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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第六章 七騎士編

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神楽と優人

拙作を読みに来てくださっている皆様。

いつもありがとうございます。

この度、今回の投稿で100話目ということで

改めてよく続けてこれたなぁと、

色々と感慨深い想いです。

これも、読んで下さっている方がいるからこそ頑張れていると日々実感しております。

まだまだ話しは続きます。

よろしければ最後まで、お付き合いいただけると嬉しいです(о^∇^о)

「どうしよう…本当に、言っちゃった。」


あれではもう告白してしまったも同然だ。

最後の別れる前、

ユウ君は困ったような顔で立ち尽くしていた。

当たり前だよね。

気持ち悪いもんね。


最後には泣いて逃げ出してしまったけど、

ユウ君は追いかけてきてはくれなかった。

それも、当たり前。


ずっと一緒に過ごしていた家族から突然、

異性として見られていることを告げられたら?

軽蔑されるのも当然だ。

もう、終わりだ…。

もう、元の仲の良い姉弟にすら戻れない。

一時の感情で、全てをダメにしてしまった。

…助けて。


助けてよ。

お姉ちゃん…



コンコンコン



「っ!?…………」


誰かが来た。

でも、今はもう誰とも話したくない。

例え、ユウ君だったとしても。

もうこれ以上嫌われたくない。

醜い私を見られたくない。

これ以上はもう…


「またいじけてるのか。姉さんはすぐに落ち込むし、塞ぎ込むよね。」


ユウ君だ。

声からも言葉の内容からも、私に対して呆れているのがよく伝わってくる。

もう、身を引こう。

菊おばあ様にお願いして、昔のように私も神社に住まわせてもらおう。

アカネと杏はこのままでいい。

私という【(かせ)】がなくなれば、ユウ君だってどちらかをパートナーとして選ぶだろう。

2人はとても可愛いし、美人だ。

そして、私の大切な友達でもある。


2人になら、ユウ君を任せられる。


ユリヤ様はまだ人となりをよく知らないから、あまり考えたくはないけれど。


あの2人なら、

ユウ君を…


「嫌だよぉ…」


誰にも渡したくないよ。

ユウ君は、私だけの…


「お邪魔しまーす。」


「…えっ!?」


急に声をかけられたと思ったら、ユウ君が既に部屋の中に立っている。

どうして!?

鍵は閉めていたのに!


「ごめんね、姉さん。実は俺、結構悪い子だからさ。ピッキングとかもできちゃうんだ。知らなかったよね?これでよく学校の閉まってる部屋に忍び込んでサボったりしてたんだ。」


「えっ?」


ユウ君は何を言っているの?


「まぁでも?姉さんも弟を相手に下着姿でエッチな誘惑をしかけるような良くない人だ。というか、悪い人だ。だから()()()()だよね。」


「ご、ごめんなさい…。」


ユウ君が何を言いたいのか分からないけど、

とりあえず謝らなくちゃ。


「姉さんは、ユリヤより姉さんの方が俺のことを知っている…みたいに言っていたけど。」


怖い。

ユウ君は何を言おうとしているの?

怖い。

もう何も聞きたくない。


「多分だけど、俺のことを一番正しく分かっているのはアカネなんじゃないかな?」


「そ、そんなことないっ!!」


聞き捨てならない!


例えユウ君の言葉でも、それは否定をしなければならない。


「一番ユウ君のことを分かっているのは私よ!アカネなんかより、私が…」


「俺は今まで姉さんの前では猫を被っていたからさ、姉さんは俺の良いところしか見えてないんだよ。素の俺なんか、姉さんの前ではほとんど見せたことないよ。学校なんかも周りには馬鹿なガキしかいないし、テストなんて勉強しなくても満点取れるし。だから本当は学校なんて何も意味がないと思ってるけど、姉さんが生徒会長なんてクソ面倒なことやってるもんだから、俺だって堂々とサボれなくて困ってるんだよね。仮病を使おうにも家に姉さんがいるからそれも無理だし。」


「ユ、ユウ君…?」


いつもと様子が全然違う。

ユウ君って、こんなことを言う子じゃ…

それになんだか口調もいつもと違うような?


「姉さんって、料理の腕も壊滅的だよね。才能の欠片もないというか、もはやフードロスに対するアンチテーゼだね。」


「ひ、ひどいっ!!」


なんて酷いことを言うの!?

この子、本当にユウ君なの!?


