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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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明かされる存在

物語の根幹にはいります。


……以上。

「あら?ユキちゃん…に、ユウトも。」

「あれ?なんか用があるって言ってなかったっけ?もう終わったのか?」


ユキの異空間ゲートを抜けた先に2人はいた。

こちらを見るなり声をかけてくる。


「おっす。2人とも。」


場所は……どこだ、ここ?

見渡す限り瓦礫の山だ。


「そう言えばユウトにはまだ言ってなかったわね。ここは例のトリニティのアジトよ。ユリヤにビルごと潰される寸前だったのよ。結構ギリだったから焦ったわ。」


そう言えばさっきユリヤとの念話の時にそのようなことを言っていた気がするが、相変わらずめちゃくちゃだな。


「アジト、潰されちゃったんだな。」


「まぁここはもうほとんど使っていなかったようなものだから。気になることはあったんだけどね。じゃあ私はもう行くわ。またメグに連絡を入れてちょうだい。」


「分かった。ありがとうな。」


俺が礼を言うとフッと姿を消すユキ。

読む力(リーディング)にも反応が出ないことから、もうこの場にはいないようだった。


「ユキちゃんはどこへ行ったの?」


シロの疑問も最もだ。


「俺が頼んで席を外してもらってるんだ。今日は2人に重要な話がある。今は俺とシロとクロの3人しかいない。腹を割って話がしたい。」


「それは()()()()()()わ。私からも、どうしても聞いておきたいことがあるの。いつもユキちゃんがいたから躊躇していたのだけれど、良い機会ね。」


どうやらシロも俺に話があるようだ。

確かにちょうど良い。


「なんだ?難しい話か?」


クロはよく分かっていない様子。


「あなたはユキちゃんの言う通りに瓦礫を掘っておきなさい。」


「ちぇー!なんだよ!もう掘り返すの飽きたよ!!」


不満を隠そうとせず、ブツブツ文句を言いながら瓦礫の山へ向かっていくクロ。

ユキに頼まれたとは?

瓦礫掘りに何か重要な意味でもあるのだろうか?


「さて、これで邪魔者はいなくなったわね。」


「邪魔者ってお前…」


切っても切れないとか、一心同体だとか。

そんなことを聞いた気がするが、めちゃくちゃ雑に扱われているな、クロのやつ。


「さて、どっちから話すかしら?」


「じゃあ俺からで良いか?シロの返答次第なところもあるが、急ぎの件になる可能性もある。」


「そうなの?ではお先にどうぞ。」


さて、どう切り出すか。

…やはり、ここはストレートが良いか。


「2人の望みは人探しとユキから聞いた。大切な人だったと聞いているが、どんな人だったのか具体的に聞いても良いか?」


「………」


言いづらいことなのだろうか?

しかし、これを聞けなければ俺の考えを進めることはできない。

なんとか話をしてもらえるようにしないと。


「どうしてそれを聞きたいの?」


質問に質問で返される。

しかし、それが必要というのなら応えなければならない。


「その人を探すためだ。情報がないと探しようがないからな。」


「…そう。」


考え込むシロ。

別に変なことを言った覚えはないのだが、何か思うところがあるのだろうか。


「ごめんなさい。やはりこちらから話をしても良いかしら?このままだと冷静に話すことができないかもしれないから。」


「…?分かった。話してくれ。」


よく分からないが、話に集中できないと言うのなら先に話をさせてしまった方が良いだろう。


「あなた…神通力の無力化(ニュートラライズ)の力はどこで、どうやって手に入れたの?どこかで儀式をしたの?」


「なんでそんなこと……とか言い出したら無限ループだな。隠してるわけではないんだが、俺自身分からないんだ。いつの間にかあった。そうとしか言いようがない。」


「そう。じゃあ少し踏み込むわね。ユウトは天地神楽とは血が繋がっていない。…合ってるかしら?」


何故それを知っているのか?

タイミング的にユキではないはずだ。

ユリヤじゃあるまいし、家でのやり取りを離れたところから覗き見るなんてこともできないはず。


「どうなの?」


「正解だが、何故知っている?」


「調べたからよ。神通力の無力化(ニュートラライズ)の力はいつ自覚したの?」


すぐに流すのは、言う必要はないということか。


「ここ最近だ。ほんの一月くらい前か。」


「儀式のことは知っている…わよね。魂に神通力が宿るという話は?」


「ああ。知っている。」


「あなたが初めて鬼憑きを殺したとき、どう感じた?」


「別になにも。害虫を始末したとしか。」


「それだけ?他には?」


「他に?…」


何が聞きたいのだろうか?

あの時に感じたこと…

……そう言えば、


「本当に、特にこれと言ったものは無いんだが…強いて言えばアイツが死んだ時、俺の中で何か、こう、変わった…みたいな?すまん、俺自身曖昧だからどう言えば良いか分からないんだ。」


「変わった!?どう変わったの!?」


「い、いや!分からないって!!感覚の問題なんだ…。」


急に声を張り上げて肩を揺らしてくる。

本当に、一体シロは何を気にしているんだ…?

驚くことなんてあったか?

シロだって目の前で事の経緯を全て見ていたはず。

互いの事実に齟齬があるわけでもない。

無言の時間が少し続くが、やがてシロは身を翻して瓦礫の山の方へ。

拳大のコンクリート欠片を持って戻ってきて、俺の前に差し出す。


「……コレを思いっきりあの壁に飛ばしてみて。」


10mくらい離れた位置に廃ビルの残骸と思われるコンクリートの壁らしきもの。

鉄筋がところどころむき出しになっている。

シロはそれに指を指しているが、壁に石を投げたからどうだと言うのか?


