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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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明かせない秘密

拙作を読みにきてくださっている皆様。

昨日、皆様のご愛読のおかげで累計PVが6000を越えることができました。

本当にありがとうございます。

一時期は一旦区切って『一部完結』みたいに持っていって、【完結ブースト】なるものを噛み締めようなどと甘えたことを考えたこともありましたが、フォロワーさん達の意見も考慮して、このまま真のエンディングまで突き進むことにしました。

長いと思います。

それでもその長い間、

ぜひ、お付き合いいただければ嬉しいです。

よろしくお願いします。

「そんな神楽が、俺は大好きだよ。」


神楽が泣き崩れる。

まぁさっきからずっと泣いていたようにも見えるが、おそらくさっきまでと今では涙を流す理由が全く違うのだろう。


…というか、


「これじゃまるで、アタシが馬鹿みたいじゃないか。」


ユウトの胸ぐらから手を離す。


コイツ(ユウト)、わざと神楽の悪口を言っていたんだ。

きっと、アタシが扉の向こうから聞き耳を立てていたことも知っていたな。

無理をして、優秀な姉を演じようとする神楽を止めるために。

神楽が苦しみ続ける道を選ばないように。


突然ユウトがアタシの肩に手を置いてきた。


「かませ犬ごくろう。」


コイツめ!!

ボソッと、アタシの耳元で呟いて神楽の元へ歩いていった。

ここでまた殴ったら、アタシが完全に悪者になってしまうじゃないか!!


「これはまんまとユウト君に一杯食わされてしまったみたいね。思い切り頬を叩いてしまったし、後で謝らないといけないけど、全然気が進まないわね。」


アタシと同じく、うまくスパイスとして利用された杏も不機嫌そうだ。


「全くだ。謝る必要なんかないぞ。むしろでかい貸しにしてやるんだ。ユウトも多分そう考えてるはずだ。」


「…ユウト君も、自分を1番分かってるのはアカネだと言っていたわね。」


「フフン、そりゃそうさ。ユウトの1番はアタシだからな。」


「はいはい。」


2人の兄妹という関係は終わった。

偽物の家族の関係の終わり。

でもきっと悪いことではない。


人間『神楽』と、人間『優人』で新しく関係を築いていくんだ。


()()()、アタシが変なことを言って神楽をけしかけたから、結果的に親友を長く傷つけることになってしまった。

だから、本当はユウトには礼を言わなければならない。

…まぁ今回は好き放題利用されちったから、これでおあいこということにしても良い。


だから、今回だけだぞ。


互いに強く抱き締め合う2人を、

完全に嫉妬無くして見れたと思う。

アタシにしては上出来だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



しかし、どうするかな。


姉さん…神楽は俺のことを好きだと言ってくれた。

家族だけでなく、男としても。

その重大な事実は僥倖という言葉の枠にはとても収まらない。

もちろん、神楽の気持ちは俺の読む力(リーディング)で理解はしていた。

ただ勢いとは言え、それを言葉にする覚悟を持ってくれたのだ。

しかし、それは俺の将来設計を大きく揺るがす行動でもある。


神楽は姉、つまり家族としてずっとそばに。

そしてユキを恋人として…という風に考えていたが、神楽が俺を男として接し、自身を異性として見てほしいと望んでいるというのならそのままにはしておくことはできない。

だが俺は、2人のどちらかだけなんて選ぶことはできないだろう。

どちらも、俺の命よりも大切にすべき愛おしい存在なのだ。

ユキは、そんなどっちかつかずの俺を見てどう思うだろうか?

軽蔑させてしまうだろうか。

神楽は?

神楽はおそらくだが、表立って俺を非難することはないだろう。

そして、俺の見てないところで泣くんだろうな。


困ったな。

非常に困った。

多分この悩みをそのまま打ち明ければ、聞く人間によっては殺意すら抱くであろう幸せすぎる内容だ。

しかし、真剣(マジ)に困っている。



2人に優劣をつけることができないユウ君はその時になっても動くことができず、どちらかを必ず失うことになるでしょう



ここにきて呪いのように俺にのしかかってくるユリヤの言葉。


アイツ、まさか未来予知なんてこともできるのか?

