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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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ユウキだった者

4月からしっかり更新するようにして、早3ヶ月。

皆さんに読んでもらえる回数は目に見えて増えていっているのを実感しています。

先月(5月)は一気にPV数も伸びたので、記録更新は厳しいかな?とも思いましたが、なんとか越えることができました。

一重に、この作品を読みにきてくださっている皆様のお陰です。

そんな皆様に一言。


なんで感想くれないんや…??




冗談です。

書いてもらえるほどの作品を作っていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしく。。。。。


2人が泣き止むことはなかった。

今も目に涙を浮かべたままだ。

余裕があれば落ち着くまで待ちたいところだが、俺としても確認をしなくてはならないことが多すぎる。

まだ2人が俺の両腕をそれぞれ拘束しているが、このまま話を進めよう。


「俺がその、『ユウキ』…という人間だと言うのは間違いないのか?2人とも。」


強くしがみつかれて身動きが取れないが、

2人の様子を見ていると突き放す気にもなれない。

まぁそもそも力の差がありすぎて振り払うことなどできないんだが。


「…間違いありません。アナタは、ユウキ様。私たちのご主人様です。」

「ユウカのこと、お姉ちゃんって言ってた!『僕』って言ってた!!絶対にご主人様だっ!!」


「すまないが…全く思い出すことができない。根拠はそれだけなのか?」


「それだけではありません!」


「うおっ!?…耳元で叫ばないでくれ…。」


「ご、ごめんなさい…」


シュンとして落ち込んでしまう。


くそっ、扱いが難しいな…。


「ご主人様は先ほど、あの男の力をお使いになられました。」


あの男の力。

体育教師の空気圧を操る力。

確かに、なんであんなことができたのだろう?


「アレはご主人様の、本来のお力の結果です。」


「本来の力?」


本来、つまり…

天地優人ではなく、ユウキが持っていた能力。


「どういう力が使えたんだ?今俺が使えると自覚しているのは【神通力の無力化(ニュートラライズ)】、そしてさっきの…名前とかあるのか知らんが空気圧のやつ。その2種類だ。」


念のため、読む力(リーディング)は伏せたままにしておくが、おそらく意味はない。


「ご主人様のお力は、【魂の操作】です。それ以外は、全てそのお力の副産物に過ぎません。」


「魂の操作?」


全然関係なさそうな気がするが…。

形のないものをどうやって操作するんだ?


「ご主人様!ワタシとシロがこうして生きてるのは、ご主人様の力なんだぞ!」


「どういうことだ?」


クロに説明を求めるが、口を閉じてしまう。

説明が難しいのだろうか?

代わりにシロがすかさず説明を始めてくれた。


「私たちはもう死んでいるのです。…いえ、死ぬところを生き長らえる術を、ご主人様からいただいたのです。」


「ふむ、なるほどな。」


さっぱり分からない。


「私たちとご主人様の出会った頃の話をしましょう…。私たちは、生きるために他の生き物を捕えて補食していました。」


昔話を語りだす。

『ユウキ』と彼女たちの物語。



「ある時、私は大物を捕えました。それは、」


       白い猫でした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そこにはカラスがいた。


カラスは白い何かを食べていた。


それは、猫だったものだ。


一心不乱に食らう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「元々その猫も弱っていたのです。病気で死にかけていた私は大喜びで食らいつき、その肉を必死で貪りました。しかし、急に体が動かなくなってしまったのです。そのまま、私は死んでしまいました。元から限界寸前だったようですね。」


シロがクロを見る。

続けろ、ということか。


「ワタシはもう食われて死ぬと思ってた。というか死んだはずだった。でも体が急に元気になって、動けるようになったんだ。もうお腹の肉もほとんど無くなってたのに。だから、私も食ってやったんだ。」


      その、黒いカラスを。


「ご主人様が、力を分けてくれたんだ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そこには猫がいた。


白い猫は黒い何かを食べていた。


それは、カラスだったものだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




クロはまた口を閉じてしまう。

シロがまた引き継ぐ。


「私はいつの間にか、魂だけの状態で意識を取り戻しました。近くにはクロが食い散らかした()()()()()()があるだけ。クロの方ももう体が動いていなく、魂だけがそこにあったのです。ユウキ様は言いました。『仲良くしないとダメだよ』と…。すると突然、私たちの体が元通りになっていき、私たちの意識はそれぞれの体へと戻りました。そして、ユウキ様はその日から私たちをペットにしてくれました。『ペットは家族。ずっと一緒だからね。』って…、言ってくれました…」


