中学生だよね、考えてみたら
「う〜ん、エリちゃんに触れて調べたらどんな状態なのか分かると思う。ただ、エリちゃんが無意識に完全に能力を制御出来ているなら良いけど、ほぼ能力が覚醒していなくて眠っている様な状態だった場合、刺激を与えたら能力が活性化してさっき碧が言った様な現象が起こる様になる可能性もゼロじゃあないよ?
まあ、その程度で活性化する才能だったらどちらにせよ受験とか、ブラックな職場とか、結婚式の準備とかでストレスが掛かったり興奮状態が続くと覚醒する可能性が高いけど」
エリちゃんに告げる。
魂を視るのは黒魔術師の得意とする分野だからね。
本音とか記憶とか無意識下の願望だけでなく、才能も読もうと思えば読み取れる。
そう考えると、退魔師として鍛錬していた蓮君だけでなく、エリちゃんも才能ありだから引き取っていいけど弟君は要らないって宣ったとか言う父方の親戚から送り込まれた弁護士とやらも、黒魔術師の才能持ちだったのかな?
相手の考えを読める弁護士なんて、ちょっとズルな気がするが。
依頼人に騙されてたってケースは減りそうだけど。だが、一々弁護士のところに来る人の心の中を読んでいたら悪霊を除霊して回るのと同じぐらいかそれ以上に人の悪意とかに触れる事になって精神的に疲れそう。
「まずはエリちゃんが退魔師になりたいかどうかだね。
谷敷さんからも色々と話を聞いたみたいだけど、あとは何を知りたいの?」
碧が尋ねる。
一般家庭出身の女性退魔師はそれなりに大変なようだけど、それを言うなら普通に企業勤めするのだって大変なことは多いだろうからね。
世の中そうそう楽には暮らしていけないんだよね〜。
「実は、兄が一緒に働く相手が見つけられない様だったら私が退魔師になった方が安全性を確保できるかなと思っていたんですけど、谷敷さんはまともそうな人だったから、それも必要ないかな〜と思えて。
そうなると、よく分からない人のところに大金を払って弟子入りするってなんか怖いし、大学受験の方が良いかなって気もするんです」
エリちゃんがちょっと困った様な、迷っている顔をしながら答えた。
「まあねぇ。
弟子入りって他者の目が殆どない、実質密室的な関係の中で教わる事になるから、変なのが相手だとちょっと怖いわよねぇ。
一応私の実家の知り合いとかでまともな人もいるから、興味があるならそっちに聞いてみても良いわよ?
修行中は諏訪の方へ引っ越す事になる可能性が高いかもだけど」
碧が言った。
職場みたいな人の多い場所でもパワハラやセクハラやモラハラをする人間は幾らでもいるのだ。
それを考えると、一握りの人間しかいない師匠と弟子って関係じゃあ確かに怖いよね。
入門代に100万払っている事を考えると『失敗した』って思っても元を取る(退魔師になる)まで頑張ろうと思うだろうし。
少なくとも碧の知り合いとか親戚のところに弟子入りするならその点は安心かな?
白龍さまの愛し子に紹介された弟子を虐待する命知らずはあまりいないだろう。
「まあ、要はちょっとリスクを取ってでも、退魔師になりたいかどうかだね。
しかも退魔師になっても谷敷さんみたいに変なお見合いもどきな紹介しかされなくて中々一緒に働く相棒を見つけられずに苦労する可能性はあるし、入門代とか授業料とか払っても大成しない可能性もゼロではないし。
ただ、頑張って一流の国立大学に行ったって就職に失敗したり、就職先で運悪くパワハラ上司に当たる可能性はあるんだから、リスクは生きている限りどんなルートを選んでもゼロではないんだよね〜」
ある意味、引きこもりになって家族の脛を齧るのが一番短期的にはリスクがないけど、それは将来的には生活保護者かホームレスになる非推奨ルートだ。
「……お父さんから貰った能力だし、出来るなら退魔師になってみたいと思います。
まず、能力がどんな状態なのか調べて貰って、ちゃんと退魔師としてやれそうだったら藤山さんの知り合いを紹介してもらっても良いですか?」
暫く下を向いて考えていたエリちゃんが、顔を上げて頼んできた。
お〜。
退魔師の道へ挑みますか。
あまり手伝えることはないけど、やるだけの価値がある才能の持ち主であるかは確かめてあげよう。
「オッケー。
じゃあ、ちょっと手を出して〜」
エリちゃんの方へ右手を差し出す。
そっと出された手を握って、目を瞑り、エリちゃんの魂を覗き込む。
個人的な記憶とか想いは出来るだけ見ない様にして、魔力とその形や潜在力に集中する。
「あ〜。
水に対する適性が高いみたいだね。
かなり水に特化してるから鍛錬前でも力が落ち着いているのかも。
でも、魔力の流れは滑らかだからコツを掴めばそれなりに使えるようになるんじゃ無いかな。
蓮君は風特化なのかな?
だとしたら力の使い方のコツとかが違って話を聞いてもあまり上手く出来なかったのかもね」
現代社会じゃあ水がなくて死にそうになるとか、川に落ちて溺れそうになるとかってあまり無いから、水と共鳴する力を使う必要性が今までなかったんだろうね。
「そう。
じゃあちょっと両親に誰かいい知り合いが居ないか、聞いてみるね。
ちなみに、今って中学生だよね?
親元を離れて鍛錬する事になった場合、中学を卒業してからにする?
あと、高校はどうする?」
碧が尋ねた。
あ〜。
親元から離れるとなると親の合意も必要だよね。と言うか、未成年の進路関係で大金を出すのだ。かなりの部分を蓮君が負担するにしても、お母さんの合意も必要だ。
でも流石に高校を卒業するまで待つのはお勧めしないなぁ。
鍛錬して、魔力を練って増やしていくのは10代が一番伸びるからねぇ。
中卒って言う学歴もちょっと現代日本じゃあ不味そうだから、通学しながら修行する必要があるかも。