「えっ、なんで?それもう話とか関係な…」


「いいからやって!!」


「は、はい!こ、こうっすか…?」


ものすごい剣幕だ。

別に害があるわけではないから言う通りに投げてみる。

重いっちゃ重いが、拳大だからなんとか壁へ届かせることができた。


「こ、これでよろしいでしょうか…?」


「それじゃ投げてるだけじゃない!飛ばしてって言ってるでしょ!!」


「い、いや…飛ばせと申されましても…?」


威力が足りないということか?

では蹴っ飛ばしてみるか?

しかし、それでは壁に命中させるのは厳しい気がする。


()()()がやったことを思い出して。アイツは石を飛ばしていたでしょう。アレをイメージするの。」


あの男、石を飛ばす…

例の体育教師のことか?


「はぁ?それはアイツの能力…」


「さっさとやりなさい!!」


「は、はい!すみましぇん…」


ワケが分からない。

しかし、下手したら殺されるのではないかと思うくらいの気迫のシロに逆らうことはできない。

形だけでも言うことを聞いておこう。


確かアイツの力は…

高圧の空気を生み出す力のはずだ。

空気を取り込み、圧縮させて、生み出した空気圧による高速移動や物を高速で飛ばしたり、人間コンプレッサーみたいなやつだったはず。

相手の身体を内側から吹き飛ばすなんて凶悪な真似もやっていた。

答え合わせをしたわけではないが、アイツの反応を見た限りはほとんど正解だったはず。

覚えてはいるが…

それを俺にできるわけないだろうが。


とりあえずイメージしてみよう。

目を閉じる。

手のひらに空気を集めるイメージ、で良いのか?

手に熱が込められていく。

ではこれを圧縮………ってアレ??


「なんだコレ?なんでこんなことが…?」


シロも俺のことを凝視している。

穴が空くほど見るという言葉があるが、

まさにそれだ。

マジでコイツ、俺を殺そうとか考えてないよな…?

これじゃ蛇に睨まれた蛙だ。

よく分からないが、シロが怖いので続けるしかない。

手にどんどん熱が、そしてコンクリの欠片を握る手を内側押し広げようとする力が…

『圧力』が感じられる。


「こんな感じ、か?」


広がろうとする指を力ずくで抑えつけ、コンクリの欠片を壁に向ける。


「…これ、どうやって撃つんだ?」


いや、撃つとは違うか。

圧力の開放。

つまり、この力を解けば良いのではないか?


力を込めるのを止めるのと同時に、指を欠片から離す。

すると高速で欠片は飛んでいき、壁…ではなく、大きく右にずれたところにいたクロの後頭部に見事にクリーンヒット。

すごいな。

バッティングセンターで140km/時を打つ時よりも明らかに速度が出てたと思う。

これでコントロールを磨けば甲子園はおろか、メジャーリーグでもあらゆる賞を総なめに……って、言ってる場合か!!


「痛ってぇー!!??なんだ!?敵襲か!?」


後頭部にコンクリートを高速で叩きつけられても痛いで済むのか。

普通の人間なら確実に即死していただろう。

振り返ってこちらに気づいたクロは怒り心頭と言った様子で近づいてくる。


「おい!今のシロだろ!?痛いじゃないか!!」


確かに、クロ目線では俺があんな『攻撃』できるなどと思わないか。

シロに指示されたということにして話を戻そう。

というかほぼシロのせいだし。


「なんかできたけど、こんな感じで良いんですかいの?」


棒立ちで反応を示さないシロに声をかける。


「できた…ホントに、できた。…やっぱり…」


「やっぱり?」


「ユウト、あなた小さい頃はどこで生活していたの。4歳とか、5歳くらいの時…」


「いや、すまないがそれも答えられない。俺も分からないんだ。」


「分からないって?」


「俺は記憶喪失なんだ。だから小さい頃の記憶はほとんど…というか何にも残っていないんだ。」


「やっぱりそうだ…!絶対にそうだ…!!」


シロの様子がかなりおかしい。

いつもの落ち着いた様子は微塵も窺えない。

必死に自分を落ち着かせているのだろうが、漏れる息遣いは彼女に焦りのようなものがあることを明確に示している。

見ていて心配になるほどだ。


「シロ?どうしたんだ?お腹でも痛いのか?」


クロもシロの異常な様子に心配をしている。


「ユウト、あなた…」



幽華(ユウカ)という女性に、心当たりはない?」



「ユウカ?」

「なんでユウカのことを?本当にどうしたんだ?シロ。」


知らない。

ユウカ…。

知らない。


「知……」


知らない。


「知ら…」


知らない。



■■■■■のこと?



そうだ。

いや、知らない。


「知らな…」


お■■■んのことだ。


そう。


僕の、お■え■ん。


違う、俺は知らない。


お前のじゃない。

僕だけの、


「おねえちゃん……僕の?」


「「………………………」」


アレ?

俺、今なにを…?


()()()、様…ご主人様……!!」

「ご主人…様?…ユウトが、ユウキ様……!?」


ユウキ?

ご主人様?

シロとクロは何を言っているんだ。

俺はユウトだ。


「「…ユウキ様っ!!」」


2人に抱きつかれる。

痛い。

手加減はしてくれてるんだろうが、

痛くて、苦しくて、

なのに何故だろう。


こんなにも満たされるのは。


2人は泣いている。

泣きじゃくっている。

小さい子供のように。


なぜ、俺の目からも涙が出ているのだろうか。


「ユウキ様…、最初の質問にお答えいたします。私たちの探し人は優しく、聡明で、私たちを家族と言って、愛してくれた…私たちのご主人様…ユウキ様…。」


「だから、俺はユウトで…」



「私たちの探し人は今、見つかりました。」

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