「…1つ、聞いて良いか?」


「何でしょうか?」


「俺たちはいつも、同じ公園で遊んでいたか…?」


「ご主人様!?」


「そこには、天地神楽耶も…いたのか?」


「ご主人様!?思い出されたのですかっ!?」


「夢で見ていた。ずっとあやふやで、まともに覚えていない…。そこにカラスと白い猫。それに、女が2人…。それが、」


「ユウカと、天地神楽耶です。ご主人様。」


「………」


「ご主人様はユウカと神楽耶のことが大好きだって言ってた。ワタシたちの名前を付けたのもその2人だ。」


「ちなみになんだが、その2人は俺のことを何と呼んでいた?」


2人は顔を見合わせる。


「どちらも()()()と呼んでいました。」


答えたのはシロだ。


「…そうか。」


俺自身はハッキリ覚えていないが、

急に『お姉ちゃんになる』とか言い出す神楽に着いていこうと思った理由はそれだったのか。

偶然、俺をユウ君と呼んだことで昔の俺は安心感を覚えた…のかもしれない。


「お前たちとの馴れ初めは分かった。だが、結局俺の力って具体的にはどういうものなんだ?【魂の操作】と言っていたが。」


「私もご主人様から深く聞いたわけではないのですが…人の気配や感情、()()()()()ことまで読み取ることができ、最も強力なのは他者の魂を奪い取り、それをさらに他者に移し替えるようなこともできたと過去に聞いております。私たちを救っていただいたのも、その力の一端かと思います。」


「…そうか。」


後半はもう何言ってるのか分からないし、分かりたくもないが、前半でも引っ掛かるところがある。


考えていることまで分かるだと?


気配や感情は今でも読むことができる。

しかし、考えていることが分かったことなど1度もない。単純思考のやつなら感情を読めば行動に直結しやすいから予想はつけられらが、そういうものとは違うだろう。


…話してみるか?


「言ってはいなかったが、俺は記憶を失ってからも人の気配や感情は読み取ることができていた。しかし、考えていることまで分かったことは1度もない。どう思う?」


「やはり、そうなのですね。おそらくですが…神通力の無力化(ニュートラライズ)による影響かと思います。」


「打ち消されているということか?しかし、打ち消されているとするなら、なぜ気配や感情は読めるんだ?何もできない、なら納得できるけど。」


「分かりません。ただ、あくまでも私の予想になりますが…」


申し訳なさそうに前置きを入れる。


「ご主人様は今、弱体化をしているのではないか…と考えます。」


「弱体化?」


「はい。先ほどは神通力の無力化(ニュートラライズ)の影響と申しましたが、言い直させていただきます。正確には天地神楽耶による影響だと思います。」


「……いや、なおさら分からないんだが…。」


「私たちにも経緯は分かりません。おそらく、何かしらのトラブルに巻き込まれ、暴走したご主人様を天地神楽耶が命懸けで止めようとした結果が今に繋が…」


「待て!待て待て待て!!」


「はい。どうかなさいましたか?」


「どうかなさいましたか?…じゃない!その言い方だとまるで、」


まるで、天地神楽耶が死ん…ではいないが、意識を失っているのは俺のせいみたいに聞こえるじゃないか。


「…ユウキ様。なぜ【神通力の無力化(ニュートラライズ)】が使えるか、もう予想がついているのではありませんか?」


「……まさか、」



『神通力は魂に宿る』



「理由は分かりません。ただ、過去のご主人様は何らかの要因で…」



天地神楽耶の魂を取り込んでいるだと思います。


「………」



()()()、ユウキ様は周囲のありとあらゆる生命から魂を奪い取りました。しかし、突然そのお力が消失したように感じたのです。私たちもご主人様の異常を感じて、街中には来るなと言われておりましたが、言いつけを破り、そして…私たちも魂を引き抜かれてしまいました。」



「…それはつまり、アレか?神楽の言っていたお姉ちゃんの(かたき)って……いや、それだけじゃない。ユキの姉兄がいなくなった原因を作ったのは……、【災厄の鬼】っていうのは…」



「俺のこと、なのか?」


俺が空気圧を操る力を使えるようになったのも、俺がアイツを殺して魂を奪ったから?


