
「うん。よろしくね、ユキ。」
「もちろん良いのだけど、本当にユウトも行くの?今のユウトでは少し…かなり危ない気がするわ。【神通力の無力化】も【読む力】も使えないのでしょう?今から行くところはある意味、いえ…正しい意味で『世界で最も危険な場所』なのよ?」
「だいじょうぶだいじょうぶ。」
行きたくてしょうがない。
楽しみでしょうがない。
顔も分からないけど、
ユリヤって人が死ぬところを直接見たい。
なんなら僕が…。
なんだろう。
この気持ち。
まるで、恋のよう。
早くユリヤに会いたい。
早く会って、苦しめて、何もかも踏みにじって。
潰して、切って、ちぎって、
惨たらしく殺して、全部奪いたい。
…なんでそう思うんだろう。
とっても楽しみだ。
Xやってます。
フォローしくよろです。
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