「お姉ちゃんぶるわりには結構子供っぽいところも多いし、ワガママなことも言うし。割とドジだよね。」


「……」


そうか。

やっと分かった。

私、元々ユウ君に嫌われていたんだ。

けど、私に対して恩義を感じていて…

それで今まで私のお姉ちゃんのフリを手伝うように、良い弟を演じてくれていただけだったんだ。


でも、とうとう愛想を尽かされてしまった。

今まで思っていたことを、そのまま言われているだけ。


「今も、俺に見捨てられたって考えてるでしょ?顔見てれば分かるよ。分かりやすいからね。」


「ごめん、なさい…」


私はユウ君のこと、

本当に何も分かっていなかったんだ。

異性としてはともかく、

姉としては慕ってくれていると思っていた。

自信があった。

でも思い違いだったんだ。


完璧なユウ君のお情けで、『お姉ちゃん』の形が保てていただけ。

最初から、私に『お姉ちゃん』をやるなんて無理だったんだ。

分かってた。

私がお姉ちゃんみたいになるなんて…


「あー、めんどくさいな。そういうとこあるよね、姉さん。いじけて、落ち込んで、ウジウジして。みっともないよ。」


「もう…」


もう、聞いていられない。

もう、耐えられない。


「もう、やめて…」


「姉さんは、」


もうやめて。



「俺のこと、全然分かってくれていない。全然、『お姉ちゃん』ができてないよ。」



「ユウトォ!!!!」



叫び声とともに、いきなりドアが開かれる。

アカネだ。

大切な友人にも聞かれていた。

こんな情けない姿を見られてしまった。

アカネは激情している様子でユウ君の胸ぐらを掴み上げてしまう。


「さっきから黙って聞いていれば!お前!!自分が何を言ってるのか分かってるのかっ!?」


「ユウト君。あなた、最低よ。こんなに酷いことが言える人だなんて思ってなかった。」


杏もいたんだ…。


もう嫌だ。

もう嫌だよ。


「なんとか言えコラァ!!」


「早く発言を撤回して神楽に謝りなさい。ユウト君。」


「…………」


ユウ君は何も言わない。

そうか。

撤回することなんて、何もないもんね。

ユウ君に謝る理由なんかない。

悪いのは私だけ。


「…2人とも、今すぐ出ていって。」


「ふざけるなっ!アタシは…」


「いいから出ていって!!」


「………くっ、」


「神楽…」


アカネは乱暴にユウ君を突き飛ばす。

ユウ君は勢いのまま後ろに倒れて尻餅をついてしまう。

ドタドタと大きく足音を立ててアカネは部屋から出ていった。

杏はユウ君に近づいていく。

手を貸すつもりかな。


バチィッ!


倒れてるユウ君に思い切りビンタをしてしまった。

すごい痛そうな音だ。


ユウ君に酷いことをしないで。


そう言いたいのに、声を出すことができない。

杏も不機嫌を隠そうともしないで部屋から出ていって扉を強く閉めた。


「…姉さんはさ、『お姉ちゃん』であろうと頑張ってるんだろうけど、自分でももう無理って思ってるんでしょ?辛いんでしょ?」


「……うん。」


「じゃあ辞めればいいじゃん。出来の悪い『お姉ちゃん』なんて。」


「…えっ?」


「お姉ちゃんぶっていても、弟である俺のことも全然分かってないし、料理もできないし、たまにドジだし、勉強だってスポーツだって俺のほうが優秀だし。なのに『私はお姉ちゃんだから』って言って、自分から苦しい想いするようなことをしてる。」


「………」


「そんなのただの馬鹿じゃん。頭おかしいんじゃないの?」


ドカァッ!!


ドアか吹き飛んできた!

ユウ君に直撃してしまう。

一体何が!?


「お前ェ!!!!」


アカネ!?まだ聞いていたの!?


一直線にユウ君に向かっていく。


マズい!

止めないと!!


そう思っているのに。

足に力が入らない。

ユウ君を助けたいのに、ユウ君に言われたことが尾を引いて体が動かない。

なんて…なんて情けないの、私は…。


ユウ君は少しの抵抗もしないで、ただアカネに殴られ続けている。


「ちょっと!?一体どうしたの!?」


杏も騒ぎを聞いてか、驚いて戻ってきたようだ。


「も、もうやめて!アカネ!!」


私もやっと口と体が動いた!