神楽の望みを叶える。

ユキの大切な家族を見つける。

大層なことを言っておきながら、

その根本的原因は俺だった?


神楽の最も大切な人を奪い、

ユキの家族がいなくなってしまう原因を作った。

そんな俺が、2人に幸せになってほしいと心から願っていたというのか?

なんて皮肉だろうか。

馬鹿馬鹿しい。

俺の存在など、ただの悪ではないか。

意味がないどころの騒ぎではない。

存在自体がマイナス。

圧倒的害悪。


「ははっ。アホらし…」


なんかもう、全部めんどくさくなってきた。

死ぬか。

これ以上生きてても意味ないよな?

むしろ、一刻も早くこの世から消えるべき…

……いや、それはまだだ。


「やり残したことはやらないといけないな。」


「ご主人様?」


むしろ、俺がやろうとしていたことの後押しにはなるかもしれない。

意味合いが大きく変わってしまうが。


犠牲から贖罪に。


「お前たちはどうして無事だったんだ?」


「はい。私たちは魂を抜かれ、ご主人様の元へ混ざろうとした時、何かに弾かれたように感じました。しかし、もう自分達の体は離れた位置にあり、このままでは魂が消滅してしまうと考えて、近くにいた女性の体を借りることにしたのです。その女性も、同じく()()()になっていましたので。今思えばですが、神楽耶に救われたのかもしれません。神楽耶はご主人様を止めるため、自らご主人様の()に取り込まれた…。神通力の無力化(ニュートラライズ)があれば、神楽耶1人ならおそらく逃げることもできたのではないでしょうか?あくまでも予想になりますが…」


ユリヤとの記憶の旅で気になっていることはあった。


俺の記憶の果てに潜む、

俺の記憶を封じている物。

ユリヤはそれを、俺を想ってのことだと言った。

アレは、天地神楽耶の意思…だったのか?


考えていても、分かることではないか。


「シロ、クロ。まだまともにお前たちのことも思い出せていないけど、そんなしょうもない俺の頼みを聞いてくれるか?」


「もちろんです!ご主人様!もう、離れることはありません!そうよね!クロ!!」


「…………」


とても気持ち良さそうに寝ている。


「バ、バカ!!ごめんなさい!ご主人様!!」


慌てて謝罪してくるシロ。

こんな俺に謝ることなど何もない。

むしろ、俺のせいで今まで寂しい想いをさせてしまっていたのだろう。

謝るのは俺だ。


「悪かったな。」


「えっ?」


シロの方を向いて謝罪、

俺の右腕に抱きつきながら寝てしまったクロの頭を左手で撫でる。


「ん…、ご主人様……」


気持ち良さそうに寝ているな。

ペットで家族、か。

かわいい異性に抱きつかれてるというよりは、まさに猫に懐かれている感じ。


「かわいいな。」


「…ええ。本当に。」


2人は俺の…ユウキの『仲良くする』という約束を守り、お互いに支えあって生きてきたのだろう。

クロはオツムが弱いようだが、賢いシロがうまく立ち回ってやってきたようだな。


「シロも、よく頑張ったな。」


クロの頭から手を離し、今度はシロの頭を撫でてやる。


「ご主人、様……」


また目に涙を浮かばせるシロ。

彼女たちの立場を考えると、こんな簡単な労いの言葉だけではとても足りないが、

せめてもの誠意を。


「ありがとう。生きててくれて。」


「…ご主人様ぁ!!」


勢いよく抱きついてくるシロを、俺は左腕で強く抱き締めた。


「ヨシヨシ。」


背中をポンポンしてやると、言葉にならない声で泣きじゃくる。

こんなに愛されていたんだな、ユウキ。


思い出せない自分を殺してやりたい。

天地優人という人格を抹消し、ユウキに戻り、神楽耶を目覚めさせ、ユキに土下座し、責任を持ってユキの家族を見つけ出す。

それが最善のように思うが、俺自身にはどうしようもない。



俺は、なんて無力なんだ。

次回も今回の内容が続きます


以上。

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