…あり得なくはない、ユリヤなら。

アイツは『俺が知らない過去』と『俺が迎える未来』を見ている?

確信めいた言い方に、これまでとは印象が違う、強引な手段。

アイツの指示を受け入れることはあり得ない。

しかし、今の俺には情報が足りてない。

ユリヤを消すのは既定路線としても、

ヤツの持っている情報は全て吐かせたい。

以前、この家で4人で話したことを思い出す。


死体の記憶すら読むことのできる狩人がいたと。


その能力、新たに誰かに渡ってはいないだろうか?

おそらくユリヤは口を割らないと思う。

たとえ、こちらが命の手綱を握っているとしてもだ。

俺の読む力(リーディング)はなぜ感情や気配しか読めないのか?

便利ではあるが、結構地味だ。

まぁ神通力の無力化(ニュートラライズ)というSSRを引いてしまった手前、文句は言えないんだが。

そもそもなぜ俺は2つ能力を持っているのだろうか?

ユリヤなら、その答えも知っているのだろうか?


「ユウ君?なんだか難しい顔をしているけど…」


おっと、いけない。

神楽を不安にさせてしまった。

彼女はまだ精神が安定していない。

他のことは後で考えよう。


「大丈夫だよ。それより、俺の呼び方は『ユウ君』のまま?」


「…うん。ユウ君はユウ君だから。それは弟だとか、家族だとかは関係ないの。」


「そっか。」


「ねぇ。また私の名前を呼んでくれる?」


「お安いご用だよ。神楽。」


「……んふふふふ…」


ニヤついた顔を隠すように俺の胸に頭を埋める神楽。

そのままスリスリと顔を擦り付けてくる。

うむ、可愛い。


「はぁ…。もう見てられないわね。」


杏は呆れたように出ていった。

そういえばあのチビっ子への態度はどうしようか。

『姉さんの友達』という枠だったから丁寧に相手をしていたが、『姉さん』というタグが無くなった今、俺にとってヤツはただのうるさい小型犬だ。

とはいえ、あまり雑に扱っても神楽に悪印象を与えるか…

これは後でアカネに相談してみるのがいいか。

あんまり杏のことは深く知らないからな。

そう思いアカネを見ると、杏と同様に少し呆れ顔を浮かべながら無言で部屋を出ていった。


「…ねぇ、ユウ君。」


「なに?」


気がつくと神楽は顔を上げて俺を真っ直ぐに見上げていた。


「ユキって子と私、どっちが好き?」


「…ユリヤがユキを真似たのは、あくまでその時は神楽が姉さんという立ち位置が前提で…」


「どっちが好き!?」


またもや困った。

何と言うのが正解だろうか…。


やはりここは、正直に言うことが俺にできるせめてもの誠意か。


「嘘はつきたくないから正直に言うけど、2人とも同じくらい大切で、好きなんだ。今はまだ、どっちの方が好きとハッキリ答えることはできないかな。」


「……そう。ありがとう、ユウ君。正直に話してくれて。」


神楽の心情は複雑だった。


「ちなみにその子はどんな子…っていうのは聞いちゃダメ?」


「聞きたいの?」


「…うん。」


「………秘密で。」


「いじわる…。」


頬を膨らませ、上目遣いでこちらを軽く責めてくる。

本気で怒っているわけではないが、確実に不満には思っている。

そんなところだろう。

しかし、言えることなど無いのだ。

『ユキ』という名前を出されたことすら痛恨の極みなのだ。

それにその姿まで。

ユリヤのことを舐めていた結果だ。


「いずれ、会うことにはなると思う。その時は必ずちゃんと紹介するよ。」


「…絶対だからね?」


これが今できる俺の精一杯だ。


その後は神楽の要望により、

神楽が寝付くまでの間、手を握りしめていてほしいという何とも可愛いお願いを聞いて、

しばらくして寝息を確認した俺は部屋に静かに戻ったのだった。


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