アカネに背後から覆い被さる。

でも、ものすごい力で引き剥がされてしまう。


「…ユウト、お前一体どうしたんだ。なんでそんなに神楽を傷つけようとする?」


「…逆だ。」


「逆?どういうことだ?」


私にも全然分からない。

何が『逆』なんだろう?


「姉さんを傷つけているのは『姉さん自身』だ。俺じゃない。」


「…お前が何が言いたいのか、サッパリ分からないぞ。もっと簡単に言え!」


「姉さんは自分で自分を苦しめている。傷つけている。そんな馬鹿なことを辞めさせたいだけだ。」


「………?」


アカネはしかめっ面で私と杏を交互に見るが、私にだって全然分からない。

杏も同様で首を横に振っている。



「姉さんは、俺のことが好きなの?異性として。」



………!?

こ、ここでその話に戻るの!?

今の地獄のような空気でそんなこと…


「あれ?俺の勘違いだったかな?」


「か、勘違いじゃ、ない…」


「でしょ。でも姉だから諦めようって?それで苦しいって、辛いって言ってるんだよね?」


「………」


否定できない。

でも肯定もできない。

醜い自分を認めたくない。

姉としての威厳なんてもうどこにもなくなっちゃったけど、これはもう意地だ。


「じゃあ辞めればいいじゃん。『お姉ちゃん』なんて。」


さっきも聞いた言葉。

関係の解消。

家族の解消。


2回目ともなると、より深く心に突き刺さる。

本当に、もう戻れないんだな。



「俺は天地神楽が姉さんでも、姉さんじゃなくても。異性としてとても魅力的だと思っているよ。」


「…?」


「血が繋がってないのに、なんで諦めようとするの?『お姉ちゃん』なんて下らない設定はそこら辺に捨てて、天地神楽として俺を好きでいてくれればそれでいいじゃん。」


「え…?」


「俺は姉さんが俺を異性としては見てくれてないと思っていたからいつも自制してきたけど、実際は()()()だって妊娠させてやろうかコイツ…って思ったくらいだ。」


「えっ、えええっ!!??」


に、妊娠!?

急に何を言い出すの!?この子!!


「ひょっとして俺のこと、草食動物か何かだと思ってるの?あんなエロい格好で言い寄られたら普通はパクッって行くからね?普通は。ただ我慢してただけ。三人纏めてベッドに押し倒すって選択肢があの時はなかっただけで、めちゃくちゃ興奮してたから結構危なかったよ。というか勿体なかったな。抱いても良かったのか。」


「「「…………」」」


ユ、ユウ君がおかしくなっちゃった!!

どうしよう!まさか私のせい!?

私が変なことを言ったから!?


「そういうわけで、俺は今日で『姉さんの弟』を卒業することにするよ。」


「…わ、私は…?」


「そんなもの、自分で決めなよ。そんなこともできないの?」


冷たく言い放たれる。

まるで初めて会った時みたいに。

私が、

ユウ君のお姉ちゃんになる前のように。


「意味がない縛りで勝手に『お姉ちゃん』として苦しみ続けるか、人間『天地神楽』として新しく関係を築いていくか。まぁ俺は()()()の気持ちを知っちゃったからね。弟でいるメリットが欠片もないから、もう辞めさせてもらうよ。」


「私は…」


ユウ君を好きな気持ちを、

我慢してなくてもいいの?


『お姉ちゃん』をやめれば、

ユウ君は私を…


一人の女性として、見てくれるの?


「私は…」


「私は?」


「ユウ君に…女の子として、見てほしい。」


「そっか。じゃあ呼び方はどうしようか?」


「えっ…呼び方?」


「姉さん…のままでいいの?」


「じゃ、じゃあ…名前で…」


「神楽。」


「…………」


ユウ君に『神楽』と、

名前を呼ばれたのは2回目だ。


ただし、最初の時とは大きく状況が違う。



「好きだよ。神楽。」



「…?…………へっ?」


聞き間違えた?

今、『スキ』って聞こえたような?

すき焼き?


「お姉ちゃんとしてはダメダメだった気がするけど、バカみたいにお人好しだったり、すぐいじけたりしてるような残念なところも。すごくがんばり屋なところも、俺を心から大事にしてくれているところも。」



「そんな神楽が、俺は大好きだよ。」

気がついたら40万字を超えてましたね。

かなり書いてきたもんですね。

一体いつになったら完結にこじつけられるのか、迷い子になってしまっておりますが、よろしければ最後までお付き合いくださいね。

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